九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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過去─XXX(1)

「一番の回路を接続、二から十八までは維持、十九から百七十までは再改良。百七十一からは新設し……」

 

 流れ続ける言葉を他人事のように聞き流す。()()()()()()()()()()

 とはいえこの研究所に拾われて以来俺の体は自分の物では無くなった。なら、他人事のような物だろう。

 そこまで考えてようやく無数の改造が施されている体に意識を向ける。目線の先ではもう到底生身等残って居ない体に、更に新しい何かが取り付けられようとしていた。

 ルキシア研究所にて、俺が拾われてから三年後の事だった。

 

 

 そもそもアイギスだか何だかの戦争で俺が放り出され、コロニー外での毒素で死にかけていた所を拾ったと言うのだから、この研究所は命の恩人になる筈なのだが……この様子を見ていると何一つ感謝の気持ちは湧いてこない。

 寧ろ、自作自演さえ疑えてしまう。それ程ここは色々と何かが外れていた。

 

「実験体XXXの様子はどうだ」

「所長」

 

 開いた扉から姿を見せたのは、この研究所の所長──そして、俺の体を改造した張本人な博士でもある。

 

 カツカツと靴音を響かせた博士がこちらへと歩みより、手術台の上の俺を覗き込んだ。

 

「XXX。気分はどうだね」

「……良くも悪くも無いです」

 

 これはかなり正直な所だ。全身弄られているのは事実だが、麻酔が優秀なのか意識がはっきりしているのに苦痛等は全く感じない。

 とはいえ当然いい気分では無い。なので、どちらでも無いと答えるしかないのだ。

 

「ふむ、苦痛等は感じていない様子だ。結構」

 

 そう言って博士は扉から出て行った。……何をしに来たんだ?

 

 そんな俺の疑問は当然答えられることなく体の改造は滞りなく進み、三十分もした頃には体の生身は一層少なくなっていた。

 

「今回組み込んだ物は脳信号の伝達速度を向上させる目的で使われている。試しに、右腕を変形させてみたまえ」

 

 形状は問わない、と言われ俺は右腕に意識を向ける。

 ……思いついた物は、剣。まあ、これも頻繁にこの形にしていたと言うだけなのだが。

 

 ガシャン、と音を立てて右腕の肘から先が切れ味の鋭そうな剣に変わった。ギラギラと光る様子はそれが無機物であることを鮮明に伝えている。

 

「どうだ。何か、以前と比べて変化はあるか?」

「……いえ、分かりません」

 

 前の実験の時と同じにしか感じない。特に早くなったようにも思わないが……

 

「ふむ。0.0092秒の短縮を観測しているが……意識上では察知出来ていないと。成程」

 

 ……どうやら早くはなっていたらしい。とはいえ、別に訓練を受けた訳でも無い、ただの戦争で身元を無くしただけの人間がそんな物感知できる訳も無い。

 

「君、ウェルズムス薬剤を彼に投与したまえ、私は件と実験機の方に行かなくてはならない」

「了解しました」

 

 そう言って博士は部屋を出て行った。

 その直後、体に何かが流れ込む感覚がし、瞬間周囲の時間が一気に遅くなった。

 

「こ……れは……?」

「一時的に意識を引き延ばしているだけだ、心配無い。それでは、五号の変形を行え」

「……了解しました」

 

 引き延ばされた時間間隔の中でも特に変わらず響いた研究員の声に従い、五号……重装近接戦闘装甲の展開を行っていく。

 普段と違い、意識を向けてからそこが変わるまで妙なズレがある。余り気分のいいものじゃない。

 とはいえ、言われた以上はやらなければならない。生きるにはそれが良いのだから。

 

 

「……博士、コレは……」

「お前の兄弟機だ。必要な事は教えておくと良い」

 

 ……それだけ言って博士は部屋を出て行った。

 どうすれば良いんだ? こんなの。

 銀……というか白髪。それをかなり短く切りそろえた坊主頭。身長は俺より低くて百五十センチ程。年齢も俺より下だろう。

 しかしまあ間抜けな顔をした奴だ。ポカーンと開いたままの口がそれに拍車を掛けている。

 

「あー……名前はあるか?」

 

 取りあえず真っ先に聞くのはそれだ。無いと呼びづらい。まあ、あの博士達なら何か付けているだろう。

 

「ZZ!」

「ZZね」

 

 ……本格的に俺の兄弟機だな。いや、XとZて。間にYが要る……もしかしたらYも既に作られているのか? まあ良い、言われた事をして行こう。

 

