「いくら何でも千レベルにもなっていないのにここは無謀すぎますよ」
絶体絶命の状況から助け出された俺たちは、軽いお説教を貰っていた。
ノーン・レイ・ゼロと名乗ったこの女性、どうやら相当このゲームをやり込んでいるようで装備もレベルも今の俺たちを遥かに上回っている。
「ごめんなさい、兄貴がここに来たいって言うので」
「いやお前だろ」
人に責任をなすりつけようとするZZの頭に拳を落とす。それを見ていたゼロさんが、少し、笑ったような気が……
「大丈夫ですよ、怒っている訳では無いので。ゲームは自由に遊ぶものですし」
……笑った? と言うか、怒っていないと言われたが全く分からない。何せこの人、あり得ない程
「あ、怒ってないならいいよ」
「おい、敬語」
「いえ、良いですよ。ゲームの場ですから」
そう言われても、他人に敬語を使わないと言うのは少し落ち着かない。……そしてやっぱりゼロさんの表所は全く動かない。このゲームの仕様とかじゃ……ないな、ZZの顔はめっちゃ動いてる。
「あの、助けてくれてありがとうございます」
「別に良いですよ、偶々目に入っただけですので」
答えると同時にゼロさんが何かを放つ。その一撃で、海から出ようとしていた巨体が爆ぜ飛んだ。
「取りあえずここは危ないですので、離れましょう」
「「はい!」」
「え、ゼロさんって普段十八歳以上の方でやってんの?」
「ええ、中々スリリングな所ですよ」
先ほどのイカレた海岸から少し離れた場所を歩きながら、俺達はゼロさんと話していた。そして分かったのは、予想以上にこの人は強い、という事だ。
まずステータスが高い。直接見てはいないけど、動きと攻撃を見ているだけで俺らより遥かに上と言う事が分かる。
更に動き方が上手い。兎に角相手に何もさせないように立ち回っている。
本当に何でこんな人が俺達に付いてくれているんだろう。
「最初の説明で、無法地帯って聞きましたけど……」
「おれもヤバいって聞いた!」
「確かに色々と危険な事もありますけど、それ以上に愉快な所ですね」
……うーん、最初に聞いた時のイメージと違うが……ゼロさんが強すぎるだけなのか説明が大げさなだけなのか……
「どんなとこが楽しーの」
「少し目を離しただけで全身に爆弾巻いた人が突っ込んできたり拠点に焼き討ちを仕掛けられたり適当にそこらを歩いているだけで三桁単位で罠が発動したりする所ですね」
うん、ゼロさんが滅茶苦茶強いだけだな。
「ただ、今日は普段遊んでいる友人が来れなくなりまして。気分転換に
理由が何であれ、助けられたのは事実だ。それに、今もどうやら周囲を警戒してくれている。いくらお礼を言っても足りないだろう。……何か出来ることが有れば良いんだが。
「大丈夫ですよ、私が好きでやっている事ですので」
「あ、はい……え?」
今俺言葉に出してなかったよな? あれ?
「なー、ゼロさんってレベル幾つ?」
「今の所二千三百二十五ですね」
うーん高い。俺達より遥かに高い。と言うか、ZZお前そう言うのは気軽に聞く物で良いのか?
「そう言えば……ここからどうする、ZZ」
目的としては取りあえず色々見て回る事だったが、あの海岸から先は進めそうにない。ゼロさんが居ても俺たちでは到底無理だろう。
「んー、んー……何か、どっか行ってみたい」
ZZに聞いてみたら滅茶苦茶雑な答えが返って来た。どっかってどこだよ。
「どこか適当なダンジョンにでも行ってみます? お二人のレベルならこの辺りでも行けそうなところが幾つかありますし……」
「じゃーそれで」
「それがいいですかね」
色々知ってるなこの人。本当にありがたい。
「でも、良いんですか? 僕らにとって適性なら、ゼロさんだと暇な場所なんじゃ……」
「いえいえ、私の事は気にしなくていいですよ。適度にお二人の支援に回らせてもらいますので」
うーん、ゼロさんに色々と悪いけど……こう言ってもらっているのを断るのも悪い。ここは素直に申し出を受けよう。
「なら、お願いします」
「はい。よろしくお願いします。……パーティを組んだ方がいいですね、こちらから申請を送りますので、それを受けてください」
そこで俺の目の前に、『パーティ申請が届いています』という文字が表示された。これを受けたら良いんだよな。
「はい、お二人とも登録完了ですね」
そう言って、ゼロさんが何かの魔法を唱え始めた。
「これから直にダンジョンの場所まで飛びますので、準備はしておいてください」
……何から何までゼロさんに頼ってしまっているな。本当に何かお礼をしておきたいが……
そんな事を考えている内に、周囲に光が満ちる。転送の用意が整ったようだ。
「では行きます。『テレポート』」