九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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試行錯誤

 試す。

 さっきのミサイルは通った。が、その次に試した二重構造の弾丸は纏めて灰になってしまった。

 何が違うのだろうか。

 

「これも駄目!?」

 

 二重で駄目なら五重で、とぶちかました弾丸も纏めて灰になった。

 取りあえず試しまくっているのだが……いまいち法則がつかめない。

 最初に試した戦車内部にミサイルを仕込んだ物は外郭の戦車だけ灰になり、内側のミサイルはウォーズに到達した。

 しかしそれ以降、二層構造の物は攻撃に成功していない。

 

「何が何なんだよ!」

 

 数でのごり押し……視界一杯のバミューダがどんどん灰になっている時点で無駄だと気付けばよかった。

 死角からの攻撃……超反応で対処された。アレに死角は無いらしい。

 実体の無いレーザー……効いたり効かなかったり。どう言う事だ。

 

「うああああ! 何なんだアレは!」

 

 試せば試すだけ訳の分からない答えが返ってくる。同じことをやっても結果が違うのはどういう訳だ!

 こっちも余裕がある訳じゃ無い。迫りくるウォーズからピンクの海を跳ねて逃げ回りつつ、有効な手段を試す……しかし、方法は見つからず距離はどんどんと詰まってくる。

 このままのペースだと五分もしない内に捕まって灰にされてしまうだろう。

 

「どうにか、ならねえのか!」

 

 ミサイルの雨がウォーズに触れる傍から灰に変わる。それを見越して放った数発は直前で起爆し、爆圧で奴の体を押しつぶす。

 ダイヤモンドを押しつぶす程の超圧力が発生したはずだが……ウォーズに何かが起こった様子は無い。例の灰に変える力で防いだのか、それとも単に頑丈なだけなのか、判断が付けられなかった。

 

 半分ヤケクソで攻撃を乱射しまくってみる。普段の俺では到底出来ない物ばかりだ。

 超重力砲、反物質分解、原子解体、ヒッグス場変質、流星式質量弾、恒星核融合、ブラックホール空間断裂、時間加速風化、光収束型極熱砲……どれもこれもゴミのようにぶっ壊された。ええい、化け物め。

 

「この野郎一体どうすりゃいいんだよ!」

 

 何もかも灰になり、桃髪の人型の視界が徐々に灰に塗り替わっていく。ウォーズが、近付いてきているのだ。

 

「バミューダの方も限界は遠そうだしよお!」

 

 アダムと会話してから現在十分後。そろそろ限界が見えてきていた。

 ウォーズに攻撃を加え続けてもまるで効いた様子は無く、バミューダは限界等まるで見せずに増え続ける。どうすれば良いんだ?

 そんな疑問を思い浮かべてもアダムから終了の合図は来ない。出来る事は一つだけ、攻撃だ。

 さっきまでと何も変わらない。兎に角、あらゆる可能性を試して──

 

「通った!?」

 

 一撃が、ウォーズの体に突き立った。

 なぜ? 別に見えていない訳でも、特に奇をてらった攻撃でも無いぞ?

 ……もう一度。

 今度は灰になる。基準は何なんだ?

 試す、灰。試す、灰。試す、攻撃……

 一度、十度、百度……距離が近づけば近づくほど試せる物は増える。しかし、何かを掴むよりもウォーズが俺の目の前に来る方が早かった。

 

「Warrrrrrrrrrrrrrrs!!!!!!!!!!!!!!」

 

 咆哮を阻んだ装甲が崩れ、灰になりかける。ヤバい、コレ、死──

 

 拳が俺へと振るわれる。速い、見えない。だが、何かが認識できる。何だ? こいつは何で攻撃を認識している?

 そもそも灰の条件は? こいつに触れた物? 違う、触れているのは条件の一部だけだ。なら……もしかして?

 

 体に拳が突き立った。威力自体も天体を粉々にする程だが、触れた物が灰になっていく性質が防御さえ機能させない。

 だが、灰は俺の全身には広がって行かない。なぜならその部分は既に切り離したからだ。

 そして、この一瞬。この僅かに一瞬だけ、ウォーズの死角……攻撃していない瞬間が出来る!

