九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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研究所ルキシア

 轟音。

 最初にアダムの撃ちこんだ砲撃が研究所の外壁を破壊する。

 次に天道さんが金棒を振るって出て来た兵器の群れを粉微塵に。

 更に極さんが生成した氷が研究所を空間的に凍り付かせて逃走を阻止。

 最後にエンヴィーさんが周囲一帯の空間を変質させて駄目押しで離脱を阻止。

 僅か一秒で行われた連携であの研究所は丸ごと封じられてしまった。

 

「ま、見つかりゃこんなもんだ。ゼロエルが発見してそっから逃げたっつう情報があるなら場所は絞れたしな」

「……これもう決着ついてねえか?」

 

 散々悩んでいたのが馬鹿らしく思える程あっけなく研究所は大惨事になっている。本当にアダムからすれば発見が最大の問題だったようだ。

 まあ、それ以外にもトンデモない人が三人もいるのが大きいが。

 

「コレで終わりなら楽なんだがな。生憎まだまだ向こうはやる気だ」

 

 アダムがそう言った瞬間、目の前の空間が揺らぎ人型が出現した。

 その姿には見覚えがある。

 

「YYYY!」

「お出ましか」

 

 アダムが速攻で攻撃の構えを取る。五年前であれば俺よりかなり強い、程度だった。当然アダム何て相手に出来る存在では無い。それをここで出してたという事は……恐らく、かなり改良されている。

 

「!」

 

 その予想は的中したようで、まるで目に追えない速度でYYYYが消失したと思いきやアダムの正面へ移動し一撃を叩き込んだ。

 が、そんな物でどうにかなるアダムでは無いし……この場所にはそいつと同等かそれ以上の人達が後三人居る。

 

「ちょっと離れてろ!」

 

 アダムから声が飛び、それに従って距離を取る。

 本来、俺はこんな場所に踏み込める実力は無い。だが、アダムが研究所に突入し、天道さんと極さんも付いて行き、エンヴィーさんも一緒に行くとなると……俺らが放置されてしまう。

 ZZは紅の里に預けて守って貰っているが……場合によっては俺越しに攻勢プログラムを動かす必要が有るため、どうしても俺だけはアダムの近くにいないといけないとの事だ。

 その理屈は分かるし、ZZの安全の為なら結構な事は我慢する。ただ、正直に言うなら今からでも引き返して苺さん達にかくまって欲しい。

 

「アダムちょっと配慮してくれ!」

「黙れ」

 

 抗議はその一言で切り捨てられた。

 無茶を言っているのは分かるが……目の前を即死の光線が通り過ぎるのはヒヤヒヤする。

 と言うか来ていたらアダム達の戦いに巻き込まれて来なかったら守りも無しに放りだされるのは色々極端だし詰んでいる。

 

「っ! 一応対処はこっちでもしてみるけどなあ! 俺じゃ限界あるぞ!」

 

 こっちに群がって来た兵器を早々に一機叩き壊し、残りを見据える。

 その数……万単位? 馬鹿じゃねえの。

 さっき壊した一機も全力でぶん殴ってようやくだ。こんなの全部は無理である。

 

「せい!」

 

 そう思っていると纏めて全部天道さんが薙ぎ払った。とてもありがたい。

 

「ありがとうございます!」

「何、礼は言わんで良い! それより、気を付けておけ!」

 

 こっちも余裕はそこまで無いからの、と言って天道さんが新しく出現した何かへ向けて金棒を振り下ろす。

 それは……俺のような雰囲気を感じた。

 

『雑兵ではあるが、一機一機が強い。薙ぎ払うのもひと手間だな』

 

 極さんが冷気の大嵐を振りまくが、新手の人型兵器の群れは瞬時に変形を繰り返し、前衛が盾となりそれを防いでしまった。

 とはいえこの人達程の存在からすれば今の物等何度でも打てる。だが、一撃とは言えやろうと思えば簡単に天体を砕く人達の攻撃を、耐えたのだ。

 

 ……多分、こいつ等は俺の後継機。もっと言うならば、完成系だろう。

 俺に搭載された戦闘用の補助人工知能を超える判断能力と、肉体スペック。それが量産される。

 今の地球のどの国もあっさり攻め落とせるだろうし、対アイギスに持ち込めば大幅に戦線を押し上げるだろう。

 それ程の物を以てしても、この人達相手には足止め以上の機能を発揮していないが。

 

