九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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決死

「おおおおおおらあああああああああ!!!!!」

 

 広げた装甲が軋みを上げる。だが、俺の全力を使った突進はラロの壁をぶち破り、同時にその正体を明らかにさせた。

 鉄。正確に言うのならその粉。無数に空へ舞うそれが奴の意思通りに動き、銃弾やミサイルさえ弾くほどの力が加わっている。かなり厄介な能力だ。

 

「チッ! バレたな」

 

 ラロが舌を打つ。こっちが能力に気付いた事に、気付いたようだ。

 

「なら俺が次どうするかも分かってるよな!」

 

 全力で突っ込みながら全身から熱を放出する。鉄を優に蒸発させる程の高温を。これで鉄は役立たずだ!

 

「まあそうするよなー。ただお前、俺の操れる鉄が固体限定って判断しない方が良いぞ」

 

 突如、見えない何かが体を締め付ける。同時に強い熱が体を焼いた。

 あいつ、蒸気化した鉄まで操れるのか!?

 

「随分驚いてるけど、勝手に判断したお前のミスだ! あばよ!」

 

 その言葉と同時、口に何かが入ってくる感覚がする。体の中からぶっ壊す気だ。

 まずい、流石に体内で鉄が暴れたら俺もどうなるか分からんぞ。この状態は駄目だ!

 

「離脱!」

「はあ!? お前そんな事出来るのか!?」

 

 頭だけ射出した俺にラロが驚きの声を上げた。今の内に体も生やしておく。これで元通り……と言いたいがかなりのエネルギーを消費した。同じ事を次やられたら割とキツイ。

 取りあえず今使える物を限界まで利用しておこう。

 という訳で切り離した体の方を変形させてこっちへ意識を集中させていたラロを思いっきり殴り飛ばした。ざまーみろ!

 

「!?」

 

 驚きで硬直したラロに追加でこっちからも砲撃を撃ち込む。……が、空中を舞う鉄粉の壁に阻まれた。既に広げられた物は自動で動いているのか?

 

「厄介な能力だ!」

「こっちのセリフだ! 何だそのふざけた体は!」

「うるせーな! 間抜けな顔面のお前に言われたくねえよ!」

 

 全身を駆動させラロへ特攻する。奴の能力の厄介な点は主に二つ、一つは鉄粉がどんな状態でも操れる事、そしてもう一つは一度した操作はずっと続いているという事だ。

 防御として展開している物はあいつが忘れようが気絶しようがずっとそのままだし、攻撃に使った物は恐らくだがあいつがその命令を解除しなければマントルまで突っ込んで行くだろう。

 そして、弱点は命令しなければ動かないという事だ。つまり、アイツを気絶させれば今ある命令以上の事は出来ない!

 

「っ! 重……」

 

 至近距離での剣戟をラロが能力を使って弾く。相当力を入れた一撃だが、奴の能力の力がかなり強い!

 

「鉄の粉にどれだけ力掛けてんだよ!」

 

 駆動補助のパーツを作り、更に力を込めて振るいようやく壁を突破する。こんなもん真面目に相手してられるか!

 

「らあ!」

「せい!」

 

 奴の作った金属剣と俺のブレードが衝突し、甲高い音を立てる。

 力だけで言うなら互角。だが、向こうはまだ周りの金属も操れるのだ。

 

「おら!」

 

 蹴りで思いっきりラロを吹き飛ばし、強引に距離を取らせ更に踏み込む。

 直後、背後で鉄の球体が出来上がった。

 

「ッう! 勘の良い奴だ!」

「お前が鈍い!」

 

 ラロを動かし、或いは自分が動き、戦う場所を変え続ける。

 そうでもしないと即座に叩き潰されておしまいだ。

 ラロからすれば競り合っても問題ないが、俺は競り合って足を止めたが最期、周囲の鉄に押しつぶされる。かなり向こうに有利な状況だ。

 だからこそ、俺は更に速度を上げる。

 

「!? まだ速く!?」

 

 旋回性能こそ下がるが、無理矢理力で軌道を変えてカバー、奴の視界を外れる!

 

「ハ!」

 

 周囲を見渡すラロの背に一撃を加え、振り向く前に前面へ回り顔を殴り飛ばす。……硬い、やはり防御はしているか。

 

「ちょこまかちょこまかしやがって!」

 

 周囲の鉄粉が急激に下がる。辺り一帯叩き潰す気だ。

 ミシリ、と音が響く。ターミナルの柱が軋んで……コイツ! 屋上丸ごと落とす気か!?」

 

「お前正気か!?」

「ウハハハハハ! 潰れろ!」

 

 ドン! と響いた音はターミナルの屋上が下二階諸共瓦礫と化した音。相当な強度の筈だが、ラロからすれば木造建築未満だ。

 ……冗談みたいな出力だな。ターミナルって軍でも壊せないレベルで頑丈に作られてた筈なんだけど。

 まあ、アレだけ発動まで時間が有るならどうにでもなる。今の俺みたいに降って来た鉄粉の上に回るとか。

 そして、全て攻撃に使ったラロは今無防備だ!

