九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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観光

「ふ~む、ここが今の街か」

 

 金の受け取りと天道さんの観光を兼ねて俺たちは街へと向かっていた。金は無いので道中は徒歩。まあこの人の観光という目的には有っているだろう。

 

「アレは何じゃ? やたら大きいが」

「あー、政府の……何だったかな……」

 

 やっべ、分からん。確か割と重要な場所だった気がする。

 

「何で知らねえんだ。三角屋根、今の政府最高意思決定機関だろうが」

「あ、それだ」

 

 完全に忘れていた。この辺来ないからな……。

 そんな間抜けなやり取りをしていた俺たちの頭上を、巨大な飛行物がゆっくりと通り過ぎて行った。運がいい、アレがここに来るとは。

 

「でかいのぉ……あれは何じゃ」

八角大要塞(オクタグラム)……ですね。さっき見たのが政府の機関で、こっちは……軍事の機関です」

 

 いつ見てもでかい。一片千メートルの正八角形が空中を浮遊する様は何とも言えない異様が有る。

 正直、俺とZZは余りいい思い出が無い場所ではあるが……。

 

「かっけーなー、あれ」

「お前凄いな」

 

 あの場所では割と色々あった記憶が有るんだが。

 

「兄貴、人は今を生きるんだぜ」

「お前はもう少し過去を大事にした方が良い気がする」

 

 特に過去を顧みて反省してくれ。マジで。

 まあそんなかなわぬ願いをしている間にも足は止めていないので俺たちはどんどん進んで行く。天道さんは辺りを見渡したりしているがこの辺に珍しい物は余り……あ。

 

「そういや観光地っつったらあれがあったな……」

「何じゃ!」

 

 俺がボソッと口に出した瞬間凄い速度で天道さんが食いついてきた。

 

「いや、ここから二キロくらい行ったところに凄い有名な所が……」

「ならば向かうぞ!」

「あ、ちょっと!」

 

 行ってしまった。場所も何も言っていないのに……。まあかなり目立つ物だから最悪連絡でもしたらいいと思うが。

 

「ただドームの外何だよな……」

 

 俺は溜息を吐いて天を仰ぐ。見えるのは、人工的に再現された青空。

 高さ四万メートル、総面積二百万平方キロメートル。生活用超弩級ガイアコロニー『パンゲア』、それが今俺たちのいる場所だ。

 地球上に数有るコロニーの中でも最大級のサイズと収容人数を誇る超建築物なのだが、広すぎるせいで外縁部の方は修理が行き届かず、頻繁に外から怪物が侵入している。まあそれは俺たちの飯のタネになるし別に不利益が有るわけでも無いが……。

 そしてこのコロニー、むかつく事に俺たちの家を範囲内に含んでいない。おかげでこちとら毒と良く分からん物質が蔓延した上に怪物出歩く外に暮らす羽目になっている。まあいいけど、毒もウイルスも細菌も効かねーし。

 ただもう少し広げてほしい。後俺の家に十キロ程。一々入場手続きをするのがめんどくさい。

 まあこれもZZのおつむと同じようにかなわぬ願いだ。俺はさっさと無駄な思考を放り棄て見つけた換金所に足を進めた。

 

「ZZー、お前アダムと一緒に天道さん探しといてくれー、見つかんなかったら総連絡入れとけ」

「分かったー!」

 

 まあこれで多分大丈夫だろ。さて、お金お金……。

 

 

 

「……ああめんどくさかった……」

 

 換金所で揉めること一時間、無駄に疲れた。

 確かに俺も三千万以上とかいうトンでも金額には驚いたがそれでもそれはしっかり働いた結果で、正当な対価だ。

 それをあの頭の固い頓智気役人め、支払いミスだの換金システムの不具合だの挙句こっちの違法まで疑いやがって……。

 いい加減口座作ろうかな……。身分証明とかめんどくさいけど。死ぬほど。

 

「……てかあいつらどこ行った」

 

