九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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大惨事という言葉では片付けられない何か

 圧倒的な力と呼ぶしかない物が迸る。

 それは宇宙空間さえかき消し、引きちぎる超越的な──余波。

 ただ、放たれた一撃のほんの残滓。

 一閃は次元を、空間を、時間を、宇宙を、何もかもを切り裂いて尚遥かに。

 ゼロエルの振るった剣とは、それ程の物なのだから。

 

 

 

「おーら!」

 

 軽いノリとは裏腹に別に向けられていない俺ですら背筋が凍る馬鹿げた威力の一撃が、666さんの手によって放たれる。

 テンパって無茶苦茶になった説明を直し、再度何をするのかを言った上でカリオストロとの交戦を押し付けた訳だが……今の所、それはゼロエルが一人で担っている。

 と言うのも、バミューダが普通に生きていた上こっちに狙いを定めてきていたので殆どの方達がそちらに矛先を向けたのだ。

 

「そうねえ。数は一級品かしら?」

 

 光の矢が天を覆う程の数でバミューダを射抜く。少し目線をずらせば、圧倒的な暴力の嵐が無数のピンク色を巻き込んで吹き荒れた。

 ……うん。どう見ても過剰だよ、これ。

 

「おい、ZZがどこに居るのか分かったのか? さっさと見つけねえと世界ごと吹っ飛ぶぞ」

「それが位置情報の探索が出来なくて……」

 

 通信こそ繋がっているのだから出来てもおかしくない筈なのだが。そして、肝心の通信からはZZの適当極まる道案内が垂れ流されていた。全く分からん。

 

『何かとんがってる山の麓の洞窟から右行って確か左でちょっと上……下だったかな? それで階段上がって木が生えてた所燃やしたら変なのが出てきて……』

『スマンちょっと一旦黙っててくれ!』

 

 全く要領を得ないZZの道案内を遮り、取りあえず行った場所を虱潰しに探す覚悟を決める。 

 頭上を走った彗星の輝きを無視し、俺達はヤケクソ総当たりへと挑んだ──

 

 

「っ! 一体、何なの!?」

 

 桃髪の女──バミューダ・アロが絶叫する。

 あの機械駆動の少年が戻って来たと思いきやそれは圧倒的な戦力を引き連れての宣戦布告じみた行為だった。

 ただでさえウォーズとアンキの二人がカリオストロに敵対して不安定な世界が、一層大きく揺らぐ。

 

「何であんな子供がこれ程の怪物と!」

 

 纏めて一兆の自分をかき消され、バミューダは吼える。

 新しく来た八人はどれもこれも圧倒的な実力者ばかり。中でも、純白の天使からはカリオストロにさえ届くほどの力を感じていた。

 だからこそ、そんな存在が暴れるのを防がねばならないのだが……

 

「驚いた! あの小僧、ここまで縁があったとは!」

 

 気に入らないの一言で抑えるどころか騒ぎを起こす側に回ったアンキ。そして、理性を取り戻したにも関わらず暴れ続けるウォーズ。

 さしものバミューダでさえこれの対処は不可能だ。

 

「貴方たちもいい加減にして! このままじゃ、本当に世界が!」

「それは良い。カリオストロ(完全馬鹿)の支配する世界なんざぶっ壊れてしまえ!」

 

 かかと落としの衝撃が傘状に広がり触れる全てを灰に変える。ウォーズの行動は先刻の暴走時より遥かに冴え、驚異的な精確さを備えていた。

 

「おや、揉め事かい? そう言う事は終わってからの方が良い」

 

 煌めく稲光が流水の如くにうねり、星々が如くに分かれ、降る。

 シルバリティアから迸る雷光は、一つ一つが大陸さえ容易に砕く程の威力だ。

 

「私は傍観しておいた方が良いかしら? 手を貸して欲しいなら言ってね?」

 

 クスクスと笑うエンヴィーを炎の雨がすり抜けていった。

 夢幻に生きる彼女に、現実は干渉する事すら出来はしない。

 しかし、彼女は一つの懸念と共に宙を見上げるのだ。

 

「まあ、あちらの戦い次第で何もかも変わるでしょうけれど」

 

 

 

 宇宙が舞う。

 圧倒的規模の超巨視的巨大宇宙空間にて、戦いは行われていた。

 

 カリオストロの作り上げる圧縮宇宙弾が億単位でばらまかれ、それを切り裂きながらゼロエルは間合いを詰める。

 一秒間に極単位での交錯が行われ、その度に通常の宇宙であればかき消されるほどの力が余波として爆ぜる。

 ゼロエルの作り上げた天剣は容易にカリオストロの攻撃を、防御を断ちその存在そのものにさえ致命傷を与えるだろう。

 だが、戦局はどちらにも傾かない。

 カリオストロの振るう火は宇宙を億の単位で焼き尽くし、水は瞬時に宇宙を押し流すほどの量を。土は考えうる全ての金属を両者の間ですら即座に出現させ、風は虚無にすら吹き荒れる。

