ゴジラ・アースに転生したので色んな侵略者から地球を守ろうと思います   作:アメコミ限界オタク

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第五話

 

 

スラターンを倒してからはとくに出来ることもなく、暇だった。

 

暇なら陸に上がってプライマー倒せや、って思うじゃん? 無理なんだなこれが。

 

だって改変世界は荒廃世界と違って建造物がいっぱいある。建物を壊さないように気を使って遠距離から熱線を使おうものなら重度の放射能汚染だ。超振動波だと今度は射程が短くなる。

プラズマカッター? あれは論外だ。攻撃範囲が広すぎる。

 

そんなこんなで、やることがない俺は原作アースをリスペクトするために南極の氷の下で眠っているのだった。

 

「………ちょっと冷たいな」

 

この体になって初めての人間らしい感覚を味わいながら。

 

定期的にスキュラの群れを狩りに出かけながら、俺はこの世界に転生して初めてのんびりと睡眠と狩りを楽しむスローライフを送っていた。

 

……こんなんで地球守れるかな?

 

 

 

 

 

数日前、どこかの作戦エリア。

 

「私だ、プロフェッサーだ。

今回もなんとか成功したようだな。

ベース228での活躍は聞いている。

私が贈っておいた第8世代の武器もちゃんと役に立っていたようでなりよりだ。

しかし、今回のループは明らかに今までのループとはなにかが違った。

あの緑の超大型怪生物はなんだ?

今までに見たこともない上に、味方の筈のプライマーを攻撃していた。

私も作戦の都合上、あの怪生物を遠目に少しの間しか観察できなかったが、あの様子を見ている限りではグラウコスのようにプライマーの制御を離れて暴走しているようにも見えなかった。

それどころか、アンドロイドがあの怪生物に攻撃までしていた。

もしかすると、あの怪生物はプライマーが地球に持ち込んだ生物ではないのかも知れない。

しかし、あんな生物が地球にいたのであれば、どうやって今まで人類から身を隠していたのか……。

今後、あの緑の怪生物をより詳しく調査する必要があるが、今はあまり刺激しない方がいいかも知れない。私の方からも本部にやつの調査をするように進言しておく。

 

以上だ、幸運を祈る」

 

 

 

スラターン撃滅作戦。

 

逃走したスラターンの撃破を目的にしたこの作戦は、スラターンと呼ばれる起源不明大型怪生物、日本という国ではああいった巨大な生き物をカイジューと呼ぶらしいので私はそう言わせて貰う。

 

上陸阻止作戦に参加した部隊はスラターンによって全滅した。

ついでに言うとスラターンと遭遇したエルギヌスやアーケルスも残らず倒されてる。

プロフェッサーの調査では怪生物同士は争ったりしないことが証明されているはずなのにだ。

この予想外の事態にプロフェッサーや本部も「なぜだ………?」と首をひねっていた。

 

とにかく、上陸阻止作戦は失敗した。

スラターンはアーケルスよりも大きく、強く、素早く、そして電撃を操るエルギヌスすら焼き殺せる電撃を使えるのだから、この結果は予想の範囲内だ。

 

「先輩方!私の言うとおりに展開して下さい!そうすればきっと生き残れます!」

 

スラターン撃滅作戦に参加する兵士に私は事前に伝えた通りに動くよう指示する。

普通に考えて新入りの後輩、それもつい半年前までは高校生だった私が指揮を執るのもおかしな話だ。私にとっては軽く数十年は昔のことだが。

 

ベース228の英雄のネームバリュー様々である。

 

他にも戦死していた筈の人たちに事前に死ぬ原因になっていたことを『アドバイス』という形で伝えておいたり、戦車の進路を塞いでアンカーの直撃を回避させたりと、細かい改変も大量に起こしておいたおかげで「私のお陰で生き残れた」という感じで始めは反発していた人たちもいつの間にか支持派に回っていた。

 

ウイングダイバー入りのスカウトや進言は歴史通り全て断った。

先輩方は必死に、鬼気迫るほど必死に、ドン引きするほど凄く必死にウイングダイバーに進めてくれたけど断った。私は相棒のパワースケルトンがあれば十分だ。

 

とにかく!私を支持する兵士が前回よりも圧倒的に増えたおかげで、今回のルートでは大部隊での防衛ラインを増築できた。

 

今は生き延びる事を考えなければならない。

本来であれば基地を放棄する事態になっていたベース228の危機、それを基地を守りきった歴史に改変した私はバルガの有用性を示し、怪生物対策にバルガが大量に投入されている。

