雄飛する鳥は世界線を渡る   作:NoRAheart

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あれ……
これってコラボ作品だよね?


正体不明の人形師 【中編】

あれから元の世界に戻ると張り切っていた千鶴は一年近く飲まず食わず、不眠不休で研究に没頭し、そして

 

 

「ふ、ふふ……」

 

 

遂に完成したのが目の前に鎮座している黒光りした巨大な斜めドラム洗濯機……の様な世界線跳躍装置。

 

 

「ふ……あはははは!!」

 

 

千鶴はどこぞのマッドサイエンティストの如く高笑いを上げる。

まあ、一年近くも不眠不休で盛大に目の下に隈まで作って研究に没頭したのだ。

彼女のテンションがおかしな事になっていたとしても無理もないだろう。

 

 

「ふふふ、遂に遂に完成したわ……『突撃、隣の世界線!!七号』が!!」

 

 

千鶴は『突撃、隣の世界線!!七号』と呼ばれたそれを頬ずりし、(相変わらずの無表情だが)恍惚とする。

彼女がこのような行動を起こすのも、ネーミングセンスがおかしな方向に傾いているのも、きっと彼女のテンションがおかしな事になっているのが原因だろう。

 

 

「私はこの装置を使って!!」

 

 

いつの間に着ていたのか?

彼女は、羽織っていた白衣を払って、だれも見ていないというのに、振り返ってキメポーズ。

 

 

「すべての世界線を支配し、全ての世界線の……いや、新世界の神となる!!それが、シュタ〇ンズゲートの選択なのだから!!」

 

 

そして高笑い。

某、独逸語と英語の混在したタイトルを持つ、中二病な主人公をどことなく連想させるが、それ以前に、『突撃、隣の世界線!!七号』の使用趣旨が当初より大分ずれている気もするが、それもこれもきっと彼女のテンションがおかしな事に(以下略)

そんな彼女を心配する、びっしりと計算式などが書き込まれた紙や、工具等で乱雑になっている部屋を片付けていた人形の一体。

千鶴の白衣の裾を引っ張って、身振り手振りで彼女に「大丈夫?」と問う。

 

 

「心配するな助手、私を誰だと思っているの?私は悠久の時を生きる神々が長。博霊千鶴、天照大御神なるぞ!!」

 

 

これが中二病をこじらせた若者の妄言ではなく全て事実なのだから、なお質が悪い。

助手と呼ばれた人形の一体、因みに名前はジョシュ-と言う(どうでもいい)。

ジョシュ-は再び裾を引っ張って、隣の部屋に敷いてある布団を指す。

 

 

「なに、私に休息を取れと?」

「(コクリ)」

「……いいだろう、世界征服は万全を期して望むが吉」

 

 

ジョシュ-の助言をすんなりと受け取る千鶴。

ふらふらと覚束ない足取りで布団の傍まで歩いて行き、そして倒れた。

それを見ていたジョシュ-は慌てて駆け寄るが、千鶴が静かな寝息をたてている事に気づいて、やれやれと首を振る。

どうやら千鶴の体力は限界を迎えていたらしい。

ジョシュ-は眠っている千鶴の上にそっと毛布を掛け、千鶴の頭を撫でた。

 

 

お疲れ様。

 

 

まるでそう言っているかのように千鶴を労ったジョシューは、程なくして部屋の片づけに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恥・ず・か・し・い!!

 

 

眠りから覚めた私は布団の上で悶えていた。

原因は無論、眠りに入る前の私の言動のせいである。

不眠不休でテンションがおかしくなっていたとは言え、いくらなんでもあれは酷い。

唯一の救いは、先ほどの私を他人に見られずに済んだ事か。

 

 

きゅぅぅぅ……

 

 

「……」

 

 

布団の上で悶えていた私のお腹が、食べ物寄越せと喚き散らす。

よくよく考えれば一年近く何も食べていないな、と彼女は今更思い出す。

別に食べ物は食べなくとも、千鶴は自身の神力をエネルギーに変換すれば生きていける。

それでも彼女のお腹は満たされた訳ではないので空くのも道理。

今回はちょっと研究にのめり込み過ぎたせいで食事を忘れていたが、流石にそろそろ食事を取らないと拙いかと思い返す。

 

しかし食べ物を求めに行くのであれば庵より外に出ないといけなくなる。

千鶴にとって、今の外の世界の認識は「お外怖い」だ。

それでも外に行くのかどうか?

