進撃の巨人 The end -ゲームの主人公が生きていました- -誰が為の翼-   作:キラトマト

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#7 人類の敵/開門

 先日、ミケたちとの訓練により自分の特性を理解したグリュック。彼が兵舎近くにてぶらぶらしていると、ゲルガーが声をかけてきた。

 

「ははっ、やっぱりいたか」

 

「グリュック、ミケが君の匂いがすると言うから、本当にいるかどうか確かめに来たんだ」

 

「お前の匂いはもう覚えた。特別な力を秘めている……その匂いはな」

 

「匂いでそこまでわかるんですか……」

 

 はっきり言ってグリュックは少し引いていた。

 

「そうだぞ、ミケさんの鼻はすげぇんだからな」

 

「いや、なんとなくだがな……、しかし大きくは外していないだろう」

 

「実際のところはミケ本人にしかわからないんだから、あんまり真に受けないほうがいいかもしれないよ?」

 

「ふっ、ところで、兵団の仕事には慣れたか? 知りたいことがあれば、こいつらに聞くといい。二人とも優秀な兵士だからな」

 

「何かあれば、いつでも俺達に相談してくれ。グリュック、今はなにか聞きたいことはあるか?」

 

(……どうしよう。入ったばかりだしな……あ)

 

「お二人はどんな匂いなんですか?」

 

「ゲルガーは、酒の匂いが染み付いてるな。ナナバは……フルーティーだ」

 

「人聞きが悪いなぁ……酒は好きですけど任務中は飲んでませんよ?」

 

「当たり前じゃないですか?」

 

(ていうか、よく酒買うお金あるなぁ……)

 

(私が……フルーティーな匂い……?)

 

「じゃあ、そういうことだからこれからも、何かあれば気軽に聞いてくれ」

 

「ああ、戦い方のコツとか兵士としての心構えなんかは先輩兵士として、それなりに助言できると思うからね」

 

「……あ、そういえばお二人はいつから調査兵団なんですか?」

 

「私とゲルガー、ミケも壁が壊される前から調査兵団だったよ」

 

「ってことは5年前から……すごいですね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「今、任務から戻ったとこだ。もしかして、わざわざ迎えに来てくれたのか?」

 

「いや、偶然通り掛かっただけで……」

 

「ははっ、正直者なんだね、グリュックは」

 

「そんなことより、俺達の活躍をお前にも見せたかったぜ。討伐記録をまた更新しちまったよ」

 

「だけどゲルガーの戦い方は褒められたもんじゃないよ。刃もガスも消費しすぎなんだ」

 

「これが俺のやり方なんだよ。……とはいえ、今回は補給物資に余裕があったし、地形にも恵まれてたから、無事に済んだのかもしんねぇな」

 

「例えば、ガスと刃が残り少ない状況で激戦に放り出されたら、君ならどう対処する?」

 

「その場で一番最適な相手に物資を渡しますかね……。ま、ガスと刃節約する人とか」

 

「なっ、バカにしたのか!?」

 

「ふふっ、いい考え方だね。自分だけでなく味方全体を見て判断する……。とにかく、色んな状況を想定して、予めどう対処するかを考えておいた方がいい。そうじゃないと、いざというときに腹を括れないからね」

 

「……よし、今日の講義はここまでだ! さぁ、飲みに行くぞぉ! オイ、お前も付き合え!」

 

「ゲルガー! そういう誘いは、この子がもっと大人になってからだよ!」

 

「ハイハイ……じゃ、グリュックまたな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 第57回壁外調査を目前に控えた頃のことだった。

 

「グリュック、ちょっといいかな」

 

「なんですか? ナナバさん」

 

「近く、第57回壁外調査が予定されているのは知っているだろう? その事前任務の件で、分隊長のミケから君に話があるようだ。聞きに行ってくれるかい」

 

「わかりました」

 

「じゃあ、ミケの所へ行ってくれ。後で会おう」

 

 

 

 

 

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「来たかグリュック。お前には兵站拠点の設置任務に加わってもらう」

 

「兵站拠点というのはわかるか? 次の壁外調査の行路上に拠点を築いて、予め行軍に必要な物資を運んでおくんだ」

 

「壁外での作業になるから、本来は兵団配属前の新兵にやらせるような任務じゃないけど……君は大丈夫そうだね」

 

(ナナバさんに……信頼されている……)

 

「ビビらないなんて、たいした度胸だな」

 

「今回は壁外といっても遠くまで行くわけじゃないから、そこまで危険なことにはならないと思うよ」

 

「……だが、確実に巨人はいる。死にたくなければ気を引き締めて臨め、いいな?」

 

 そして、壁外調査のための兵站拠点を設置したミケ班は、速やかに撤退、帰還した。

 

「ん……なんだろう? 様子が変だね」

 

「ああ、妙にざわついてるな……」

 

 そんな風に嫌な予感を肌で感じ取っていると、モブリットが報告にやってきた。

 

「どうした、何か事件か」

 

(これは……ハンジさんの悲鳴……?)

