「予想はしてたけど随分食いつくな。そんなに金が欲しいのか?」
「当たり前の事を言うな。さっさと話せ」
仕方ないなー、とわざわざ勿体ぶってラロが話始める。
「今から三日後、久々にワールドゲートが開く。そうなると当然異世界との取引が始まる訳だが……俺はその繋がる先の情報を持っている」
「嘘くさいなおい」
そもそもワールドゲートが開くという時点で真偽が滅茶苦茶に怪しい。あれアイギスが来てからずっと閉じてただろ。
それにどこと繋がるかなんて物は三角屋根の上層部が秘匿している筈だ。まかり間違ってもこんな住所不定無職の男が手に入れて良い情報では無い。
「信じられないだろうけど事実だ。確かなソースがある」
「食用ソースの方がマシじゃ無いのか」
こんな事言ってくるソースはもうその時点で色々アウトだ。例えアダムが言ってきたとしても俺は信じないぞ、こんな物。
「それが本当なんだなあ。なにせ、三千屋敷で手に入れた情報だからな」
「三千屋敷?」
何でここでその名前が。というか、アダムでもよく分かっていない奴らと接触できたのか? 騙されているだけな気がするが。
「前々から噂には上ってたんだけどな。幾つも伝手を辿ってようやくたどり着いたのさ。いやあ、苦労した!」
……一体こいつは何に出会ったんだ? もしかしてマジで本物にあったのか?
「んでまあ、金の稼ぎ方なんだが……これは単純だ。売るのさ」
「売る? 何を?」
「そりゃ色々だよ。向こうには無くても、こっちには多く有る物だ。何でも拾える石でも相当な値で売れるらしいぜ?」
……怪しい。怪しいにも程がある。
何が一番怪しいって、俺にこんな話をしている事だ。儲け話は他人に話さないから価値があるのに。
「お前俺の事騙そうとして無いか? 明らかに何もかも胡散臭いんだが」
「ふっふっふ。俺がそんな間抜けな騙しをするはずがないだろう?」
……ちょっと考えてみたがこいつはしてくるという結論になった。
取りあえずこいつの事を詐欺で突き出して──
そんな事を考えていた俺の頭上へ、光が落ちた。
質量を伴い照射点を押しつぶす光の柱は地盤を貫き、破壊を一点へと叩きつける。
恐るべきことに破壊は極めて精密であり。人間一人分ちょうど潰せる以外には一切の被害を出していない。
この精度、威力、間違いない、政府の兵器だ。
「っ!? 何、なんだ!?」
本当にギリギリだった。
偶然その場を立ち去ろうとしていた瞬間だったので反応……というより偶然の回避が通用したが……次は無いだろう。
「うわ、もう来た。おーいXXX、頑張って逃げろよ」
「テメエ! 何か関わってんのか!?」
「さっき言っただろ、ゲートとその先の世界の事だよ。激やば情報何で知ったやつ片っ端から消そうとして来てる。まあ知ってる奴が増えたらそれだけ攻撃も分散するぜ」
あばよ! と言って能力を使ったのかラロはとんでもない速度で駆けだしていく。
一方残された俺は、呆然と佇んでいた。
「……マジなのか?」
知った瞬間政府が消しに来る程の情報。内容は兎も角、信憑性はこれ以上ない程に高まってしまった。
「……あの野郎、質悪いな」
多分あいつも攻撃を受けていた……いや、ラロだけじゃ無い。
いくら何でも政府から目を付けられて完全個人でどうこうできるとは到底思えない、間違いなくあいつには協力者がいる。
そこまで考えた所で、俺は当たりを見渡した。
「……びっくりするくらい誰も反応しねえな」
何度かこの光景は見たことが有る。
政府の思考制御システムが作動した瞬間だ。
何百万と居る人間の意識に干渉し、都合の悪い事を知る事が出来ないようにするとんでもシステム。例え今ここで俺が件の情報を叫んでも誰にも聞こえないだろう。
「だからあいつ俺に言ったのか」
思考制御システムに組み込まれていない奴なんて限られている。それこそアイツのような能力持ちの超アウトローか、そもそもコロニー内で生活していない超人、或いは取り外せるだけの権力持ちに、闇技術。
「……あいつ本気でヤバいとこ関わってそうだな」
考えれば考える程リスクは大きくなり、それに比例して情報の信憑性が高まっていく。
少し頭の回る奴ならこの情報の抱える事情には直ぐにたどり着くだろう。そして、そいつらを止める手段は強硬手段以外に無いのだ。今頃政府の担当者は頭を抱えている筈だ。
さて、こんな状況に陥ったのが普通の人間なら即座に全力で逃げ始めるのだろうが……生憎、俺は普通じゃない。
「ラロ、俺も色々あるんだよ」
あいつの思惑に何て乗るつもりは無い。一々逃げ回る事なんてしなくてもいいのだ。
「……もしもし、相談局ですか。R941AのXXXです。担当者をお願いします」
そう言った瞬間音声が切り替わり、向こうから声が掛かる。俺は澱み無く話始めた。
「割と知ったらまずい情報を知りました。内容を説明するので対処をお願いします」
先ほどの件を話しながら、俺は内心でため息を吐く。
どうあがいても政府からは逃げられない。だが、俺は出自的に政府は保護しなければならないのだ。
それこそ、普通なら消さなければならない情報を知ったとしても、融通が利いてしまう程には。
迷惑な事にそれだけ重要視されている癖に向こうは俺の事を恐れているのだ。研究所との繋がりがないかどうか、あれだけ調べておいてまだ不安がっている。
「はい、ありがとうございました」
定型文を返して通話は終了した。ラロの思惑通りなら今頃俺は逃げ回ってあいつの事を助ける事になっていたのだろう。
しかし俺の処分はこの情報を消す事だけ、アイツの予想は大きく外れたのだ、ざまあみろ。
「おっと、アダムに情報は送っとかねえと」
危険な情報ではあるがかなりのリターンは有る物だ。単に消されるのは惜しい。
普通にしていれば問答無用で思い出せなくなるが……アダムに記録を送って置けば、後から戻せる。
残念だったなラロ、お前は利用されるだけなのだよ!