九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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対抗策

「言葉で幾ら言っても分からない事はある物さ」

「それは嘘の言い訳にならねえ」

 

 延々と言い合いを続ける二人を放置し、ZZに通信を繋ぐ。無事だと良いのだが。

 

『そっち大丈夫か?』

『大丈夫! 今二個目のクエスト!』

『帰り遅くなってごめんな。あの人らにも謝って置いてくれ』

『分かった! 兄貴はどんな感じ?』

『まあまあ大変だ。帰るのは……一週間以内には、多分』

 

 最初は軽いお出かけのつもりが、予想以上に大事になってしまった。これでこのまま帰ったら厄介ごとにZZを巻き込んでしまう。解決しないと帰れもしない。

 

『取りあえず、色々気を付けろよ』

『兄貴もな!』

 

 通信を切って、アダムを見る。

 ……まだ言い合いしてるよ。

 

「おいアダム、流石にもう良いだろ」

「黙ってろ。こういうのははっきりさせておかないと後々拗れる」

「後々も何も、あたしとアンタらはこれっきりの関係さ。どうせこの件が片付いたら帰るんだろう?」

「そもそもこの一件で話が拗れそうなんだが」

「また始まった……」

 

 再び言い合い始めた二人に呆れが出てくる。割と忙しいのに何やってるんだ。

 

「……カトラさん、こっちで先に話進めておきましょう」

「良いんですか?」

「アホに付き合ってられないのでッ!?」

 

 後ろから何か飛んで来た。痛ってえ。

 

「……向こうで話しましょうか」

「ですね」

 

 

 

 

 

「向こうがこれから取ってくる手は……まず、分断策でしょうね」

「アダムさんか、アンキさんから引き離されたらバミューダから身を守る手段は無いです」

 

 互いの意見が一致する。俺達二人はバミューダからすれば雑魚、アダム達から引きはがされたらその時点でアウトだ。

 

「何か対策できます? 物理的な物は兎も角、突発で空間転移させられたり感覚を狂わされたりとか……」

「それでしたら、事前に陣を仕込んでおけば。ただ、それでも解析されたりしてしまうと機能しなくなってしまいます。解析妨害を仕込む必要があるのですが……」

「問題があるんですか?」

 

 俺の問いに、カトラさんは可能性ですが、と前置きをして話し始めた。

 

「先ほどのバミューダ程の精度なホムンクルスで作られた分身が何体も作れるとなると、どれだけ強固な解析妨害を仕込んでも総当たりで対処されてしまう可能性があるんです。基本的にこういうのは数が多い方が有利ですから」

「分かってるじゃないか。あいつにそんなのは無駄だよ」

 

 唐突にアンキさんの声が聞こえた。話し合いは終わったのだろうか。

 

「アダム、話し合いは……決着は着いたみたいだな」

 

 明らかに破損の後があるアダムと、ローブに焦げ目を付けたアンキさんを見て結局話し合いでは解決しなかったことを悟る。

 まあそれは兎も角、二人が作戦会議に来てくれるなら心強い。

 

「バミューダの奴が無尽何て言われてるのは単純さ。どれだけでも自分を作れるからだ。一つでもあんたの数十倍位の腕の錬金術師が、億や兆の単位で襲ってくると考えてみな。絶望的だろ?」

 

 カトラさんの顔色が蒼白を越えてなんかもう灰色になって来た。

 ……まあ、俺もそれがどれだけ絶望的かは何となくではあるが分かる。数が多い、というのは相当に厄介な物である。その一つ一つが強い、となると総合的な脅威度はどれだけになる事やら。

 

うち(アンドロメダ)の連中もバミューダ相手だと役立たずだからね。あんたらが来る前に下がらせておいた。その代わり、出来る事はやってもらうよ」

「分かりました」

「了解です」

 

 今頼りになるのはこの人とアダムだけだ。結構な無茶を言われても逆らえはしない。……あんまり無茶を言われたらアダムに逃げるけど。

 

「それじゃ、そっちの坊主。XXXって言ったかい? 解剖させな」

「アダム、ヘルプ!」

 

 

 

 