 

 グリュックだけには先んじて聞こえていたので、薄々察していたが……。

 

「被検体が……捕獲した巨人が、2体とも殺されたんです」

 

「犯人は?」

 

「まだ見付かっていません……見張りが気付いた時には、立体機動で遥か遠くに行ってしまっていたそうです」

 

「兵士の犯行か……で、ハンジは?」

 

「しばらく立ち直れないかと……」

 

(……やっぱりハンジさんって巨人好きなんだ……こわ)

 

「だろうな……」

 

 グリュックたちはハンジのところへ向かった。

 

「うおおおおおお!!! ソニィィィイイイイ!!! ビィィィイイイイイン!!!! 嘘だと言ってくれぇぇぇええええ!!!!!」

 

 ハンジ分隊長がご乱心の中、グリュックの耳元に語りかけてきた者がいた。

 

「君には何が見える? 敵は何だと思う?」

 

 グリュックは、巨人を殺せるのは人間のみという前提を条件とし、熟考した。まず、見張りのいない夜中の犯行という点から計画性があり突発性の犯行ではないということ。そして見張りが気づく前に逃げたという点からかなり立体機動術に優れている点。巨人の生態調査は人類にとって利となる点を考慮し、彼はこう答えた。

 

「……人類の敵、じゃないですか」

 

「そうか……ついてきてくれ」

 

 エルヴィンは彼を人混みから少し離れたところへと向かった。

 

「……その言葉、どういうことだ?」

 

「巨人生態調査は人類の為になると思い、それを阻んだという意味……です」

 

「そうか、ありがとう。……ところで君の名前を聞いていなかったな」

 

「グリュック・シュバインです!」

 

 

 

 

 

 

 

 ###

 

「よう、お前は呼ばれなかったんだな」

 

 兵舎に戻ると、コニー、アニ、アルミンが集まっていた。グリュックを見つけたコニーが彼に話しかけてきた。

 

「? なんのことだ?」

 

「訓練兵全員に、憲兵団から招集が掛かったんだ」

 

「例の巨人殺しの犯人が、立体機動で逃げたっていうから僕達の立体機動装置も調べられたんだ。結局、犯人は見つからなかったけど……。君は任務中だったから、容疑者から除外されてたんだね」

 

「お前はもう、調査兵団を手伝ってるんだっけ。また巨人とも戦ってたんだろ? すげぇよな……。俺はもう、二度と巨人なんて見たくねぇ……早く所属兵団を決めなきゃいけねぇのに……。なぁアニ……お前は憲兵団だったよな、やっぱり俺も、そっちにした方がいいかな」

 

「あんたさぁ……人に死ねって言われたら死ぬの?」

 

「何だそりゃ、死なねぇよ」

 

「なら、自分に従ったらいいんじゃないの。アルミン、あんたはどうなの?」

 

「そうしなきゃいけない理由が理解できたら、死ななきゃいけない時もあると思うよ……嫌……だけどさ」

 

「そう……決めたんだ……あんた弱いくせに根性あるからね」

 

「アニってさ……実は結構、優しいよね」

 

「……は?」

 

 アニは予想もしていなかった返答が来たからか、素っ頓狂な声を上げてしまう。

 

「だって僕らに調査兵団に入って欲しくないみたいだし、憲兵団に入るのも、何か理由があるんじゃないの?」

 

「別に……私はただ、自分が助かりたいだけだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 エレンが兵舎の外を掃除しているのが見えた。

 

「そういや、もうみんな所属兵科が決まったはずだよな。調査兵団には何人来るんだろうな……」

 

「……まぁ、あんな地獄を体験した後じゃ……な」

 

 初陣でも、トロスト区奪還作戦でも沢山の人が死んだ。3年間苦楽を共にした仲間が、友達が。それでも入りたい者など、いるのだろうか。

 

「ミカサ、アルミン!」

 

「エレンっ、何か酷いことされてない?」

 

「ね……ねぇよ、そんなことは……」

 

「え、でもハンジさんが……」

 

「何をされたの? 体を隅々まで調べ尽くされたとか、精神的苦痛を受けたとか……?」

 

「おい、余計なことすんなよ……ん?」

 

「エレン!」

 

 104期のみんなが来ていた。ミカサやアルミン、コニーにライナーにサシャ、クリスタ、ユミルも調査兵になったようだ。

 

「お前らここにいるってことは、調査兵になったのか? ってことは憲兵団に行ったのはアニとマルコとジャンだけで、あとは皆、駐屯兵かそれ以外ってことか……」

 

