「だああああああ鬱陶しい!」
わらわら出てくる人の膝程度の高さの小型誘導戦車を片っ端から踏みつぶして前進する。こいつらこれで攻撃力が普通の戦車並みなのが恐ろしい。まあこの速さで動いていれば照準も合わせられない。それに食らってもそこまで問題は無いのだ。
と、廊下にまた新しい扉を見つけた。開いてみれば、内部は何かの工場のような作り。
「……兵器連中、この部屋には入って来ないのか」
扉の前でうろうろするだけの戦車共。……あの教室のような部屋はどうだったのだろうか。分かったらこの部屋の性質なのか、全ての部屋に共通した特性なのか判明するのだが。
「ここは何が有るのかなっと」
適当に周囲を探してみるが、これと言って重要そうなものは見つからない。ここも外れのようだ。
「……でこいつらまた相手するのか」
群がる小型戦車たち。虫みたいだ。
戦車を蹴散らし、廊下を進む俺の前に更なる兵器が姿を現した。
砲塔で作られた人型、としか言いようのない何か。一体どんな挙動を……
「うおっとお!?」
恐ろしい速度で腕を広げて回転しながら突っ込んできた。ギリギリで回避はした、だが、砲口からエネルギーの反応が……
ズン、と重苦しい音が響き砲弾が直撃する。
だが、この程度!
「効かねえよ!」
砲撃を踏みつぶす形で剣に変形させた腕で相手を叩き切る。両断された兵器はギシギシと音を立て、動きを止めた。
「これを後何回繰り返すのやら……」
はあ、とため息が口からこぼれる。
少しして、その懸念はより大きな問題となって俺の前に立ちはだかった。
「外れ」
部屋を出た瞬間に巨大なハンマーが叩きつけられる。身を屈めて回避した先に見えた物は、回転する軸にハンマーを取り付けただけの粗雑にも見える兵器。
だがその第一印象は至近距離での蹴りを弾かれた事で一変する。
「んなっ!」
ぐるんと体を回し器用に俺の蹴りを弾き、体勢の崩れた所に加速を付けた一撃を打ち込んできた。とっさに両腕を立てに防ぐが、全身から鈍い音が響く。
とはいえ、この程度で動かなくなる体ではない!
「これでも食らってろ!」
距離を取っての砲撃。
一撃目、弾かれる。二撃目、間に合わずに直撃。三撃目でようやくその兵器は動きを止めた。
「……先行くか」
「外れ」
警戒して部屋を出れば案の定攻撃がカッとんできたので回避。
そこにいたのは……鳥?
機械仕掛けの鳥とでも言うしかない見た目のそれがいた。
直後、それが消える。
「!?」
鳥が消えたことを認識した瞬間、体に何かが突き刺さる感触。こいつ、速い!?
即座に動体視力を上げれば音にも届く速度で縦横無尽に飛び回る鳥の姿が目に映る。この廊下高さ三メートル位だし幅も四メートル無い。
そんな中で音速で飛ぶ頭のおかしい旋回能力。厄介だ。
「っ! 当たらねえ!」
銃撃は照準が合わず、拳なんかでは到底追いつかない。くそ、面倒な!!
「これしかないか!」
地に腕を叩きつけ、一帯にエネルギーを解き放つ。自爆紛いの空間飽和攻撃は……見事に飛び回っていた鳥を粉砕した。
「疲れるんだよな、これ……」
全身に疲労が重くのしかかる。次の部屋では少し休もう。
「外れ」
本棚ばっかで図書館みたいな部屋だ。……少し休憩したら出ていこう。
扉を開けた瞬間に大爆発に包まれた。何だ一体!?
「……おいおい」
軋みを上げながら駆動する、人型。
見た目、体格、そのどちらも俺に酷似していた。
『──XXXType2 戦闘ヲ カイシシマス』
「Type2!?』
あのくそ博士! こんな物まで作ってやがったのか!?
驚愕する俺に構わず、眼前の人型が殴り掛かってくる。ギリギリでそれを避ければ、壁面に当たった拳が鋭い金属音を響かせた。
!? まずい!
