爆発音と共に粉塵が舞い踊る。通常なら一瞬に満たないほどの時間で広がるそれも、この場の四人にとっては恐ろしく長い時間に感じられた。
それでも確かにその時は来た。
朦々と広がる煙幕は全員の視界を遮り、姿を隠す。白く染まった景色も何もかも平等に。
(!)
即座にその危険性に気付いた白華が吹き払おうとするが、アダム達がそれを許さない。白華でもこの三人を同時に相手して余裕があるわけでは無いのだ。戦闘に関係ない無駄な一動作を挟むのは不可能である。
故に、その場の全員が煙幕へと包まれることとなった。
「よし!」
包まれた事を確認するや否や、アダムが白華から離れ極と天道の元へ戻る。そして二人に何かを投げ渡した。
「何じゃ、これ」
「
姿が見えない。
白華の視界から、三人が煙幕に包まれ消える。
先ほどまで自分の押し付けていたやり方を、やり返された形だ。
しかし、条件は同じ。互いに姿を捉えられなくなっただけ。
(本当に?)
白華が自問する。
あのアダムがその程度で終わるはずがない。必ず、自分の姿を捉える手段を用意している。
白華のその予測通り、極めて精確な狙いの金棒が振るわれた。
「ハハハハハ! これは良い! 良いぞ!」
衝撃は四度、その全てが面白いほど直撃する。白華にアダム達は見えていない。逆に、アダム達は白華の動きを予測した結果をゴーグルに表示し、その動きを補足することが出来ている。
白華の反撃も、見えない相手には当たらない。そこに、巨大な氷塊が叩きつけられた。同時に次元を凍結させる程の冷気が解き放たれる。
(っ!)
一瞬、動きが止められる。その隙に背後から金棒が直撃し白華を大きく吹き飛ばした。
『散々やられた……最早そちらに猶予など与えんぞ』
連撃怒涛、代わる代わるの攻撃が白華に多大な傷を付けていく。
降り注ぐ氷槍が、超威力の金棒が、極寒の暴風が、一点への猛攻が、零距離での冷気の解放が、身を回転させた渾身の金棒が、白華の体にダメージを与える。しかし、白華の意識はその攻撃には無かった。
(……アダムはどうした?)
アダムからの攻撃が無い。
その一点が白華に嫌な予感を生んでいた。
損傷多大で復帰できない……などと楽観的な予測は無い。アレは必ず復帰する。
白煙の視界にナイフが煌めく。見えずとも、攻め立てられ続けていれば雑に振っても何処かで当たる。
その予測の通りに、軽い手ごたえと鮮血が舞う。だが、攻撃に中断は無い。
「その程度で止まるような体はしておらんぞ!」
金棒が白華の体を横に薙ぐ。体制を立て直そうと白華が動く前に、その体が氷塊に閉じ込められた。
『何かさせてもらえると思うなよ?』
氷が砕かれる。だが、それより速く再び辺りが凍結する。極に白華を逃がすつもりは欠片も無い。そしてそれは、天道も同じだ。
氷を切り裂き飛び出てきた白華が、殴り飛ばされ氷塊へと叩き込まれる。その身体がまたも氷に包まれた。
逃がさない。攻撃を畳みかけ、その場に白華を張り付ける。
(何の為に?)
白華はその疑問に即時答えを出す。
アダムの攻撃時間を稼いでいる。
それが答えだ。
この時点で戦いの目的が少し変化する。白華は氷塊から抜け出し、攻撃を構えているはずのアダムに先手を取る事。極と天道は用意が完了するまで白華を動かさない事。
即断した目的に従い、白華が攻撃も無視して氷塊から体を引きはがす。だが、それを見逃す二人では無い。
「『逃がさん!』」
金棒が降りぬかれ氷塊が散弾の様に叩きつけられる。それらは白華の体を精確に捉え、傷を負わせていた。
それでも、白華は足を止めない。攻撃してきた二人を無視しその間を神速で走り抜ける。
二人もそれを見送りはしない。足を凍り付かせ、逆側に弾き、壁を作り、全身を使い金棒を振るい、白華の足を鈍らせる。
だが、ここに来て地力の違いが出る。単なる殴り合いになってしまえばこの中で最強は白華だ。壁を砕き、しがみ付いてきた天道を蹴りつけ……
その時は訪れた。
アダムの前に、白華が出現する。
そして、
煙幕が晴れている。
明瞭になった白華の視界に映るは、白華をして異常なエネルギーを迸らせるアダムの姿。
「対超銀河団級存在焼却用時空消滅式塵壊砲起動。エネルギー上限解放、レベル3へ移行。上限解放、レベル4へ移行」
白華は無言のまま、アダムへと駆け出し──
「砲撃、発射」
極大の光の帯が、その全身を包み込んだ。
「……決着、か?」
視界の殆どを埋め尽くした異常なエネルギーを纏ったあの光帯が消え去ったあと、戦闘の様な物は起きていない。決着が着いたのだと思うが……
「兄貴ー、終わったみたいだし見に行こうぜ!」
「もうちょい危機感を持てや。アレが敵の攻撃じゃ無いって保証は無いんだぞ」
「多分アダムだって、行こうぜ!」
……まあ、アレが敵だったらどうあがこうと俺達は死ぬだろうし。それに、一応作戦は成功していた。多分大丈夫だろう。
そう信じて、俺達は戦闘の跡地へと向かった。