九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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災禍の中で

「ぎゃああああああああああああああ!!!!!」

 

 背後から来た衝撃波が俺の体を吹き飛ばす。途中で回収したZZは俺の前に置いているので無事だろうが、背中にとんでもない物がぶつかったぞ!?

 

「痛ってえ! くそ、マジで何なんだ!」

「兄貴、後ろ凄い事なってる!」

 

 ZZが叫ぶが、そっちを見ている暇は無い。足を止めて巻き込まれたら即死だ。

 

「ZZ! 歯食いしばってろ! 今から急ぐ!」

 

 返事を待たずに最速形態をとり、速度を上げる。

 瞬間的に極超音速まで加速し森の上空を飛ぶ。この速度だと言うのに、背後からの衝撃が尚も横を追い抜いて行った。

 

「だーもー! こんな事ばっかりだな!」

 

 

「ぬぅん!」

「せぇい!!」

 

 拳がぶつかり合い、地鳴りの如き轟音が響く。

 ダイダラの拳は地形そのもの、山脈が落ちると何ら変わらぬ一撃は、子供の拳と同じ大きさの拳打によって弾かれた。

 

「そぉら!」

「は!」

 

 右手を引き、左拳を叩きつける。

 圧倒的な巨躯にも関わらずその動作は軽快な物。比率として人間と何ら変わらぬ動きから放たれる拳の速度は常識を遥かに超え、見かけを超える威力となっていた。

 だが、その拳が再び競り負ける。

 

「寝起きで鈍ったのではないじゃろうな!」

「まぁさか、こっからさぁ」

 

 拳の次は蹴り。単純な物だが、サイズが違う。

 地平線が降ると見紛う蹴りは、やはり蹴りによって防がれた。

 一見すれば何も無い所で吹き飛ばされているようにも見えるダイダラの挙動ではあるのだが、本来の天道の身体能力からすればこれで済んでいる事が奇跡的だ。

 

「そら!」

 

 踏み込みと共に、大地は疎か、地球と言う惑星を粉砕きにする一撃が振るわれる。

 天道の身体能力とはそれ程のもの。たかが成層圏へ届く程度の体格で対抗しうる物では到底無い。

 即ち、それに伍するダイダラの力が途方も無い物なのだ。

 

「ぬぅん!」

 

 天道の拳をダイダラの肘が止める。

 傍から見れば地表に叩きつけられたとしか見えないそれは、地上百センチの所で相殺されていた。

 

「……成程、少しは鍛えたようじゃな」

「今度ぉは勝たせてもらうぞぉ」

 

 ダイダラが動く。()()()

 彼のスケールから見て尚高く飛び上がった所から繰り出される、全体重を乗せた両足蹴り。

 それは、大陸を揺るがし、プレートを歪ませる……という矮小な物では無い。

 そこにある物が星であろうと貫き砕く、巨大な槍。

 今まさに振るわれたそれは──天道の回し蹴りによって受け止められた。

 

「中々じゃ! が! まだ! 届かんぞ!」

 

 追撃。

 再度体を捻り、もう一度回し蹴りを放つ。

 それは空に打ち上げられたダイダラの足を打ち抜き、ぐるんと一回転をさせた。

 

「……ぉぉぉぉおおおおおおお」

 

 地響きのような声が段々とその大きさを増す。それは回ったダイダラの頭部が、地面へと近づいているからだ。

 

「六戦、六勝じゃ!」

 

 全体重を乗せた渾身の一撃が、ダイダラの額を打ち抜いた。

 

 

 

 

 鳴り響く轟音を背後に、戦いから逃げる。万が一にでも巻き込まれれば終わりだ。

 

「兄貴! 上から岩飛んできてる!」

「分かった!」

 

 背後を視野に入れ、飛んできている岩とやらを確認し……それが山のような大きさであることを知る。

 できればミサイル当たりで砕いて回避しようとした思惑は外れ、俺は思いっきり軌道を変える事になった。

「ZZアレは岩じゃ無いだろ!」

「岩みたいな物じゃね?」

「アレは多分山って言った方が良いぞ!」

 

 ZZに文句を言ってから辺りを見渡す。そこら中に岩だの土だの木だのが降り注いている。これはもうここに居るのは無理だろう。

 

「アダムー! 通信に出てくれ!」

 

 早く逃げないと本当にまずい事になりそうだ。しかし、アダムと連絡が取れない。

 自力で帰るにはかなり遠いし、滅茶苦茶危険だ。何とかしてアダムに迎えに来てもらわないといけないのだが……

 

「兄貴! 上! 木!」

「今度はどんなだ!?」

 

 上を見ればさっきよりだいぶマシな大きさの木が。これなら十分ミサイルで砕ける!

 

「これ以上速度落としてられねーんだよ!」

 

 頭上に響く爆発音と広がる爆炎を見送らず真っすぐ前方へと突っ込んでいく。今の速度を少しでも落とせば何が起きるか分からない。最悪後ろからの衝撃に叩きつぶされてしまう。

 

「アダムのやろ何してんだよ!」

 

 文句を言うが通信は相変わらず繋がらない。本気で奴に頼らない脱出方法を考え出した……その時である。

 

「ゴオオオオオオ!」

 

 咆哮、そして下方の巨影。

 極超音速でカッ飛ぶ俺達へ何かが並んでいる。

 

「ZZ、そっち見えるか!?」

「兄貴! やたらでかい奴がいる!」

 

 ZZの叫びの直後、森林を裂いてそれが姿を現した。

 

 蛇だ。

 

 俺達の速度へ平然と追いつく速度、そして五キロメートルを超えているように見える異常な大きさ。途轍もない化け物だ。

 

「何でそんなのが! 今! こっちを狙って来るんだよ!!」

 

 蛇の目は明らかに俺を捉えている。口先から漏れる二股の舌は忙しなく周囲を探り、その鎌首が俺へと照準を合わせた。

 

「うおおおおおああああああああ!!!」

 

 限界を超え、更に速度を上げる。それによって強引に蛇の噛みつきを回避した。だが、まだ攻撃は止まっていない!

