九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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大騒動

「グオォォォォォ!!!」

「おわっこのっ! あああああ!!!」

 

 避ける。避ける。避けて逃げる。

 さっき見つかってからというものなぜかこいつは俺だけを追い掛け回してくる。群れの他の奴はZZとアダムに群がっているくせに何でこいつだけ。

 

「くっそ、この、お前もアダムの方に行けよ!」

『こっちに送るな殺すぞ』

「じゃあZZ!」

「あああああああああああああ!!!!」

 

 ……こっちは無理そうだ。ちょっと目線を向けるとものすごい数に追い掛け回されているZZが見えた。と言うかよく逃げれてるなあいつ。そんな足速くないはずなのに。

 

「でも別にこっちは楽にならねえなあ!」

 

 怪物の振るう剛腕をぎりぎりで回避する。あっぶねえ! 

 

「タンマ! タンマ! タンマ!! タンマっつてるだろうがあああああああ!!!」

 

 ヤバい! ヤバい! ヤバい! やばっばばばばbぶびかああああ!!!!!!! 

 

『何やってんだアホ』

 

 上空から光の柱が落ちる。と、同時に途轍もない衝撃に俺は吹き飛ばされた。

 

「おあぁぁぁぁ!」

 

 真っ逆さまに地面に墜落した。あのやろ、俺が頑丈じゃ無かったら死んでるぞ。

 

「おいコラ! 何してくれてんだテメエ!!」

『うるさい。折角助けてやったんだ、感謝くらいしろ。それと、ZZにもな。あれのおかげでこっちに群がってくる奴が減った』

 

 その言葉にZZの方を見ると最早本人がどこにいるのか分からないくらいの数の敵に覆いつくされている姿が見えた。

 

「いや助けてやれよ! こっちよりあっちだろ!」

『見てて面白えだろ。割と問題ねえみてえだし』

『兄貴―、これ凄いぞ、こいつらごちゃごちゃになりすぎててこっちに攻撃出来てない』

「……思ったよりアホだなこいつ等」

 

 そもそも明らかに力量差のあるアダムに延々と襲い掛かっているくらいだ。頭の良さは推して知るべしだろう。

 

「……それでもいつ事故が起きるか分からねえだろ、助けてくれ」

『チッ、わーったよ』

「……あいつ思いっきり舌打ちしたな……そもそもテメエのせいだろが」

 

 アダムを思いっきりぶん殴りたくなってくるが、殴った所で千倍返しにされるだけだろう。苛立った気持ちを抑え込み背負った大荷物を担ぎなおす。

 

「やっぱ重いなこれ……ってかどこまで持ってけばいいんだよ」

 

 疑問を口に出した直後、位置情報が送られてきた。恐い。そして場所が遠い。今のペースだと三十分はかかる。

 

「めんどくせえ……」

 

 愚痴が口を突いて出る。それくらいにはめんどくさい。……と言うか、これ下手したら途中で別の奴に襲われそうなんだけど。

 

「なあアダム、これ『さっさと逝けボケナス』

 

 あああああああああああああああああああああああああ!!! 

 

 いきなりアダムからとんでもないサイズの鉄塊が放たれ、俺はそれに吹っ飛ばされた。ふざけんな! 

 

「ぜってえ許さねえぞあだむぅぅぅぅぅぅあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 痛いし重いしやたら早いし、どうすればいいんだこれ。

 

『目的地まで全自動だ、良かったな』

「どこがじゃぁ!!!」

 

 何も良くない。くそ痛い。てか本当に目的地まで吹っ飛んでいくのか、これ。

 

「……途中で落ちたりしないよな?」

 

 この速度で落ちたら死を覚悟するしかないぞ。……落ちた時用の用意もしておこう。

 

 

「……思ったより普通に着いたな」

 

 用意は無駄になったがこれに関しては無駄な方が良い。それより既に記された場所に来たが特に何もない。この大荷物をどうすればいいんだ。

 そんなことを考えていたら上からよくわからない物が降りてきた。

 

「……なんだこれ」

 

 丸皿を二枚重ねたみたいな形の飛行物体は俺の頭の直ぐ上で滞空している。……もしかしてこれに渡すのか? 

 

「ええっと……あ」

 

 よくわからないので取りあえず差し出してみたら吸い上げられていった。どうもあれが回収装置らしい。

 ともかく、目的は達成した。これでやっと『まだ帰れねえぞ』ふざけんな。

 

「おいコラ、もう十分だろ。あれ明らかに三トンは有ったぞ」

『それ自体は大丈夫だ。……帰れねえのは別件だ、取りあえずこっち来い』

 

 それだけ言うとアダムは通信を切った。……何なんだ一体。

 とにかく来いと言われた以上行くしかない。距離は遠いが、さっきと違って荷物は無い。全速で行けば一分程で着くだろう。

 

「せい。のっ!」

 

 背中からブースターと翼を展開し、空中を飛ぶ。これなら変な妨害も少ないだろう。

 そんなことを考えていると前方から轟音と衝撃波が轟いた。

 

「!? 何……だ!」

『兄貴──ー!!! ヤバい!! 助けて!!!』

「どうした!?」

 

 ZZから通信が入る。明らかに切羽詰まった声色だ。アダムも居るのに何があった!? 

 

『何かちっちゃいやつが出てきてそいつとアダムが口論になって何か戦い始めた!』

「はあ!?」

 

 もしかして今の衝撃波がアダムとそのちっさいやつが戦った時の余波か!? どんな化け物だ!? 

 

「ZZ! そのちっさいやつは何なんだ!?」

『なんか、角生えてるチビ!』

「わからん! もっと具体的に!」

『それ以外言いようが無い!!』

 

 えーい駄目だ! 

 

「取りあえず今のお前の状況は!」

『出来るだけ離れて岩陰に隠れてる!』

「良し、じゃあ位置送れ! そっちに行く!」

『分かった!』

 

 ZZとの通信を切る。取りあえずあいつは無事らしい。

 分からないのは角の生えたチビとかいうやつだ。ZZの話じゃ碌なことは分からなかったが、一つだけ確定していることが有る。

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 その時点で危険度が桁違いとなる。

 アダムの実力は異常だ。今日見たスペックでさえ本気の一割も出していないだろう。前にも惑星の一つや二つなら粉微塵にできると言っていた。恐らく嘘じゃない。

 なら今の相手は? 

 星を壊す事を例えに出来るような化け物と張り合えるような奴だ。

 アイギス。

 最悪の名が頭に浮かぶ。もしこの予想が当たっていたら下手をすると世界が滅びかねない。

 次々と悪い予想が考え付くが、頭を振ってそれをかき消す。今やることはZZの救出だ。例え世界が滅ぶとしてもどうするか考えるのは後で良い。

 頭を切り替えると、俺は更にブースターの出力を上げた。

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