妄想特撮シリーズ~ウルトラシリーズの”もしも”作品集~   作:Sashimi4lyfe

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ウルトラマンコスモス編
ウルトラマンコスモス:強くなる意味


おとめ座、K9銀河。

宇宙最古の恒星の一つ、U230が構成する恒星系λ(ラムダ)004には、地形がケイ素で構成された紫色に輝く美しい恒星があった。

「アメジスト星」とも呼ばれるその恒星の地表には、荒々しい岩肌の表面の所々にアメジストの鉱石が露になり、幻想的な雰囲気を醸し出していた。

 

おとぎ話に出てくるような光景が広がる荒野に、二人の巨人の姿があった。

 

一人の巨人は筋肉質の体の持ち主だった。

ギリシャ彫刻のように美しく鍛え上げられたその肉体は、アメジストの紫色の光に照らされて異様な神々しさを表している。

 

もう一人の巨人は、対照的にすらりとした青色の肉体の持ち主だった。

どこか安らぎを感じさせる彼の顔つきは、前者の殺戮的な形相をなだめようとしているようにも見えた。

 

「とうとう見つけたぞ、ウルトラマンコスモス。セナ文明が作り出した人工生命を手懐けたのは貴様だな。」

 

力の巨人は青色の巨人に言い放つ。

力強くも、表情の読み取れない声は紫色に輝く荒野に響き渡った。

 

「カオスヘッダーのことか。しかし、彼らを説得したのは私ではない。」

 

青色の巨人の言葉は優しく、それでいて不思議な重みがあった。

 

「たわごとを。地球に攻め入ろうとした姑息な星人どもがこの知らせを受けて逃げ出したと聞いておる。」

「誤解だ、パルテヌス。私一人では、決してあの彼らをあの姿にしてやれることはできなかった。彼の力がなければ...」

「えぇい、まだしらばっくれる気か!まぁよい、貴様と勝負をするために貴様の居場所を突き止めたのだからな。」

「待て、パルテヌス!」

 

コスモスの言葉を無視し、パルテヌスは戦闘の構えを取った。やむを得ずにコスモスも体を構える。

 

「いざ、参る!」

 

二人の巨人の激しい攻防が始まった。

パルテヌスは様々な攻撃を駆使してコスモスに攻め入るも、コスモスはそれを巧みにかわしていく。

 

流星突き、獅子座蹴り、対流狂わせ。

 

次々に繰り出される宇宙体術の奥義がコスモスを襲うが、それらが彼にダメージを与えることはなかった。

コスモスは一発もパルテヌスに打撃を与えることはなく、相手の猛攻を丁寧に一発ずつ捌いていく。

動きの無駄を増幅させるコスモスの「捌き」はパルテヌスのエネルギーをどんどん浪費させていき、パルテヌスを精神的に追い詰めていった。

 

「ちっ!」

 

イラついたようにパルテヌスはコスモスを強く突き放し、一旦距離を取った。

 

「もうやめにしないか。私たちが戦う意味などないだろう。」

「戦う意味...だと?そんなものは勝ってから考えればよいのだ!そんなつまらんことを貴様は戦いの中で考えておるのか!?」

 

怒りのままにパルテヌスは地面を拳で砕く。

 

「そうか、この程度では俺に手を出すのも惜しいというのだな。おのれ、コケにしてくれおって...」

 

そう言いこぼすと、熱した石炭のようにパルテヌスの体が赤く変色していった。

彼の体の熱で周りのガスが熱され、蜃気楼のように視界をぼやけさせる。

 

「これなら貴様も気兼ねなく俺と戦える!そうだろう、コスモスゥゥ!!!

