九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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忍者

 さて、今の状況を整理していこう。

 家に帰っていたところ、何やら謎の金属音が響き、それから逃げたらいきなり目の前から人が飛び出てきて、傷ついた方を助けたら忍者と言われた。

 ……どういう事だ?

 

「えっと、あのー……」

 

 目の前の女性から声をかけられるが、今俺の脳みそは答えを返せる状態では無い。今まさに混沌に覆われた忍者でリアルなショックに襲われているのだ。

 そもそも忍者とは何か。俺も具体的な知識は無いが、読んだ本などで僅かに出ていた情報曰く、何千年も前に実在した隠密超人集団の事らしい。何でも、平気で数十メートルを飛びあがり、走れば水面を駆け、火を噴き、分身するらしい。当然、俺はそんなこと出来ない。

 結局、たっぷり一分ほど沈黙した上で出した答えは……

 

「忍者では無い、ですね」

 

 そんな当たり前の物であった。だが、その答えに目の前の女性が少し残念そうな顔をして立ち上がる。

 

「そうですか……なら、部外者の方を巻き込む訳にはいきません。離れていてください」

 

 そういって、女性が小刀を構える。視線の先は、先ほど俺が蹴り飛ばした相手の方。

 ……まて、あれはまだ意識があるのか? 正直、土下座先が生身から幽霊に変わりかねないと思っていたくらいには結構な威力で蹴ったはず何だが。

 だが、そんな俺の疑問は、実際に姿を現した黒ずくめにかき消された。

 

「……そこのガキ、お前は──」

「この方は忍者ではありません。巻き込めば、掟を破る事になりますよ」

 

 その言葉に、大きな舌打ちが返される。さも面倒だと言われたような……いや、実際めんどくさいんだろうな。

 

「フン、ならお前をさっさと始末して戻る事にする。……おいガキ、俺たちの事は話すなよ。話したら──」

 

 殺すぞ、と声が響くや否や男が途轍もない速度でこちらに迫ってきた。同時に女性もかなりの速さで疾駆し、迎え撃つ。

 だが、黒ずくめの──多分男──方が正確無比な動きな事に比べ、女性の方は傷のせいか精細を欠いている。この戦い、結果は見えているだろう。

 二人ともかなりの凄腕な上、強烈な殺気を纏っている。普通に考えて、俺の介入する余地は……

 

「いや、余地あるな」

 

 最近色々ヤバいのに出会い過ぎて忘れていたが俺のスペックは結構とんでもない。というかそもそも、今の二人の動きはくっきりと目に見えている。確かに早いが、普通に追える程度だ。殺気も、正直天道さんだの極さんだのアイギスの連中だのと比べれば、何というか、割と鈍い。

 というわけで、俺の行動は精神に従い……

 黒ずくめの男を、思いっきり殴り飛ばした。

 今度は加減しない。加速も付けてしっかりと降りぬいた。……どうやら立ち上がっては来ないようだ。というか、なんか痙攣してる。やり過ぎたか?

 

「あ、あなた、本当に忍者じゃ……」

「いえ、忍者では無いです」

 

 ……忍者じゃないよな? 火を吹いたりとかは……あ、できる。水の上も多分走れる。あれ、俺忍者?

 

「……多分、忍者では……無いと思いたいような」

「結局どっちなの!?」

 

 いけない、混乱している。

 

「忍者では無いです」

「そう……ですか」

 

 そう言って女性はがくり、と項垂れた。……そこまで残念そうにされても、俺は忍者では無い。無い物は無いのだ。

 

「それなら、私を見たことは秘密にしておいてください。部外者を巻き込む訳にはいきませんから」

 

 そう言って女性は立ち去ろうとする。だが、どう見ても割と深手を負っている上、動きもぎこちない。……またさっきの様な奴が来れば、本当に殺されてしまうだろう。

 ……目の前で死にそうな人を見捨てる程、腐った覚えは無い。

 

「取りあえず、一旦僕の家に来てください。そんな怪我で無事だとは思えないですし……」

「申し出はありがたいですけど……掟があります。それに、あなたも刺客に追われてしまいますから」

 

 そして女性は離れて行こうとする。だが、今の俺の家は多分世界でも有数の安全地帯だ。さっきの奴が一万人来ても何一つ問題ないだろう。

 

「一応割と腕に覚えはありますし、今家には恐ろしい連中が居るので……」

「あの、その言い方だと寧ろ不安になって来たのですが……」

 

 割とこの言い方で間違ってないと思う。

 まあ兎も角、渋る女性をどうにか宥め、家まで連れてくることが出来た。途中、襲撃こそ無かったが……結構な距離からずっと集団が着けて来ていた。まあ、家に入ってしまえばもう手出しは出来ないだろう。なにせ……

 

「おう、遅かったな。頼んでた本速く寄こせ」

『私の頼んだアイスもだ』

「兄貴ー、何か無い?」

 

 アダムに加え、何故かこの家に居着いている極さんがいるのだから。

 

「……で、それ誰だ」

「帰る途中で拾ったんだよ。あんな怪我してるんだ、無視できねえ」

 

 フーン、と聞いてきた割に対して興味も無さそうに本に戻るアダム。一応ここは俺の部屋何だが。お前自分の部屋あるだろ。

 

『アイスは?』

「あ、こちらです」

 

 渡したアイスを嬉しそうに受け取り、傍から見ても美味しそうに食べていく。通販対応外の限定アイスだ。割と高いのだが、極さんはアダムと違ってお金を出してくれた。アダムと違って。

 

「……何か不快な感覚だな。おいXXX、ちょっとお前殴らせろ」

「ふざけんな、お前に殴られたら死ぬわ」

「なー兄貴、おれに何か無いの?」

「ほら、工事で余ったパーツ」

「……わーい」

 

 一応それでも喜ぶのか。今度何かめっちゃくだらない物渡してみよ。

 と、そこで俺の後ろに付いてきていた女性が口を開いた。

 

「えっと……あの……私は……」

 

 

 ……ごめんなさい、忘れてました。

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