「……こんなもんで良いのか?」
「良いんじゃね?」
運び込んだ荷を並べ、問題が無いか確認する。
見た所特に違和感は無く、各種設備も問題なく稼働しているが……何分コロニー外に住んでいたのが殆どな為、中で何が必要なのかが余り分かっていない。
調べれば簡単に出て来はしたが……それでも少々不安になってしまう。
先日、アダムから正式な仕事を始めないかと言われた俺は一も二も無くその話に飛びつき、その結果ある仕事を任された。
それがこの……
「何でも屋……本当にコレ正式な仕事か?」
どちらかと言うとコロニー外ギリギリの放棄区画辺りに蔓延っていそうな物だが……アダム曰く、政府から公認を受けた正式な職業との事だ。
「何でもいいじゃん! カッコいいんだから」
「流石にそれだけで人生押し通せねえぞ……」
例の宵闇との会話に変な影響を受けたのか、ZZは妙に格好良さを意識するようになった。だとしてもその鎖は何だ。何でネックレスみたいにしてんだコイツ。
……まあいいや、その内飽きるだろう。今はそれよりも確認することが有る。
届いた書類──このご時世に紙の情報なんてどれだけ重要扱いされているのか──を開けば、俺達の就く仕事の内容が事細かに書かれている。
要約すれば……「客」の依頼をこなせ、と言う物だ。
「お客さんだって喜ぶって!」
「センス云々の問題じゃ無い……」
当たり前だが、ここに来るのは真っ当な客では無い。
俺達が今後の人生でどう足掻いても引き寄せてしまう超越的な存在への対応及び対処。そして可能であれば対アイギスへの戦力として加入してもらう。
政府から渡された書類には概ねそう書かれていた。
「よお。準備出来たか」
「多分な。……これで良いのか?」
アダムに見せた部屋の内装。対面する二つのソファとその間の机。部屋の隅には本棚が置かれ何冊かの本──ZZが漫画とかを入れている──が。カーペットは落ち着いた赤と白の模様を派手過ぎないように、部屋の端には給水機が据え付けられている。
「まあ大丈夫だろ。外れた連中程調度品なんて気にしねえしな」
「汚れとかは対策してるんだよな?」
「まあな。お前のバズーカ位ならどれも無傷だぞ」
「それは汚れの次元なのか?」
過剰にも思える耐久性を有した品々に呆れ……直後に来るであろう客を思い浮かべてその程度では役にも立たないであろう事にたどり着き口元を引きつらせた。
アダムやら天道さん辺りが暴れれば部屋どころか星がヤバいのだ。今更ながらそんな連中が関わってくるだろう事に頭を押さえる。
「どうした、生きてる事に後悔でもしたか?」
「何でそんな物騒な事にしてくるんだよ」
単に今後を考えたら凄い頭痛がしただけだ。
……と、一つ聞きたい事があった。今の内に聞いておこう。
「なあ、何で何でも屋なんだ? もう少しいい名前有ったんじゃねえのか?」
対応所……と言うものでなくとも、相談所、とかその辺の方が相応しい気がするんだが……
「名前にそこまで意味は無えな。ぶっちゃけお前らが居るだけで引き寄せられるだろうし……強いて言うならインパクトが強いだろ? どうせ来るんなら印象に残してさっさと呼び込んだ方が良い」
「……体の良い囮みたいだな」
そう口にしてみた物の、実際の所はみたい、では無く完全に囮なのだろう。
俺達より交渉事が上手い奴もいるだろうし、実際に相手をするのはそう言う人達だ。俺達は精々が撒餌である。
まあ、正直な所真面目にあんな人達の相手をするのは御免なので押し付けられるなら丁度良いのだが。
「一応普通……イカレた連中じゃねえまともな奴らも来る筈だがな。お前らの収入源はそっちになると思うぜ? 超越的な奴らが真っ当な貨幣経済の内に入るとも思えねえしな」
「……そういや天道さんとか金持ってるのか?」
アダムの言葉を聞いていてちょっと不安になって来たんだが。あの人通貨の概念を理解していたかもちょっと不安だぞ?
