九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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家族と

「あんたらがあの子を連れて帰ってきてくれたのかい? 感謝するよ!」

 

 そう言って大きな手が俺の頭を撫でる。……なんか不思議な感覚だ。初めて味わう。ちょっとむず痒い。

 しかし俺がそんな事になっている一方で苺さんはもみくちゃにされていた。アレを見ているとむず痒いとも言ってられなくなる。

 

「ねーちゃん久しぶり!」

「久しぶり!!」

「なー、またあそぼ―!」

「遊んでー!!」

「石榴に似てるー!」

「あわわわわわ……」

 

 五人のちびっこが一斉に苺さんに群がっている。苺さんは対応できずに半分パニックになっているようだ。

 ……やっぱり家を追い出されたとかの様子では無いぞこれ。

 

「……あの、あなたのお名前は……」

「私かい? 明星さ! 紅明星!」

 

 ちょっとうるさいくらいの音量で明星さんが言う。苺さんとは真逆の性格だこの人。

 

「苺さんのお母さんで良いんですよね?」

「そうさ! なんだい、お姉さんにでも見えたかい!?」

 

 あっははと笑う明星さんだが、正直割とそう言っても通用すると思う。俺だって関係を把握したのは見た目では無く対応からだ。 

 

「……ちょっと言いにくいんですけど……苺さん曰く、家を追い出された、と言っていたのですが……」

 

 それを口にするなり明星さんが大きくため息を吐いて頭に手を当てた。

 

「……そうかい。……そう思わせちゃってたかぁ」

 

 と、バンと手を叩き勢いよく立ち上がった。そしてズカズカと大股で苺さんの方へと向かっていく。

 

「苺!」

「へっ?」

「すまんかった!!」

 

 いきなり明星さんが地面に頭を叩きつけて土下座した。その衝撃で家が揺れる。……一瞬転びかけた。

 

「ごめんよ、そんな思いをさせちまって……ごめんよぉ」

「えっ、ちょ、お母さん!?」

 

 いきなり土下座した上に号泣し始めた明星さんに、苺さんが動揺する。実際、親がいない俺には分からないがこうなると動揺するものなのだろうか。

 まあ傍から見ている俺も割と混乱しているので親がこうなると動揺するのは普通かもしれないが。

 

「辛かったろう……ごめんよぅ、私らのせいで……」

「え、えっと、ええー!?」

 

 あ、完全にパニックになった。

 

 

 

 

「……えーと、つまり、苺さんを追い出したつもりは無かったと」

「そうさ。……けれど、伝えられなかったら追い出したようなもんさ」

 

 馬鹿だねあたしは、と明星さんが俯いた。こういうところを見ていると苺さんに似ている。

 

「お母さん。……えっと、その、私を追い出したりしたかったんじゃないって言うのは分かったけど……向いてない、とか、そういうの結構言われた気が……」

「実際向いてないからねえ、()()()()()

 

 え、と苺さんが硬直する。

 

「ほら、あんたは昔からあんまり体が強く無かっただろ? 代わりに武器とか術とか能力とかそういうのは得意だったんだけど……家、というかこの村でそういうのに慣れてる奴がいなくてねぇ、誰もおしえられなかったのさ。だから、そういうのが得意な忍者の所に預けてみたんだけど……」

 

 追い出されたって思わせちまったね、と明星さんが再び頭を下げた。

 ただ、苺さんはまだ納得がいかないようだ。

 

「で、でも、私聞いてない……」

「……それはおかしいね。言い方はまずかったかもしれないけど、得意な事教えてくれる場所に預けるっていうのと、あんたに行きたいかはしっかり聞いたはずだよ?」

 

 謎の認識の違いに、苺さんと明星さんが首をかしげる。しかし、俺からすれば何が原因かは大体わかっていた。道中でも散々あった事だ。

 

「あの、苺さん。多分ですけど、向いてないって言われた時点で落ち込んで何も聞こえなくなってたんじゃ……」

 

 あ、と言うしかない表情で苺さんが硬直する。どうやら心当たりがあるようだ。

 それに加えて、苺さんは落ち込むととにかく全ての事を悪い方にしかとらなくなる。普通に聞かれたのを、否応なく言わされた、と変換してしまったのではないだろうか。

 その事を伝えると、今度は苺さんが明星さんに向かって土下座した。それを見た明星さんも土下座をしたので土下座が対面するという不思議な光景が俺の眼前に出現したのだった。

 

 

「……まあ、色々誤解もさせちまったけど、うちはあんたに出て行ってほしいなんて思ってないし、何なら家にいてくれるなら嬉しいさ」

「……本当?」

「本当さ! 可愛い子供がいて喜ばない親なんていやしないよ!」

 

 ぎゅー、と音がしそうなくらい苺さんが抱きしめられる。……あれ、それ抜け出せなくなってもがいてないか。

 

「~!?」

 

 明星さんは気づいていない様子で苺さんの頭を撫でている。いかん、このままだと苺さんが窒息死する!

 

 慌てて気づかせた明星さんは三度苺さんに土下座するのだった。

 

 

 

 さて、状況もひと段落した。しかし、ここで一つ問題が起こる。

 

「あれ、ZZどこ行った?」

 

 家に入るまではいたはずだし、一緒に入ったとは思うのだが……

 と、二階からZZの笑い声が聞こえてきた。

 どうも上にいたらしい。勝手に人の家をうろついていたZZにデコピンをぶちかまそうと階段を上り──

 

 ──何やらアクロバティックな有様に分解されたZZの姿を見た。

 

「……え、何やってんの」

「兄貴凄いぞ! ここの子俺より強い!」

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