「……寒いな」
「そうだな」
「ガガガガガガガガ」
探査不能の場所に近付くにつれ、恐ろしい規模で寒さが増していく。
アダムから貰った防寒具を着ている俺ですら、相当な寒さを感じている。ZZはさっきからずっと歯の根が合っていない。……これ、このままだと凍死するんじゃ無いか?
「アダム、これ大丈夫なのか? まだその場所にも入ってないんだろ」
「……割とまずい。本気で無理そうなら、ZZは置いてく必要がある」
「それは……」
ZZを一人で置いて行くには不安が残る。本人の正確に加え、ここが安全な場所と分かっていない。一体何が起こるかは分からないのだ。
「今何度だ?」
「マイナス273.15……絶対零度。明らかに色々おかしい」
「うわあ……」
想像を遥かに
「ガガガガガガあガガガガガガにガガガきガガガガガガガさガガガガガガガガむガガガガガガガいガガガガガガガ……」
「なあアダム、もう一枚さっきのくれないか? 本気でヤバそうだし」
「お前よくアレが何言ってるか分かるな……ほらよ」
アダムが投げ渡してきたさっきのよりも厚い布を、ZZの体にかぶせる。これでマシに成ると良いのだが。
「……ここか」
アダムが足を止める。……ここが、例の探査不能の場所なのだろう。
「……!?」
アダムが腕を伸ばし、直ぐに引き戻した。かなり驚いている。一体、何が……
「冗談だろ……凍り付いたぞ」
アダムがこちらに突き出した右腕は、氷像の様になっていた。
「……これ、ZZどころか俺もまずいんじゃないのか?」
「ああ。まずい。お前じゃ一瞬で氷漬けだ」
そう言って、アダムが凍り付いた腕を放り棄てる。直ぐに替えの腕が生えてきていたが、同じことが全身でできるかは分からない。
そして、アダムが駄目な以上、俺らなんて論外だ。
「なあアダム、これ俺らが行く必要有るのか?」
前回の冒険は兎も角、今回の南極探検は俺たちの行く必要性が全く無い。ここまで危険なら引き返したいところなのだが。
「無理だ。政府は例の研究所を危険視してる。お前らがあそこのスパイかどうかもな」
「ふざけんな!」
誰があの研究所のスパイだ! 死んでもあんな所の得になる事なんかやってやらねえよ!!
「お前はそうだろうけどな、お偉いさん連中は無理だ。アレは万が一も許容できねえからな」
「ちっ!」
思わず舌打ちが出る。
つまり、今回の一件は俺たちが死ぬような目に遭っても国に立てつかないか調べている訳だ。
「監視も付いてる。どれだけヤバくても、お前らの内最低でもどっちか一人はここに入らないといけない。糞みたいな条件だ」
「なら俺だ。俺を連れてけ」
ここまで見えている危険に、ZZを放り込める訳がない。ここも危険だろうが、最低限政府の監視は付いている。流石にみすみすまずい事を見逃しはしないだろう。
「まあそう言うなよ、兄貴」
「ZZ、取りあえずアダムにシェルターでも作ってもらって……」
「約束しただろー。一緒だってよ」
「っ」
……確かに、している。だが、それとこれとは話が違う。
だが、そう説明してもZZに折れる様子は無い。
「ヤバい事やるなら一緒だって約束したじゃねーか!」
「回避できないならな! 見えてるヤバいのに突っ込ませられるか!」
こいつ、やたら頑固だな! もう少し自分の身を……
「それに!!」
「それに何だ!!」
「ずるい!!」
「は?」
余りに予想外な言葉に、一瞬頭の中が真っ白になる。その隙にZZが次々と言葉を放った。
「だってずるいじゃん! こんな凄そうな場所、兄貴とアダムだけで行くなんてさ!!」
「いや、あのな……」
「もういいだろ、連れてくぞ」
アダムが突如として口を挟んできた。
「ZZじゃ無理ってお前も言っただろ!?」
「さっきはな。もう解析は終わった」
そう言い放ち、アダムが何やら家程の大きさの機械に変形していく。……と、それに付いていた扉から出てきた。
「何だ、それ」
「対寒用移動式シェルター。よっぽどイカレた寒さでも持つ。行くぞ」
「おい、ちょっと」
「イエーイ!」
「ZZこら!」
だめだ、止まりそうに無い。ええい、アダムを信じるしかないか。
「アダム、ZZに何かあったら許さねえぞ」
「心配すんな、お前に許されなくてもどうでもいい」
「そっちじゃねえよ!!」
こいつ、本当に信用していいのか?
色々と不安であったが、取りあえずシェルターの内へと入る。
内部は俺の身長より少し高い程度の幅と、手が届く程度の位置にある天井、それと一枚の窓があった。有り体に言えば、狭い。
「アダムー、狭い」
「文句言うな、お前用だ。なにせ異常な冷気でな。壁を相当分厚くする必要があった」
確かに狭いが、温度が外とは比べ物にならない程高い。暖かいとまでは言えないが、普通に過ごす分には問題ないだろう。
「これでそのまま行くのか?」
「ああ。外の探査は俺だけでやる。監視連中もこの範囲内は見えて無いからな。ヤバい所に入っちまえば分からん」
それなら安心ではあるが……どこか、隔離されてしまったような感覚がある。この超極寒地帯では助けも呼べないのだ。
「それじゃ、行くぞ」
アダムの声と共に、体が慣性に引っ張られる。……これから、アダムですらまずい場所に踏み込むのだ。
「兄貴、アレオーロラじゃね?」
「暢気だなあ、お前」