 

今回の作戦にもバルガを配備して抜かりはない迎撃態勢が敷かれている。

 

 

遂にやって来たスラターンに35mmハンドキャノンを向けると、やつはいきなり目が潰れそうなほどの稲妻を吐き出した。

 

電撃を操るエルギヌスを焼き払うほどの電撃。

まるで太陽がもうひとつ出現したかのような目を開けてられないほどの電光。

 

進路上の戦車隊は回避が遅れたものは全滅、爆発した戦車がオモチャのように空を飛んでいった。タイタンは耐えたけど一撃で煙を上げている。次を喰らったら間違いなく終わる。

 

タイタンですら一撃で大破寸前に追い込んだその威力と迫力に経験の浅い兵士が悲鳴を上げた。スラターンは容赦なくそんな兵士たちを襲った。

 

私はパニックになる仲間たちの盾になるべく、フェンサー特有の連続慣性ブーストを駆使してスラターンの顔の周りを飛び回ってやつの目を狙い撃つ。

 

私が愛用している35mmハンドキャノン砲は、生身で扱えば発砲の衝撃だけで命を落とすほどの殺傷力を秘めたフェンサー専用の個人携行用大砲だ。

それが目に直撃しているにも関わらず、やつは鬱陶しそう目をつむるだけのリアクション。

大したダメージは無さそうに平然としている。

 

嫌がらせになってもダメージですらない。

 

エルギヌスやアーケルスでもこの大口径で目を撃てばその弾頭は頭蓋を貫通して脳にまで届き、大ダメージを与えることができた。

そのまま同じ箇所に撃ちこみ続けていれば、マガジン1個を空にする代わりに仕留めることだって出来た。

長い長いループの果て、怪生物対策として習得した私の対怪生物戦術だ。

先輩たちから神業、超人、人間じゃないという評価を受けたこの技を以てしてもスラターンは仕留めきれない。

 

それでも目を狙撃されるのはストレスになるようで、スラターンは砲撃弾幕を張る戦車隊を無視して私に狙いをつけて暴れまわった。

 

ビームのように収束された電撃は、避けても近くを通るだけで直にスタンガンを当てられたようにビリビリとした電撃の感触が伝わってくる。

 

威力は高いが、私に当てることは絶対に無理だ。そんな油断をしていた私を、この直後にこ○したいと思うほどの出来事が起こった。

 

地面から放電で跳ねた稲妻が私のアーマーに直撃するとは思わなかった。

そしてそれがスケルトンの動力を破壊してオフラインになることになるとも思わなかった。

 

いやどんだけ運が悪いピタゴラススイッチだ。

 

頭の上には電撃を構えるスラターン。

 

「あ、死んだ」

 

私は死を覚悟した。

 

 

■■■■■■■■■■!!!!!

 

鼓膜を叩き、お腹の底にまで響いてくるほどの叫び。

ループ以前の私であれば聞くだけで身体の震えが止まらなくなっていただろう。

 

もう1体の超大型怪生物の乱入。

それからの戦いはあまりにも壮絶であり、一方的だった。戦いですら無かった。

 

 

そんな超大型怪生物2体の戦いの最中、私はその余波で崩れたビルの下敷きになりかけた。

そしてそれを救ったのは、例の超大型怪生物だった。

 

偶然か、意図的か。やつは尻尾を傘にして私を瓦礫から守ってくれたのだ。

 

 

これから数年後の未来に起こる出来事、私の主観では数週間前のことだから先日か?

とにかく私は、プロフェッサーと共に3度目のリング攻撃作戦に参加し、リングを破壊した日のことを思い出した。

 

あの時もそうだった、この超大型怪生物が姿を見せたのは。

 

やつが出現した時、周辺エリアから虎の子のブルートまで出撃させてやつの注意をそらそうとしていたが、やつは目もくれずに私を見ていた。

ハンドキャノンのスコープ越しだったが、確かにやつの目には明確な知性の光が宿っていたのを私は見た。

 

その事についてはまだプロフェッサーにも知らせていない。そんな暇が無かったからな。

 

 

そして今、私を見つめるあの空のように青い瞳。

私はそこに明確な知性と意思を感じた。

 

 

「お前は……あなたは一体、何者なの……?」

 

 

海へと帰っていく彼の背中に私の疑問をぶつけても答えは返ってこなかった。

 

 




この世界のストーム1は女性フェンサー。
レンジャーやエアレイダーの屈強な男ばっかなんだからたまにはこういう変化球があってもいいでしょ(逆ギレ)

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