九十世紀の兄弟が   作:Y-K4183

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ようやく進行

「よー。ワールドゲートの旅どうだった?」

「分かってて聞いてるだろお前」

 

 ZZがラロを倒したお陰でターミナルの騒動は収まったのだが……問題はそこからだった。

 なんとラロを中心としていたテログループが公安本部及び複数の政府施設へ襲撃を掛けていたのだ。ターミナルに公安が来なかったのもこれが原因らしい。

 後数分で軍が動き出すところだったとの事だ。俺が戦った時既にラロの命は風前の灯になっていたのだ。

 

「ま、無駄な努力ご苦労様」

「……ムカつくなこの野郎」

 

 ラロも大概ではあったがアダムのムカつき度合に比べればもう少し低い。こいつはなんか癇に障る言動を結構してくるのだ。

 

「ただもう今日はキレてる元気も無いな……寝る」

 

 覚束ない足取りを無理矢理制御し、体をベッドへ押し込んだ。

 

 

 

「……ZZ、XXXどうだったんだ?」

「え? 兄貴? 何かよく分からん奴と戦ってたけど」

「どんな様子で?」

「結構キツそうだった!」

「……成程」

 

 そう言ってアダムは黙り込む。

 今日XXXが相手していたラロ……この男、超S級の賞金首として政府から手配されている尋常ならざる危険人物だ。公安の職員は疎か、軍属の人間でも迂闊な接触は避けるよう通達が出ている。

 そんな相手と一騎打ちした挙句の勝利。……XXXが政府に目を付けられる要因としては十分だろう。

 

「また面倒な事になりそうだな……」

 

 はあ、とアダムが頭を押さえ溜息を吐く。その様子をぽかんとした表情でZZは見ていたのだった。

 

 

 

「よーし今度こそ行くぞー!」

「おー!」

「俺は何で呼ばれたんだ」

 

 死ぬほど不満そうな表情のアダムを無視して俺達はターミナルへと入っていく。

 ラロとの戦いから一週間後、政府からの追及等は不思議な程少なかったがまあそれは良い。問題はこの期間で色々と支出が多かった事だ。

 ゲートの通行許可の基準がかなり厳しくなりそれに合わせてもう一度許可を得に行く事になり、それに必要な書類、加えてデータへの支払い。更には必要な税、オマケにゲートの通行料まで値上がりしたのだ。

 それらは既に支払ったのだが……買い物をしまくって元々無かった残金はこの件で完全に底を突いた。つまり、今回のワールドゲート先で金儲けが出来なければ色々ヤバい。

 そこでアダムの出番だ。万が一何かヤバい事になってもアダムに押し付ければまあ何とかなる。

 

「要するに俺に面倒事を引き受けろってか」

「金は払う! 後で!」

 

 チッ、とアダムが露骨に舌打ちをした。

 スマン。しかし今回ばかりはアダムがいないとマジでヤバいのだ。

 

「奮発しろよ」

「分かってる」

 

 俺の返事に、アダムは大きく溜息を吐いて押し黙った。……了承してくれたらしい。

 

 さて、それからは特に問題も無く手続きを終え、俺達はゲートの前に佇んでいた。

 

「どうなってんのかね、この先」

「ファンタジー」

「分からん」

 

 アダムの言葉に軽口を返し、俺達はワールドゲートへと進んだ──

 

 

「……すっげえ」

 

 視界一杯に広がるのは雄大と言う言葉以外で表現しきれない大自然。

 空には見た事も無い生物の影、眼下には森とそこに住む無数の生き物の姿、これはまるで──

 

「いや確かに凄いけど……なんかちょっと見た事ある気がする」

 

 ジパング辺りがこんな雰囲気だ。というか多分自然の雄大さだけならあっちの方が大分上だろう。

 強いて言うなら……向こうに見える物はジパングには無いだろうが。

 

「兄貴ー、何か村っぽいのある!」

 

 ZZの指さした先、森を越えた向こう側に複数の木造家屋らしき物が見える。目を凝らせば、そこに出入りしている人の姿。ZZの言った通り、村だろう。

 

「取りあえずあそこ目指すか」

「許可証忘れんなよ」

 

 アダムが声を掛けてくる。

 許可証。これが無いとそもそも不法侵入になり罰せられてしまう。俺は慌ててそれを首に掛けた。

 

「ZZー、お前も忘れるなよー」

「分かったー!」

 

 

 

「あー、これは買えねーな。品質が酷い」

「マジですか……」

 

 村に入って十五分後、俺は取引をしていたのだが……芳しく無い。

 というのも、高く売れた物は有るのだが、どれもこれも常識的な値段の物。それ以上は上も下も扱いきれないと言われてしまったのだ。

 

「こっちは……駄目だ。うちの店じゃ手に負えないよ。王都なら何とか買い取れるだろうけど……」

「何とかなりませんか?」

「無茶言わないでくれ! 店ごと売ってもこれの値の半分にもなりゃしない!」

 

 最悪買い取れても備えが無いと奪われる、と店主は怯えたように品を見ていた。

 ……うーん、ここじゃあ駄目か。その王都ってとこにいってみようか?

 

「すみません、王都ってどの方角にありますかね」

「王都ならこの村から寒凍の方角だよ」

 

 ……大体北らしい。距離に関しても聞いてみたのだが、詳しい事は分からないとの事だ。

 何でも、道がかなり複雑らしく慣れていないと普通に二三倍の時間がかかるとか。

 

「それを避けたいなら、地図を買っていく事だ」

「商売上手ですね」

 

 店主おすすめの地図を買い、俺は店を出た。……紙の地図ってどう見るんだ?

 

「何だ間抜けな面して」

「うるせえ。紙の地図とか見るの初めてなんだよ」

 

 いきなりこっちに来たアダムの暴言に言い返し、地図を見せる。せめて自分の場所が分かれば良いのだが。

 

「……この村がここだな。となると、王都は……ここか。まあまあ遠いな」

「どの位だ?」

「まあ俺らのペースなら三日だろ」

「……俺らで三日か」

 

 どうもここから王都は滅茶苦茶離れているようだ。さっきの店主の言葉と言い、ここは相当な田舎らしい。

 

「やっぱ田舎はクソだな。探し物があったのに置いてねえ」

「そうか? 俺は好きだぞ。何かのんびりしてる」

 

 ケッ、と気に入らなさそうな顔をするアダムを視界から外し、ZZの姿を探す。……が、見当たらない。どこ行ったアイツ?

 

『ZZ? どこだ?』

『何か森の中!』

『馬鹿かお前』

 

 通信を切りアダムへ向き直る。

 

「ZZもう勝手に村出てるらしい」

「丁度いいじゃねえか。途中で拾って王都まで行くぞ」

 

 そう言ってアダムはさっさと行ってしまう。……取りあえずZZには説教をしておこう。

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