「先発の私がやられたわ」

「壊晶の力? あの程度の錬金術師に私が崩されるなんて考えられないわ」

「届いた情報だと壊晶ね。けれど、それ以外にも重要な物は有るわ」

「アンキが負けたのでしょう? おまけに生きたままあちらに味方している」

「以前から対立していたけれど……こんな最悪なタイミングで動かなくても」

「そもそも向こうも調和を保つつもりは有るのでしょう? 壊晶なんて見逃すと思えないけれど」

「アンキは自信家よ。壊晶を含めて尚調和を保つ自信があるのでしょうね」

 

 錬金術学会会長室。

 その名前から想像できる限界を遥かに超えた、一つの国の面積にも届く広さの一室で話し声が響く。

 しかし、それらは全て同じ声だ。

 顔も、体格も、服装まで同じ。話す内容以外全て同一な無数の人間が会議を繰り広げていた。

 

「壊晶を作った彼を囲うのは? 理念から外れはしないでしょう?」

「無理よ。幾ら私でも()()から隠し通すのは不可能ね」

「やっぱり丸ごと消すしかない、か」

「あの機械人形……ロボットと言うのかしら、アレは?」

「途方も無い出力よ。銀河を真っ向から焼却してしまいかねないわ」

「攻撃方法は物理的な物? それとももっと謎?」

「当然法則越えはしているのでしょう? それのルールは把握しているの?」

「天導球の外からでは分かる事が少ないわ。直に確認したときにはそもそもそこまでのエネルギーは持っていなかったし」

 

 喧々諤々に全く同じ声が響き渡る光景は、真面な神経の持ち主であれば気が狂ってもおかしくない。

 だが、この場の存在にそんな真っ当な物は居ないのだ。

 

「私以外に頼れるのは? 他二人は論外でも、会員に実力者は居るでしょう?」

「アンキがいる時点で無駄よ。それに、私の問題に他人を巻き込むのも違うでしょう?」

「私の問題でも無いと思うけれど。場合によっては世界が滅ぶのだし」

「知らない人にとっては同じよ。あくまでこれは、私の問題として解決するわ」

 

 異なる意見が少しずつまとまり、結論へ向けて動き出す。会議は、答えを出そうとしていた。

 

 

 同時刻、ランドラス南半球、レイル大砂漠。

 

「Warrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrs!!!!!!!!」

 

 轟いた咆哮は、響いた範囲全てを灰に変えた。

 彷徨う男が攻撃したからだ。

 灰塵 ウォーズ。

 そう呼ばれるこの世界で最も優れた錬金術師の一角。滅亡を司る破壊の権化。

 それは今、湧き上がり滾る破壊をありとあらゆる物にぶつけていた。

 

「Warrrrrrrrrrrrrs!!!!!!」

 

 蹴りは触れた物質を灰に変え、拳は突き立った範囲数キロを灰に。

 万象全てを灰と化す物こそ、ウォーズの極めた錬金術だ。

 大地が、空が、山が、雲が。この世のあらゆる物が灰と化し、崩れ飛ぶ。ウォーズの破壊を防ぐ術は無い。

 狂気の破壊は止まらない。だが、それは彼の最後の理性でもあるのだ。

 

 破壊はただ砂漠でのみ行われている。

 今は正気無く暴れ狂う彼だが、湧き上がる破壊が収まれば取り戻した理知を使い、研究へと戻るのだ。そのために必要な物──世界──が壊れては困る。それこそが彼が砂漠から出ようとしない理由だ。

 だが、今。ゆっくりと彼が移動する。 

 目的は一つ、今まさに起きようとしているこの世界の一大勢力の激突。そこへの、乱入だ。

 

 

「……煩いな。静かにできんのか」

 

 世界のどこでも無い場所で、男とも女ともつかない声が響き渡った。

 発した存在はそこで玉座に座っている。

 何処までも、何処までも完全な存在だ。

 完全に左右対称な顔、体はどちらの性別ともとれ、背にある六色の羽は四元陰陽を司る。

 完全者 カリオストロ。

 そう呼ばれ、恐れられる世界の調停者。

 それが今、起きようとしている激突に目を開けた。

 

 

 

「アダムー、助けてー! マジでやられる!」

「アンキ様、お見逃しを!」

「うだうだ煩いね。黙ってやられな」

「面白いから俺にもやらせろ」

「アダムおいコラテメエ! 何でそっち側なんだよ!!」

 

 絶対いつか復讐してやるからな!?

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