九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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ラロと言う男

 放ったミサイルが何かに阻まれたように爆発し、銃弾が甲高い音を立てて弾かれる。

 ラロの能力の正体は分からない。だが、起きている現象としては見えない壁を張っているように見える。

 

「通じねーよ、そんな物じゃな!」

 

 ドン、と鈍い音を立てて飛びのいた俺の目の前へ大穴が開く。まるで上から何かが叩き落されたかのように。

 

「俺の機能全部知らねえのに良くそんな口が利けるよ!」

 

 追加で放った機銃がまたしても見えない壁に阻まれる。……試してみるか。

 ガチン、と音を鳴らし右腕を変形させる。先ほどまでのような小型では無い、戦艦も沈める大型ミサイルの発射台だ。

 

「こういうのも有るってのに」

「試してみな!」

 

 自信満々にラロが言い放つ。こいつの能力はそこまで強力なのか?

 まあいい、撃てば分かる事だ。

 

 重苦しい爆発音が響き渡る。

 俺を稼働させるエネルギーの二割を使用した、爆発時に熱そのものをまき散らす炎熱榴弾。戦艦程度なら真っ二つ、八角大要塞(オクタグラム)の装甲もぶち抜く一撃だ。

 だが、爆炎の中からラロは無傷で現れた。

 

「……マジで面倒だな」

「通じないって言っただろ?」

 

 フフン、とこちらを小馬鹿にしてくるラロの顔を見ていると怒りが湧いてくる。溶鉱炉にぶち込むぞ。

 

「さっきのが通じないならアレだ、ぶち抜けるまで攻撃だな」

「脳筋戦法! お前何か馬鹿になってねーか?」

「うるせえ、お前相手に頭使うのも惜しいんだよ!」

 

 実際ラロの指摘通りである。なにせ、思いつかないのだ。

 一応さっきの一撃は即席で出せる最大火力、あれ以上となるとどうしてもデカい溜めがいる。いくらラロがアホと言ってもそれを見逃す程では無い。

 

「ま、いいけどな。存分に無駄にしろ!」

 

 空へ浮かんだラロが手を掲げる。

 直後、見えない何かが降り注いだ。

 床をえぐり、叩き、凹ませる。これ程の威力にも拘らず相当な連射能力、おまけにラロ側が消耗している様には見えない。

 

「何だよそのインチキは!」

「ウハハハハ! 負け犬の遠吠えが耳に良いぜ!」

 

 ご機嫌に笑うラロだが、攻撃の手は全く休まらない。雨あられのように降り注ぐ何かを避け続けるので精一杯だ。

 しかしここまで見ていて少しだけ性質が分かって来た。

 攻撃は俺を補足してから一瞬遅れてきている。ラロが使っている物がサイコキネシス的な物なのか、別の何かを使っているのか分からないが、遅れから見て実際の意識より少し遅く動く物だろう。

 そして、もう一つ。

 

「チッ!」

「無駄だぜ!」

 

 向こうが攻撃をしている最中も、こっちの攻撃は弾かれた。

 ……正体こそ掴めていないが、凡その仮定は出来る。

 予想通りの見えない壁、そしてそれはラロの周囲に常に展開されている物と、俺への攻撃に使われている物がある。

 だったら手段は一つ!

 

「食らえ!」

 

 放ったミサイルは見えない壁に阻まれた。だが、今回はそれだけで終わらない。

 二撃、三撃、四撃。ミサイルを撃ち続け機銃を放ち隙あらばブレードで切りかかる。

 

「っと! 攻めて来たな!」

 

 ラロが少し慌てたように動く。攻撃を防ぐのでは無く、避けるようになってきた。それはつまり、見えない壁には限界があると言う俺の仮定が合っている可能性が高いという事だ。

 

「そっちは攻撃が留守になってるぞ!」

 

 こっちが攻撃を仕掛ける程ラロの攻撃は勢いを無くし、より守りへと片重していく。仮定通り。

 

「バーカ! 作戦に決まってるだろ!」

 

 ラロの体から見えない何かが迸り、竜巻のように渦巻く。

 それは周囲を巻き込み、抉り、押しつぶし、広がる。

 だが、それは作戦というには余りに苦しい苦肉の手段だ。

 

「こっちまで届いてねえぞオラ!」

 

 単に自分の周囲三メートルほどを巻き込んだだけの攻撃の外からミサイルを撃ち込みまくる。攻撃自体も三十秒程で終わり、結果的に奴は多大な隙をさらしただけとなった。

 

「あああ! お前もう少し近づけよ!」

「お断りだ!」

 

 誰が近づくか! 攻撃の用意はタップリ出来てるんだ! 撃ちまくってやる!