 

「ZZ! あいつに貼り付け! 倒すぞ!」

「分かった!」

 

 このままの逃走は不可能だ。ならば、倒すしかない。この極超音速環境で、キロ単位の長さの蛇を。

 

「無理何て言ってられないんだよ!」

 

 ブレードを鱗へ突き刺し、そのまま走り広範囲を切る。その後ろからZZが切断面へ腕を刺し入れ、ナノマシンを広げて傷口をぐちゃぐちゃにしていく。

 流石の蛇もこれは効いたらしく、その体を大きくうねらせた・

 

「貼り付け!」

「おー!!」

 

 俺はアンカーを射出し、ZZは粒子化させた体を絡みつかせる。それによってうねる悶える蛇の体へしがみ付く!

 

「今!」

 

 再び蛇が真っすぐ動いた瞬間に攻撃を再開。だが、今度は相手も容赦なしだ。

 

「ZZ! 尾に気を付けろ!」

 

 胴体を擦る様に振るわれる尾が俺達の寸前で止まる。動いていなかったらそのまま巻き込まれていた。

 

「兄貴! いつものあのでかい奴出せねーの!?」

「展開に二十秒かかる! 時間が稼げない!」

 

 俺の最大火力ならこの蛇にも致命傷を与えられるだろう。だが、今のこの超高速状況で、その上蛇の体の上で振り落とされかねない状況且つ頻繁に攻撃が来ていると言う状態では最大火力は出せはしない。

 

「じゃあ兄貴! こいつの顔面行こうぜ!」

「はあ? 顔面?」

「自分の顔は叩けねーだろ!」

 

 ……一理ある!

 

「ZZ! サポート任せた!」

「分かった!」

 

 蛇の上を這っていく。狙いは顔、そしてそこで展開する最大火力!

 

「ZZ上!」

「大丈夫!」

 

 叩きつけられた尾を、ZZが粒子化して躱す。俺の方へと擦られたそれを、瞬時に展開したブレードと熱線で焼き切り穴を開け無理矢理体を通した!

 

「兄貴! コイツ動いてる!」

「おう!」

 

 地面へ体を叩きつけようとする蛇の肉に穴を開け、そこに潜って攻撃を回避。

 

「っ! 速え! 速度上げやがった!」

 

 元々音速超えだった速度が更に跳ね上がる。だがこれは好都合だ!

 

「ZZ! こいつが速度落としたら顔まで吹っ飛ぶぞ!」

「分かった!」

 

 そうは言うが多分細かい事を理解していないZZの体を俺と固定し、その瞬間を待つ。

 最初からこの速度で無い以上、これは短距離を無理矢理急ぐような物で、長時間持つ速さでは無い。

 そして、速度を落とせば慣性が働き、差の速度分だけ前に力がかかる、それを利用するのだ!

 思考する俺の前で、その時は確かに訪れようとしていた。

 蛇のくねる蛇体が機敏さを失い、無駄が増え、大きくぶれる。速度低下は……今!

 

「行っけえ!!!!」

 

 ドン、と踏み込み体を前方上空へと飛ばす。同時に姿勢制御を行いながら、砲撃への準備を進めていく!

 

「よし! 狙い通り!」

 

 三秒間の滞空の末、胴体の中程に居た俺達は顔面を見下ろしていた。後はあそこに張り付くだけ!

 

「ZZ! 体伸ばせ!」

「りゃあ!!」

 

 煙のロープが俺達を繋ぎ止める。無理矢理顔面へと辿りついた俺は、用意していたアンカーを打ち込んだ!

 

「ゴオオオオオオ!!!」

 

 蛇が唸る。流石に顔周りを傷つけられたら怒る様だ。だが、遅い! 発射まで残り五秒だ!

 

 

「ZZ構えろ! 五! 四! 三! 二! 一!」

 

 発射!

 グンと体が後方へ押し流される感覚と、それを繋ぎ止めるワイヤーアンカー。

 迸るエネルギーは蛇の肉を焼き、骨を砕き、五キロの全長を消し飛ばしていく……様に見えた。

 

 突如、蛇体が跳ねる。俺達の体を吹き飛ばすように。

 

「……コイツ! まだ動くのか!?」

 

 蛇の頭は吹き飛んでいる。だが、その全身が無くなった訳では無い。

 起伏や這い方の関係上、体の後方三キロ程は無傷だったのだ。

 しかし、それでも、蛇から頭部は無くなっている! それなのにまだ動く!? 肉の反応か!?

 

「っ! ZZ!!」

 

 全身から装甲を広げ、ZZの前に覆いかぶさる。目の前に広がるは、頭部を失った蛇がこちらへ尾を振るう姿。

 アレを食らえば流石に死ぬ。今度は肉に穴を開けるような真似は無理だ。だが、ZZだけは……

 

「……お前ら何馬鹿やってんだ」

 

 呆れた声と、響く爆音。

 目の前で蛇の胴体が焼き尽くされる。やったのは……アダム。

 

「アダム! 助けてくれ! 頼む!」

「分かってるよ。そもそも助けに来てやったんだ」

「アダムー!」

 

 感謝するぜ! 全身で!

 

「おいコラ抱き着くな殺すぞゴラ!!」

 

 ゴン、と頭をぶん殴られた。痛ってえ。あ、同じ事やってZZも殴られてら。

 

 まあ兎も角、アダムに連れられて俺達はどうにか災禍渦巻くジパングを逃げ出したのであった。

 

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