九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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合流

「……アダム、また何かやらかしたのか?」

 

 天を覆う肉塊と機械群が消え去ったかと思いきや、少し離れた場所で大量の光と兵器が激突していた。間違いなくアダムが関わっているが、一体何があったのか。

 

「まさか喧嘩売ったとかじゃ無いよな」

 

 ……自分で言ってその可能性の高さに頭を抱える。

 なにせアダムは自分の非を認めない。どう考えても自分が悪い状況でさえ絶対に謝罪はしないし、引かない。

 例え謝罪したとしても本当に口だけの事も多く、基本的にあいつは人と関わるのに向いていないタイプの馬鹿だ。

 ……うん、マジで何かやらかした可能性が高い。

 

「話こじれる前にどうにかした方がいいな」

 

 そう考え、俺は最後に爆発の起こった方向へと走り出したのだった。

 

 

「それで、どうするんじゃ? 一応のしておいたが」

 

 倒れ伏したレオカイゼンの背を踏みつけ、天道がアダムに聞く。

 ガチャガチャと全身を修復していたアダムは、面倒くさそうに答えた。

 

「ほっとけ、最初からそいつらが目的じゃない」

 

 その言葉に、それなら、と天道がレオカイゼンを投げ飛ばし、視界から消し去る。

 そして極が、氷漬けのクリテルマを指さす。

 

『こちらはどうする?』

「放置」

 

 そう言ってアダムは一顧だにせず、王宮へ向かって歩き始める。

 そこへ俺は全体重を掛けた飛び蹴りをぶち当てたのだった。

 

「アホ―!!!!」

「ってえな! んだコラ!」

「げがっ!?」

 

 ……蹴りが当たったのは良いが、一ミリもアダムがブレなかったせいで弾かれた挙句、反撃を貰って壁に叩きつけられた。ぜ、全身が……。

 

「何だいきなり、用が有るなら口で言え、脳みそ腐ってんのか」

「暴力に訴えるしか能の無い奴に言われたくねえ……」

「お前も暴力に訴えて来たじゃねえか」

 

 ……確かにその通りではあるのだが、どうしても釈然としない。お前が言うな、という感情が先に出てくる。

 ただ、今はそれを指摘する時じゃ無い。

 

「アダムお前何やった? 明らかに何かもう色々駄目だと思うんだけど?」

「売られた喧嘩買っただけだ」

「少しは我慢を覚えてくれ……」

 

 ……ええい、明らかにまずい。何か凄そうな人が氷漬けにされてるし、さっきは別の人が空中を飛んでいった。どう考えてもアダムらはここの人たちと敵対してしまっている。

 

「……アダム、今どんな状況だ? 知ってる事言ってくれ」

魔界(ここ)の連中の頭みたいな十王って奴らと揉めた。一応向こうからやってきたが」

「本当に抑えてくれよ……」

 

 こいつに喧嘩を買わないって選択肢は無いのか? ……ないだろうなぁ。子供に悪口言われただけでキレて追い掛け回す奴だし。

 

「……とにかく、来た目的が俺の記憶を戻せる人を探しに何だから、もうちょっと、こう、相手の心証が良くなる行動を……」

「んなもん馬鹿二人(天道と極)が暴れた時点で最悪だろ。後できる事は精々脅してさせる程度だ」

「……お前、ほんとに力押し以外の手段がないのな」

 

 ……ああもう、色々と駄目だ。天道さんはなんかまだ酒飲んで酔っ払ってるし、極さんは抑える気も無さそうだし。

 ……もういっその事この二人を全部の主犯に仕立て上げて引き渡してやろうか?

 

「やめとけ、抑える手段が無い」

「……うあああああああ」

 

 頭が痛い。何でこうなる。何かしたか、俺。……いや、ちょっとしたな。

 

「取りあえず、アダム。お前この二人見張っといてくれ……俺は記憶戻せる人探すから」

「分かった、一応やっといてやる」

 

 よし、これでこれ以上の面倒事は防止できた。ここからは純粋な捜索だけだ。

 

 

 アダムと別れて十五分、既に捜索は行き詰っていた。

 

「……俺も一応追いかけられてたな」

 

 失念していたが、俺は警察署からの脱走で追われる身だ。しかも予想外に情報の出回りが早く、街中には既に俺の顔がばらまかれている。

 

「聞き込みどころじゃないな……一旦王宮に行こうと思ってたけど、無理そうだ」

 

 どうも手紙は王宮を指しているらしいのでそこに行きたいのだが、ここまで手配されてしまっているともうまともに出歩く事すら難しい。

 

「一応変装はしてるけど、近くで見たら直ぐバレるだろうし……」

 