彼女は悩みながら、ちらりと装置の方に目を向けた。

 

『突撃、隣の世界線!!七号』は元の世界に戻る為の装置であると同時に、それに必要なエネルギーを蓄える充電器の役割を兼ね備えている。

もし私の神力が全力の状態であったのなら数日程で必要なエネルギーを供給できたのであろうが、今の私は信仰が削られているので供給できる神力の量もその分少なくなっており、充電完了までには数年単位で時間が掛かりそうだ。

まあなりふり構わずエネルギーを集めてくれば充電はすぐに終わるのだろうが、幻想郷側に異変断定されて庵に詰めかけられて、魔理沙あたりに異変の原因であると早とちりされて装置を壊されては元も子もない。

 

 

きゅぅぅぅ……

 

 

もう一度、千鶴のお腹が空腹を訴える。

しかし数年間この空腹感と付き合わないといけなくなると思うと……

 

 

「出ましょう」

 

 

淑女として常にお腹が鳴っているという状態でいるのは果たしてどうなのか?

そう考えた千鶴は重い腰を上げて外に出る事にする。

 

……外に出るのを決めたのはいいが、外に出るにあたってにあたってやるべき事がある。

それは神の身で外に出る訳にはいかないという事である。

折角大結界に割り込んで情報を改ざんしたのに、神の身で外に出たら矛盾が生じてしまう。

 

 

「『天地創造・人改め』」

 

 

故に私はこの身を神から人に落とす。

こうする事で私の持っている神力は霊力に変換され、身も人に落とした為かなり弱体化するが背に腹は変えられない。

霊力に関しても神力に比べてかなり燃費が悪いのでなおさらである。

 

さて私が外出するにあたって注意すべき点は大体三つ

・幻想郷側の実力者に私の正体がばれない様に注意する事、紫に発見される事は勿論論外

・外に出るのなら人に交わる事。人に交わる事で人としての私を認識してもらい、カモフラージュを図る。ただし、過度な深入りはこちらの情報を与えてしまう可能性があるので避ける

・博霊に纏わる術は緊急時以外使わない。極力一般的な結界術等で代用する事

 

これだけ注意しておけば大方大丈夫だろう。

 

 

「……と、そうだった」

 

 

外で四次元空間を使う訳にはいかないので、刀やお金等の必要な物を今の内に取り出して身に着けておく。

万が一、空間を開く時は小物なら袂の中で開けばバレはしないだろう。

 

 

「それでは行きましょうかね」

 

 

こうして私はこの幻想郷に来て一年来の外に飛び出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

庵を囲む鬱蒼とした森を適当に進むと簡単に森を抜けられた。

まあ本当は正しい手順を踏んだ道をワザと通らない事で外に出されてしまうという森に掛けた言霊を利用したショートカットなのだが。

 

 

「能力がちゃんと働いているようで何より」

 

 

さて人里は何処かと考えていると、遠くから徐々に悲鳴声が近づいている事に気づいた。

すわ何事かと思い、そちらの方に視線を向けると

 

 

「た“す”け“で”ぇえ“ぇえ”え“!!」

『ぐへへ、まてまて小僧~』

 

 

遠くの方で顔面を涙と鼻水でくしゃくしゃにした童と妖怪が追いかけっこを繰り広げている。

そして徐々に童と妖怪の距離が縮まっているのを見るに

 

 

「……助けないと拙いですかねぇ?」

 

 

あんまり目立ちたくないのに。

私は内心そう思って吐露を吐きつつ、しかし目の前で襲われている者を見捨てるというのも目覚めが悪くなるので、私は仕方なく童の方に駆けだした。

 

 

「『瞬歩』」

 

 

高速移動術を使って一気に彼らとの距離を詰め、童と妖怪の間に割り込む。

妖怪の方もこちらに気づいたようだが、この距離ならもう遅い。

 

 

『誰だてめ「とうっ!!」……げはぁ!?』

 

 

速度を活かした私の膝蹴りを受けた妖怪が吹っ飛んで、二転三転と転がっていく。

私は着地をした後、すぐさま両手を掌の状態にして構える。

 

 

『こんのぉ~人間の分際でぇ!!』

 

 

吹き飛ばされた事に激昂する妖怪。

獣の様に私にすぐさま逆襲をはかる。

 

