九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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過去─XXX(5)

「っ、どういう事だ!?」

 

 さっきまで居た位置にZZがいない。

 そして、YYYYは俺の視野の外……では無く全然違う場所にいた。腹に開いた穴は直ぐに修復…‥と言うか粒子状になれるので単純な物理攻撃は余り聞かないようだ。

 だからといって、何一つ楽観できる相手では無い。

 

「兄貴! コイツ自分以外も転移させれる!」

 

 それを食らった当人だからか、直ぐにそれに気付いたZZの言葉。そして俺自身相手の能力に臍を噛む。

 何という厄介な。

 インターバルこそ長いようだが、用意に攻略できる力じゃない。

 ……しかし、そうなると少し疑問が湧く。俺達を転移させられるなら地面の下なり鉄の塊の中なり脱出困難な場所に移動させてしまえば良いはずだ。

 それをしないとなると……何らかの制限が掛かっている、のか?

 分からない。だが、そう仮定するしか攻略の目は見えてこない。

 

「っせい!」

 

 今度の攻撃は普通に躱される。そこにZZが殴り掛かるが、YYYYはあっさりと片手で受け止めた。

 俺の蹴りはもう一方の手で止められ、それを軸に反対の足で蹴りを入れたが……YYYYが姿を消す。

 また転移だ。

 今度はZZと入れ替わるような事は無く、普通に移動しただけのようだが……面倒なタイプだ。

 単なる戦闘力だけでも俺と並ぶ。加えて転移が向こうの戦法の幅を広げまくっている。おまけにこっちは即席の連携、二人がかりでもまるで攻めきれない。

 なら、どうする?

 連携を即席じゃなくすればいい!

 

「ZZ! 動きに合わせてくれ!」

「分かったどうやるの!?」

「見て判断!」

「分かった!」

 

 それでいいのかと言いたくなるがまあうん、素直なのは良い事だ。そっちの方がやりやすいのは間違いないし。

 初撃は蹴り、相手は上体を逸らして躱す。そこに飛びつくZZ。

 追撃しようと思っていた俺は妨害された形になるが……それなら別の方法を取れば良い。

 

「らぁ!!」

 

 YYYYの頭部へしがみ付いたZZを避けて槍を突きとおす。相手も腕を挟んで防いでくるが、ダメージはしっかりと通った。

 ZZに俺に合わせろ、と言うのはまず無理だろう。だが、俺がZZに合わせるのなら比較的楽だ。

 なぜならZZの行動は分かりやすい。特に戦闘の経験も無いと言っていたのに嘘は無く、見事なまでに全ての攻撃が大振りな上直線的。傍から見ているだけでもどこを狙っているのか凄く分かりやすい。

 

「せりゃー!」

「フッ!」

 

 ZZのタックルに合わせて後ろから銃撃を放つ。正面のZZを弾いたYYYYは、飛んで来た弾丸を捌けない。

 そして、そろそろ時間だ。

 奇声を上げて殴り掛かったZZの一撃を不動で受け、そこに俺の攻撃が迫り……YYYYが転移、同時に俺は攻撃を止めた。

 

「わっ、たった!」

「……取りあえず、対応はコレでいい、と」

 

 ついさっきまでYYYYの居た場所に移動させられたZZ。その寸前で攻撃を止めたまま、出現したYYYYに目線を向ける。

 タネが割れれば簡単だ。

 転移のインターバルは一分程、その間は攻め立てて過ぎたら慎重になれば良い。

 余りにもあっさりとした対策方だが……この機体、どうにも極単純な行動しか取れていないのだ。

 局所的な行動は正確無比だが、全体……行動のパターンが雑過ぎる。今のも、転送能力を保ったまま戦い続けて使用タイミングを攪乱すれば俺達は攻めあぐねていただろう。

 そんな簡単な事も出来ていない……つまり、コイツは反応するだけの機械だ。

 