 

先ほどまでの流儀に沿った戦い方とは違い、パルテヌスの動きは狂った野獣のような狂暴なものに豹変した。

その変化にコスモスは始めは戸惑いを見せたが、次第に彼の動きを理解し、やはりパルテヌスの攻撃はコスモスに届くことはなかった。

自分の渾身の攻撃が全くコスモスに効果がないことに怒りを募らせたパルテヌスは、力任せに両手を頭上に掲げ、コスモスを叩きつぶそうと力を込めた。

 

コスモスはそれを待っていた。体の大部分がむき出しになる瞬間を見計らっていたコスモスは、彼のボディに両手で強く押し込むように突きを入れた。

 

「グゥッ!?」

 

パルテヌスの体を駆け巡っていたマグマのようなエネルギーの流れがその一撃によってせき止められ、彼の体は見る見るうちに赤からもとの色に変わっていった。

急激なエネルギーの減少に彼は立っていることもままならなくなり、たまらず膝をついた。

 

ハァ、ハァ...クソッ...ここまでか...さぁ、何をしている。とどめを刺せ。」

「こんな戦いに意味はないと言ったはずだ。私は君を倒す気はない。」

「貴様...まだ俺を侮辱する気か!なるほど...俺をあえて殺さないことで俺に死以上の苦しみを味わわせるつもりだな。覚えているがいい!俺はいつかこれ以上に強くなって、お前の首を...」

「君は、どうしてそんなに強くなりたいのだ?」

「...何ィ?」

 

質問の意味が理解できないのか、パルテヌスは少し間をおいてから答えた。

 

「決まっているだろう。戦で負けぬようにするためだ。」

「...そうか。パルテヌス、このままでは君は私に勝てない。」

「何をォッ!?貴様、どれほど俺を侮辱すれば気が済むのだ!見苦しいぞ、コスモス!」

「私も、かつてはそうだった。」

 

怒りのままにコスモスに怒鳴りかかるパルテヌスの声がコスモスのその一言で静まった。

遠くを見つめながら、思い出をなぞるようにコスモスは言った。

 

 

「しかし、私は教わったのだ。彼から強くなる本当の意味を。そして...本当の強さを知ることができた。」

「その意味が分かれば...俺も手に入れられるのか?その本当の強さとやらを...」

 

コスモスは静かにうなずいた。

 

「お、教えてくれ!俺はもっと強くならなくてはいかんのだ!」

 

自分の目線をパルテヌスに合わせるようにコスモスは膝をつくと、彼の目を見つめながら言った。

 

「ならば、考えるのだ、パルテヌス。戦う意味を。傷つけあって勝者だけが残る未来を。」

「......」

 

 

―…

 

 

「何をへばっておる、パルテヌス!もう一度だ!」

 

戦いが終わる度に、俺はあの日のことを思い出す。

 

あれはまだ、俺が幼かった頃。

生れて始めて出た武闘会で優勝した後のことだった。

 

「ち、父上、お言葉ですが少し休む時間を...」

「まさかあの程度の戦闘で疲れたとは言うまい。小童どものどんぐりの背比べに勝ったところで何も意味はない。お前はまだまだ強くならねばならんのだ!さぁ立て!立つんだ!」

 

父上との特訓に「休み」の二文字はなかった。

前の日の訓練がどんなに過酷でも、息子が武闘会で優勝した後でも、どんな日でも特訓は行われた。

 

戦いこそが自分を高める唯一の方法であり、宇宙の真理である―それが我が種族、タルゴン族の掟だった。

俺は宇宙体術の流派の一つ、龍星拳の使い手の末裔に生まれた。

 

数多くある宇宙体術の流派の中でも龍星拳は一二を争う実力を持ち、一子相伝の伝統を古来から守ってきた誇り高き流派だ。

俺は龍星拳の継承者として生まれた者の運命(さだめ)を持って生まれてきたのだ。

 

それは、龍星拳を極め、タルゴン族最強の名を手にし、龍星拳の名を宇宙にとどろかせること。

それこそが生きる意味であり、強くなる所以なのだと、父上に叩きこまれて俺は育った。

 

本当のことを言うと、あの日俺が父上との特訓を拒んだのは疲れていたからなんかじゃなかった。

始めて生身の相手と戦い、負かしたとき...優越感と共に、不思議な違和感が俺の脳裏をよぎったのだ。

俺と同じくらいの年頃の相手に、父上に仕込まれた奥義を繰り出して圧倒し、白星を飾る。

このために苦しい特訓に耐えてきたはずなのに、なぜか心に嫌な後味が残った。

 

顔だ。相手が負けを確信したときのあの顔が俺はたまらなく嫌だった。

そして、勝敗が決した後、相手はその表情を残したままそれぞれの師範の元に帰っていく。

哀情に満ち、虚無感を含んだあの表情を。

 

「負け犬の顔」-あの表情を父上はそう呼んだ。「あれで奴も少しはまともに鍛錬する気になっただろう。」

確かにそうかもしれない。奴が負けた理由の一つは鍛錬が足りなかったからだろう。

でも、仮に奴が俺と同じ量の鍛錬を重ねたとして...