 総連絡も使われた様子が無かったし、案外見つけてそのまま行ったのか? ……それはそれで俺が置いて行かれたことになるんだが。

 

「取りあえず連絡入れとくか……」

 

 通信を起動し、アダムに連絡を取る。こういう時ZZは駄目だ。あいつは迷子が常だ。

 

「アダム、今どこだ?」

『遅せえ、一応テメエを待ってまだ塔には行ってねえよ。今は中央の飯屋だ、さっさと来い』

「いや中央て、何処まで行ってんだよ」

 

 中央なんて今いる五番外縁部からじゃ俺でも丸一日かかる。……こいつ等。

 

「ポータル使ったなお前ら」

『そりゃそうだ、こっちは金が有るからな』

「こんなことに態々ポータル使う金は出せねえよ、片道二千だろ、あれ」

『なら908763番のポータルで待ってろ、三分で着く』

 

 そう言ってアダムは通信を切った。

 908763……こっから三分程だな、塔のある場所にも近い。取りあえずさっさと向かおう。

 

 

「おーい、お前らー」

「兄貴―、中央結構楽しかったぞー」

 

 こいつが行けて俺が行けてないのはずるい気がする。

 

「しかし色々あるの、ここは」

 

 大量の土産物に体を覆われた天道さんが言った。……いやどれだけ買ってるんだ。

 

「……天道さん、お金あったんですか?」

「お主の行っておった換金所が向こうにもあっての、そこで適当に色々売ったら小遣いくらいにはなったぞ」

 

 ……換金所の奴は苦労したと思う。

 

「それより、塔とやらは何処じゃ?」

「あ、こっちです」

 

 天道さんを案内しながら目的地に向かう。今の場所からは左程遠くは無い。一分も有れば付くだろう。

 

「ここで一旦退場手続きを……」

「面倒じゃのう、入るときと言い……」

 

 ぶつくさ言いながらも天道さんは大人しく手続きを受けている。俺らは大丈夫だが外の物を持ち込むとまともな人間にはえげつない被害が出てしまう。まあ間違いなく必要だろう。面倒なのに同委はするが。

 

 面倒な手続きを終え、ドームの外に出た俺たちの前に【塔】が姿を現した。

 一見、ただの石でできているようにも見えるそれは、この九十世紀現在の技術を以ってしても一切の傷一つ付ける事が出来ない。解析してみてもこの塔を作っている物質はさっぱり分からないのだ。

 しかし、そんなことはこの塔を実際に見れば全て頭から吹き飛んでしまうだろう。

 高い。只々高い。

 どれほど上を見上げても頂点が見えない。青空に吸い込まれるように聳え立つ、異常な高さの塔がそこにあった。

 

「確か……高度十万キロから異空間に消えてるんだったよな」

「ああ、そうだ」

 

 現在この塔の頂点は判明していない。ZZの言った通り高度十万キロから異空間に埋没しており、調査が出来ていないのだ。

 その異空間の方にも侵入して調べたところ、きっかり十万キロから別の異空間に消えていたらしい。

 ただ、高さに反して太さはそこまでない。精々直径十メートルの円状だ。

 

「おお……凄いのう……」

「……」

 

 天道さんが感嘆の声を上げる。一方、アダムは無言で塔を睨んでいた。

 

「……?」

 

 何かあの塔に有るのだろうか。割と気になる。基本思ったことは直ぐに罵声として吐き出してくるアダムが無言は珍しい。

 

「何か有るのか、あの塔」

「……何も」

 

 ……絶対に何かが有る。が、まあそこまで深く踏み込むことじゃないだろう。実はくだらない理由かもしれないし。

 少しだけ気になることは有ったが取りあえず塔を見ることは出来た。これなら天道さんも満足だろう。そう思って隣を見る。

 

「うむ、ここは良い物が多々有るの! 折角じゃ、暫く滞在して色々と見て回ってみよう!」

 

 ……そこかしこでトラブルが起きる予感がする……。

 

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