「……ZZ、一気に行くぞ」

「え、うん。分かった!」

 

 疑問を挟まず直ぐに動き出したZZが頼もしい。俺は不安で足を踏み出すのすらちょっと苦しいのに。

 こんな場面で原始的な行動しか取れない機械を持ち出した意味は? 向こうの余裕が無くて時間稼ぎに骨董品を繰り出した……と考えられれば良いのだが。

 間違いなく博士はこっちの予想を超えてくる。質の悪い形で。

 

「兄貴上!」

「おおっ!」

 

 半回転して上に振り上げた足が強襲してきたYYYYの一撃と相殺する。

 一瞬、相対したどちらもが硬直した。

 そこへ躊躇い無くドロップキックを撃ち込んだZZが避けられて壁に突っ込んだ隙に右腕を砲台に変え、至近距離で砲撃を撃つ。

 爆発音に混じって聞こえた軋音は、明確なダメージを示していた。

 

「まだ行けるか!?」

「百回は行けるぜ!」

 

 突撃は止めない。なぜなら、どんなパターンでも時間を掛けるのはまずいから。

 例えば目の前の敵が苦し紛れの一手なら、時間を掛けると新たな手を打たれるかも知れない。

 例えば罠だったら、直ぐに突破しなければならないが、転移は到底無視できない。

 相手の予定通りの手段であれば、急いで倒して余力を残さなければいけない。

 どう考えてもYYYYとの交戦は避けれず、急いで撃破するという結論に至る。なら、それを突き詰めるしかない。

 

「ぬうん!」

 

 頭突きが空ぶった。一分経過、場所は──そこ!

 

 バキン、と軽い音が響き変形させたブレードがYYYYの体を両断した。

 見るからにぶっ壊れているが……警戒は解かない。最大限に注意を払いながら距離を取って進み、視界から消えた所でようやく警戒を解いて音速移動へと移行した。

 

「……今どこまで対応されている?」

 

 逃走の開始から()()()。この研究所の対応能力なら十分にこっちへと戦力を向けて来ていてもおかしくない頃だ。

 当然、俺が最大限に警戒している行為も。

 

 走る。相も変わらず無機質な通路。ゴールは見えないまま、何処までも続いているようにしか見えない。

 だが、確かにそれは視界に入った。

 

「……階段?」

 

 上りの階段が、廊下の先から続いていた。

 何となく確信する、この先が出口だと。

 

「……行くぞ」

「うん」

 

 限界まで警戒しながら一歩目を踏み出し──背後から圧倒的な力に吹き飛ばされた。

 

「兄貴!?」

「逃げろ!」

 

 背後のZZへと叫び、攻撃の主へと視線を向け…‥そこに、YYYYが居た。

 

「……さっきのは本体じゃ無かったって事か」

 

 あの弱さも合点がいく、と呟いた瞬間に脳内へ通信が響いた。

 

『いや、アレも本体だ。生憎この機体は研究所の防衛を任せていてね、そちらのシステムからの切り替えに時間がかかるので、この機体の性質を使って攻撃システムだけをそちらに映させたが』

 

 リソース不足で時間稼ぎにしかならなかったが、と呟く博士の口調には焦りのよな物は一切なく……言外に、この機体……真のYYYYこそが本命だと告げていた。

 

『それでは戦闘開始だ。直ぐに負けるような真似はしない事を期待しよう』

 

 その言葉が終わった瞬間、YYYYが消失した。

 転移、それもさっきの個体より早──

 

「ガッ!?」

 

 見えない。完全な死角からの一撃。さっきの奴とは完全に違う。

 消えた瞬間死角を潰すように動いたが、それを更に反撃で返されたのだ。

 

「っー!」

 

 一撃、二撃。

 振るったブレードは間断なく転移を繰り返すYYYYの前に空を切り、向こうの攻撃は防御も回避も潜り抜け、追い、突き刺さる。

 ケタが違う。

 強すぎる。

 無数の無理が脳内に浮かび──それでも、と足を踏み出した。

 ZZは俺を兄貴と言う。俺が兄に相応しいとは思えない。

 だが、だからこそ。せめて出来る事位はしてやらないと──

 