 

「流星拳」という既に完成されつつある流派を使う俺に、並の流派を使う奴らが太刀打ちできるだろうか?

俺が奴の立場だったなら、龍星拳を使う相手に勝つことはできるんだろうか?

 

その疑問が解消されることはなかった。恐れ多くてそんなことを父上に尋ねる気にもならなかった。

しかし、俺は心のどこかでこの疑問の答えを探していたのかもしれない。

その想いをかき消すように、俺は心の中で何度も唱えた。

 

(勝たなければ、俺が龍星拳の使い手に生まれた意味はない。)

 

そうするしかなかったのだ...俺が正気でいられるためには。

 

でもコイツなら、この疑問の答えを知っているかもしれない。

コイツの言う「強くなる本当の意味」とやらにその答えはあるのかもしれない。

根拠のない自信に俺は賭けてみることにした。

 

 

―…

 

 

「時に、コスモス。」

 

パルテヌスの声が静寂を破る。

 

「貴様は、なぜ戦うのだ?」

 

心なしか、コスモスの顔がほほ笑んだように見えた。

 

「私は自分自身と戦っている。考えの違う存在を否定せず、対話の中で理解し、受け入れられるように。」

「ふん。何を言うかと思えば...貴様を殺そうと考える者をも受け入れるというのか?」

「それにはそれなりの理由があるはずだ。それを理解しようとしない限り、どちらかがこの世界から消えなければいけなくなる。」

「ふざけるな!そんな綺麗事は現実では...」

 

その時、パルテヌスは気づいてしまった。

 

(コイツが俺にとどめを刺さなかったのは、俺を侮辱するためじゃない。本気でコイツはこんな絵空事を信じているんだ。)

 

するとパルテヌスプッと笑いをこぼしたかと思うと、ゲラゲラと笑い始めた。

その豪快な笑い声は荒野に響き渡り、隣の恒星にまで聞こえるのではないかと疑うほどの声量だった。

やっと笑いが収まると、パルテヌスはコスモスをからかうように言った。

 

「いやぁ、愉快愉快。まともな奴かと思っていたが、こんなことを真剣に信じていたとはな。」

「笑ってくれて構わない。これが私と彼が行き着いた、『真の強さ』の意味なのだから。」

 

パルテヌスはその言葉にずっと探していたパズルのピースを見つけたような安心感を感じた。

強くなるということは、決して対立する相手を打ち負かすことではないのだと。

それをコスモスは体現しているのだと、パルテヌスは理解した。

 

「誰なのだ、その『彼』とは?」

「かけがえのない盟友さ。」

 

そう答えたコスモスの声には子を思う父のような暖かみがあった。

 

コスモスはゆっくり立ち上がると、パルテヌスに手を差し伸べた。戸惑いながらもパルテヌスはその手をつかみ、立ち上がった。

 

「コスモス、俺は貴様の言う『強さ』をまだ認めることはできない。しかし、いつか俺が自分の納得のいく『強さ』の意味を見つけた時、その時はまた、手合わせ願おう。」

 

ゆっくりと頷きながら、コスモスは答えた。

 

「君になら、見つけられるだろう。君の心が、その答えを知っているのだから。」

「フン、最後まで綺麗事を言いおって。」

 

コスモスに背を向け、パルテヌスは残りのエネルギーを足に込めると、最後に言い放った。

 

「さらばだ、コスモス!」

 

そう言うと彼は星空の彼方へと旅立っていった。

コスモスはその姿を見送りながら、彼方遠くの地球に向かってつぶやいた。

 

「ありがとう、ムサシ。君のおかげで、また一つ強くなれた。」

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