 

「鬱陶しいなあ!」

 

 ドカドカと砲撃にミサイルを撃ちまくればラロは完全に防戦に回ったようだ。こっちへの攻撃が飛んでこなくなった。今の内に決めてやる!

 

 俺の体に広げるには無理な大きさの兵器を設営し、固定砲台として運用する。その間俺は次の兵器を建てるのだ。もうラロにターンは回さない、砲撃の雨あられで叩き潰す!

 

 鳴り響く砲声、甲高い金属音。兵器設営を始めて五分、今尚ラロの守りは突破出来ていなかった。

 

「……流石に堅過ぎるぞ」

 

 現状の火力だけならば軍の一個大隊並みだ。戦艦だろうと要塞だろうとぶち抜くような物をわんさか撃っているのだが……ここまで堅いのはいくら何でもおかしい。

 ラロがこれを耐えられる程強ければさっきまでの戦いはあっさり俺の敗北で終わっていただろうし、そうでないとするなら奴はハチャメチャな程守りに特化したタイプという事に……

 

「……いや、待てよ?」

 

 そもそもこの堅さがおかしいとするのはいつからだ? 最初に設営兵器を出した時? それとも()()()()()()()()()()()()()

 

「もし、ラロが急に強くなったとするのなら……」

 

 そうであれば辻褄が合う。俺に押されていた事も、設営兵器を出した時に防がれた事も、そして今の特大火力を防いでいる事も。

 

「だとすると……まずい!」

 

 思考がそこにたどり着いた時点で切り替え全速で兵器の展開にかかる。

 ラロが強くなった──出力を増したと言うのなら、それはあの兵器を出した後。そして、今奴の守りを破れておらず、向こうが攻撃してこないという事は……ラロは今、出力を上げ続けている!

 

 体が軋む。急速な兵器の生成に追いついていない。俺の頭で作れる兵器は片っ端から作っているのだが効率が悪い。かと言って今人工知能に切り替えれば大暴れして色々台無しだ。

 クソ、終われ、終われ!

 

 ガギ、と鉄が軋む音がした。

 

「おぉぉぉぉぉらああああぁぁぁぁ!!!!!」

 

 砲火を食い破り、ラロが現れる。その衝撃だけで設営していた兵器が複数吹き飛んだ。

 

「クソ、テメエ、頑丈すぎるだろが!」

 

 即座に攻撃を撃ち込むがあっさりと見えない壁に阻まれた。ええい、本格的にこれの正体を探らねえと!

 

「何が頑丈だ! お前に言われたくねえよ! サイボーグ!」

 

 ラロから見えない何かが迸る。それは直線状の何もかもを砕き、俺へと迫って来た。

 

「っ! 危な! 何なんだよそれはよ!」

 

 明らかに先ほどよりも勢いも規模も跳ね上がっている。何のカラクリだ?

 

「こっちからするとお前が何なんだって言いたいけどな! 俺も結構無茶してるんだぜ!」

 

 グイ、とラロが首筋を見せつけてくる。

 注射跡だ。

 かなり古い旧型でつく跡、まともな病院で打った物には到底見えないし、そもそも打ってそれ程時間が経った跡でも無い。

 さっきの守ってた際に打ったのか? だとすると……

 

「増強剤か!?」

「正解だ! これだけやってやっとだよ!」

 

 ラロの突き出した手から飛び出すように衝撃が襲ってくる。間一髪で躱したが、アレは当たったらかなりまずい。

 

「どう見てもまともな物じゃ無さそうだけどな!」

「そんなもん当たり前だ! 真っ当なのが手に入るかよ!」

 

 身体能力等をブーストする増強剤。この時代ともなれば相当な効果の物が存在する。

 だが、当然そういった物は軒並み高く、出回らない。ラロのようなはぐれ者が手に入れる手段は無いと言って良いだろう。一体どれほどまともじゃ無い物を打っているのか。

 

「どれだけ酷かろうとお前に勝てば目的は達成したような物だ! ここでくたばれ!」

「何企んでるか知らねえがお断りだ! お前が死ね!」

 

 叫ぶラロに言い返し、俺は背にブースターを展開した。

 

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