九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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事態は進む

「らぁ!!」

 

 手近な一人を殴り飛ばし宙に浮かせ、それを目で追った奴を蹴り上げる。

 撃ち込まれた銃撃を装甲を広げ防ぎ、銃火へ向けて撃ち返しながらかき回し、今また一人を殴り飛ばした。

 

「食らえ!」

 

 床へミサイルを放ち、破片を前方へ叩きつける。この程度で仕留められるような強度の奴はいないが、動きが止まったのが三人。そいつらを展開したハンマーで殴り飛ばして周囲を見渡す。

 残り十七人。

 

 そこで連中の動きが変わる。前衛に五人、後衛に十二人。

 前衛が銃を切り替え、ブレードを取り出した。……厄介な陣形だ。

 即座に切り込んできた五人から距離を取り、遠方攻撃に入ろうとするが後方からの銃撃に阻まれる。厄介な事にどうも銃弾は敵味方の識別機構が付いているらしく、切り込んできた奴らを見事に迂回して俺を捉えて来る。遮蔽物にはなりそうに無い。

 

「面倒な!」

 

 吼え、目の前の一人のブレードを防ぎ、膂力で弾き残りの四人へ叩きつける。パワーなら俺の方が圧倒的に上だ。

 ……しかし、本当にとんでもない装備だ。正規軍の部隊並みだぞ。

 

「っと!」

 

 逸れた思考を真横を通ったブレードが断ち切る。今はこいつらに集中だ。

 

 厄介なのは二つ、ブレードと、さっきから撃たれている迂回していない弾丸だ。識別弾はどうしてもある程度威力が落ちる都合上、俺の装甲は貫けない。

 ならば無視して突っ込みたいところではあるのだが……どうしたって衝撃は加わる。効かずとも動きを乱されるのは普通に厄介だ。なら、どうするか。

 

「こうすれば良い!」

 

 自問自答の叫びと共に、背中のブースターを最大で起動。音速に数倍する速度でもって後衛の銃持ちに突貫を掛ける。

 何発か貰ったがまだ大丈夫、勢いのまま正面の一人を殴り飛ばす!

 

「お前らに構ってられねーんだよ!!」

 

 ミサイルを六発周囲に放ち、機銃を剣山の如くに広げる。纏めて倒れろ!

 

「ぬううあああああ!!!」

 

 咆哮を上げた一人が弾幕を掻い潜って突っ込んできた。だが無駄だ!

 

「遅い!」

 

 地面に叩き伏せたそいつを通り過ぎ、銃を向けて来た連中を吹き飛ばす。これで残りは八人!

 

「総員、撤退を……」

「一々させねえよ!」

 

 指示した人間を蹴り飛ばし、その横に居た二人もなぎ倒す。ついでに目に留まった奴にも機銃とミサイルを撃ち込んだ。

 

「後四人!」

 

 逃げ出そうとしているが……この場所の出口は二か所だけだ、そして俺はどっちも纏めて狙える!

 

「これで終われや!」

 

 爆発音が二つ響き、悲鳴が混じる。爆炎が晴れた後には呻く四人が転がっていた。

 

「……加減したつもり無かったんだけどな」

 

 殺すつもりでやってはいないが、相手の命を配慮したつもりもない。だが、辺りで倒れている連中を見る限りでは死んだ奴はいないようだ。

 

「とんでもない頑丈さだ」

 

 正規軍とやり合えると言っていただけは有る。だが、俺を止めるには力不足だ。

 待機所を飛び出し、辺りを探る。五分程戦っていた、当然ラロの姿は無い。

 

「さっさと見つけねえと」

 

 別に公安の連中に任せても良いのだが……不思議な程嫌な予感がするのだ。それは未だ公安の人間を一人も見ていない事と無関係では無いだろう。

 

「……なんかあったのか? 普段なら二分もあれば突撃してくる筈なんだけどな」

 

 疑問に思ってネットを調べてみるがそれっぽい情報は無い。つまり、何も起きていないか……隠ぺいが必要な何かが起きたか、だ。

 

『ZZ、そっち大丈夫か?』

『おれはだいじょーぶ! 勝った!』

『何にだよ』

 

 まあ多分テロリスト共だろうが。ただできればそういう時は逃げて欲しい。

 

『ZZ、そっちで公安の奴ら見てないか?』

『え? 見てない』

『そっちもか』

 

 確実に何かが起きている。ターミナルが丸ごと制圧されているような大事件でこの対応の遅さはあり得ない。

 

『ZZ、ラロは見かけたら絶対逃げろ、分かったな』

『分かった!』

 

 通信を切って再び辺りの捜索に戻る。取り合えずラロは見かけたらぶん殴ってやる!

