九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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世界を創る者、壊す者

 視界が変わる。全てが歪む。

 水面の波紋のような揺らぎはカリオストロを中心に世界へと広がっていく。これは、なんだ!?

 

「拙い! 離れろ!」

 

 俺の体をアダムが蹴り飛ばし、直後、掻き消えた。

 波紋が通り過ぎたとたん、何も無かったように。

 同じようにアンキさんがカトラさんを弾き飛ばし、消えた。

 何が起きた!? 分からない、分からないが……俺らを残させた事には意味がある!

 

「カトラさん! ゲートまで急ぎます!」

「っ! はい!」

 

 空中で彼の手を掴み、ブースターを起動する。波紋の広がりは段々と加速し、俺達へと近づいて来る。

 ゲートに間に合うかは……半分運勝負だ!

 

 残り一キロ、波紋との距離二千二百メートル!

 

「カトラさん! 何か加速できるような物あります!?」

「二秒待って下さい!」

 

 そう叫んで何やら道具に陣を書き始める。しかし二秒か。早い……けど、間に合うか!?

 じりじりと波紋は俺達へと近づいて来る。アレに触れたらどうなるんだ? アダムのように消えてしまうのか……それとも、何も起きないのか。

 ……ZZはどうなる!?

 

『ZZ! そっちで、何か、波紋みたいなの見えるか!?』

『え? 見えねえけど? あと今何かよくわかんない古代都市みたいなとこ来てる!』

『……見えたら全力で逃げてくれ!』

 

 どこに居るか分からない以上、これしか出来る事は無い。……クソ、クソ、クソ!

 

「用意出来ました!」

「っ……お願いします!」

 

 グン、と加速が体に抵抗を加えるが、それも直ぐに収まった。ブースターの出力が急激に増加したのだ。

 残り三十メートルだが、波紋が既に真後ろまで来ている!

 

「おおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 後方に向けて大砲を撃ち、反作用で無理矢理加速してゲートの先へと飛び込んだ。

 地面を数度転がって飛び起き背後を振り返るが、ゲートから波紋が出てくる様子は無い。……一応、助かった、のか?

 

『ZZ! 大丈夫か!?』

『え、うん。何にもないけど? 何だったん?』

『……何も無いなら、良いんだ』

 

 ZZは無事なようだが……だとすると、あの波紋は何なんだ? 

 と、思考を一旦打ち切りゲート突入時に吹っ飛ばされたカトラさんを抱き起す。

 

「大丈夫ですか!?」

「一応は……っと、ここが、XXXさんの世界ですか?」

「そうです。……けど……」

 

 ガヤガヤと周囲が騒がしくなり、四人の制服を纏った人間が現れた。

 憲兵だ。

 ……さて、厄介な事になったが……まあ、言える事を言うだけだな。

 

 

「つまり、許可を取ってからの通行になる筈が、()()が起こって無許可になってしまった、という事で間違いないでしょうか」

「はい」

 

 応答型人工知能による確認に、微塵も揺らぎを含ませない声で返答する。

 向こうのヤバい奴と揉めた、何て言える筈も無いので即興で口裏を合わせているのだが……俺は兎も角、カトラさんが少しまずいかも知れないな。

 一応渡された錬金術道具で連絡が取れる間に取っておいたのだが、取り調べを受けている最中は流石に使えない。交換できた情報だけでどうにか乗り切るしかないのだ。

 

「無許可での通行は異界保護法第十二条一項に違反すると理解しての行為でしょうか?」

「はい」

 

 無機質な白い空間で、それ以上に無機質な声が問いかけてくる。普通だったら委縮してしまうのだろうが……生憎、これ以上に無機質な声を、俺は三千屋敷にて耳にしているのだ。

 

「現状での質疑応答に問題はありません。続いて、異界交通間においての十七時十五分六秒五二の事象ですが……」

 

 何処までも上から目線かつ理不尽な問いが次へと移る。まあ、法律違反なんて普通起きないのだ。人工知能の設定もそこまで吟味されていないのだろう。

 だからこそ、これはあくまでも確認行為。故意かそうでは無いのかという物でしかない。

 故意でさえ無ければどうにでもなる。なにせ、政府からすれば法律違反何て事、起きてはいけないのだから。故意でなければ思想に問題は無いと判断され、直ぐに開放されるだろう。