 

「うぉぉぉぉぉらあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 絶叫と共に振るったブレードが、ウォーズの脇腹を切り裂いた。

 瞬間、こちらを見たこいつが攻撃してくるのを視界にとらえ、全力で逃げる。

 

「くっそ、まだ生きてんのか!? おまけに何なんだあのイカレ具合は!」

 

 死の間際に気付いた仮説……ウォーズの錬金術は、攻撃した時にしか灰に変えない。

 だが、無数の攻撃を食らった時も、入れ子の罠を仕掛けた時も、アレはそれらを灰に変えていたが……何の事は無い、ウォーズはそれらも攻撃していたのだ。少なくとも、アレはそう認識している筈だ。

 何がどうなれば背中に着弾したミサイルに、背中でミサイルに攻撃した、という頭のおかしい認識を持つことが出来るのかは謎だが、その狂った精神性を除いて法則は大体つかめた。

 ウォーズの錬金術の起動条件は、攻撃だ。咆哮や蹴りの軌跡が広がっていく現象に関しては遠距離に何かを乗せているのだろう。

 そして、破り方……これも単純だ、攻撃させればいい。攻撃している間に攻撃は出来ない。つまり、攻撃中は奴は無防備なのだ。

 

「自分で考えておいてアレだけど無茶だなこれ!」

 

 背後では三百六十度から襲い掛かる無数の錬金術と俺の攻撃が片っ端から灰に変わっている。その全てをウォーズは認識し、攻撃しているのだ。どんな思考回路してんだ!?

 

「ただこれで時間は稼げる!」

 

 いつ攻撃すれば良いのかがよく分かった。無数の攻撃の合間、何かを攻撃している瞬間に、複数同時でこちらの攻撃を叩き込む。

 その考察は目の前で爆発したウォーズの身体が証明した。

 

「っしゃあ!!」

 

 一撃当てるたびに向こうの足が遅くなる、これなら逃げられ──

 

「あいつばかり警戒されても不本意なのだけれど」

 

 足が、掴まれた。

 必然的に動きが止まる。バミューダの群れ……先ほどまで踏みつけて移動していた物が、俺の足を捕らえていた。

 

「っ!」

 

 慌てて振り払い、ウォーズから距離を……

 

「まだまだねえ」

 

 再び、足が止まる。

 何だ!? 何をされた!?

 

 足を見ても特に何も無い。だが、動かないのだ。……ええい、パージ!

 

「あらまあ、体は大事にした方が良いわよ?」

「そっちに言われたくねえ!」

 

 目の前で次々と潰れては灰になり焼け切られ爆ぜる無数の人間を相手に叫ぶ。バミューダは足どころか自分自身もかなり粗末に扱っていた。

 

「Warrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrs!!!!!!!!!!」

 

 轟く咆哮に意識を切り替え、緊急的に加速する。出鱈目に強化された体が少し悲鳴を上げた。クソ、早くしてくれアダム! いくら何でも無理がある!

 残り稼働時間は十五分程、当初のように時間を使いきれない内に死ぬことこそ無いだろうが……刻一刻と限界は近付いていた。

 

「何も無いのなら、ここで終わりだけれども」

 

 斥力の光線と呼ばれたそれが、俺の右腕を吹き飛ばす。だが、痛みより先に修復は完了した。

 それでも一向に余裕は無い。視界に煌めく無数の光線は、全てが致死の攻撃なのだ。

 

「おああああああああ!!!」

 

 走る。走りながら周囲に攻撃を続け数を減らす。一瞬でもタイミングが有れば背後から追って来るウォーズへと攻撃をした。

 稼働時間残り五分。アダムから、合図は無い。

 

「何か隠し玉が有るのかしら?」

 

 トンネルのように俺を覆ったバミューダ達が笑いかけてくる。正直、物凄く怖いから止めて欲しい。

 しかしそんな俺の思考が向こうに通じるはずも無く、俺はミサイルでトンネルをぶち抜いて上に飛んだ。

 残り三分。ここに来て一つの不安が湧きあがる。それは、アダムが対処できない、という物では無くもう対処の時間が無いのでは無いか、だ。

 

「隠し玉は俺が知りたいなあ!」

 

 残り一分、そろそろ何かがヤバい気がする。体中で変な音がずっと鳴っている。

 

「限界みたいね」

「っ! まだもう少し!」

 

 三十秒。手近な所にミサイルを放ちまくる。使える物は全て使え、星、エネルギー、意識……

 一秒。体が軋みを上げた。あ、これ、駄目なやつ……

 

「よお、ご苦労様」

 

 桃色の洪水を吹き飛ばし、アダムが現れた。……は!?

 

「え? お前、何で!?」

「体の修復してたんだよ。まあ、六割って所だが」

「いや、え? じゃあ敵の弱点は!?」

「安心しろ、見つけた。……今から試してやる!」

 

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