九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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ゲームの世界で(5)

「兄貴ー、兄貴―」

 

 何処をどう歩いても全く変わらぬ景色を、ZZは進み続ける。

 碌に下調べもせずにゲームを始めた二人は預かり知らぬことではあるが、このゲームは現実の地球と地形がリンクしており、初期スポーン地点に現実のプレイヤーの座標を参照すると言う設定がある。

 気に入らなければ解除もできるこの設定だが、大多数のプレイヤーは解除しようとはしない。

 何故なら、九十世紀現在において地球に残る人類は基本的にコロニー暮らしだ。そのため、必然的に大多数のプレイヤーはこのゲームで既に開拓された、便利な場所にスポーンする。

 しかし、XXXとZZの住んでいる場所はコロニーの外、かなりの僻地だ。このゲームの開拓地域とそこそこの距離がある上、二人が進んでいるのは真反対。今現在十億を超えるWORLDプレイヤーの()()全員が未探索の地域へと二人は踏み込もうとしていた。

 

「兄貴ー、マジでどこー!」

 

 現在、ZZが迷っている森林は数少ない探索プレイヤーから迷宮のあだ名が付けられた場所だ。

 四方に百キロ近く広がる広大な森林地帯のほぼ全てが同じような作りになっている上、どの木々も再生力が高く傷などで目印を作る事も難しい。

 極めつけは、マップなどでも現在地が分からないと言う極悪仕様。敵こそ弱いが、迂闊に踏み込めば出られなくなる恐るべき場所へ、ZZは踏み込んでしまったのだ。

 

「兄貴ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

 延々と絶叫するZZだが、その声は木々に吸い込まれるばかり。当然、XXXには届かない。

 やがて吠え疲れたのか、ZZがその場に座り込む。

 

「ぜー、はー、くっそう、全部兄貴のせいだ。……どうしよ」

 

 ZZはどうするかを考えるが、いい案が浮かばない。走り回ってもここを抜けられないのは理解しているし、兄に声が届かない事もわかった。

 

「……上!」

 

 その結果、ZZはこの森での一つの最適解にたどり着く。即ち、上方。視界を遮る木々も、同じ作りの迷いも無い場所である。

 

「せいのっ」

 

 木に手を掛け、シャカシャカと虫の様に登って行く。中々の高さがある木だが、ZZのステータスであれば苦も無く登りきることができる。

 

「……どっこも木ばっか」

 

 視界360度どこを見渡しても森ばかり。何とか森で無い所を見つけようとZZは見渡すが、無常である。

 

「ダメだなー。何かこう、高さが足りない」

 

 どうにかこうにか木の無い所を探そうと、ZZは木の頂上で背を伸ばす。

 しかし、どれ程背を伸ばしても見えるのは木ばかり。次第にZZも諦め……と言うより飽きが来始めた。

 

「んー、もうめんどくさいからずっと走ってやろうか」

 

 明らかに良くない考えに傾き始めるZZ。しかし、そこで彼に天啓が舞い降りた。

 

「そうだ、飛べばいいんだ!」

 

 早速ZZは飛ぼうとし……今の自分が生身な事を噛みしめながら大地へと叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 

「……あいつ追って来ねえな」

 

 逃げ始めてまだ五分程。姿が見えないにしても声位は聞こえてもいいはずだが。

 

「別の方向に行ったのか? ちょっと心配だな」

 

 悪乗りが過ぎたとはいえ、一応返す予定は無い訳でも無い。もちろん、できれば欲しいが。

 

「どこ行ったのか……おーい、ZZー!!」

 

 ……返事は無い。どうも相当遠くへ行ったらしい。

 反射的に位置を探そうとして、これがゲームな事とZZが人間に設定していたことを思い出す。

 

「参った、これじゃ探せない……あ」

 

 こういう時の遠距離会話じゃ無いのか。取りあえず、通信を……

 

「おーい、ZZ、聞こえるか―」

『え、アレ、兄貴、どこ?』

「スキル取っただろ、遠距離会話」

『そーいやそんなんあった!』

 

 忘れてたのかよ。いやまあ、俺もだけど。

 

「取りあえずそこ何処だ? 迎えに行くから教えろ」

『何か木しか見えないとこ』

 

 マジでどこだそこ。木何か見てねーぞ。

 まずいな、相当離れてる。せめてZZに位置を教える方法があれば良いんだが。

 

「そっちに何か目印みたいなの無いか? 目立つ物とか」

『無理! ここ木しか無い!』

 

 どんな場所だ。それじゃマジで迎えに行けん。

 

「マジで何か無いのか?」

『何にもない』

 

 駄目だ、これじゃあ場所が分からない。一体どこに迷い込んだんだあいつ。

 木か……何か、火を起こせたら煙とかで目印になりそうなんだけど……

 

「ZZ、何か火とか出せねえか? それで何か燃やして煙が出たら……」

『ん~、あ、いける』

「お、マジか」

『えっと、魔術師職で……魔法に、火が出せる奴があるから……』

 

 通信先から何かを唱えるような声が聞こえてくる。魔法を使うのには詠唱がいるのか? どこまで作り込んであるんだこのゲーム。

 

『食らえ! インフェルノブレイク!』

 

 その言葉と共に、とんでもない爆発音が通信どころか直に響いてきた。

 

『兄貴―、ヤバい、森にめっちゃ、うわー! 火が、火が!』

「何やってんだアホ!」

 

 ええい、アホの救援を急ぐしかない! はた迷惑な!

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