九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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ゲームの世界で(3)

「兄貴ー、まだー」

「うっせぇ、ちょっと黙ってろ」

 

 飛び始めて10分。ZZを担いだ状態での飛行にも慣れ、ようやく安定し始めた所でZZが煩くなった。

 やれ酔っただの暇だの飽きただのアクロバット飛行をしろなど何度もこいつを下に落とそうと思うような事を言ってくる。

 

「お前俺の機嫌もそろそろヤバいぞ」

「つまりまだ大丈夫って事だろ」

 

 叩き落すぞこの野郎。駄目だ、こいつと話してるとストレスがマッハだ。無視してさっさと上に行こう。

 

「それでもまあ、高いんだよなぁ」

 

 そこそこの速度で飛んでいるが、まだ山頂には届いていない。

 ZZが一分程滞空したときの到達点が大体四千メートル。向こう側が見えたらしいので、山の高さは多分三千メートル台だろう。

 距離だけなら割とすぐ着きそうな物だが、十分の内ほとんどは姿勢制御に費やしていた。とはいえ、もう速度は安定している。左程時間も無く山頂に着くだろう。

 

「お、見えた」

 

 ようやく見えた山頂は、多少雪が積もっている以外大して変哲の無い場所であった。

 

「何か思ったより何もねーな。ZZ、見えた奴ってどっちだ?」

「あっち」

 

 ZZの指さす方向へ視線を向け、麓を見下ろす。そこには塔がそびえ立っていた。

 

「相当高いな。千メートル近いぞ」

「兄貴―、どうする? 取りあえず攻撃してみるか?」

「攻撃って……いや、案外良いかも」

 

 アレが何なのかは分からないが、建造物である以上内部に入ることは出来るはずだ。とはいえ何があるかは分からない。なら、一発攻撃して向こうの反応を見るのも方法の一つだろう。ここなら反撃されても大丈夫だろうし。

 

「よし、一発ぶっ放してみるか」

「いぇーい、行けー!」

「お前もなんかやれや」

「え、俺今生身になってるし」

「何か出来ねえの」

「今持ってるの服と……これ」

 

 ZZが取り出したのはそこらに転がってそうな棒切れであった。使えねーなこいつ。

 

「仕方ない、俺がやるからお前は余計な事するなよ」

「分かった」

 

 大人しく下がったZZから視線を外し、眼下の塔に照準を合わせる。

 回路接続、エネルギー充填開始、砲身構築開始、姿勢固定、対象指定……

 

 色々な機能が次々に起動し、砲撃の用意が進んで行く。そこで、俺の脳裏に疑問が浮かんだ。

 普段と変わらない。

 余りにも普段の俺の体と変わりが無い。ある程度まではサイボーグ共通の作りという事で納得もできるが、公開されていない兵器面まで感覚が変わらないと言うのはどういう事だ。

 

 ルキシア。

 

 浮かんだ疑問に一つの単語が反応する。俺の体の詳細な作りなんてあの研究所しか知らないはずだ。

 だが、既にあそこは消滅している。政府に加え、アダムまでしっかりとそう断言した。俺の体の情報が出回るはずはないのだが……

 

「おっと、終わったか」

 

 色々と考えている内に発射の用意は整っていた。正直、今色々と考えても何にもならない。難しい事はこの休暇が終わってから考えよう。

 

「発射四秒前、三、二、一 ……発射!!」

 

 途轍もない轟音に眩い閃光、それを伴い巨砲は放たれた。

 音を彼方へ置き去りにする程の速度で突き進むエネルギーの弾丸は、帯状の残光を残し塔へと突き立つ。

 その瞬間、砲撃時のそれすら小さく思える程の轟音と閃光が迸り、大爆発が巻き起こった。

 塔の中腹に大穴が開き、周囲へ瓦礫が舞い落ちる。恐ろしいほどの破壊抗するため、塔より多数の影が現れた。

 

 

「兄貴ー、塔にでっけえ穴開いた!」

「知ってる。んで今何かがわらわら出てきたのも知ってる」

 

 アダムだの天道さんだのの規模を知っていると小さく見えるが、結構な規模の破壊を塔に起こしている。

 するとまあ、中にいた連中なのか良く分からない奴らがわらわらと出てきていた。

 

「兄貴、上から撃てねーの?」

「エネルギーが割とめんどくさい。もうちょい待て」

 

 一気に使ったエネルギーが回復するまである程度の時間がいる。まあ、この高さならアレが来るまでに十分動けるようになっているだろう。

 

「兄貴ー、何か塔傾いてない?」

「あ、ほんとだ。てかアレ、どんどん崩れて……」

「「あ」」

 

 俺とZZの声が重なった瞬間、地響きを立てながら塔が崩壊した。わらわらいた連中を巻き込んで。

 

「あー、アレは駄目だな」

「だめだなー」

 

 見事な塔は瓦礫の山となっている。あれでは何か居たとしても生き埋めだろう。

 

「これゲームじゃ無かったらヤバかったな」

「ゲームで良かった」

 

 ……あの塔が誰かの作った物じゃ無い事を祈ろう。そうだったらゲームでも多分不味い。

 

「兄貴ー、瓦礫の山に何かある!」

「何があるんだ?」

「何かキラキラしたやつ」

「?」

 

 見てみるが、特にそんなものは無い。俺の方が大分目が良いはずなんだが。

 

「あ、これスキルだ。何か特定のアイテムだけ見えてるみたい」

「へえ、そんなの有るのか。どんなアイテムが見えてるんだ?」

「えーっと……レア度が一定以上のやつ」

「つまり?」

「今おれが見えてる二十個くらいのキラキラは全部希少品」

 

 その言葉を皮切りに、俺とZZは同時に塔へ向けて走り出した。

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