九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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 さて、何でもやってやると覚悟を決めたは良いが、実際の所アレとの接触はアダムがする。つまり、俺は別に何もしなくて良いようだ。畜生、覚悟が無駄になった。いやまあ、危ない目に合わないに越したことは無いんだけど。

 

「兄貴―、暇」

「文句言っても変わらないぞ、諦めろ」

 

 現在、アダムがあの蒼い人型との対話を行っている。そもそも言葉が通じるのかは兎も角、出た瞬間攻撃されるような事は無かったので、一応敵意は無いようだ。

 

「なに話してんだろ」

 

 このシェルター、完全防寒なせいで外の音が全く聞こえない。外に出て聞いてみる──なんて案はそもそも無い。

 結局、想像するしかないのだ。

 

「飯の話とかかな」

「多分それは違うな」

 

 相手が危険かどうか聞きに行くのに飯は無いと思う。……というか、アダムって基本相当喧嘩腰だよな。あいつが親善大使みたいなので大丈夫か?

 

 

「で、結局の所そちらに私たちを害する意図は無いと」

 

 普段と雰囲気の違う、丁寧な言葉遣い、しかし決して下手に出ない態度でアダムが問いかける。それを受けて、蒼い人型が揺らめいた。

 

『私はここにいるだけだ。何を害する気も、何に利する気も無い』

 

 ()()()()()()()()蒼の人型が言葉を紡ぐ。もし、その言葉を聞いていたのがまともな存在であれば即座に氷像と化したであろう。そう確信させる声。

 だが、アダムは凡百の存在では無い。

 

「では、これから何かを害する或いは、何かに利する予定は?」

『……それも無い。私は何かに干渉する気は無いのだ』

「なら、質問を変えます。我々があなたを攻撃すれば、それに抵抗、ないしは反撃を行いますか?」

 

 その言葉に、蒼い人型が不快そうに冷気を振りまいた。

 

『攻撃されても抵抗もせず、只滅べと? お前達はそれほどまでに理を知らんのか?」

「一応そういう事を聞く規則ですので」

 

 悪びれもせず、アダムが淡々と答える。目の前の存在がどれだけ気分を害そうとお構いなしだ。

 その後も、相手の機嫌や状況等を一切考慮しない、不躾な質問が続く。当然の様に蒼い人型は、機嫌を悪くしていく。

 だが、それはアダムにでも、ましてやその裏に居る政府にでも無い。

 

『……お前たちは何をそこまで怯えている? 目の前の物が、ごく僅かな危険すら無いと、証明せねばならない程に。例え不愉快な思いをして敵対したのであっても、懸念が一つ減るとでも言いそうな態度だ』

「政府は恐れています。あなたが、不確定要素となる事を」

 

 敵であるならば、倒せばいい。味方ならば、使えば良い。だが、それが確定しないのは駄目だ。

 味方を敵とすれば、巨大な戦力を失う。敵を味方とすれば、甚大な被害を被る。それを避けるためならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そんな、臆病を通り越して過剰な迄の安全策。得をするよりも、徹底して損を避けるための守りの術。

 蒼い人型は、そうさせた存在に不快感を覚えている。なにせ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『一体お前たちは何を敵にしている?」

「……怪物の群れ。()と同じかそれ以上の奴らが七。それですら奴らの戦力の一部だ」

 

 蒼い人型が絶句する。自身の強大さには自信がある。そして、自分に匹敵、或いは凌駕する目の前の機械仕掛けの強さも。

 それと同等か、以上が七。おまけにそれですら一部だと言う。

 

「まあつまるところ」

 

 アダムは今までの態度が嘘のように、体を翻し、()()()()()

 

「我々と、共に戦ってください。それが今回の話の本質です」

『……どうしようか』

 

 蒼い人型が、その蒼をより透き通らせていく。凍っていた大気が更に凍り付き、凍り付いた大地が更に凍る。空間が凍てつく馬鹿げた冷気を放ちながら、言葉は紡がれた。

 

『例え本音が何であろうと、無礼は事実。しかし、怯えからの無礼ならば一々気を損ねるのも狭量だ』

 

 カツン、カツン、と硬質な足音を立てて逡巡しながら人型が歩き回る。その度に空間が温度を下げ、大地は悲鳴の如くに凍てつき、遂には時間さえ凍り始める。

 

『それでも、無礼には報いを返さねばならない。それも相応の形で』

 

 圧倒的な冷気と共に放たれる言葉に、異様な重圧が乗る。例えこの冷気が無くとも、常人であればその重みだけで死ぬだろう。それ程の圧、それ程の重み。

 だが。

 アダムにとっては一つの感情を湧きあがらせただけだ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 笑みが、浮かぶ。

 アダムの暴言に、最早透き通った水晶の如き透明度となった人型が、口元を高々と吊り上げる。

 

『ふ、ふふ、ふふふふ。散々言われたからな。少し回りくどくやってやろうと言う気にもなるだろうよ』

「んなもんは俺以外にやってろ、()()()。雪だるまにでも加工してやろうか?」

 

 両者が剣呑な気配を立ち上らせ、相対する。始まるのは、怪物の衝突。

 

『そう言えば、名を聞いていなかったな。名乗れ』

「アダムだ、テメエも言えよ、かき氷」

『ふふ、ふふふ、ふふ。私は、極。極圏の王。極寒の支配者。始めようか、鉄細工」

 

 それより言葉は無く、只衝突の轟音だけが轟いた。

 

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