「さて、南極に付いた訳だが……」
「説明はしてくれるんだろうな」
「今するから黙ってろタコ」
極寒の吹雪の中、俺達はアダムを前に扇状に座っていた。……にしても寒いな、一応体は凍結しないはずなんだが。
「こないだジパング行っただろ。あれの調査結果が評価されたんで、次の調査が求められた」
「誰に」
「政府」
……政府かあ。
それを言われると複雑な気分になってくるが、断れる相手でないことだけは確かだ。
「てか、今回もまた『アイギス』絡みか? 流石に嫌だぞ」
「安心しろ、しっかりアイギス関連だ。一応警戒はしてやる」
「ふざけんな」
帰りたい。今すぐ帰りたい。
「前もひどい目にあったじゃねえか、何でまた関わらなくちゃならねーんだよ!!」
「てめえの意見は聞いてねえ!」
……酷くない? いくら何でも連れていかれる側の意見は聞こうぜ。
「まー今回はアイギスを直接監視するわけじゃあない。ここが
そう言って、アダムが
「ここ、百年ほど前まではもう少しましな気温してたからな」
「マジで?」
それは知らなかった。てっきり昔からこんな終わってる気温かと。
「今回の調査はこのイカレた温度にアイギスが関わってるんじゃねえかって調べるのが目的だな。アイギスの連中が来たら俺が相手するからその間に調べとけ」
勝手なことを言ってくれる。俺らはお前ほど頑丈じゃねーんだよ。
「そら、言う事言ったし、行くぞ間抜け共」
「おー!」
「ZZお前今間抜けって認めたぞ」
なんやかんやと言いながら、取りあえず一面氷の世界へ俺達は歩き出した。
で。
「寒い!」
「寒い!」
「同じ事言ってんじゃねーよ」
「言いたくもなるだろ! 寒すぎるわ!」
俺の体には凍結防止の機能は有るし、そもそも現在寒さや痛覚などはOFFにしているはずだ。なのに、あり得ない程寒い。どうなってるんだ。
「兄貴ー、俺の体凍ってきた……」
「うわマジだヤベェ! アダム助けて!」
「あーはいはい」
アダムから温風が放出され、ZZの氷を溶かしていく。うーん、便利な奴だ。
「おれ一応寒さ対策してたのに」
「お前、俺と作りが違うからな。
ZZの体はナノマシンの集合でできている。本来、俺を遥かに上回る高スペックらしいのだがZZ本人がアホなせいで全く活かせていない。寧ろ、今の様なデメリットばかりが目立っている。
「取りあえずアダム、何か防寒具みたいなの寄こせ。流石に俺も寒い」
「……チッ」
舌打ちしながら俺とZZに薄い布のようなものが投げ渡される。……こいつ、無理矢理連れてきておいて態度糞悪いな。無茶ぶりしとこ。
「ついでに飯と金と温水と本と遊び場とお菓子と服と気の置けない友人と真心のこもった対応と人の温かみをくれ」
「そらよ!」
「いってぇ!!」
このやろ氷投げて来やがった!!
「ZZ! 二人であの怪物を倒すぞ!」
「おう!」
二人で氷塊を持ってアダムに突撃する。十秒後、ノされたサイボーグ二人の姿がそこにあった。
「遊んでないでさっさと行くぞ。一応、アイギス連中の気配も無いしな」
「くっそ……余裕だな」
「兄貴ー、腕取れた」
「お前引っ付くだろ……」
自分の腕を付けなおすZZを視界に入れながら、先に行ったアダムを追う。ここであいつとはぐれたら本気で死ぬ。
「おいアダム、ちょっとペース落とせ、ZZがまだだ」
「めんどくせえな……」
……こいつ、何でこれ引き受けたんだろう。
「兄貴ー」
「遅いぞー」
やって来たZZを見たとたん、再びアダムが進みだす。ええい、せっかちな奴だ。
「気い付けとけ、それと体を使う練習も」
「わかった!」
本当か?
まあともかく、今はこの面倒な依頼を終わらせる事に集中しよう。……そう言えば、具体的にこれ、何するんだ? まさか全面探索するわけじゃないよな?
「安心しろ、全面じゃねえ」
「……その思考読み、どうやってるんだ?」
「俺のAIなめんな」
一体何が使われているんだ……
「で、今回の探索範囲は……ここだ」
そういって、アダムが地図を見せる。ホログラフィックで記されたそれは、中心部が真っ白になっている以外は、俺の知る南極の地図の様に見えた。
「事前に探査はしたんだがな。この中心部だけどうやっても何も分からなかった。という訳で、直接乗り込んで調べてやろうってことだ」
「成程」
まあ分からないなら仕方ない。……絶対何かヤバいの居るだろうけど。
「アダム、天道さんみたいなのいたらかばってくれよ」
「安心しろ、その時はかばってやる。多分お前は巻きこまれて死ぬがな」
安心できねえ……あ、そーいや。
「なあ、天道さんって今何してるんだ? なんかこっちで旅行するとか言ってたけど」
あの人、悪いひとじゃ無いけどトラブル起こしまくってそうなんだが。
「……トラブル塗れだよ、こんちくしょう。政府のボケ共、俺に対処任せやがって……」
あ、これ触れたらまずいやつだな。
即座にそう判断を付けた俺は、前だけ見て歩いて行く。世の中危険な物には近づかない方が良いのだ。