「グッ──」

 

 こちらの攻撃をあっさりと避けて放たれた一撃が、俺の顔面を撃ちぬく。

 視界がブレる。意識が揺れた。……だけどまだ生きている。

 

「おおおお!!!!」

 

 絶叫を上げてブレードを振るい、砲撃を乱射する。一発でも当たれと祈りながら。

 だが現実は無慈悲だ。

 破片の一つに至るまで完璧に回避し、YYYYは俺の眼前へと接近した。

 

「──ぁ」

 

 衝撃が、体内を暴れ狂う。

 

 

 つまり、ここだ。

 

「くぅぅぅたぁぁぁぁばぁぁぁぁれぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

 零距離、攻撃を食らいながらの反撃。

 胴体が軋みを上げる、体の一部が脱落する、苦痛は意識を刈り取ろうとし、衝撃が体を引きはがそうとする。

 その全てに逆らって、一撃。

 右腕を丸ごと爆弾に変え、叩きつける完全自爆攻撃。

 それは俺の体を吹き飛ばし、YYYYを反対の壁に叩きつけた。

 

「……ざまあみろ」

 

 もう体は動かない。というか、下半身が千切れている。

 普段なら直ぐ修復するが、エネルギーの殆どを逃走と今の一撃で使い果たした。そして、その成果は──

 

『ふむ、上々。制御人工知能無しでここまで戦うとは。やはりお前は見込みがある』

 

 脳内へ流れた音声に合わせるように、YYYYが立ち上がる。その体には目立った損傷も無く、動きを見るからにその所感は正しいようだ。

 

『しかし残念ながらYYYYは空間制御を主目的とした機体だ。単なる転移だけを打ち破ったのは素晴らしいが……YYYY本来の機能からすれば一割も使っていないだろう』

 

 見るといい。そう言った博士の言葉に合わせてYYYYの周囲が変質する。

 何が変わったのかは分からない。見た目に何一つ変化は無いのだ。

 だが、確実に、何かが違う。そう断言していい何かがあった。

 

『空間の制御。それは時間の制御にもつながり……ひいては法則の制御ともなる。今YYYYの周囲直径一メートルはこの宇宙とは別の法則が働いているのだよ。

 今の法則は敵意の禁止、単純だがそれ故強力だ。抗おうとは考えない方が良い』

 

 一歩、一歩とYYYYが近づいて来る。駄目だ、止めろ──

 

 

 

 

 

 

「はっ、はっ……」

 

 階段を全速力でZZは()()()()()

 彼は信じている、兄と慕うXXXが勝つ事を。同時に、それが非常に不安だと言う事も理解していた。

 そこで彼はその援護をしようと途中で思い立ち進んだ道を戻っていたのだが……如何せん遅すぎ、弱すぎる。

 

 パチン、と電流が弾けるような音と共に現れたYYYYが彼の眼前に出現した。視界の先には、うつ伏せで

倒れたXXX。

 反射的にZZは殴り掛かるが、無造作な蹴りがその体を吹き飛ばした。

 

『さて、逃走劇は終了だな。即興にしてはよくやったとも』

 

 倒れ伏すZZへ無感動な声が響く。

 YYYYがその体を掴み上げ、元の場所へ転移を行おうとし──そこへ、砲撃が撃ち込まれた。

 

『まだ意識があったのか』

 

 ボロボロの体を引きずり、ゆっくりと近寄るXXX。それに向けて傷一つ無いYYYYが右腕を掲げた。

 直後、YYYYの右腕が切断される。

 

『……起動エネルギー不足、損傷甚大、一時的に外部命令を拒否、事前命令を実行……戦闘用サイボーグXXX、戦闘を開始します』

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