買ったヘッドセットを頭に取り付け、ゲーム開始の用意をする。今頃はZZも俺と同じく布団に寝転がっているはずだ。
「えっと、これを繋いで……これは……ここか?」
普通の人なら単にかぶって終わりらしいが、生憎俺ら二人はサイボーグ、こういうのを取り付けるのには色々面倒な操作が有る。
一応俺の方は脳だけは生身だが、それでも脳の電気信号は外から測定も介入も出来ないようになっている。
おかげで色々と頭に配線を繋がないとこういう意識だけで操作するゲームはできないのだ。
「……そういやあいつできてんのか?」
特に何も言わずに買ったもん持って部屋に行ったせいで忘れていたが、結構めんどくさいこれをZZができるとは思えない。
なんかもうこんがらがった配線の山に絡まっている姿が見えてくる。
これはちょっと見に行った方が良いな。
「おーい、大丈夫か」
「え、何が?」
部屋に入って見えたのはありとあらゆる配線を出鱈目に頭につないだZZの姿だった。
「え? いや、それ、え?」
「兄貴~忘れたのか~、おれは……何だっけ、あれ」
「……ナノマシン」
「そう! そのなんとかマンの集合体だぜ! こんな配線どこにでも繫げるぞ!」
あー、そういやこいつこんなだったな……何かずるい。
まあ、心配事が無くなったのは良い事か。
あいつが大丈夫という事で俺は自分の部屋に戻って配線を繋いでいた。
ええいめんどくさい。
「これは多分ここだよな……」
自分の体の取扱説明書が欲しい。多分探せば世界のどっかにはまだ有ると思う。
「兄貴ー、まだー?」
「うっせー、もうちょっと待ってろ」
多分これで最後だっろっと!
ピコン、と音がして頭に何かつながった感覚が有った。成功だ。
「おーい、出来たぞー!」
「おっけー、先行ってまっとくー」
あ、一緒に始めるとかじゃねえのな。
『ようこそ、プレイヤーXXX様』
取りあえず何とかヘッドセットを付けた俺に聞こえてきたのはそんな声だった。人の声ではない、が違和感を感じるような物でもない。
正確な合成音声だ。
『何をなされますか?』
「えっと……取りあえずゲームを……」
『WORLD本編ですね、了解いたしました。十五歳以上指定、十八歳以上指定、どちらになされますか?』
……随分しっかりしたAIだな。
今時このくらいの物は珍しくもないとはいえ、ゲーム一つにこんないい物を使うとは。
『お言葉ですが、WORLDはゲームだけに展開してはおりません』
え、思考読まれたんだけど。
『申し訳ありません、ただ、脳活動に関してはこちらが全て把握させていただいております。考えは筒抜けですので、ご了承ください』
いや、良いけども。アダムとかいるし。
『ご了承いただけましたので続きを。WORLDは現在、教育、知育、ショッピング、育児、娯楽、健康、運動など様々な用途に使用されています。そのため、使用されているAIも最上級の物となっています。
決して、高が一ゲームでは御座いません』
……このAI結構めんどくさい性格だな。と言うかゲームで運動ってどうやんの。没入型とはいえ体動かす感覚位しか分からないと思うけど。
『運動に付いては別売りの生態信号パットをお使いになれば、ゲーム内の負荷に応じた刺激を安全な範囲で肉体に与えることができます。
現在、お値段は三百WLとなっております。購入なされますか?』
「いや、大丈夫です、要りません』
サイボーグの体の何を鍛えろと。
『了承いたしました、購入はしないという事でよろしいですね。
では、当初の目的であるWORLDのプレイを。
十五歳以上指定、十八歳以上指定、どちらになされますか?』
……どう違うんだろう。
『十五歳以上指定は、所謂一般的な没入型MMORPGとなっております。レベル制、マルチジョブシステム、痛覚緩和有、リアルマネー換金無。
一方、十八歳以上指定は上述に変更し、痛覚緩和無、リアルマネー換金有、加えて月二千の接続料が必要となっております。
初心者のお客様には十五歳以上指定をおすすめいたしますが……いかがいたしますか?』
「……リアルマネー?」
え、このゲーム金稼げるの? ならそっちに……
『十八歳以上指定は完全な無法地帯となっております。初心者狩りは日常茶飯事、知識の無い方は必ず食い物にされ、XXX様が踏み入れば五分と経たずにキル数が三桁に届くでしょう』
何それ恐い。そんなんでゲームとして成立……いや、しない方が良いのか。
ギャンブルと同じだ、儲けるのは運営。この場合、人が離れてプレイ人口が減っててくれた方が良い。それなら換金しようとするやつも減るんだろう。
「じゃあ、取りあえず十五の方で……」
『御了承致しました。それではスタートチュートリアルを開始いたします。こちら、スキップも可能ですがいかがいたしますか?』
「全部聞きます」
こういうのは聞いておいた方が良い。……ZZ辺りは全く聞かずに突っ込んでそうだな。あいつの方が遥かに無鉄砲だ。
『了解しました、スキップは途中からでも可能です』
音声が終了した瞬間、意識がどこかに引っ張られるような感覚が俺を襲う。とはいってもそこまで不快な感覚ではない。どこか不思議な感覚だ。
そこで目の前に映像が出来上がってくる。どうやら始まったようだ。