 

『死ねぇ!!』

「フー……」

 

 

迫りくる妖怪の両爪を目で追いつつ、息を吐いて意識を集中させる。

そして

 

 

『なっ!?』

 

 

両爪を身体を少し避けさせつつそれを左掌で払って回避

 

 

「せっ!!」

 

 

そして隙だらけな妖怪のどてっぱらに掌底を叩き込んだ。

 

 

『ぬひゃあぁぁぁああぁあぁぁあ……!?』

 

 

私の容赦ないそれを受けた妖怪さんは、綺麗なお星さまの一つになりましたとさ(キラッ

……拙い、少しやり過ぎた。

私はそう思って童の方を振り向いてみるが

 

 

「す、スゲー……」

 

 

当の童はその件に関して疑問に思う事無く、顔面をくしゃくしゃにしながらそんな事を呟くだけだった。

 

 

え、それだけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が助けた童、弥助という少年をこのまま放置……という訳にもいかず、再び襲われても元も子もないので、彼を家まで連れていく事にする。

しかし人里にあると思われた彼の家はなんと、人里から少し外れた所に建っていた。

 

 

「ささ、家に寄ってってよ侍の姉ちゃん。歓迎するからさ」

「え?あ……はい」

 

 

何故か弥助に手を引かれている私には元より拒否権などないだろうに……

そんな事を思いつつ、再び思考を戻す。

どうして彼の家が人里の外に建っているのか?

人里には基本、博麗の結界が各々張ってあるので妖怪の襲撃を受けることは無い。

この世界においてもその事は人形を使って確認済みである。

しかし人里から外に暮らすという事は結界の庇護を受けない、自殺行為とも呼べることである。

何故こんな所に?

弥助にそう問いかけようとすると、近づく家の敷地の四隅に薄らと半透明の囲いを見つける。

結界だ、しかもかなり強力な物と見て取れる。

博麗の物とまではいかずとも、これなら中級の妖怪程度なら防げる。

これを張った術者は人間にしては相当な使い手であろう。

 

 

「ただいま~」

「御免」

 

 

一応挨拶を入れるが返事は無い。

私はそのまま弥助に家の居間に通されて、ここで待っているように指示され、弥助自身はどっかに行ってしまった。

一人取り残された私はしぶしぶ畳の上に正座して弥助を待つことにする。

 

 

「誰だ……」

 

 

後ろの襖が開かれ、投げかけられる問い。

振り返ると中年の男が一人、こちらを思いっきり睨み付けている。

更に奥の方、布団に寝かせられた女性が苦しそうにしているのが目に入った。

 

 

「お初にお目に掛かります。私の名は、はくれ……失礼、千鶴と申すしがない旅の者。この度この近くに移り住んで来ましたのでどうかよしなに」

 

 

私は腰に差した刀を床に置き、三つ指をついてゆったりと頭を下げる。

中年の男はそれを見て警戒こそ解かないが、挨拶を返さないと失礼だと感じたのか、胡坐を掻いて少し頭を下げる。

 

 

「……土屋弥太郎、こっちは家内の菊」

 

 

男、土屋殿の挨拶に合わせて菊と呼ばれた女性は身体を少し上げて苦しいはずなのにニッコリと会釈。

奥さん無理しないでええよ……ほら、土屋殿も慌てて寝ているよう言ってるし。

 

 

「それで、侍が我が家に何用か?」

「それは弥助殿が……」

「お待たせ、侍の姉ちゃん。お茶を……げ、父ちゃん」

「弥助、説明しろ。何故他人を家に上げた」

 

 

物凄い剣幕で弥助を睨む土屋殿。

弥助はしぶしぶ事の次第を土屋殿に話すと、彼は弥助に容赦のない拳骨をかました。

 

 

「い~~~ってぇ!!」

「私が付き添わないときは外に出るなと言っておっただろうに」

「だって、母ちゃんに精のつくものを喰わせたかったんだ」

「……土屋殿の失礼ですが、奥方はご病気か?」

「見ての通り、三か月前からな」

「医者にはかかったのですか?」

 

 

土屋殿は俯きながら「家は俺のせいで村八分を受けているから無理だ」と私に告白した。

 

 

村八分

村の掟や秩序を破った者に課される制裁行為の俗称。

葬式の世話と火事の消火活動以外の生活の共同作業(成人式、結婚式、出産、病気、新改築の手伝い、水害時の世話、年忌法要、旅行)の一切の交流を村ぐるみで絶つものだった筈。

 

 

では目の前にいるこの男は一体何をしたのだろう?