 どうしよう。

 もういっその事適当に顔でも変えていけば楽なのだが、厄介な事に自分の顔と言う物は結構曖昧だ。下手に変えると元に戻せなくなってしまう。

 

「……アダムに言っとけばよかったな」

 

 あいつなら俺の顔位簡単に変えられるだろうし、元の顔にも直ぐ戻せるだろう。しかし、別れたいま、アダムに会いに行く手段は無い。向こうは俺以上に追われる身だ。

 

「しゃーない、何とか誤魔化して行くか」

 

 ガチャガチャと体を組み替えていく。何か適当に犬辺りにして……

 

「あにきいいいいいいいい!!!」

「ごっ!?」

 

 唐突に突進してきたZZにその体は吹っ飛ばされた。こいつ、ちょうど軽くなってるときに……!

 

「おい、ZZ、テメエ、前、見とけ……」

 

 ゴロゴロと転がったせいで目が回る。吐き気の機能は無いが、気持ち悪くはなるのだ。

 

「兄貴、ヤバい、何か変な人に追いかけられてる!」

「人の話聞け。……変な人?」

 

 ZZを追い掛け回すとなるとまあ変な人だ。こいつをわざわざ追いかけてもメリットは無いのだから。

 まあ多分こいつが何かやらかしたのが原因だろうが。

 

「お前何かやったんじゃねえの?」

「部屋に勝手に入った位しかしてない!」

「馬鹿野郎」

 

 それは十分やらかしたって言うんだよ。

 

「さっさと謝れ。そして罰を受けろ」

「死ぬ! あの人めっちゃでっかい火撃ってきたもん!」

 

 ……微妙なラインだな。やり過ぎと言うにはZZのやらかしが大分でかい。向こうからしたら蠅を掃う感覚でやってきているってこともあるし。

 

「どんな人だ?」

「何か悪のボスっぽい女の人」

「馬鹿野郎」

 

 女性の部屋に勝手に踏み入ったらそりゃまあそうなるだろう。大人しく怒られろ。

 

「でも、何か向こう殺そうとして来てんだけど!?」

「……うーん」

 

 流石に殺すまで行くとやり過ぎな気もする。まあ向こうの性格にもよるが、謝って駄目なら逃げよう。

 

「あと何か侵入者を追うとか何とか言ってた!」

「馬鹿野郎!」

 

 バーカ! 早く言え! 完全に敵状態だ!

 

 そんな俺の内心の悲鳴をかき消すような爆発音が、直ぐ近くで響き渡った。

 

「おや、手配書で見た顔だな。侵入者の一味か、纏めて死ね」

 

 威圧の籠った声が響くと同時、手のひらに圧縮された太陽が出現した。

 絶対ヤバい奴だ!

 

「逃げろおおおおおおお!!!!」

 

 全力で飛びのいた上、ブースターを展開して距離と速度を稼ぐ。

 その上で尚、足先が高熱に巻き込まれた。

 

「っつ!」

 

 痛い。いや、熱い? もうそんな感覚も分からない程の超高熱。多分、足首から下は溶けたと思う。

 

「ZZ! 無事か!」

「おれは大丈夫! 兄貴は!?」

「ちょっと足がやられた!」

 

 言いながらもZZを担ぎ、女から距離を取る。だが、その試みを吹き消すように無慈悲な声が響き渡った。

 

「その程度では到底逃げられんぞ?」

 

 瞬間、背後に途轍もない熱を感じた。

 反射的に後ろを見れば、先ほどの火球が視界を数で埋め尽くしている。

 駄目だ、これは。

 

 ZZを前方に投げ飛ばし、耐熱壁を展開する。どこまで効果があるかは分からない、無駄な可能性の方が遥かに高いだろう。

 だけど、それでも、ZZの為だ。やるだけやって──

 

 爆発が起きる。

 百万度を優に超える圧倒的な獄炎は、しかし、都市のほんの一部、精々半径五十メートルほどの円球を溶解させた程度で止まる。

 その範囲外には一切の熱が漏れず、範囲内から異常高温が漏れることも無い。

 たっぷり一分。熱は範囲内を焼き尽くし、そして急速に収まった。

 

「ふむ、死んだか。……随分脆いな、他の侵入者は強者だと聞いていたが」

 

 腑に落ちない様子で首を傾げ、それでも女──レヴはその場を立ち去ろうとし……

 

 黒雷がその背に突き立った。

 

「何!?」

 

 反射的に振り向けば、融解した地の中心、すり鉢状に削れたそこに、女が立っていた。背後には、先ほど焼き尽くしたはずの二人の姿。

 

「いえーい! 666ちゃん登場! 二人とも、私を崇めろ! そして敬え!」

 

 ……死んだと思ったら何か変な人に助けられた。トラブルはまだまだ続きそうだ。

 

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