回避先に見えたのは砲塔。精密に狙いを付けた砲撃が俺を襲ってくる!
「くそ、この!」
拳を振るうが、あっさりと防がれる。それどころかお返しと言わんばかりの蹴りが俺を吹き飛ばした。
「げっ、まず」
距離を開けられた瞬間にミサイルがこちらに飛来する。広げた盾に、かなりの衝撃と軋む音が響く。
厄介だ。変形の速度やスペック自体は互角か、こっちが勝っているのだが……状況の判断能力に差がありすぎる。このままじゃ負ける!
「っ!」
回し蹴りを屈んで避け、続いたレーザーを転がり躱す。距離、一メートル。
即座に撃たれたミサイルを回避し、距離を詰めようとするが相手の左腕が鞭のようにうねり俺の体を打ち据える。また距離を離された!
「このやろ!」
砲撃、銃撃、レーザー。壁を走りながらそれを避けるが向こうは瞬時に距離を取っていく。だが、それはこっちの作戦通りだ!
「くたばれ!」
全身を巨砲に変形させ、エネルギーを回す。
固定はしない、その時間さえ惜しい。装甲は広げた、この時間で相手の変形能力ならこっちに有効な攻撃は無い!
場所は一本道の通路! 回避は不可能!
「いけえええええええ!!」
体を後方に押し流す強烈な反動と辺りに響く轟音。周囲一帯に亀裂が走り、余波だけで壁が崩れていく。
「……死んだ、か?」
延々と続く通路を埋め尽くすように放ったエネルギーの奔流。それはあの兵器を蒸発させるのに十分な火力を有しているはずだ。
とはいえ、向こうが全力で防御に回れば生きている可能性はあるかもしれない。それも視野に入れ、警戒して進む。
……どうやら、この溶けた鉄があの兵器の残骸の様だ。
「……これも俺みたいな作り方してんのかな」
もしそうだとすれば、脳だけは生身という事になる。自分の意識があったのかは怪しいが……一応、俺は手を合わせた。
「外れ」
湧いて出てきたナナフシに銃を付けたような見た目の何かを粉砕する。
「外れ」
鋼鉄の真球をブレードで真っ二つに。
「外れ」
バッタの群れのような群体を熱線で焼き尽くす。
「外れ」
ガチャガチャと変形を繰り返す立方体を叩きつぶし。
「外れ」
円盤にキャタピラが付き上からアームと銃座が飛び出た奇怪な何かを砕く。
「……部屋に碌なのが無いな」
ここまで見て来た部屋全て碌な物が無い。おまけに、部屋の散策に時間がとられた内に外に兵器が配備されている。流石にあのXXXType2並みの奴はもう出なかったが、それ以外も十分に厄介な連中だ。
「部屋無視で進むってのも一つの手ではあるんだけど……」
しかし、俺にどの部屋が重要な部屋か判別する方法が無い。無視していくと重要な物を見落としてしまう可能性が非常に高いのだ。
「……そもそもこの通路の先が何なのかも分からないしな」
第一目標は脱出なのだが、それがこの通路の先に有るとは限らない。どっかの扉が出口でした、も十分にあり得るのだ。
「……だからと言って一個一個開けていくと本気でジリ貧で死にかねないしな」
悩みどころだ。さて、どうするか。
ジリ貧を受け入れ全ての部屋を開けていくか、見落とし覚悟で廊下を進むか。
……よし。
「突っ込むか!」
悩むだけ面倒、そしてジリ貧は趣味じゃない。安全策は自分の身に適用する物、状況には攻めの姿勢で行く方が好みだ!
「そうと決まれば!」
現れたいびつな形状の人型を粉砕し、背中にブースターを展開する。全速全身だ!
「うおおおおおおおおおおお!!!!!!」
音越えの速度で通路を進む。視界の端に複数の扉が映るが、もう知った事か!
ガリガリと背後から響く何かが削れる音も、何かの駆動音も俺には追いつけない。ハハハハハ! この調子で突っ走って行くぜ!