私が疑問に思っていると弥助が慌てて否定を入れる。

 

 

「父ちゃんは悪くない、悪いのは全部村長のところの次男坊だ!!」

「悪くない?」

「村長の次男坊が父ちゃ「やめないか弥助!!」……っ!?」

 

 

弥助の言葉を遮る様に怒鳴る土屋殿。

人様の事情を私も必要以上に追及するつもりはないのでこの話は仕舞いにする。

 

 

「それはさて置き、宜しければ私が奥方を診ましょうか?」

「……と言うと?」

「私、浅学ながら医学を心得ています故」

 

 

いかがでしょう?

私の問いかけに土屋殿は少し考える素振りを見せ、道を開けた。

 

 

「頼む」

 

 

そう言って頭を下げる土屋殿に頷いて答える。

私は早速奥方に近づき、診察を始める。

まずは奥方の身体に手を添えて奥方の症状を診る。

 

 

「ん……」

 

 

特に癌とかがある訳では無いようだ。

身体に異変がある訳も無し。

……食事は余り取れていないようだ。

栄養価が少し心許ない。

 

 

「はあ、ぜえ……」

 

 

そして少々呼吸困難が見られる。

 

 

「奥方、問診しても大丈夫ですか」

「え、ええ」

「それでは自身の身体の不調を教えて頂きたい」

「そう、ね……最近上手く歩けなくなった事と全身がきつくて疲れるわ」

 

 

ふむ、歩行困難、筋肉痛、全身疲労ときたか。

確かこういった原因の病気の名は

 

 

「脚気ですね」

「脚気?」

「そうです、栄養の一部が足らずに起こる病気です。これを治すには食事療法、玄米、小豆、竹の子に豚肉などを食べると回復に向かいますが……この家にそれらはありますでしょうか?」

「生憎、家には脱穀してしまった白米しかない。問屋に行こうにも……」

 

 

しまった、村八分だったか。

仕方なしと心得え、私はその場から刀を持って立ち上がる。

 

 

「何方へ向かわれるか?」

「急用が出来ました、少々出かけてきます。それでは御免」

「千鶴殿!?」

 

 

土屋殿の静止を無視して私は人里に駆けだす。

私が受け持った患者だ、治療の為なら自分の金くらい惜しくない。

それにここから人里までそんな距離がある訳でも無いのでちょっと駆ければすぐに人里である……ほら、もう見えてきた。

私は人里が見えてきた辺りで足を止め、息を整えつつ、さも歩いてきたかのように振る舞う。

これは門番に警戒されるのを避けるためだ。

そして人里の入り口、門の前で私は案の定止められる。

 

 

「待て、見ない顔だな」

「お勤めご苦労様です。この度、里の近くに移り住んできた千鶴と申すしがない旅の者で御座います」

「して、この里への用向きはなんだ」

「食材の買い出しで御座います」

「ふむ……」

 

 

門番はじろりと私の身体を見、程なくして表情を和らげた。

 

 

「良いでしょう、ようこそ我らの里に。里を代表して歓迎いたします」

「ありがとうございます、今後も買い出しに来ますのでどうぞよしなに」

「ああ、ちょっと待って下さい」

 

 

私が門番の横を通り過ぎようとすると突然呼び止められた。

はて、何か不備でもあったのだろうか?

そう思って振り向くと、門番は「それですよ、それ」と刀を指さす。

 

 

「お侍さまにこのようなお願いするのは失礼でしょうが、今回だけはこちらに預けて頂いても宜しいでしょうか?」

「ふむ、構いませんが。訳を聞いても?」

「いやぁ千鶴さんはなされないとは思いますが、何処の誰かも分からぬ者が帯刀していきなり里の中に入ってこられると里の者が怯えますので。次回までには村長達にこちらで帯刀許可取っときますので、どうかご了承下さい」

「そういう事なら」

 

 

確かに安全上の問題があるなと私は納得し、腰に差していた刀と脇差を門番に預ける。

すると刀を受け取った彼は「ひょっ!?」と変な声を出して驚く。

 

 

「お侍さま、とても良き物をお持ちで」

「?」

「鞘越しでも分かります、中々の業物ですね。抜いてみても?」

「別に構いませんが」

「では……おお!!」

 

