九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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地底の騒動

「一体ここはどこなんだあぁぁぁ!!!!」

 

 最早迷路の如く上下左右に入り乱れた地下通路を走りながら叫ぶ。

 さっきからかなりのペースで泥人形が湧いて来るせいで足を止める事も、引き返す事も出来ていない。何ヶ所もの分かれ道がある場所で、だ。

 

「騒ぐな。同じ場所をループしてる様子はねえ。ここを進んでたらその内あいつの言ってた場所に出る筈だ」

「十分前もそれ言ってたよな! 全くどこにも出る気配が無いんだけど!? と言うかソナー的な奴で道とか分かんねえのか!?」

「喧しいクソボケ。何度か試したに決まってるだろ、頭沸騰してんのか。馬鹿みたいにそう言うののプロテクトが掛かってやがる、音波も電波も直接振動も空間探査も空気滞留も反応無しだ」

「役に立たねえ!」

「あ? 殺すぞ。つーか、身の安全考慮しねえなら壁ぶち抜いて行けばいいんだが? やってやろうか?」

「ZZが安全なら許す!」

 

 この際俺の身の安全等問題にしている場合じゃない。さっきから何と言うか怖気みたいなのがずっとしている。多分ゼロエル対カリオストロの影響だ、このままじゃ絶対ヤバい事になる!

 

「了解!」

 

 ノータイムでアダムが壁を殴りぬいた。その瞬間、周囲一帯が崩落する。

 ええい、覚悟の上だ、待ってろZZー!!!!

 

 

 

「何か増援来た!」

 

 ZZの目の前で地面からゴーレムが湧きあがる。その数、十五体。

 現在いる五体と合わせて計五十体、消耗激しいパーティの現状から見て、絶望的だ。

 しかし、この場の四人に諦めると言う選択肢は存在しない。

 

「一旦そっちを隔離するわ!」

 

 氷の壁が新手のゴーレムと戦っていたゴーレムを分断する。余り持つ物では無いが、戦っている最中に横から襲われる事態は避けた。

 ならば、この三体を手早く倒す。

 

「一人一体だな!」

 

 大上段に振りかぶった剣をゴーレムへ振り下ろし、金属音を響かせる。

 大岩を両断する一撃だが、強靭なゴーレムにはあっさりと受け止められる。

 だがレアスはそれで怯まない。一撃で駄目なら二撃、三撃と大剣を振り回しゴーレムの装甲へ刃を立てていく。

 

「そおおらああああ!!!」

 

 遂に一撃が装甲を貫き、ゴーレムの半ば程まで大剣を食い込ませた。

 しかし、それでもゴーレムは動く。コアを破壊しない限り動きを止めないゴーレムは、大雑把な攻撃を得意とするレアスに取って相性の悪い相手だ。

 一人であれば。

 

「エルミ! 頼んだ!」

「威勢だけは良いんだから!」

 

 迸る電撃が損傷からゴーレムのコアを砕き、その動きを止める。

 最も攻撃力の高い彼にとって、傷を付ける事ならこの程度の相手だろうとそこまで難しい事では無いのだ。

 

 そして、ZZにとってはゴーレムは面倒な相手であった。

 

「攻撃効かねえんだよなー」

 

 その呟きは、双方に向けられた物だ。

 ZZの火力ではゴーレムの装甲を貫き、コアを破壊することは難しい。その一方で、物理攻撃しかしてこないゴーレムもまた、粒子状のZZに攻撃を加えられない。

 互いに相性不利となる相手だが……ZZは一つの覚悟を決め、浮かんでいたアイデアを実行に移す。

 

「よし、行くぞフルアーマーおれ!」

 

 自分の形を整え、武器と鎧を作り出す。その代償に粒子となるには時間が必要になるが、それを補って十分な強度はある、とZZは判断した。

 まるで中世の重装騎士のようになったZZが、ゴーレム目掛けて駆ける。

 右手には体躯程の大槍、左手には体を隠す大楯。

 振りかぶったゴーレムの拳が大楯に衝突し、低い金属音を響かせた。

 ZZにダメージは、無い。

 

「案外良い!」

 

 次にZZは槍を突きだし、ゴーレムへと攻撃を仕掛ける。

 それは先程までの物とは違い、明確にゴーレムの装甲を傷つけた。

 

「行けるぜ!」

 

 至近距離でゴーレムの攻撃を防ぎ、誰のサポートも無しにダメージを加える。

 それはZZにとっても新鮮な感覚であり、それ故に動きはどんどんと大胆な物になって行った。

 普通であれば反撃を貰いかねない危険な状況だが……ZZに限って言えば、躊躇の無い踏み込みは、強味となりうる。

 

「そりゃー!!」

 

 掛け声と共に全体重を乗せた突きを放ち、ゴーレムのコアを貫く。

 動きを止めたゴーレムを前に、一拍の余裕が出来たZZが隣を見れば、レアスとエルミが協力して一体を破壊した所であった。

 

 

「さーて、どうするか」

 

 ロドムは目の前のゴーレムを前に笑う。

 彼の拳であれば一撃の元にコアを打ち抜き破壊することが出来るが…‥それは、ゴーレムが隙を見せている時のみ。仲間のサポートが無ければそんな状況等無い。

 

「っと」

 

 振るわれたゴーレムの拳を余裕をもって避ける。その隙に切り返せれば良いのだが、生憎生物ならざるゴーレムにそんな常識的な隙は存在しない。

 それ故に彼は一つの賭けに出た。

 