 さて、質問は後幾つあるのだろうか……

 

 

 

 

 

「……ふむ」

 

 世界の全てを睥睨し、カリオストロは呟いた。

 先程までいたアダムやアンキと言った破壊者は消し去り、バミューダも元の役割へと戻した。ならば、残りは──

 

「Warrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrs!!!!!!!!」

 

 轟く咆哮と共に飛び掛かって来た男を、カリオストロは見もせずに吹き飛ばす。

 全てを灰に変える錬金術も、天体を砕く身体能力も、どちらもカリオストロにとっては考慮するに値しないのだ。

 

「壊晶は消えた筈だが……妙な予感がするな。これはどういう思考の末か……」

 

 吼えるウォーズを一顧だにせず、カリオストロは歩きながら思索を続ける。

 世界の全てを脳内に作り上げる程の思索は、あらゆる可能性を拾い上げ、一つの結論を導いた。

 

「異界に逃げたか。さて、その場合約定をどうするかだが……」

 

 XXX達の世界がゲートを開くにあたり、最初に接触したのがカリオストロだ。

 その際に複数の取り決めを行い、カリオストロは介入しないと言う物も結んでいる。

 だが、壊晶を消し去るためにあの世界に行けばそれらを破る事になるのだ。

 

「再度会談の場を設けるか」

 

 そう言って、カリオストロは姿を消した。後に残るのは、一面を灰が覆いつくした中で崩れ落ちたウォーズの姿。

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

「……もう行ったぞ」

 

 その言葉に呼応するように灰が寄り集まり、小さな星を作りあげる。

 人体と星は相互に干渉する、故に星が有れば身体も戻る。そんな理論の元……消え去った筈の天導球は姿を取り戻した。

 

「……相変わらず恐ろしい奴だ。まさか何も出来ずに消されるなんて」

「復活は出来ているようだが」

 

 ハア、とため息を吐いてアンキはウォーズを指さす。

 

「緊急手段な上に、新しく自分を創るのと同じでね。前の私は完全に消えたのさ」

「そこにいるなら同じだ。それで、例の機械は」

 

 心理的な問題を一切考慮せず言い放つウォーズに、アンキは溜息で答え間を置いた。

 そして、口を開く。

 

「アレなら多分無事だ。元の世界にも自分を残しているだろうしね。

 それとウォーズ、あたしはバミューダじゃ無いんだ。動揺位するさ」

「錬金術師なら動揺は厳禁だろう。赤子でも知っている」

 

 そう言い放ち、ウォーズはその場を立ち去ろうとする。その背に向かってアンキが声を掛けた。

 

「どこ行くんだい?」

「カリオストロだ。今回の裁量には納得がいかん」

 

 そう言い放ち、ウォーズは地を揺るがす衝撃と共に姿を消した。それを見て、溜息一つ。

 

「結局全員自分勝手だ。ま、あたしも前からアイツは気に入らなかったから丁度良いかね」

 

 そう呟いてアンキも姿を消す。

 世界ランドラスにて、致命的な戦いが起ころうとしていた。

 

 

「それでは、質疑応答を終了致します。ご協力、ありがとうございました」

 

 全く感謝しているとは到底思えない合成音声を背後に、取り調べ用の隔離空間を退出する。

 と、どうやら先に出ていたらしいカトラさんの出迎えを受けた。

 

「どうでした? カトラさんの方は」

「どうなんでしょう……ああいった詰問は学会でも受けていたのでそれらしく回答したのですが……」

 

 ……そう言えばこの人しっかり学会とか出てる研究員だったな。俺よりよっぽどしっかりしてるよ。

 

「まあ、解放されたって事は問題無いんですよ」

「それなら大丈夫なんでしょうけど……」

 

 どこか落ち着かなそうにキョロキョロと辺りを見渡している。……まあ、異世界の人だ。見慣れない光景で落ち着かないのは当たり前だろう。

 

「取りあえず、滞在許可を取りに行きます。諸々の問題はそれからですね……」

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