 

「く・た・ば・れ!」

 

 全開でエネルギーを注ぎ込み砲台を広げる! ここまで壊れているなら周りの被害も無視して良い! 墓穴を掘ったなラロ!

 

「まだ生きてんのかよ! さっさと死ね!」

 

 ラロの咆哮と共に鉄の暴風が吹き荒れる。一つ一つが直径一センチも無い鉄球だが、恐ろしい程の力が加わっているそれは、要塞の外壁さえ用意にえぐり取る程の物だ。だが、遅い!

 

「見つけるのが遅かったな! それじゃ間に合わねえぞ!

「っ! くそがああああああああ!!!!」

 

 鉄の嵐が到達する寸前、砲口よりエネルギーが迸った。

 それは鉄の暴風を飲み込み、押し流し、かき消して行く。最早ラロの力では到底止められる物では無い。

 アンカーが軋む、地盤が揺らぐ。アイツどれだけ壊したんだ。

 じりじりと音を立てる砲身からエネルギーが消え去った時、そこには何も残って居なかった。

 

「……終わったか」

 

 体を砲身から外し、辺りを見渡す。鉄粉はただの鉄粉に戻り、ピクリとも動かない。

 ラロの姿は無い。まあ当たり前だ。最近色々ヤバい人と関わってマヒしていたがアレが当たったら普通の人間は消し飛ぶ。

 

「……これ、ゲート開通するのか?」

 

 辺り一帯ボロボロだ。そもそもテロリストに攻め入られている。どう早く見積もっても今日中にはむりだろう。

 

「また今度か……あの野郎、どこまでも迷惑な事を……」

「迷惑で悪かったな!」

「!?」

 

 ラロの声。

 直ぐに振り向けば、巨大な鉄剣を携えたラロの姿。こいつ、どうやって!?

 

「随分驚いてるけど……ま、いい。ネタばらしはあの世で聞いてろ」

 

 ラロが剣を振りかぶる。まずい、俺はほぼエネルギー切れだ。

 

「あばよ!」

 

 能力の補助もあり、先端速度は音速を越えている。防御も、回避もできはしない。

 俺は呆然とそれを見つめ──

 

「兄貴に何すんだー!!」

 

 横からZZがラロを蹴り飛ばした。

 

「ゲッ……」

 

 奇妙な声を上げてラロが吹き飛んでいく。完全に予想外だったようだ。

 

「ZZお前何でここに」

「何か騒がしかったから」

「……お前な、そう言う時は逃げろよ」

「来なかったら兄貴死んでただろ!」

 

 ……確かにそうではある。だが、何だろうと俺はZZには死んでほしく無いのだ。

 ただ、取りあえず今はお礼を……

 

 視界の端で、ラロが立ち上がった。

 

「ああ面倒な……お前が先だ!」

「ZZ逃げろ!」

 

 

 

 鉄の粉が舞い上がり、一帯を暗がりへと変える。恐ろしい程の量だ。この大暴れで鉄粉が出たのか?

 そんな思考も、今の状況では無駄だ。今はZZを助けないと。

 鉄の黒雲が異常な程ゆっくりと降りる。いや、これは俺の意識が早くなっているだけか?

 体が遅い、雲より遥かに。駄目だ、もっと早く動かないと。

 クソ、体が動かない。全身重い! 動け、動け、動け!!

 

 目の前で、鉄粉の暴風がZZの姿をかき消した。

 

「らー!」

「ごが!?」

 

 そして鉄粉の暴風を全く意に介さず突き進んだZZがラロを殴り倒した。

 

「……あ、成程」

 

 ZZは全身を細かい粒子にできる。その都合上、使いこなせば物理攻撃は完封できると言ってもいい。

 しかし、ZZのアホさも相まってそのスペックは発揮されていないのだが……ラロとなると事情が変わる。

 そもそも物理攻撃しかない上、攻撃の大半に細かな鉄粉を使っていたラロではZZの体をすり抜けてしまうのだ。それこそ、体を全く扱えていないZZでもなんとかなってしまう程、ラロとZZの相性は悪かった。

 つまり──

 

「勝ったー!!!」

 

 気絶したラロに片足を乗せ、勝どきを上げるZZの勝利という訳だ。

 

「……まあ、何にせよ、良かった」

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