「それじゃあ、まず行動方針と存在意義、それと実験に置いて必要な事を一つづつ」

「はい! 行動方針は……えーと……あー……アレだ! 人員への研究協力!」

「……次は」

「え? 次?」

「存在意義!」

 

 どうしよう、何だコイツ、物凄く駄目な気配がする。

 こんなのに何を教えるんだ? 一から十まで全部教え続けても半分も入ってそうに無いぞコイツ。

 

「存在意義は……確か……美味しいごはん!」

「何でそうなる! 馬鹿か! 研究成就だ!」

 

 何と言うか、ちょっと会話しているだけで頭が痛くなってきた。あんまりにも酷い。

 確かにこの行動方針に存在意義は研究所内部出身でも無い限り吞み込める物では無いだろうが、それにしても取り繕う事位は出来て欲しい。この会話も当然聞かれているだろうし。

 

「……じゃあ次、実験で必要な事は」

「全面戦争!」

「……博士、コイツ手に負えませんよ」

 

 実際の答えは全面協力。言われた事は上位権限者の命令に違反していない限り実行しなくてはならない。その点で言うとコイツは落第どころか廃棄処分を食らってもおかしくない。

 いや、もしかして外に出たくて廃棄を待っているのか? 俺も最初の頃はそんな考えをしていたが……ここの廃棄は、解体再利用と何も変わらないぞ?

 

「……あー、外に出たくて無茶苦茶言ってるなら無駄だ。基本使えないのは組み替えられて再利用されるぞ」

「へ? 外? 外とかあるの?」

「……お前研究所出身か!?」

 

 この頭で!? 博士は何考えてるんだ!?

 

 その後も何度か会話を行い、この間抜けに対して幾つかの事が分かった。

 一つは、出身は研究所だという事。わざわざこんなポンコツを作り上げた理由がさっぱり分からない。まあそれを言い出すと生体改造にこだわっているあの博士の思考が既に理解できないが。どう考えてもロボットの方が良いだろ、五歳児でも知ってるぞ。

 もう一つは、作られてから半年経ってない事。最低限を学習させられたらしい……到底最低限には見えない。もっと、こう、必要な事があるだろ!?

 

「……これ、もしかして俺のテストも兼ねてるのか?」

 

 流石に意味なくこんな馬鹿を押し付けられるのは考えにくい。となると、俺がどれだけ今の状況と必要な事を理解していて、それを教えられるのかのテストをしていると考えた方が良い。

 つまり、コイツは俺のテストの為にわざわざ作られたと言う事だ。そう考えるとちょっとはまあ可愛げが……無いな、ムカつく位間抜けな顔だ。

 

「……取りあえず、一から全部言って行くぞ。分かんない所はその場で聞いてくれ」

「分かった!」

 

 その後、二個言う度に前言った事を聞いてくるZZにブチ切れる羽目になった。何なんだコイツは……

 

 

 

 ZZが割り当てられて二日目。

 相変わらず頓珍漢な理解力で無茶苦茶言ってくるコイツをどうにか対処しながら日々の生活を続けていく。

 色々酷い。特に集中力が無く興味が有る物を見ると勝手にそっちへ行ってしまう。まともに教えられる気がしない。……テスト、不合格だったら廃棄とかは無いよな?

 

 三日目。

 驚いた事に俺だけでなくZZも何かの実験を割り当てられているらしい。テスト用に作られたのでは無かったようだ。

 つまり、俺の行動の重要性が増した事になる。……そう思っても心が折れそうだ。

 

 四日目。

 余りのポンコツぶりに切れて叩き出してしまった。……テスト的には間違いなく悪影響だろう。

 ただ、それを考慮しても部屋に入れてやるつもりは無い。週に一回のデザートは俺の楽しみなのだ。勝手に食いやがって。

 

 五日目。

 しきりに外の事を教えてくれと言ってくるので知っている事を簡単に教えておいた。残念ながら捨て子な上に戦争のごたごたでコロニーから放り出された俺に知っている事は少ない。

 精々、今の年代……九十世紀という事と、幾つかの常識位だ。それも相当ズレていると思うが。

 

 六日目。

 勝手に外の事を教えたにもかかわらず博士からの接触は無し。まあ記憶の一つや二つ自由に出来るのだろう。取りあえず聞かれた事は答える。相変わらず物覚えが悪い。

 そのくせ施設内部の事については俺より詳しい事もあった。どんな都合の悪い脳みそだ。

 

 七日目。

 遂に一週間が経過。ようやく博士が来たと思ったら何と継続を伝えて来た。もう限界何ですけど!?

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