「安心しろ。極と合わせて買い物は全部政府持ちだ」
「それは大丈夫なのか……?」
流石に無茶苦茶な買い物はしないと思うが……いっつも飲んだくれていた出所は分かった気がする。
「で、話は戻るが……そこにも書かれてるが元々お前らに超越相手の接客なんて期待してねえよ。来た連中にお前らが相手してる内に政府共が何やら対処する。お前らはまあ、連中の頼みを普通に聞いてりゃいい」
「普通にねえ……」
普通じゃない人達の頼みが普通とは到底思えない。天体とか訳分らん希少物質とか要求されても何も出来ねえぞ。
「一応連中もそこまで馬鹿じゃねえ筈だ。……と言うか、多分だがそもそも真面目に悩んでここに来る奴の方が少ないだろうしな」
「……まあ天道さんとかが真面目に悩んでるなら俺で対処できる気はしないな」
ああいう人達が悩む事に俺らが関わっても何も出来ないだろう。悩みを増やす事さえ難しいだろうし。
「という訳で十中八九ここに来る奴らはお前らを見に来るだろうな。依頼も悪ふざけみたいなのが殆どだろ」
おっと囮どころか見世物扱いだ。
……いや待てよ? 囮より見世物の方が大事にされるんじゃ無いか? だとするとそこまで悪い訳でもなさそうだな……
「乗り気で何より。それじゃ、さっさと準備しろよ。客の一号が待ってるぜ」
「それを速く言え!」
アダムの言葉に慌てて内装の点検を行う。ZZ、見て無いで手伝え!
さて、どたばたと用意を完了させるまでに五分。出迎えたお客さん第一号とは……
「酒が無くなったんじゃが」
「酒屋にお願いします」
天道さんであった。
何でも酒が無くなり持っていたタブレットに酒を注文しても出てこなくなったという事でここに来たらしいが……いやタブレットに注文して出なくなったんなら残高切れ……アレでも天道さんの財布は実質政府……どういう事だ?
「アダム、どういう事だ?」
「あー……在庫が切れてるな、コレ」
「在庫が?」
このご時世で限定品でも無い限り在庫切れ等まず無い筈だ。それともそんな常識を超えた量を飲んだのだろうか。
そう思って天道さんを見ていると何だか普段より顔の色が白いような……これ酒を飲んでないから顔の色が戻ってるな。
「在庫って……そんなに飲んだんですか?」
「飲んどらん。ちょっとニ十樽程度じゃ」
全くちょっとでは無いと言う点は置いといて……その位で在庫切れ、と言うのはまずあり得ない。と言うか世の中にどれだけ酒が有ると思ってるんだ。その全部がニ十樽で無くなる筈も無いだろうし……
「兄貴―、何か色々注文とか止まってるー」
「……マジで?」
ZZの言葉に端末を確認すれば……ほぼ全ての商品の在庫が片端から切れていた。
あり得るのか? こんな事。
製造ラインが全て破壊されたとしてもこんな急に……と言うかこれ、割とまずい状況じゃ……
突如、外から爆発音が響いた。
「テロでも起きたか? まあ緊急事態だろうしな」
「のんびりしてられる状況じゃ無いぞ……」
端末からの注文は今の生活におけるライフラインその物だ。何が原因にせよそれが止まったのなら、間違いなく途轍も無い事になる。
「……まあ何でもよいが、私の酒はどうなるんじゃ?」
「……僕達が解決しなきゃ駄目ですかね?」
「看板に書いておるじゃろ、何でも屋と」
真顔で言ってきた天道さんの言葉に巨大な溜息を吐きかけ、堪える。一応とは言えお客さんの前だ。
「兄貴ー、何かネットでアイギスがどうとか」
「ZZそう言う情報は信じるな。……それじゃあ、この一件どうにかしてみます」
そう言って天道さんに親指を立てる。解決できる目処も、見込みも無い。が、そんな物今までと同じだ。成り行きで流されていただけの今までと違い、こちらから踏み込む事になっただけで。
ZZを見れば既にわくわくしているのか目が輝いている。いつもの様子に、ふと口からため息がこぼれ出た。
「……危なくなったらしっかり逃げろよ?」
「分かった!」
そう言って、俺達は新たな
これにて完結です。
皆さま、長い間ありがとうございました。