 その言葉に、皆は顔をうつむける。

 

「マルコは死んだ」

 

「え……?」

 

 突然現れたジャンと、彼が発したその言葉に、エレンもグリュックも動揺を隠せない。

 

「ジャン……!? 何でお前がここに……って、今……今なんて言った? マルコが? 死んだ……って……言ったのか?」

 

「誰しも劇的にしてるってわけじゃないらしいぜ。どんな最期だったかもわかんねぇよ……立体機動装置もつけてねぇし……あいつは誰も見てないところで人知れず死んだんだ」

 

(立体機動装置をつけずに……? それ誰かに……)

 

「は……」

 

「エレン。お前、巨人になった時、ミカサを殺そうとしたらしいな? それは一体どういうことだ?」

 

 ジャンの言葉に、周囲の空気がガラッと変わる。

 

「違う。エレンはハエを叩こうとして────」

 

「お前には聞いてねぇよ」

 

 彼にしては珍しく、ミカサの言葉を遮った。

 

「……」

 

「ミカサ、頬の傷はかなり深いみたいだな。それはいつ負った傷だ?」

 

「……!」

 

 ミカサはエレンから見られないよう頬を隠すように顔を背ける。エレンはその事実を確認し、認めた。

 

「本当らしい……巨人になったオレは、ミカサを殺そうとした」

 

「"らしい"ってのは……記憶にないってことだな? つまりお前は『巨人の力』の存在も今まで知らなかったし、それを掌握する術も持ち合わせていないと」

 

「……ああ、そうだ」

 

「お前達、聞いたかよ。これが現状らしいぞ。俺達と人類の命がこれに懸かってる。このために……俺達はマルコのように、エレンが知らないうちに死ぬんだろうな」

 

「……」

 

「ジャン……今ここでエレンを追い詰めることに、一体なんの意義があるの?」

 

「あのなミカサ、誰しもお前みたいになぁ……エレンのために無償で死ねるってわけじゃねぇんだぜ」

 

「……!!」

 

「知っておくべきだ、エレンも俺達も。俺達がなんのために命を使うのかをな」

 

「……そうか」

 

「じゃねぇと、いざという時に迷っちまうよ。俺達はエレンに見返りを求めてる。きっちり値踏みさせてくれよ。自分の命に見合うのかどうかをな……」

 

 ジャンは、エレンの肩を掴んだ。

 

「だからエレンっ! お前……本当に……頼むぞ?」

 

「あ……あぁ……」

 

「エレン、そんなに気負うことはねぇぞ。俺達もいる」

 

(ライナーはいつでも……兄貴だな)

 

「うん、僕達も協力し合えると思うよ」

 

「ちっ、んな険しい顔してっと、クリスタが怯えんだろうが」

 

(ユミルは……相変わらずだな)

 

 

 

 

 

 ###

 

 そして、いよいよ第57回壁外調査が明日に迫っていた。

 

「正式に調査兵団の一員となった君達には、来るべき第57回壁外調査に参加してもらう。これから厳しい訓練に入ることになるが、覚悟はできているか?」

 

「はい!」

 

「わかった。君達の活躍に期待しているぞ」

 

 104期訓練兵が、それぞれの兵団に配属されたあと、調査兵団では、第57回壁外調査に向けて、新兵の訓練が行われた。彼らが叩き込まれるのは、調査兵団団長エルヴィン・スミス自ら考案した『長距離索敵陣形』。

 

 巨大な陣形を展開しながら、信煙弾で情報伝達を行い、巨人との接触を回避して目的地を目指すものである。そして、今後の作戦の鍵となるエレンは、リヴァイ班に護衛される形で、陣形に組み込まれた。

 

「準備はいいかい? グリュック」

 

「準備っていっても、もうすぐ始まりますよ。……気持ちの準備は、もうできてますよ」

 

「あぁ、それならよかった。……新兵では、君にだけ真の作戦内容について知らされていると思うが、誰にも言ってないね?」

 

「当たり前ですよ。人類の敵を、炙り出すためなんですから」

 

 その時、カラネス区の鐘が鳴り響く。

 

「団長ッ! 間もなくです!」

 

「付近の巨人はあらかた遠ざけた!! 開門30秒前!!」

 

「いよいよだ!! これより人類はまた一歩前進する!! お前達の訓練の成果を見せてくれ!!」

 

 第二分隊長団長補佐、ダリウスの掛け声に、皆が「うおおおお!!!」と声を高らかに上げる。

 

「開門始め!!! 第57回!! 壁外調査を開始する!! 前進せよぉぉおおおお!!」

 

────開門!! 




感想くれると嬉しいです。辛口がいいです

グリュックに魅力は感じますか?

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