「……」

 

 待つ。

 出来るだけ用意をして。

 腰を落とし、右足を一歩後ろへ。右手は腰だめに、左手は肘から曲げ、顔の前で拳を掲げている。

 通常、戦闘中に相手がこのような構えを取れば何らかの罠だと警戒するが……ゴーレムにそれは無い。

 無機質にプログラムに沿って、拳を振り下ろし……そのコアが打ち抜かれた。

 

「ったあ! やれば出来る物だ!」

 

 拳の直撃する瞬間にその威力を体に受け流し、逆に攻撃として撃ち放つ。完全なカウンターの一つだが、当然実戦で成功させるのはまず不可能。

 だが、攻撃のタイミングの分かりやすいゴーレムならば成功する可能性は高く……彼は、賭けに勝った。

 辺りを見渡せば、ZZとレアスも戦いを終えた所である。

 

 直後、氷の防壁が破れ、ゴーレムの群れがなだれ込んできた。

 

「よし! 気合入れろ!」

「おー!」

「っしゃあ!」

「無茶はしないでね!」

 

 

 

 額から汗が流れ落ちる。

 それが目に入り激痛をもたらすが、その程度に構わずイフラマは作業を行い続けた。

 糸を投げて針の穴に通すような精密極まる錬金術。それでも、この水晶本体を攻略するより遥かにマシだ。

 そもそもこの錬金術自体が異様な程高度に作られている。単に、横の水晶が読み解く事さえ不可能な程隔絶しているだけだ。

 創り上げた回路に魔力を流し、それが水晶に干渉していない事を確かめて更に気を張る。

 一瞬でも油断をすれば、その瞬間にミスをしてしまうだろう。

 そんな状況にあって尚、彼の脳内には一つの疑問が渦巻いていた。

 

(一体、誰がこの水晶を作ったんだ?)

 

 水晶内部に浮かぶ錬成陣は完全な真円を描き、刻まれた術式は何一つ読み解けない。

 都市全体にゴーレムを配備し、動かすと言う驚異的極まる錬金術を前にして尚、それを子供の落書きのように感じてしまう異常極まる完成度。

 

(……もしや、あの伝説のカリオストロ様が?)

 

 感じた疑問、それへの回答、推論。それらを頭の片隅で行いながら、彼の手は一切の乱れも無く、微塵の迷いも無い。彼にとってその思索は、無意識的な物だからだ。

 そして、並列思考も終わりを迎える。

 

(ここが最後……!)

 

 ピキン、と頭の中で音が鳴り、水晶の錬成陣からゴーレムの錬成陣が切り離される。

 それは、防御を水晶に任せていた故か意外な程何も対策を取っておらず、上から線を引くだけで封殺できてしまった。

 

「……これで、終わったのか?」

 

 ゴーレムの錬成陣は破壊した、水晶に動きは無い。

 にも拘らず、イフラマの胸中に安心は無い。

 

「……嫌な予感がする」

 

 今まで見て来た物の中にその正体は無い。この都市で見えていた物は全て対処した。だから、それは単なる勘だ。

 余りにもあっさりしているという、ただの勘。

 だがそれこそが時に重要になる。

 彼は、外の仲間たちの元へと駆け出した。

 

 

「っ! 何だ!?」

 

 全てのゴーレムが一様に倒れ、イフラマがそれを停止させたのだと気付き喜んだのもつかの間、戦っていた四人を振動が襲った。

 彼らは知らない、外で尋常を遥かに超える異常な戦いが行われている事を。

 彼らは知らない、それにも関わらず自分達が無事だった理由を、ゴーレム制御の陣に含まれていた都市防御の術式が成していた事を。

 

 イフラマが外の状況を知っていれば、都市防御の陣を残して機能を止めさせただろう。

 だが、今の状況で外の事など知りようが無い。

 

 結果として……地下都市は急激な崩落を始めた。

 

「全員! 上に逃げろ!」

 

 判断は素早く的確に。何が起きたかの確認と退避を兼ねた指示は、空洞諸共叩き潰される状況変化に余りにも無力であった。

 

 瓦礫が降る。

 一つ一つが家よりも大きい。

 地面が割れる。

 地割れの底は見えなかった。

 

 全員の脳裏に、死が浮かんだ。

 

「間に合ったあああああああああああああああああ!!!!!」

 

 直後、ZZの体を力強い腕が抱えた。

 

 

 

「えーい何事だ畜生!」

 

 アダムが壁を殴りぬいて進んで行った瞬間、一面が一気に崩れた。

 と思ったら下で崩落に巻き込まれていたZZを発見。取りあえずアダム、プラマイマイナスだ!

 

「兄貴! どこ行ってたん?」

「こっちのセリフだ!!」

 

 兎に角崩落しまくる地面を離れ、空に逃げる。……視界の端で今まさにその崩落に呑まれようとしている人たちが見えた。

 

「だー! どういう状況だよ!」

 

 降り注ぐ瓦礫を縫い、三人を担ぐ。

 重くは無いが……バランスがちょっと怪しいぞこれ!?

 

「兄貴、後一人いる!」

「はあ!? どこだよ!?」

 

 まずいぞこんな状況でそんな事言われてももう助けに

 

「ここだ」

「アダムナイス!」

「ナイス! 後で覚えてろ!」

 

 アダムの助けた人を良く見れば、先日ZZがお世話になりに行った人たちの一人だ。当たり前か。

 

「取りあえず一旦上に行くぞ! 話はそれからな!」

 

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