九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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忍びと闘神

「……でまあ怪我もしてたし、なんか追われてるみたいだったから連れてきた」

 

 大体の説明を終えたが、ZZを除いて全員余り興味を持っていないようだ。まあZZみたいに話も終わらない内から質問攻めにしてきても困るが。

 

「で、アダム。何か医療キットとか無いか? 流石にこの怪我放置したら命に関わるぞ」

「買え。今は何でもネットで買える時代だ」

 

 マジかよ。この怪我治せるのも買えるのか。……うわ、ほんとだ。これなら治せ──

 

「えっと、その……こちらが、治療用のキットになります……」

「ありがとうございます」

 

 ……考えてみれば、治療には服を脱ぐ必要がある。……よく分からないが、こういうのに抵抗がある人は多いんじゃないだろうか。女性だし。

 

「あの……私は構いませんよ?」

「いえ、僕が構います」

 

 いかん、意識するとどこまでも変な事を考えてしまいそうだ。……ただ、見たところ自分で治すには厳しいようにも見える。覚悟を決めるしか無いのか?

 

「大丈夫ですよ、私も忍びの端くれ、治療法くらいは心得ています。無理な事をする必要はありません」

「……タスカリマス」

 

 ええい、ピンクの妄想が湧き出てくる。そういう機能は俺には無いのだ。静まれ静まれ。

 

「見てて面白いな、アイツ」

『同感だ』

 

 あの二人は取り合えず後でクソ辛い者でも食わしておこう。

 取り合えず、治療するにしてもこの部屋では色々と駄目だろう。開いている部屋はZZかアダムだが……

 

「アダム、お前の部屋使える?」

「微妙。物が多すぎる」

「兄貴ー、おれは大丈夫だぞー!」

 

 ZZかあ……割と不安だな。こいつの部屋どうなってるんだ? 前別々に住んでた時も何か爆発したとか言ってきたし。

 

「お前、部屋にヤバい物とかおいて無いよな?」

「大丈夫だって、前吹っ飛んだ時にそういうの無くなっちゃったから」

 

 ……凄い不安だ。

 だが、これと言って場所が無いのも事実。俺の部屋が使えたら良かったのだが、アダムと極さんの二人が居座って出ようとしていない。なんだ、俺の部屋はそんなに居心地がいいのか?

 

 

 ……あの女の人が出て行って五分程。事態は更なる混沌と化していた。

 

「ハハハハハ、飲め飲め!」

『ええい、飲み過ぎだ! 私も限度と言う物が……』

 

 何故か近くに寄ったと言う天道さんが乱入し、俺の部屋で宴会を始めてしまった。アダムは我関せずで本読んでるし、極さんは頭ひっつかまれて酒流し込まれてるし……たった五分で何でこうなるんだ?

 あの人にも迷惑だろうし……あれ?

 

「そう言えばあの女の人から名前聞いて無いな」

 

 何ならこっちも名乗っていなかった。……これ、俺滅茶苦茶不審者じゃね?

 取りあえずそれを避けるためにも帰ってきたらしっかり自己紹介を……

 

 そう考えた所で、部屋の扉が開き女の人が姿を見せた。

 

「五分で何が有ったんですか!?」 

 

 ほんと、何が有ったんだろう。

 

 

 

 すっかりご機嫌に出来上がった連中を無視し、俺とZZは女の人に向き合った。自己紹介の時間だ。

 

「取りあえずは僕からで……XXXです、よろしくお願いします」

「ZZだぜ!」

 

 やたらとテンション高く叫んだZZの額にデコピンを叩き込む。せめて敬語。

 

「……私は、紅苺(くれないいちご)と言います、XXXさん、よろしく──」

「紅?」

 

 その言葉が終わるか終わらないかの内に、いつの間にか近付いてきたアダムが疑問の声を上げた。

 

「お前、何だ、いきなり」

「……知った名前が出てきてな。……紅か」

 

 アダムがジロジロと見定めるような視線を、苺さんに飛ばす。……割と失礼だぞ、こいつ。

 

「……有名な名前なんですか?」

「……」

 

 苺さんに聞くと、黙って俯いてしまった。……余りいい思い出が無いのかもしれない。これ以上深くは聞かないで──

 

「闘神の家系だ、有名なんて物じゃ無い」

 

 アダムがそう言った瞬間、苺さんが体をビクリ、と震わせた。……これは駄目だ。

 

「おいアダム、……止めとけ」

「ああ? どうせいつかバレるんだ、先言っといてもいいだろ」

「そういう物じゃねーよ」

 

 デリカシーと言う言葉に縁が無いのかこいつは。……俺もあるとは言えないけど。それでも、言われたくない事は言わないくらいの良識はある。

 

「すみません本当に……」

「い、いえいえ、中途半端に隠そうとした私が悪いんです……」

 

 互いに頭を下げ合う奇妙な光景になってしまった。……いかん、話が進んでいない。取りあえず頭を上げて仕切りなおす。

 

「あのー、忍者だと言う事でしたけど……そもそも、何が有ったんですか? 言いたくないのなら良いですが……」

「それは大丈夫です……。実は私、抜け忍なんです」

「抜け忍」

 

 と、言われても何の事だか分からない。そんな俺の考えが顔に出ていたのか、苦笑しながら苺さんが説明してくれた。

 

「抜け忍と言うのは……そうですね、忍びを止めようとした人間に付けられる呼称でしょうか」

「……つまり、忍者を止めようとしたから追われていたと」

 

 なんだその理不尽な話。俺はバイトをバックレたことが二回は有るぞ。仕事を止める位で殺されてたまるか。

 

「理不尽に思えますけど、仕方ないんです。忍者が私利私欲で動く訳にはいきませんから……」

 

 ……色々と事情があるようだ。だが、そこまで理解していて何で忍者を止めるのだろう。忍者を続けていてよっぽどの不都合でもあるのだろうか。

 そう思って、苺さんに尋ねてみる。

 

「……実は、妹が、成人式なんです」

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