九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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一攫千金を夢みて

「よーし集めるぞー!!」

「おー!!!」

 

 三千屋敷を出て三時間、俺達は元気であった。

 情報は確定、ワールドゲートは開き、異世界との交流がある。そしてそこでこちらの物を売れば相当な値が付く。

 大儲けのチャンスではあるのだが、幾つか問題がある。

 一つ目は、どんな世界と繋がるか分からない事だ。

 アダムの行動で聞きそびれてしまったのもあるが、冷静に考えると元々政府に秘匿されている情報である。別にラロの野郎も大っぴらに喧伝した訳では無いのに追われていた。俺達もどこと繋がるかを知って、行動から知った事を読まれたらまた追われる事になる。

 という訳でどこと繋がるかの情報は無し。

 ここから儲けを出す方法としては、兎に角何でもかき集めておく事が一番だろう。

 何か一つ大きい当たりがあれば一発逆転も夢では無い。

 しかし、そこに二つ目の問題が襲い掛かって来た。

 

「金が無え!」

 

 資金問題である。

 別にそこらの石ころを集めるだけでも売れると言うなら良いのだが、売れた所で大量にある物は他の人も売り出して価格が暴落する。

 つまり、余り大量にある物では無く、その上で異世界側では高価な物を集める必要があるのだが……そんな物を、大量にそろえるとなると当然金が要る。今の俺の残金では碌な物は買えない。

 

 と、言う訳で買う以外の調達方法、尚且つ簡単に入手が出来ない物。

 即ち──

 

「兄貴、何か凄い木!」

「俺も見た事無い鉱石を取ったぞ」

 

 ジパングに残っての採集である。

 ここの物ならよっぽどの実力が無いと持ち帰るどころか漁る事さえ不可能だろうし、もし異世界で売れなかったとしてもそもそも普通に高く売れる物が殆どだ。決して損はしないだろう。

 

「……こういう虫はどうなんだろ」

 

 そんな経緯で俺とZZはジパングにて色々な物をかき集めていた。因みにアダムは不参加だ。あの後物凄く信じられない程珍しい事に俺達に謝って来た後、どこかへと行ってしまった。多分政府に報告しにいったんだろう。

 アダムがいないと危険ではあるが……対処できない相手ばかりでは無い。

 例えば、今出てきた亀だか鳥だか分からない奴とか。

 

「しゃオラァ!」

 

 思いっきり腹の部分を蹴り上げる。上はミサイルも通らなかったとんでも強度だが、下側は徒手でも十分なダメージがある!

 ぐえ、と呻き声を上げた謎生物の腹へ、展開したブレードを突き立て開き切った。

 ドバドバと血が出てくる。……もろに被った、べたべただ。

 

「……甲羅は高くなりそうだな」

 

 今いる場所は森に囲まれた湖の湖岸。周囲の見渡しが効き、ヤバい奴が来たら直ぐに分かる場所である。

 念の為周囲を確認した俺は、全身の掃除も兼ねて生物の死体を抱えたまま湖へ飛び込んだ。

 透き通った水、そしてその向こうに見える最低でも二十メートルはある大きさの生物たち。

 滅茶苦茶恐ろしい光景ではあるのだが、この生物たち、こっちには特に何もしてこないのだ。どうも小さすぎて獲物とみられていないらしい。

 

「……まああんまり長居もしたくは無いなっと」

 

 死体の甲羅から肉を引きはがし、擦る。本当は道具を使った方がいいのだろうが俺達なら素手で十分だ。

 

「……これで三十二個目か」

 

 洗い終わった甲羅を収納庫へ入れ、呟く。どれもこれもかなりの価値がある……と思いたい品ばかりだ。

 

『ZZ、そっちは?』

『何か光る石見つけた!』

 

 向こうも順調なようだ。

 俺と違って戦闘が不得意なZZは隠れながらの採集を担当してもらっている。正直、勝手についてこられたと言っていいのだが……大分助かっている。今度あいつの好きなお菓子でも多めに買ってやろう。

 

「さて、俺ももうちょい──」

 

 頑張るかー、との声が響く前に地面の揺れがそれを阻んだ。

 ……地震? いや、コレ、何か持ち上がって──

 

 メキメキと地がめくれ上がり、そこから俺の身長が砂粒に見える程巨大な"目"が覗いた。……目?