 単に攻撃として使うだけでも恐るべき四元素は、完全たるカリオストロによって圧倒的な錬金術として出力される。

 宇宙が、法則が、常識が、次元が時間が武器が理屈が概念が生命が存在が理知が未来が何もかも溢れ出すがごとく。

 

「あっははははははは!!! 良いな! お前! 死ね!」

「粗野。無駄。干渉すら遠慮したい所だ」

 

 ゼロエルの剣を、カリオストロの剣が受け止めた。

 打ち合い三合、両者の背後で宇宙が裂ける。

 

「まだ足りん! まだ高みがある! 見せてみろよ!」

「不全の化身に見せる物等無い」

 

 つばぜり合いからの蹴り、カリオストロの創った極小宇宙壁に阻まれるが、更に踏み込み無理矢理に打ち抜く。しかし、反撃の斥力がゼロエルの体を数垓光年先まで吹き飛ばした。

 

「っだあ! また距離を取りやがって!」

 

 この程度の距離、二人であれば感覚的な一瞬で詰められる。だが、その程度を惜しむ程戦いは激化していた。

 

 光の大矢がカリオストロの弾幕を押し流す。破壊が概念的に付与された弾幕は、ゼロエルだろうと食らえば相当な損傷だ。

 だが、今その中央に道が出来た。一瞬さえも躊躇せずそこへゼロエルは切り込んで行く。

 当然、カリオストロはそれを防ごうとする。ゼロエルの周囲から無量大数に届こうかと言う膨大な物量の概念弾が迫り、その体をかき消した。

 当然、その程度が対処できない筈はない。

 何事も無かったかの如く破壊の大波から飛び出したゼロエルに一瞬も動揺せずにカリオストロは次なる攻撃を仕掛けた。

 

「出鱈目規模め!」

 

 歩幅が宇宙程もある巨人が、千。一斉に振り下ろされた拳は、見かけのそれさえ遥かに上回る理不尽な威力を秘めていた。

 しかし、それがゼロエルの蹴りに相殺される。

 百三十センチと少しの身長から繰り出されるは、一撃一撃が容易に宇宙を粉砕する驚異的な体術。それに彼女自身の持つ技術を複数加えた威力は、カリオストロの防壁さえ砕いていた。

 

「威力だけは十分だ」

「吠えてろ、負け犬!」

 

 至近距離で繰り出された正拳突きを一切の無駄なく捌き、カリオストロが一歩踏み込んだ。

 一切の躊躇なく、ゼロエルが更に間を詰める。肩が触れる程に密着した二人の狭間で、爆発的な攻撃が交錯した。

 

「っっ!!!!」

 

 肩口から吹き飛んだ右腕を即座に治し、ゼロエルは爆心地に佇んだカリオストロを捉える。

 当然、そちらも無傷では無い。どころかゼロエル以上の損傷をしている。

 だが、吹き飛んだ右半身に視線さえ向けずにカリオストロはゼロエルへと迫りくる。当然、と言わんばかりに迎撃するゼロエルの表情が固まったのは、カリオストロの右半身から圧倒的なエネルギーが迸った時であった。

 

「がっ……! つぅ! どういう理屈だこの野郎!」

 

 既にカリオストロは肉体の修復を終え、元の姿へと戻っている。恐るべきは、ゼロエルからしてもまるで消耗を感じさせないその有様。

 限界からは程遠いとは言え、度重なる激突に傷の治癒、当然ゼロエルだろうと消耗はする。

 だが、カリオストロにはそれが無いようにしか見えなかった。

 

「我とお前では全てが違う。常識など、持ち込むだけ無駄だ」

「あーそうかよ! だったら纏めてミンチにしてやるよ!」

 

 凄絶な笑みを浮かべ、ゼロエルが二振り目の剣を顕現させた。

 例え多元宇宙であろうとも切り裂くこの剣は、間違いなくゼロエルの切札だ。

 そう確信したカリオストロは、自身の段階を一段上げる。完全から、超越へ。

 

「見よ。我は完全。唯一にして全。極小にして極大。火よ、水よ、土よ、風よ、陰に陽に移ろい、我が元に」

 

 無数の宇宙が、カリオストロへ落ちていく。

 重力が空間を歪め、光を捉えるようにカリオストロと言う圧倒的な存在が空間は疎か、概念でさ引き寄せられるほどの莫大な力へと膨れ上がったのだ。

 

「上等! 微塵にバラしてやらぁ!」

 

 掲げられたゼロエルの剣が、見る間に大きさを増す。

 それは、神の威光。その極僅かな片鱗にして、ゼロエルがあらゆるものを組み合わせた混沌の一閃。

 

 両者の視線が交わった直後、今までの全てを嘲笑う異常な力が衝突した。

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