すごろく場から戻ったら、ゲームクリアされてた 作:フライングトースター
過去話で一部〝おうじゃのつるぎ″となっていたのを〝おうじゃのけん″に
前話で〝おうじゃのつるぎ″となっていたのを〝勇者のつるぎ″に修正しました
勇者アレルがアレフガルドに辿り着いて、早数ヶ月。彼は驚くべきスピードで冒険を進めていた。まるで何処に隠された宝があるのか知っているかのように*1、かつてわしが隠した武器・防具・そしてアイテムの類を回収していっている。中でも驚いたのが、〝勇者のつるぎ″を再現した件だ。
〝勇者のつるぎ″はかつてこの地で勇者が使ったという剣だ。
ラダトームに保管されていた宝物の中でも群を抜いて危険な力を有しておった。その力はまさに神器と言うにふさわしく、わしが纏う〝闇の衣″をも消し去る程の力を秘めていた。
流石に長年使用されていない為か劣化が著しく、わしが直接に振るう闇の力がかき消されるようなことは無かったのが救いか。長い時間を掛ければ十分に破壊できる程度の力しか残っておらず、片手間で3年かけて粉々に砕いてやった。
しかし勇者アレルはかつて「上」の世界のジパングからやってきたという鍛冶夫婦の力を借り、どこぞで手に入れたオリハルコンを基にこの〝勇者のつるぎ″を再現した。
流石にかつての〝勇者のつるぎ″程の力は有しておらず、その名も〝おうじゃのけん″と言うようなものであったが―――世界有数の剣としての力を有しておったのは間違いないだろう。
とはいえ、だ。あの〝おうじゃのけん″では我が〝闇の衣″をも消し去ることは出来まい。
わしは自身の持つ力に絶対の自信を持っておる。先の〝闇の衣″しかり、無限とも言える魔法力、強力な氷の息、マヒャドやマホカンタといった呪文、そして〝いてつくはどう″の秘術。
もしあ奴がこれらを突破してわしを破るようなことがあれば―――その時には大人しく敗れてやっても構わぬ。
そうして、魔の島の奥地。我が居城にて勇者が訪れるのをずっと待っていた―――わけでは、実はない。
わしが滅ぼすのを思いとどまった町、マイラ。元々は温泉地として栄えていたその町であったが、実はその町にはもう一つ名物があった。
それがすごろく場よ。元々は「上」の世界の娯楽であったらしいのだが、いつしかこの世界にも根付いておったようなのだ。賽を振り、ゴールを目指す。ただそれだけなのだが、障害が多く中々たどり着けない。わしにも理解不可能な現象の数々がそこでは観測された。
しかし、わしから見てみると中々悪くない。ゴ-ルへの希望、そしてそれが叶わぬ落胆。この落差の感情が近年のアレフガルドにおいては貴重な、生きのいい「嘆き」の回収に役立っておった。かく言うわしも、何度も挑んでは散っていったものよ―――いや、勿論お忍びで・・・だがな。
あの日も、そうであった。
勇者アレルは、精霊ルビスめを開放して魔の島へと渡る虹の橋を作り出した。そしてようやく我が居城に乗り込んでくるかと思えば―――なんと、すごろく場に遊びに行ったのだ。
勇者は装備を置いて、村人風に変装しておった。ただ一人の人間として、遊びたかったのであろう。
そんな男を闇討ちできるか?大魔王の名において、そんなことは出来ぬ。ただ、勇者アレルがどんな男なのか・・・我が居城にて迎え撃つ前に、どうしても知りたくなったのだ。
わしには息子がおった。魔王としての名はまだ無く、わしの名を取ってゾーマズデビルと名乗っておった。
魔族としては一人前で、わしにも忠実な自慢の息子。そんな息子に、わしはマイラに出向く際にはいつも〝大魔王の力″を預けて出かけておった。
息子との最期の会話は今でも覚えておる。「最近ようやく〝いてつくはどう″が使えるようになった。帰ったら、見て欲しい」と言っておったっけ。わしは鷹揚に頷いて返した。まさかそれが今生の別れになろうとは思わなんだ。
わしはマイラに到着すると―――ああ、アマモジと名乗り、人間の中年男の姿でだが。ここに訪れるときはいつもその姿を使う用にしておる―――勇者を探した。既にすごろく場に挑戦しておるようだったので、軽く温泉で汗を流し、奴がクリアして出てくるのを待った。しかし、存外苦戦しておるようでの。一日経ち、二日経ち・・・結局わしもすごろくに挑戦してしまった。
いつも〝千里眼″で見るだけだった勇者を間近に見ると・・・やはり心躍ったな。いわばこれは前哨戦。お互いに譲らず、一進一退の痺れる攻防。*2こんなに緊張したのは、居城の一階の階段にバリアを被せてしまったことを配下から責められた時以来じゃったな。
ともあれ、負けは負け。落とし穴に落ちていくわしを尻目に勇者がゴールの扉を開くのを見届けると、すぐに勝者を出迎える観衆の輪に加わった。
吹きならされるファンファーレ。
渡される豪華景品。
人々の喜悦の声。 ああ、空が!空が!!
奇運喜栄・・・!
圧倒的祝福・・・!!
ああ、空がこんなにも眩しい。空でさえ勇者を祝福しておる―――
うん?
体から
チカラが
抜けて―――
≪そらの うえのほうで なにかが とじたような おとが した!≫
急ぎ勇者とすごろく場を出ると、やはりというか。この世界から闇が晴れておった。
何故だ!?勇者はここに居る!!
誰が・・・誰が闇を払った!?
誰が〝
そそくさと物陰に移動していく勇者を尻目に、わしは魔の島の居城に転移を行った―――
・・・ちょっとしたネタ晴らしをば。
お気づきの通り、ゾーマの城でオルテガが滅ぼしたのはゾーマではありません。
ゾーマが倒されたと認識(誤認)していたのは、実はアレルだけです。
過去の話を見てもらえばわかると思うのですが、実は誰も「ゾーマが倒された」とは話していないんですよね。
これからゾーマはどうなってしまうのか。そしてアレルの運命は?
そろそろ
更新頻度はアレですが、見守っていただければ幸いです。