「で、兄貴、何やってたの」
「見ての通り迷子中だ」
飛び出してきたZZを抑え、座り込んで互いの状況を報告する。とはいえ、互いに似たような状況なせいで特に知らせることもない。しいて言うなら……
「ZZ、お前今何レベル?」
「え、652」
ZZの身体能力で652。……ううん、ちょっと思ったより俺はとんでもない事になってそうだ。
実を言うと、そもそも俺のレベル999には違和感があった。なにせ999だ、後一レベルで1000、そんなちょっと惜しい所で都合よく止まるのだろうか、と。
そう思って見てみると、レベルの横に『現在レベル上限に到達しています。レベル解放クエストに挑戦し、レベル上限を解放してください』と書かれていた。
どうやら上限に引っかかっているだけで、実際の俺のレベルはもう少し高いようだ。……少し怖くなってきたな。
「俺は今本当の力が出ていないのかもしれない……」
「何言ってんだ兄貴」
ZZからツッコミを入れられるが実際そうなんだから仕方無い。
「あ、そういや、遠距離会話ってスキル今なら登録できるな。ZZ、それ取れるか?」
「え? どれ?」
「検索欄に通信って入れたら出てくるはずだ」
「これ?」
「それ」
後は登録だが、このボタンで良いのか?
「おっ」
「兄貴、何か登録って出た」
「それ押したら離れてても話できるぞ、多分」
ただ、二人合流している今は何の効果も無い。離れる予定も無いし。
「何にせよ、誰か人に会いたいな。何をするゲームなのかすら分からん」
「おれは一人あったぞ」
「マジか、何処だ?」
「兄貴」
「くたばれ」
余りにもふざけた事を言うZZに中指を立て、先へと歩き出す。いい加減何もない原っぱ以外のものも見てみたいものだ。
「……原っぱ……じゃあないな、うん」
今俺の目の前には呆れる程高い山がそびえている。地図で確認すると、ここから先は山岳地帯の様だ。
「登るか、穴を掘るか……」
ここから先に進む方法としてはその二つだろう。普通に考えたら登る一択なのだが、山の上あたりに何匹かモンスターがいるのが見えた。安全を取るなら穴を掘って進んで行くことになるだろう。
「ZZ、どうする?」
「え、何が」
聞こえてきた声が妙に遠い……あのやろ既に登ってやがった。……まあいいか、ゲームだし。
「んじゃ俺も登るか……いや、待てよ」
このゲームを始めた時から有る事が気になっている。今の俺の体はどこまでできるのか、だ。それを試してみるいい機会だろう。
「普段はこうやって……あ、できた」
何時もの感覚と何ら変わることなく、俺は空へと浮かび上がっていた。眼下には山道を走るZZが見えている。
「おーい、先行ってるぞー」
「あ、兄貴ずるい! 俺も飛ばせろー」
「お前も多分できるだろー」
「できねーよ、おれ今人間やってるからー」
「え、マジで?」
起動を変え、ZZの場所に降りる。
「お前人間にしたのか。変化なさ過ぎて分かんなかった」
「良く見ろよ、普段と違って肌が……かわんない」
「お前も分かってねーじゃねーか」
「いやでも、体動かす感覚とか全然違うんだぜ。おれ暫く出た場所で転げ回ってたもん」
……そんなに違うのか? 生身の体だった記憶が殆ど無いせいで判別がつかない。
「そんなんだったら俺も人間にしとけばよかったかもな。面白そうだし」
「兄貴じゃ一生転がってるだけだろー」
「俺を何だと思ってるんだ」
一応お前より生身だった時間は長いんだぞ、俺。
「んで、どーするよ。どうしても飛びたいって言うなら連れて行ってやるけど」
「じゃそれで」
そう言ってZZが俺の背にしがみつく。……そこかよ。出来れば吊り下がる形にしてほしかった。思ったよりも不安定なので降ろしたい。
「ZZ、やっぱ歩かねえか? それかせめて吊り下がるか」
「ヤダ」
ええい仕方がない、取りあえず落下はしないように気を付けよう。
「出発!」
「おわああああああ!!」
うん。案の定バランスが狂って大変な事になった。今明らかに逆さまになってるし。
「兄貴ー! これ絶対まずいって!」
「ちょっと静かにしてくれ! 集中してるから!」
今が前に半回転してるからもう少し後ろに重心向けて左右を制御しながら頭が上向くように……
「兄貴ー、気持ち悪い、酔った」
「我慢しろ! こっちも余裕が無い!」
姿勢はまともになったが前後の揺れが酷い。吐きそう。
「くっそ、アホ一人乗せただけでこれか!」
「兄貴ー、兄貴ー、何か来てる、鳥みたいな奴!」
「ふざけんな!」
ここで襲ってくんのかよ、くそったれ!
「おいZZ、一旦離すぞ」
「無茶言うなよ! おれ今飛べねえって!」
「心配すんな、おら!」
「ああああああああああぁぁぁぁぁぁ……」
渾身の力でZZを上空にぶん投げる。あれなら一分程落ちてこないだろう。
「次はてめえだあぁぁぁぁ!!」
拳を目の前の巨鳥に叩きつける。相変わらず大した手ごたえも無いまま、鳥はあっさりと消え去った。
「……ぁぁぁぁあああああああああ!!!!!」
「よっと」
そして振って来たZZをひっつかむ。これで良し。
「兄貴ー、ぶっ飛ばされた時に見えたんだけどさー、山の向こうに何かあるぜー」
「本当か?」
ここに来てやっと新展開か。ただ原っぱを進むだけの退屈な時間は終わりだ!
「後この山めっちゃ高い。上がるとき殆ど山しか見えなかった」
「……取りあえず、あれだ。吐くなよ」