 

 

 

 

 

「うーん良い光景だ」

 

 ターミナル屋上、ゲートエネルギー機関の上でラロは呟いた。

 眼前に広がる市街は何ヶ所からも煙が上がり、その更に向こう、公安の本拠地は半壊している。

 ずっと追われ続けてきた彼にとって、その光景は胸のすく物であった。

 

「ま、公安潰した程度じゃまだまだだろうけど」

 

 公安が駄目なら次は軍が動く。そうなればまず間違いなく時間稼ぎすら出来ずに今回の件は叩き潰されるだろう。

 それ程に技術力も、戦力も、政府と民間では大きな差がある。

 彼も後ろ盾が無ければこんな事しようとさえしなかった程には。

 

「いやはや、上客だなあ」

 

 こんな戦力くれた上に、金までくれるとは。

 そう呟き、彼は大きく伸びをする。

 それは、一つの予感に答えるためだ。

 

「……まあ、お前が来ると思ってたよ」

 

 ドン、と音を響かせ屋上の床が突き破られる。その先から、鋼鉄の人型が姿を現した。

 

 

 

「やっと見つけたぞぉ!!!!」

 

 ああ面倒くさかった今畜生! 絶対ぶちのめしてやるからな!

 

「オー早い。どうやって見つけたんだ?」

「一か所ずつ探し回ったんだよボケ! 手間取らせやがって! 一階に居ろ!」

 

 うわあ、と言いたそうな表情をラロがするが、その顔をしたいのはここでテロにあった俺だ! 

 だが安心しろ、もう俺の顔には怒りしか浮かばない!

 

「俺も忙しいんだ! 取りあえずさっさと殴り倒されろ!」

「それはお断りだー。こっちも事情がある!」

 

 バッとラロが構えを取る。交渉に応じる気は無いようだ! まあどっちにしろぶん殴るが!

 

「くたばれオラァ!」

 

 思いっきり殴りつけた拳は空を切る。さっきも見た謎に良い身のこなし。今まで隠していたのか、それともダウンロードしたのか。

 だがどうでもいい! 体力は有限だ! 動けなくなるまで殴り続けてやる!

 

「おいおい幾ら何でもそれは酷い作戦だな」

 

 兎に角突進して殴る俺を見てラロが言ってくる。知るか、今はお前を殴らねえと気が済まん!

 

「そう思うんなら歯でも食いしばってろ!」

 

 突き出した拳が床を砕く。

 

「殴られる前提じゃねーか、嫌だぜ」

 

 打ち上げた拳が風を舞い上げ。

 

「じゃあ腹に力でも入れろ!!」

 

 裏拳が何かに阻まれた。

 

「同じじゃねーか。もう少し思考を切り替え」

「喧しいんじゃオラァ!!!!!!!!!」

「グゴッ!?」

 

 展開した鈍器を思いっきり振りぬき奴の脇腹を打ち抜いた。俺のパワーで吹っ飛ばされたラロが面白い位吹っ飛んでいく。

 

「そのまま下に落ちろ!」

「やだー!」

 

 グン、と何かに引かれるように落下が止まる。

 空中で体勢を立て直したラロが見えない足場を上る様に浮き上がって来た。

 

「お前な―。殴ってくるだけじゃ無いのかよ」

「一回も言ってねえな」

 

 内心そうしようと思っていたのだがずっと攻撃を避けるラロを見ていてなんか変な所で冷静になった。もういいやって感じで。

 

「確かにそうだけどさあ。まあいいぜ、それじゃあルール無用の殺し合いと」

「くたばれこの野郎!!」

 

 撃ち込んだミサイルがラロの顔面で爆ぜる。今の俺に相手の講釈を聞いている精神的な余裕は無い。ほんの少しでも時間を無駄にするような言動をするなら容赦はしねえ!

 

「せめて口上位最後まで聞けよ!」

「AIにでも話してろ!」

 

 追加で機銃をぶっ放すが、奴の軽口を止めるには至らない。……何の能力だ? ミサイルも銃弾も纏めて防ぐような物となるとそこそこ強力な物になると思うが。

 

「あーもう怒った! 馴染みのよしみで見逃してやろうと思ったけどここで殺すわ!」

「最初っから殺す気だっただろうがよ!!」

 

 怒りの叫びと共に、俺はラロ目掛けて兵装を展開した。

 

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