 

「……嘘だろ」

 

 目が上に上り、次は口、顎、首、胴……途中からは大きすぎるせいで判別すらつかなくなっていたが、多分この順番だとは思う。

 でかい。でかすぎる。

 輪郭こそ概ね人型ではあるのだが、その大きさの次元が違う。頭の部分に至っては雲を突き抜けてまるで見えない。

 

『ZZ! 大丈夫か!?』

『兄貴は心配性だな! あんな地震でおれがやられるとおもってんのかー!』

 

 ……気付いて無い? いや、あんなのどこに居ても目に──

 そこで俺は気付く。一つだけある、あの超巨体が目に入らなくなる場所が。

 即座に位置情報を確認すれば、案の定。

 

「……あいつ、あの化け物の上だ」

 

 地より立ち上がった、尋常ならざる巨体の何か。その……多分肩か? そこへZZは乗っかってしまっている。

 

『ZZ! そこから動くなよ!』

『えー、あっちに綺麗な草あるのに』

『いいから動くな!』

『分かったー』

 

 暢気なZZに警告を飛ばし、あの化け物へ走り寄る。

 ZZが気付けば、パニックになるか喜んではしゃぐか、どちらになっても面倒な事になる。ならその場に止まってもらって俺が回収するのが一番!

 

「大人しく待ってろよ……」

 

 全力で走っているのだが、余りに大きすぎて近付いた気がしない。とはいえZZとの距離はそこまで離れていなかった、縦座標的にはもう同じ位の筈!

 

 思いっきり踏み込み、空中へ飛ぶ。展開したブースターを全力で唸らせ更に上へ。

 飛行機雲を作りながら山が足首程の高さの巨体へ近づけば、その途轍もなさがより目に入る。

 

「……この化け物、森が体に出来てやがる」

 

 土と木に覆われているのか、それとも色的に目に突きづらいのか分からないが、肌らしき場所は見えない。一面を覆う緑とその合間に見える土色が、そこに森が有る事を伝えている。

 

「でかすぎるだろーがよ!」

 

 立ち上がっただけでまだ一歩も動いていないが、この化け物が人と同じように動いた場合、ガイアコロニーすら踏みつぶせるだろう。

 

「一体全体何なんだ!」

 

 理不尽に文句が漏れる。別に何かした訳でもないのに、何でいきなりこんな

「────!!!!!」

 

 

 バン、と耳元で音が鳴った。聴覚が強制的に遮断された? 一体何……が!?

 

 そこでようやぐるぐると回りながら落ちていく体に気が付いた。

 慌てて姿勢を整え再び上に飛ぶ。畜生! かなり落ちた!

 

「……何された?」

 

 聴覚の強制遮断は、耳の機能を超える音が来た時に保護する為の物だが……この化け物が叫んだのか?

 

「……まずい!」

 

 予測が当たっているなら肩に居るZZは俺よりずっと強い音を聞いた筈だ。無事でいる保証が無い!

 

『ZZ!? 無事か!?」

 

 ……返事が無い、まずい、まずいぞ!

 

「こん……っのお!!!!」

 

 更にブースターを増やし、その上で体を電磁投射機構を作って吹き飛ばす。急げ、急げ、急げ!!

 

「ZZ!」

 

 地面から飛び立って三分後、化け物右肩の森で倒れ伏すZZを発見した。

 意識は無い。だが、まだ呼吸はしているようだ。必要ないので疑似的な物ではあるが、生存の確認には使える。

 それを理解してほっと胸をなでおろす。

 ……俺が付いていれば。

 

「……兎に角、一旦コイツから離れないと」

 

 今のままだともう一度こいつが叫んだだけで俺も倒れてしまう。この状況でそれは避けたい。

 

「一旦ZZを縛って、と」

 

 周囲の蔦をちぎってZZを体に縛り付ける。ワイヤーの方が良いのだが、あれは下手をするとZZを傷つけかねないのだ。

 

「この化け物の対処も後で考えねえと!」

 

 勢いを付けて飛び立つ。

 出来るだけ防御を展開してはいるが、化け物がこっちを狙ってきたらその時点で終わりだ。

 だが、嬉しい事に化け物は佇んだまま何もせず、俺は安全に奴から離れる事が出来たのだった。

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