 

私の刀を見て少年の様にキラキラと目を輝かせている門番。

私の打った刀を褒めてくれるのは嬉しいが急ぎの用がある私はその旨を彼に伝える。

 

 

「これは失礼した。いや~これ程の業物にお目に掛かれるとは……」

「……盗まないでくださいね」

「盗みません。盗んでも私はこの刀を扱いきれませんし、使っても刀に振り回されるのが落ちでしょうから」

「そうですか、それでは」

「ええ、またあとで」

 

 

さて、門番との会話で少し時間を喰ってしまった、先を急がなくては。

私は人形を使って偵察した時の記憶を頼りに真っ直ぐ目的の問屋の方に向かう。

程なくして問屋は見つける事は出来たのはいいが、肝心の店員が居なかった。

 

 

「もし、どなたか!!」

 

 

私は問屋の奥に声を掛ける。

すると店の奥より慌てて中年のおばちゃんが出てきた。

 

 

「あいあい、ただいまっと……おや別嬪さん」

「お初にお目に掛かります。私の名は千鶴、この度里の近くに移り住んで来たしがない旅の者でごさいます。以後お見知りおきを」

「おやおや、また大層なご挨拶だね。もっと砕けていいんだよ」

「そうでしょうか?」

「そうなの」

「それでは女将、すみませんが玄米三升と小豆を一升頂けますか?」

「はいはい、毎度~……ところであんた、何処から来たんだい?」

 

 

店の隅に置いてある袋から玄米と小豆をそれぞれ小袋に分けつつ、問うてきたおばちゃんに、私は「西の方より来ました」と曖昧に答える。

しかしその私の返答に、おばちゃんの手が止まる。

何か拙い事でも言ったのだろうか?

私がそんな事を考えていると、おばちゃんはいきなり私の腕を引いて問屋の奥に連れていく。

何故?

 

 

「あんた、西の方にあるポツンと一軒だけ建っている民家があるのを知っているかい?」

「土屋殿の家ですか?」

「何だい、知っていたのかい。なら話は早いね」

 

 

そう言って問屋の軒先に戻って玄米と小豆をパパッと入れたかと思ったら、何故か野菜まで抱えて戻ってきた。

 

 

「はいこれ、玄米三升と小豆一升ね。占めて340文だよ」

「女将、どう見てもこれは五升と三升ある。しかもその野菜の束はなんですか?」

「……悪いけどあんた、これを幾らか土屋さん家に持って行ってくれないかい?」

「女将それは……」

「村八分の件かい?あんなの村長ところの阿呆たれ次男坊が村長をたぶらかして決まった事で、里の総意じゃないんだよ。」

「?」

「弥太郎は昔は里一番の腕利き退魔師で私も世話になった事があるんだよ。ところがある日、村長のところの次男坊が隣の里に向かう用事があるっていうもんだから弥太郎の所に護衛を依頼したのはいいけど、向かう途中に弥太郎が居る事を良い事に道端にいた妖怪にちょっかいをかけた。しかも運が悪い事にちょっかいをかけた相手が悪かったみたいで群れを成す種の妖怪で、かなりの数の妖怪に襲われて弥太郎に守られながら命からがら逃げかえってきたのさ」

「それは、阿呆ですね」

「だろ。しかも次男坊は妖怪に襲われて命が危なくなったのは自分のせいだってのに村長が耄碌しているのを良い事にある事無い事吹き込んで村長から村八分を言わせたのさ」

「酷い話ですね」

「全くだよ、だからあんた」

「はい?」

「これから私の所に来た時は、弥太郎の分もついでに持って行ってくれないかい。勿論駄賃は出すからね」

 

 

有無を言わさないおばちゃんの頼みごとに、私は小さくため息を吐く。

なんで外に出た途端、こんなに面倒事に巻き込まれるのか?

私はただ、食材を求めて外に出かけただけなのに、本当にこの世はままならぬ。

私は内心、そんな事を愚痴りながら、おばちゃんの頼みを結局引き受けるのであった。

 




ども、bootyです。


Q、コラボなのにこんなオリジナル展開していて本当に大丈夫か?

A、大丈夫だ、問題ない(震え声)


ちゃ、ちゃんと次に繋がる様に構想は練っていますので大丈夫な……筈。
が、頑張れ私!!
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