閃光が瞬き、轟音が響く。そしてその全てを吹き散らすほどの瑠璃色の奔流が目の前に群れるモンスターを薙ぎ払った。
「……すっげぇ」
詠唱は絶え間なく、行動は矢継ぎ早に。次々と繰り出される魔法が、無限にも思えたモンスターの群れを恐ろしい速度で消し飛ばしていく。
爆発、消滅、圧縮、切断、溶解、分解、粉砕……
一体何を使っているのか分からない程の勢いと数でモンスターが倒れていく。よく分からない光の剣のような魔法が大きく閃いたと思いきや、凄まじい威力の衝撃波が相手を吹き飛ばす。
これが、このゲームのトップ層か……!
「さて、そろそろ終わる頃ですね」
先ほどまでの大暴れ等まるでなかったかのようにゼロさんが平然とこちらへ戻ってきた。と、同時にZZから扉が開いたと叫び声が聞こえてくる。
「ZZ、さっきの見てたか!」
「え、何が?」
「損したな、お前!」
「えー!?」
よく分かっていないのに一方的に損を突き付けられたZZの腕をひっつかみ、開いた扉へと飛び込む。そこには、今までとは違うとはっきり分かる空間が広がっていた。
大理石の様な見た目の床に、黒を重視した紋様の壁。対で並ぶ幾本もの柱は白に青の直線が走っている。
そうして視線を向けた先、そこからは黒々としたオーラと共に巨大な何かが今まさにその姿を現そうとしていた。
「ボス戦ですね。ここはそこそこ難易度が高かったはずですので、お二人とも頑張ってください。最低限の支援はしますので」
そう言ってゼロさんが後ろに下がる。残された俺たちの目の前に、巨大な鉄塔の様な腕にビルの様な胴体を持ち、全身に無数の植物が絡みついた異様なシルエットの巨人が降臨した。
「ZZ、やるぞ……ZZ?」
「うおー、かかってこーい!!」
「アホ―!!」
勝手に作戦もくそも無く先へ突っ込んだZZの後を追うように、機械と植物の巨人へと向かって突進する。
右手に剣を展開し、左手でミサイルの照準を合わせる。かなりの速度を付けながら、先制でミサイルの一発を放つ。
「俺が切り込むからお前は後ろから魔法を打て!」
「わかった!!」
「素直だな! せめて動く前に何か聞いてほしいぞ!」
巨人が振り下ろす腕を避け、その上に飛び乗り剣を振り回す。
ガキン、と硬質な音を立てて剣は弾かれるが、それでも足は止めない。兎に角胴体へ向かって腕の上を走る。
剣を引っ込め、代わりに機銃を撃つ。こちらも弾かれるが、剣と違って足を一切止めなくていい。速度を保ったまま攻撃ができる。
左腕の照準を胴へ向け、ミサイルを放つ。爆炎が奔り、こちらまで風が届くが巨人の胴に傷は見られない。
「硬いなこいつ!!」
動きこそ遅いがダメージを与えている感触が無い。余程防御力が高いのか。
「『カノンブレイク』!!」
ZZから魔法が放たれ、木の瘤のような巨人の顔面に直撃する。……音が違う。
「弱点は顔か?」
試しにこっちもミサイルを撃ってみる。……顔には当たったが、ZZの魔法の様な手ごたえは無い。
「ZZ、何撃ったんだそれ!」
「何か貫通するやつ!!」
貫通……こいつ、外側が硬いだけで内部は通りやすいのか?
「それなら……これで通るはず……!!」
ミサイルの種類を切り替える。表面で爆発を起こすのではなく、突き刺さった内部で起爆するものに。
振われた左腕を避けながら放たれたそれは、顔面に着弾し巨人を明確に震わせた。
「ZZ! 内部だ! こいつは内部が弱い!!」
「つまりどういう事!」
「貫通系の魔法で攻めろ!!」
言うやいなやZZからレーザーじみた魔法が放たれる。巨人の胴を貫く魔法は、明らかに多大なダメージを与えていた。
「こっちも負けてらんねえな!!」
躱した腕に飛び乗り、その上に叩きつけられたもう片方の腕を、乗っていた腕の下に回って回避する。
「照準用意……アンカーセット」
腕に逆さまにぶら下がる様に砲身を展開する。この巨人の動きは遅い、急いで用意すれば十分に間に合う!
エネルギー充填……巨人が俺の掴まっていない方の腕を持ち上げる。
砲身構築……俺がいる腕を持ち上げようとした巨人が、ZZの魔法を食らって動きを止める。
発射用意完了……巨人が動きを止め、何かの予備動作の様な物を取り始める。
「発射!!」
空を裂く轟音と共にエネルギーの弾丸が放たれる。反動だけで巨人の腕に亀裂が入り、余波は表面の植物を削り取っていく。
圧倒的なエネルギーが衝突しようとした瞬間、巨人が自身を覆うほどの光のドームを展開した。
「なっ!!!」
巨人の広げた壁に直撃したエネルギー弾が、消滅していく。いや、アレは……吸収?
「あのボス、HPが一定を切ると物理以外の属性を吸収する技を使うんですよね。
ゼロさんから放たれた魔法を食らった巨人が、ガクンと大きく揺れた。
そして、俺の前に先ほど放ったはずのエネルギー弾が出現する。
「え!?」
「『ライフリバース』『リ・ドゥ・X式絶級外光砲』」
訳の分からないまま、先ほどと同じような光景が繰り返される。違いは、光の壁はもう無い事だ。
凄まじい爆発と轟音が立ち、巨人の体に風穴が開く。一拍遅れて、重苦しい地響きと共に巨体が後方へ倒れていった。
「何ですか。今の」
「回復効果をダメージに変換する魔法と、指定した攻撃を再実行する魔法ですね」
回復変換は耐性持ちが多い、と愚痴の様にゼロさんは説明してくれた。そのため、対人戦や今回の様な一部のボスにしか効果は無いようだ。
「あの、ありがとうございます。何から何まで……ボスも、殆ど倒してもらって……」
「おや、まだお礼を言うには早いですよ」
バキン、と何かが砕けるような音と共に巨人の頭から何かが飛び出る。
この空間の中央へと着地したそれは、木で作られた人の様な姿をしていた。背は二メートル程度、長い手足とのっぺりした顔を持ち、ゆっくりと体を確かめるように動かしている。
「あのー、これって……」
「はい、第二形態ですね。頑張ってくださーい」
そう言ってゼロさんは後方へとんでもない速度で下がっていった。
やるしかねえか!!