九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

9 / 155
アイギス

 周囲に剣呑な気配が満ちる。二者が睨むは現れた一者。崩世級の二人の視線を受けても男……キリカルは平然としていた。

 だが、この場の雰囲気は張り詰めたまま。キリカルの様子に油断は一切ない。天道は金棒を構えたままキリカルを睨みつけ、アダムも鋭い雰囲気のまま相手を見据える。

 場の口火を切ったのは……アダム。

 

「わざわざこんな糞見てえなド田舎まで何の用だ、キリカル」

 

 問われたキリカルは……無言。何も答えず、アダムを見据える。状況は再び膠着する。

 突如、天道が金棒を振るった。甲高い金属音と共にキリカルがそれを防ぐ。

 

「要件も言えんのならとっとと出て行ってもらおうか」

 

 二撃目。再びの金属音と衝撃。横薙ぎに振るわれた金棒が逸らされる。

 三撃、四撃と攻撃が続き、七度目にてキリカルの腕が弾かれ、胴体に金棒が直撃する。

 横っ飛びに吹き飛ばされたキリカルだったが瞬時に体制を立て直し着地する。その仕草にダメージの様な物は見受けられない。星を砕くほどの一撃を貰ったにも関わらず、だ。

 

「随分頑丈じゃな。隣の鉄人形も一応砕けてはおったぞ」

 

 その言葉にもキリカルは無言を貫く。だが、腕部より直剣を取り出し、体に装甲の様な物を纏う。

 直後、豪速で持って接近し剣を振るう。衝撃波さえ置き去りにした一撃はアダムを横に両断し、天道の右腕へ傷を付けた。

 

「やる気になったか!」

 

 大笑。同時に金棒を振るう。破砕音が響きキリカルの剣が砕ける。しかし、腕部の機械より熱線が放たれ、天道を吹き飛ばす。

 直後、砲撃がキリカルに直撃する。

 二つに分かれたアダムの体はそれぞれ変形し、砲となった。更に砲から大量の機械群が出現し、一瞬にして空間を埋め尽くすほどの兵器が出現した。

 爆音。

 ありとあらゆる兵器がキリカルへ殺到し、破壊を実行する。天体であろうと瞬時に粉砕するであろう猛攻。それが、同等の破壊により相殺される。

 キリカルがもまた大量の破壊兵器を広げ、アダムの攻撃を打ち砕く。膨大な破壊の津波が衝突し、拮抗する。その合間、一瞬の隙間に天道が踏み込む。

 衝撃が爆ぜる。

 渾身の剛力で振るわれた金棒はキリカルの装甲を砕き、その体躯を吹き飛ばす。だが、仕留め切れてはいない。故に、更に踏み込む。

 追撃の一打。今度こそ確実に絶命させる一撃が──突如現れた何者かにあっさりと抑えられた。

 

「申し訳ありません。少ない同僚を減らされるわけにはいきませんので」

 

 現れた男が無造作に手を振るう。それを防いだ天道が水平に吹き飛ばされた。

 

「テメエも何しに来た、天元」

 

 天元と呼ばれた糸目の男はあっさりと答える。

 

「同僚の救援ですよ。こんな辺鄙な場所で死ぬのは彼も嫌でしょうし」

 

 アダムはその答えを鼻で嗤う。まともに答えるとは思っていなかったがそこまで白々しい理由をでっちあげるとは。

 いくらこいつが化物じみているとはいえ、自分たちが戦っている最中に遠方から割り込めるほどの差は無い。精々が同格だ。ならばこいつはそもそもこの地に居たのだ。何らかの用があって。

 アダムはそう判断し、油断なく天元を見据える。

 そこに、吹き飛ばされた天道が戻って来た。

 

「妙な手ごたえじゃのう。殴った気がまるでせんわ」

 

 それだけ言うと、金棒を天元に向けて振るう。直撃したそれはまたもあっさりと止められた。

 だが、その一撃で天道は先程の違和感に気付く。

 

「手ごたえが無いのう。衝撃も、音も、手に反動さえない。何かの能力、完全に衝撃を吸収するといったところか。まあそれなら」

 

 殴り続ければ限界も来るか──

 そう天道は言い放つ。その限界がどれ程かも、そもそも本当にあるのかもわからないが確実に超えてやる。そのような意思が見える言葉に、さしもの天元も怯む。

 隙が出来た。

 瞬間に数え切れないほどのミサイルが殺到する。狙いはキリカル。

 爆発がキリカルを覆いつくし、その姿を隠す。しかし、瞬時にそれは振り払われキリカルはアダムへと攻撃を仕掛ける。

 剣戟、銃撃、砲撃、熱線。両者の放つ攻撃は時に相殺し、時に躱され、時に被弾する。一瞬たりとも動きを止めずに攻撃を加え続けるキリカルに対し、その場に動きを止め、身体を無数の武装に変えてすり潰そうとするアダム。

 常に流動的なこちらの二人に対し、天道と天元の戦いは固定的な接近戦となった。

 その場で金棒を振るう。手ごたえは、ない。だが構わず振るう。その間に何度か攻撃を貰うが気合で耐え、更に殴りつける。

 天元は振るわれる金棒全てを意に介さず、無造作に腕を叩きつける。ただ腕を振り回すだけのそれでも、避けるつもりのない天道には直撃する。その都度天道には傷が増えていくが金棒の速度も威力もまるで落ちない。

 二つの戦いはどちらも膠着していた。

 今、この瞬間までは。

 

 キリカルの反応が一瞬遅れる。食らった金棒の一撃は尾を引き、今この瞬間にキリカルに取って最悪な形で発現した。

 その隙を見逃すアダムではない。

 反応の遅れたキリカルを光線が襲い、右腕を切断する。慌てて修復しようとするが、間に合わない。

 戦力差に大きな差が付いたなら、後は一方的だ。恐るべき物量の攻撃がキリカルを襲い、その体をバラバラに砕いて行く。

 

「キリカル!」

 

 慌てた飛び込んできた天元が攻撃を防ぎ、何とか原型を留めた状態でキリカルは生き残った。その姿を見てアダムは攻撃を止める。

 

「いい加減に引け、ここに何があるかは知らんがこれ以上やるなら本気でスクラップにするぞ」

「……その忠告、聞いておきましょう」

 

 そう天元は答えると頭と胸だけになったキリカルを掴んで去っていく。姿を消す直前、キリカルはアダムを睨みつけた。

 

「次は殺す」

 

 金属音にも聞こえるその声にアダムは追い払うように手を振った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。