九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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紅へ

「落ち込まないでください、悪いのは全部あいつです!」

「いえ、悪いのは私です……実力も見抜けず一方的に不安がってしまって……」

 

 物凄く落ち込んでいる。何と言うか見ていて背景にエフェクトがついてるくらい落ち込んでいる。……そんな様子の苺さんだが、周囲の警戒と偵察、こちらへの報告と移動に一切の澱みは無い。にも拘わらず凄く落ち込んでいる。なんかもう不気味なくらい差が激しい。

 

「……アダムお前謝っとけよ。アレはどう考えてもお前が悪いし、苺さんの様子ももう見てらんないし」

「いやだ。俺は自分が嫌いな奴には絶対謝らん」

「ガキかお前!」

 

 駄目だ、今の苺さんを前向きにさせる位こいつの説得は難しい。

 仕方ない、同じくらい難しいなら苺さんを応援した方が俺の精神に良い。

 

「苺さーん、カッコいいですよー!」

「そだぞー、凄いぞー!」

 

 何も言わずにZZが乗っかって来た。……言ってから考えるのもあれだが、女性を褒めるときはカッコいいで良いのだろうか? 可愛いとかの方が良いんじゃなかろうか。

 

「か、かっこいいですか? 頑張ります!」

 

 あ、動きのキレが増した。てか滅茶苦茶早い。……いや早過ぎね?

 

「ZZ、目で追えるか?」

「兄貴が無理ならおれも無理」

 

 ……あの人、割と気分に左右されるんだな。元々のパフォーマンスが高すぎてよくわかんないけど。

 

「ケッ」

 

 アダムが露骨に毛嫌いな態度を見せた。一体あいつは苺さんの何が気に入らないんだ。……聞いてみよ。

 

「お前なんかやたら苺さんにあたりキツイけど、何が気に入らないんだ?」

「あ? 強いくせしてうじうじみっともねえところだよ」

 

 ……それはもう完全に個人の事情でしかないだろ。

 

「お前なあ……」

 

 何か言おうとするが、コイツ相手に説得したところで話を聞くとは思えない。そもそも個人的に嫌っている、というしかない以上説得などでどうこうできる問題でも無いが。

 

「お前、ほんとに何でついて来たんだ?」

「最初っから紅以外に用はねえよ。たしか、今代が闘神を襲名してた筈だ。どれ程か見ておきたくてな」

 

 ……今代が? 何かアダムの言葉に違和感を覚える。そもそも襲名制なら毎世代に受け継がれるはずだが。

 

「XXXさーん、遅れてますよー」

 

 と、思考に耽っていた俺の元にそんな声が……めっちゃ遠い。いつの間にか二キロは離れてる。俺別に速度落とした覚え無いんだけど。

 

「苺さんちょっと急ぎ過ぎじゃないですか!?」

 

 慌てて速度を上げるが、全然差が縮まらない。それどころか、更に広がっている。

 

「先行っとくぞ」

「あ、お前俺も連れてけや!」

「うっせえ」

 

 子供の様な暴言を吐いてアダムは先に行ってしまった。何だあいつは、ほんとにガキか。

 

「ちょっとー、苺さん!? その速度は色々まずいですよー!」

 

 このままじゃ本気で振り切られる! ええい唸れ俺のジェット!!

 

 

 

 

 

「すみませんでした…………」

 

 何と言うか、もうこれ以上ない程落ち込んだ様子で苺さんが謝罪してきた。ここまでくると見てて申し訳なくなってくる。

 

「あの、大丈夫です。気にしてませんから」

「いえ、感情に任せて先走ってしまうなんて、忍者としては失格です……」

 

 ……どうしよう。フォローの言葉があんまり出てこない。今回苺さんがミスしたのは事実だが、それは本人が一番認めているだろうし、かといってこれを丸ごと無かったことにするのも……

 

「……分かりました。でも、苺さんは忍者を止めた身です。もう忍者らしくする必要もありません。ただ、もう少し落ち着いてくれれば……」

「すみません……」

 

 いかん、どんどん沈んできている。心なしか速度も若干落ちてきている様な……

 

「そうですよね私が悪いんですこんなだから家は追い出されるし里を抜ける時も失敗するし忍術も五十個しか極められないし……」

 

 何やらもう半分くらい自慢に聞こえる内容を言いながら苺さんがどんどん落ち込んでいく。……言いたくは無いが、この人結構めんどくさいな!

 仕方ない、こういう時は……

 

「ZZ、苺さんを褒めろ」

「分かった! 苺さん、凄いぜ!」

 

 うーん相変わらずのストレート。ただ、本気でこう思っているので苺さん程自己評価が低い人でもZZの言葉は通りやすい。なにせ一切裏が無く言った通りの事を考えているのだから。馬鹿とも言うが。

 

「凄いですか……?」

「凄い! めっちゃ早いし凄い強いし綺麗だしカッコいい!」

「本当ですか? ……ありがとうございます」

「でも何か暗いのは止めた方が良いと思う!」

「ぐふう」

 

 ああっ、苺さーん!

 

 

 

 

 そんなこんなが有ったが、俺達は一応無事目的地へとたどり着いていた。

 今、俺達の目の前に有るのが闘神の一族の住む村であり、苺さんの生まれた地だ。

 

「何と言うか、ちょっと古く見える以外は普通の村ですね……場所を除いて」

 

 何故かそこそこの大きさの村が、突如として現れている。一応道などは整備されているが、周囲にこの村以外の建物は無い。あっても、その残骸くらいだ。

 そもそも、今の地球でコロニーの内部以外大体の場所は環境汚染で毒素に満ちているのだ。普通俺たちの様なサイボーグ以外は活動も難しいはずなのだが……

 その事を苺さんに聞いたところ、忍者は毒に強いし、紅の一族なら毒で死ぬ様な人はいないと言われた。何と言うか、人体ってすごい。

 と、村の中でも二番目の大きさの家の前に立ち、苺さんが大きく深呼吸をした。

 

「……ただいまー」

 

 凄い小声で苺さんが玄関に声を掛けた。いや、それじゃあ気付かない……

 そう思った所でドタドタと凄い音量で駆け寄る音が轟いてきた。アレで聞こえたのか。

 

「あら苺! どうしているの!」

「……そ、その、石榴の成人式を──」

「あんたー!! 苺が帰って来たわよ!!」

 

 扉を開けて出てきた苺さんが二回りほど年齢を重ねたような人──苺さんのお母さん?──が、苺さんの言葉も聞かずに家の奥へと大声を張り上げた。

 と、またドタドタと轟が響いてくる。

 

「おお苺か! いや本当にどうして!」

「……石榴の、成人式に……」

 

 苺さんがそう呟くや否や、大声が轟いた。

 

「それはめでたい!!!」

 

「……え?」

 

 苺さんが困惑している。そして俺も困惑している。

 どういう事だ? 苺さんは家を追い出されたと言っていたが……普通、追い出した人間が帰ってきたらこんな反応になるだろうか。

 だが俺たちの困惑もよそに苺さんのご両親らしき人はハっハっと笑いながら苺さんを抱きしめたり撫でたりしながら家の奥へと連れて行こうとしている。それはどう見ても久々に帰って来た家族を歓迎するそれだ。

 いやほんとどうなってんのこれ。 

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