ゴジラ・アースに転生したので色んな侵略者から地球を守ろうと思います   作:アメコミ限界オタク

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第八話

 

超大型怪生物ゴジラによるマザーシップ三隻の撃破。

 

その報告は噂となって瞬く間にEDF中に広まり、私の元にもその真偽を確かめようとする兵士たちが連日のように押し寄せてくる。

 

ちょっと待って。私だって会議中に偶然知っただけだし、箝口令が敷かれてるから何も話せないのよ。

 

だから私はとりあえず笑って誤魔化す。

指で口の端を引っ張って戦闘準備。うん、いける。

にこっと笑う。

 

「ひぇ……」

 

天使の笑顔を見れば相手もこれ以上の追及は避けてくれる。その証拠にサっと自分の隊に合流して訓練に励んでいる。

 

アイドルを目指していた時期に笑顔の練習をしていたのが功を奏したようね。

ちなみにこのスマイルで挑んだオーディションは全滅した。解せぬ。

 

箝口令が敷かれる理由は当然、兵士たちの士気に関わる問題だからだ。

 

EDFが偵察するだけでも多大な出血を強いられるマザーシップ、それを三隻も同時に倒せるほどの超生物を相手にすると知れば兵士は絶望するだろう。私だって絶望する。

 

……ただ、それはゴジラが本当に敵であればの話だけどね。私だって自信があるわけじゃないからまだ誰にも言えないけど。

 

軍事衛星が復旧するまでは数週間かかる。

超大型怪生物ゴジラの生命反応は依然として南極から動いていないが、それ以外の情報は不明。

これ以上の詳しい偵察を行うには、軍事衛星の復旧が不可欠だ。

まさかプライマーの残党が取り残されてる場所にスカウトを送り込む訳にもいくまい。

残党については幸いなことに、南極に重要な拠点が存在しないためという理由で一旦放置ということになっている。

 

衛星が復旧次第、南極の偵察が行われるのでそれまでの辛抱だ。

 

そう考えながら、私はまたストーム2の大将のお兄さんを投げ飛ばした。

 

「いってェ! 大将には手加減てもんがねぇのかよぉ!」

 

そんな愚痴を言っても結局は立ち上がってまた向かってくる。体を動かすのはやっぱり楽しい。

パワードスケルトンの修理が終わるまではこうして大の男を投げ飛ばしてるのもいいかもね。

 

 

 

「これが現在の南極の映像です」

 

少佐が本部長に報告する。

その映像では変わり果てた南極の姿と、夥しい数のプライマーの兵士の死骸が転がっていた。

人によっては直視することも憚られる凄惨な光景だ。

マザーシップが撃墜されてからも生き延びた残党が特に壮絶な死に様を晒している。

まるで肉体が崩壊したかのような死体。本部長と少佐にはそのような生物の死に方に心当たりがあった。

 

「被爆……でしょうか?」

 

「恐らくはな」

 

衛星にはガイガーカウンターや放射能の可視化などの機能は搭載されていないため、推測の域を出ないが、彼らはそう確信している。

 

「ゴジラが熱線を使うたび致死量の放射能か、それに類似した有害光線を発生させるとしたら……もはや生物の域を遥かに超えています」

 

「現にプライマーの残党もこの汚染で全滅している、なにかしらの致死性の汚染が起きることは確実だろう。なんにしろ、南極の偵察に衛星を使ったのは正解だったな」

 

もしなんの被爆対策もないまま兵を送り込んでいたら、と思うと本部長は背筋が凍る思いだ。

 

「こうなると汚染を除去するための装備の開発が急がれます。先進科学研にも伝えておきましょう」

 

「総司令部からはオペレーション・オメガを実行に移すタイミングだと通達も来ている大事な時期だ。汚染除去装置の開発が完了するまではこの情報に箝口令を適用する。

兵の士気が低下するのは避けたい」

 

「了解しました。ストーム1と主任にも厳命しておきます。……特に私の部下には」

 

対策会議に参加していたメンバー全員に……特にオペレーターには強く命じるつもりの少佐だった。

 

 

 

「彼女のスケルトンを修理するついでだが、新しく調整しておいた。きっと役に立つ。そう願う」

 

