「……何のつもりだ、666」
「何のつもりと言われても。私は私の好きな方に行くだけだぜー!」
テンションを上げてその場でくるくると回り始めた怪人物──666? から目を逸らし、背後のZZを確認する。
「無事か!?」
「大丈夫!」
よし良かった。それじゃあさっさと離れよう。何かあの人関わっちゃいけない雰囲気が
「にーがーさーんーぞー」
「うわあああああ!?」
何か触手みたいなので捕らえられた! ええい、絶対まずい奴だこの人!
「へいへい。私助けたんだよ? お礼は? お礼」
「……ありがとうございます」
逸らせるだけ目を逸らしながら言う。
何となくなのだが、目を合わせる事すら危険だと本能が訴えてきている。
「うーん誠意が無い。誠意としてこの場で死んでもらおう」
「助けた意味は!?」
やっぱヤバい人だ! 話が通じているのかよく分からん!
「……666、殺すなら早く殺せ。侵入者だ、それも王宮への襲撃犯の一味のな」
「じゃ止めた。面白そうだし」
唖然とする表情の女性を他所に、666さん? は俺達を触手で抱え込んだまま上空へと飛び去った!?
ぎゃああああああ!
くそ痛い! 加速が、加速が!
風圧もヤバい! どんな速度だ!?
「へーい! 無事! 無事じゃないならよかった! 無事でもよかった!」
「……あんまり無事じゃ無いです」
あんまりな加速度のせいで全身が痛い。触手で抑えられていない場所以外はもげるかと思った。
……ZZは大丈夫か?
「ZZ、無事か?」
「頭いたい……」
……触手に半分握りつぶされるようになっている。粒子化できないとぐしゃぐしゃだろう。
「あの、666、さん? 弟が割とまずい状態なんですけど」
「あほんとだ。えーい」
そう言って触手を更に握りつぶしたかと思いきや、いきなりパッと放した。……そしてそのままZZは落下していく。
「掴まれ!」
「らっ!」
変な掛け声ではあるが、伸ばした足に捕まる事は出来たようだ。
ええい、この人めちゃくちゃだ。明らかに味方では無い。
……ただ、敵だと言う訳でもないようだが……全く行動が読めないのだ。
「二人とも―、私は君らの事をよく知らないんだー。自己紹介お願いします」
……言っていいのだろうか。良くない事になりそうな気がするんだが。
「ZZ! よろしく!」
「言いやがったよコイツ」
躊躇が無い。警戒も無い。もう少し慎重になってくれ。
「成程。そっちのは?」
「……XXXです」
へー、とまるで興味が無さそうな返事が返って来た。
この人、行動の目的がコロコロ変わってないか?
「二人とも、あんな所で何してたのー? 見た感じちょっと変な人間みたいだけど」
……目的を言うか、否か。……まあいいや、既に名前は言っているし、向こうが駄目ならもう駄目だろう。ヤケでも言っておけば何かあるだろ。
「ちょっと記憶を無くしていまして。それで、それを戻せる人を……」
「記憶かー。私は苦手だね、ぶっ壊すのは得意だけど。やる?」
「遠慮しておきます」
絶対ダメだろ。
「そっかー。まあ気が向いたら言ってね、準備はしてるから」
しなくていいです。言わないので。
……それはそれとして、目的地に行くのに最もマシな手段はこの人を頼る事だが……さてどうしよう。
素直にあの宮殿が目的地だと言うか、それとも降ろしてもらって自分で行くか。
……どっちの選択肢も問題は、この666さんが言う事を素直に聞いてくれるかなのだが。
「なー、666さんってさー、悪魔なの?」
「そだよ? それもただの木端じゃあない。かつてこの魔界をちょっと滅ぼしかけて封印もされかけた、かの暴君の大火に合わせ生まれた、666体の悪魔を接ぎ合わせた超悪魔だ!」
……聞いている限りでヤバい事しか言っていないが、そっちに意識を向けても何にもならない。今はこの666さんを誘導する方法を探さないと。
……面白い方に行く、とは言っていた。案外宮殿にそのまま突っ込んでくださいと言ったら突っ込んでくれるかもしれないが……多分その後大惨事になる。具体的には、俺達が襲撃犯になってしまう。
「何ができんの?」
「願ってくれたら大抵の事は! 当然対価は貰うよ? 願いをかなえるかは私の気分によるけど!」
何か色々最悪な事を言っている。もうそれ命がけのギャンブルじゃないか?
「じゃあお金くれっていったら出せる?」
「出せるよ! 対価は地球人口の八割で!」
「おいZZやめとけ詐欺の領域だ」
いくら何でも見合わないだろ。なんなら最悪八割に本人も含まれかねない。
「……666さん、あの宮殿まで連れて行ってくれませんか?」
「いいよ!」
言うなり音越えの超高速でカッとんでいく! しかし今回は何となく予想はしていたので対策はだめだいてえええええええ!!
「わっははー! 待ってろ魔王! この666様が滅ぼしてやるぞ!」
「僕たちは巻き込まないでください!」
ヤバい最悪な事言い始めた! これは到着した瞬間に逃げないとまずい!
……いや、気分次第ではあるが、ちょっと賭けてみるか。
「666さん、安全に僕らを王宮に降ろして解放してくれませんか!」
「願いかな? 腕貰うよ?」
「……腕なら!」
はいよ、と軽い返事の後、触手が俺の腕をもぎ取った。
その直後、ふわりと体が浮き上がり王宮の尖塔へ降りる。どうやら願いは叶ったようだ。
「出てこい魔王! この666が直々に引導をなんかしてやるからな!」
俺達を降ろした666さんはもうこっちに興味を無くしたようで王宮に殴り込みをかけている。うわあ、衛兵がゴミのように……
「っと、見てる場合じゃ無いな、探さないと」
もがれた腕を速攻で直し、さっさと下へ降りる。
さてここからが問題だ。アダム曰く、手紙は王宮を指している。だが、それ以上の情報を俺達は持っていないのだ。
つまり、俺達はこの半壊した上666さんが襲撃を掛けている戦場のような場所で、記憶に関わる力を持った人を探さないといけないのだ。
「……無理じゃね?」
「兄貴なら出来る!」
「無責任!」
ええい、やってみるしかないか。とはいえ、探す方法すら怪しいぞ。こんな状況で見知らぬ人間が入り込んでいるなんて間違いなく駄目だし。
「……とにかく、偉そうな人を探してその人に頼み込んでみるしかないな」
誰に話しても駄目ならば、えらい人が寛容な可能性に賭ける位しか無い。……ぶっちゃけ駄目だとは思うが、もうここまで来てしまったのだ。
「ZZ、辺り見張ってくれ。俺も警戒していくから」
「分かった!」
崩れた天井から王宮の内へ入り込む。
形状的にどうやら廊下に出たようだ。周囲に人はいないが……ちょっと見られるだけで一瞬でバレるだろう。
「こっそり行くぞ、分かったな」
「了解!」
静かにしろ!