「アホ共ゴミの群れにどれだけ時間かけてんだ!」

 

 アダムがYYYYを蹴り飛ばし、その隙に人型の群れへミサイルの雨あられを打ち込む。

 

「歯ごたえのある相手じゃ! そう安々といかん!」

 

 笑いながら叫ぶ天道さんが金棒を振るって兵器を砕く竜巻を作り。

 

『私では有効打になり辛い連中だ』

 

 氷の大渦が相手を砕きながら極さんはそんな事を言い。

 

「魔界に一機持ち帰ろうかしら?」

 

 ふわふわと漂うエンヴィーさんには攻撃こそしていないが、その体を無数の銃弾に熱線がすり抜けていた。当然、この人は無傷だ。

 

 さて、決着が着くのは時間の問題だろうが……その時まで俺が生きている保証は全く無い。

 今ゴミのように蹴散らされている兵器も俺の後継機と考えると当然俺より強い。万が一にでもこっちに向かって来られたら終わりだ。

 

「……こっちに来てくれるなよ?」

 

 ボソッと漏らした呟きは現状への不安が現れていた。

 

 

 

「どうしても引き渡してはくれませんか?」

「うーん、無理。千桜の頼みでもそれは駄目」

 

 空間に開いた穴越しに千桜とリオは会話を繰り広げる。

 千桜四石は紅の里に預けられたZZを引き渡すよう要求し、紅リオはそれを拒む。

 互いに顔見知りであり友人だとも思っている二人ではあるが……どちらも一切譲る気は無い。

 

「彼が生きていると世界が滅びますので。私はもう少し生きていたい」

「それでも頼まれたし。色々恩のある人に。だから無理」

「……世界が滅んでも、ですか?」

「そうだね。これを投げ出すようじゃ世界なんて滅んだ方が良いよ」

 

 ハア、と千桜が溜息を吐く。

 頭に手を当てて頭痛を堪えるような仕草を見せると、背後へと手を動かした。

 

「それでは強奪していきます」

「よし、分かりやすい!」

 

 新たに、三体の怪物が出現する。

 一体は蛇の下半身に女の上半身、肩からは三対の腕が生え、そこには剣、勾玉、鏡が一対ずつ握られていた。

 一体は女。まるで人間と変わらぬ見た目だが……リオは反射的にそれが人間で無いと理解した。それほどまでに、禍々しい。

 一体は顔を多数の御札に覆われた死装束の女。袖から覗く腕には五寸釘が突き刺さり、ゆらゆらと動く様は不可思議な程の非現実感に満ちていた。

 一体ずつでさえリオですら勝てるか怪しい相手。それが三体、千桜の指示で動く。

 極めて苦しい局面だと理解していたが……それでも彼女は怯まない。

 

「しゃあ!」

 

 握りしめた拳を打ち合わせ、咆える。

 そこには一切の恐れも委縮も無く、ただ戦いを見据えた戦士が居た。

 

 その足が、止まる。

 降り注ぐは星。重力が、熱が、リオの足を無理矢理に止めた。

 

「アレに真っ向から行く気かい? 無茶は言うんじゃ無いよ」

「アンキ! こういうのは正面から突っ込むのが礼儀でしょ!」

「優先はあの小僧を守る事だろう。間違えるな」

 

 小さな惑星に腰かけた三角帽子をかぶった女。天導の錬金術師たるキティラ・アンキが苦言を呈する。

 

「アレはどう考えてもまともな相手じゃ無いよ。正面作戦では出来る物も出来なくなる」

「人の親友悪く言って欲しく無いんですけど……まあ、正面からはちょっと厳しいのは」

「なら、私に援護させな」

 

 そう言い放つや否や周囲一帯が宇宙のような空間に変わる。その中に見える星々は、全てアンキの手足のように動くのだ。

 

「さて、やろうか」

 

 降り注ぐ星雨、それらを足場にして動くリオ。

 一つ一つが地球並みの天体の洪水と、それと比較しても遜色無き闘いの化身。

 それを見据えて、溜息一つ。

 

「……ま、偶には喧嘩も良い物ですね」

「あんた、友人とか居たの」

「千桜の友達とか初めて見た! 殺そ」

「合」

 

 三者三様の怪物が蠢く。それを指揮するは埒外の頭脳。

 世界の命運を左右するもう一つの戦いが幕を開けた。

 

 

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