ストーム1専用の白いパワードスケルトンを前に、プロフェッサーはそう呟く。

スラターンの電撃で破損した彼女のスケルトンに耐電性・耐熱性の大幅な強化を施すために装甲を一新。

素材にバルガと同じE1合金を使用することで単純な防御力を大きく強化。

 

スラターンの血液から抽出した成分とレアメタルを混ぜて精製した『カイジューブルー』と名付けた新開発の燃料電池。

それを試験運用することで、通常のスラスターとは比較にならないほどの大出力化に成功した新型スラスターも装備してある。

シミュレーター通りに機能すればこのスラスターを持つ者は自在に空を飛び回ることができる。

ただし、そのために要求される技術と身体能力は常軌を逸している。

例えるなら、バイクの上で逆立ちしながら運転しろと言われるようなものだ。

 

ある種の変態や超人でなければ絶対不可能な領域の技術。

 

常人であれば技術が追いつかずに機体に振り回されるが、ストーム1であれば話は別だ。

 

「彼女ならこのじゃじゃ馬も乗りこなせる、必ずな」

 

プロフェッサーの信用は厚い。

 

 

 

 

南極海深くで静かに眠る。口から漏れる空気の泡が日の光に照らされて幻想的な雰囲気を作り出す。

 

そんな風に過ごしていたら、急に本能を刺激されるかのように、空の彼方から迫る敵の存在を感知した。

なぜかは分からんが、新たな敵、新たな宇宙人が地球を狙っていることを感じる。

 

プロジェクトメカゴジラで妖星ゴラスの接近に人類より早く気づいたように、なにかしらのセンサーがあるのかも知れない。

 

それはどうでも良いとして、今は宇宙から来る連中だ。

 

場所は太陽系よりずっと外側を飛んでるように感じるが、真っ直ぐ地球に向かって来ていることが分かる。

 

南極海から顔を出して夜空を見上げると、肉眼では星空が広がっているだけだが、本能か、第6感か、より一層強くエイリアンの存在を感じることができた。

やっぱりなにかが地球に迫っているようだ。

 

しかも一瞬だけ気配が消えたかと思うと、さっきよりも近くに出現して、また消えて。それを繰り返してる。

ワープ航法だろうか?

この分だと地球到達まで数ヶ月もない。

 

そうだ、北極行こう。

 

思い立ったが吉日。俺は北極までの遠泳を開始する。やることはひとつ、ゴラス撃墜の再現だ。

 

忙しくなってきたぞ。ゴジラっぽくなってきた。

 

「あ、そうだ。死体片付けないと」

 

地表に転がっているプライマーの死体を超振動波で念入りに滅却しておく。

この外気なら腐ることはないけど、単純に、風景が目に毒だ。

 

ゴオオオオオオオ!!!

 

分子レベルで崩壊するプライマーだったモノの残骸を見て、俺、ご満悦。

 

これでよし。

 

 

北極に向けて泳ぐ。急げ急げ、時間がない。

 

 




ストーム1
大学受験は全滅し、事務では書類落ちし、アイドルオーディションでは自称天使の笑顔()が原因で落ちた上にEDFのバイトで荷物運びに参加したら『本日の予定』が起こる不憫の子。

身体能力と運動神経は人類トップクラスの超人なのでダンスの上手さは断トツ。でも落ちた。
見た目もグラビアで食っていける上に歌えば美声の喉を持つ美少女。
でも笑顔のせいで落ちた。

大将のお兄さん
ストーム1を大将と呼んでる人。作者が個人的にEDFでいちばん好きなキャラ。
軍曹チームでは面倒見が良く、ムードメーカーな兄貴分。態度はデカイけどラーメンくらいなら飯奢ってくれるタイプの先輩。

本人は覚えていないが銀の人を倒した周回ではストーム1に頻繁に飯を奢っていたためストーム1に懐かれている。
恋愛感情というより犬猫が餌をくれる人間に懐いてるようなものレベル。
今回の周回では飯をくれて遊んでくれる人レベルには懐かれている。

新しい宇宙人
ゴジラでもEDFにも出てこない、古い名作映画のエイリアン。
ゴジラ・アース被害者の会三号
一号はプライマー、二号はプリカーサー。


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