進撃の巨人 The end -ゲームの主人公が生きていました- -誰が為の翼- 作:キラトマト
#9 獣の巨人/ただいま
新兵を交えた壁外調査にて、二体目の知性巨人、女型の巨人の正体であるアニ・レオンハートを拘束した調査兵団。だが104期生の中にアニの仲間がいるとして、その情報は公にされなかった。そして104期生の中に超大型、及び鎧の巨人の正体がいると断定した調査兵団団長エルヴィン・スミスにより、彼らの一時的な隔離が決定する。人類の味方であると判断されたエレン・イェーガー、ミカサ・アッカーマン、アルミン・アルレルト及びグリュック・シュバインを除いて。
しかしエレンを伴った壁外調査で結果を出すという約束を反故にしてしまった故、ストヘス区へのエレン・イェーガーの召喚が決まってしまう。だがエレン本人を渡すわけにもいかず、その影武者としてジャンが変装しストヘス区へと赴くこととなった。そしてグリュックは、エレンたちとは別行動でエルヴィンの命を受けていた。
###
「本当にあの子たちの中に、アニ・レオンハートの共謀者が……?」
「さぁ……どうだろうな。だが、無視できる確率では無い」
女型の共謀者をあぶりだす。そんなこととは露知らず、隔離された104期生は退屈な日々を送っていた。
「こっからだと、俺の村近いんだぜ〜」
「私の故郷も近いですねー」
「ウォール・ローゼの南区まで来てんのに、なーんで帰っちゃダメなんだよ……」
「やることも、食べるものもろくにありませんからね〜……」
「くっそ〜、夜に抜け出してやろうかな」
「え〜そんなに帰りたいんですか〜? 私なんてまともな人間になるまでは帰ってくるなって言われたんですよ〜」
「俺はお前みたいなチビに兵士は無理だって言われてた。しかし俺は天才だった……10番内の成績で兵士になった。だから村に帰って見返してやんのさ。ちょっとだけでいい……。俺が生きてるうちに」
なんて、サシャとコニーが故郷の思い出に浸ってると、突然ライナーが提案してきた。
「コニー、お前が本気なら協力するぞ」
「え? 何で?」
「おかしいと思わねぇか? 何で私服で待機なんだ? 戦闘服も着るな。訓練もするな。だぞ? 何故だ? 俺たちは兵士だぞ!」
「ん?」
と、サシャが何か異変に気づいたのか机に耳をくっつける。
「あれ!?」
サシャは慌てて起き上がり、地鳴りが聞こえたと大声を上げた。
「は?」
「何言ってんだサシャ? ここに巨人がいるって言いたいんなら、そりゃ……ウォール・ローゼが破壊されたってことだぞ?」
「本当です! 確かに足音が!」
間髪入れず、ナナバが窓から報告しに来た。
「全員いるか?」
「ナナバさん!?」
クリスタが驚いたように名前を呼んだ。
「500m南方より、巨人多数接近、こっちに向かって歩いてきてる。君たちに戦闘服を着せてる暇は無い。直ちに馬に乗り……付近の民家や集落を走り回って避難させなさい。いいね?」
武装した調査兵は104期生を引き連れ、付近の集落や村に避難を告げる役割を与えられた。そして巨人襲来の報の直後、グリュックがミケたちの元にたどり着く。
「グリュック……! こんなところに来て、いったいどうしたんだ?」
「そ、そんなことよりこの騒ぎは一体……」
「どうやらウォール・ローゼが突破されたらしい。来てくれたばかりで悪いけど、私達はすぐにここを発つ」
「用があるなら後で聞こう、今はここを切り抜けるのが先だ」
その後、ミケ分隊長に協力を仰がれたグリュックは、避難誘導の手助けをすることとなった。
###
「104期と武装兵で構成した班を東西南北の4班に分ける! 戦闘は可能な限り回避し、情報の拡散に努めよ。人や集落を発見次第、離散していけ!」
「なお、南班と西班は破壊箇所を特定する任務を兼ねる! 誰かこの地域に詳しい者はいるか!」
「は、はい! 北の森に故郷があります! その辺の地形は知っています! あと、コニーも……」
「南に……俺の村があります……巨人が……来た方向に……近くの村を案内できます。その後……俺の村に行かせてください……そりゃ……行ったところでもう……無駄でしょう……けど……行かなきゃ……いけないんです」
「わかった……南班の案内はお前に任せたぞ」
作戦説明の途中、匂いで巨人との距離を特定したミケが言った。
「近いな……104期生を先発させろ! 武装している者で足止めする!」
するとミケがグリュックの方を見て言った。
「……お前は俺たちの援護に回れ。戦う覚悟はできているな?」
「死ぬ覚悟以外なら、とっくにできてますよ!」
「ふっ、頼もしいな。……それぞれ行動を開始しろ!」
###
「……104期には申し訳が立たない。我々が疑ったばかりに……無防備な状態でこの状況に放り出してしまったのだ……」
「あぁ……情けないところは見せられないね……」
ミケとナナバに続いて巨人の注意を引き付けていくグリュック。
「俺が巨人を引きつける! 他の者は104期を守れ!」
と、ミケが一人で9体程いる巨人の群れへと突っ込んでいってしまった。
「ミケ分隊長が囮になったの!?」
「一人じゃ無理だ! 9体相手に1人でなんて!」
「こっちにも人数が必要だ! それに……ミケさんはリヴァイ兵長に次ぐ実力者だぞ! きっと……上手く切り抜けて戻ってくるさ!」
104期が離散したところで、ナナバに命じられた。
「グリュック、装備のある君には、ミケの様子を見てきてもらいたいんだが……」
「了解です!」
ナナバ、ゲルガーは104期生たちに着き、戦線を離脱した。
「ミケさん! 104期生の離散、完了しました!」
「……匂うな。どうやら班員達が離散した方角に巨人が向かっているようだ。グリュック、班員達が向かった方角の巨人を討伐し、他の者と共に撤退しろ。俺はここでもっと時間を稼ぐ……!」
(そんな……! 一人でなんてさっきも言ってたけど……折角手伝えるっていうのに……)
しかし、分隊長の命令を無視することもできず、結局グリュックも戦線を離脱した。
###ミケ
(あと……4体……。……いや……潮時だ。充分時間は稼いだ。かなり遠くまで全班が行けたはずだ)
そう判断したミケは指笛を鳴らし、馬を呼び寄せた。
(あとは……馬が戻ってきさえすればここを離脱できる。ただ……気がかりなのがあの奇行種か……なにか妙だ)
ミケが注意を向けたのは17m程の大きさで、異様に腕が長い巨人。そしてそれは獣のような体毛を身体中に生やしていた。
(まぁ、近づくでもなくああやってただ歩き回っているあたり、奇行種に違いないだろうが……)
「! よし……よく戻ってきた」
馬が戻ってきたのを見たミケは一安心、だがそれも束の間……。
「なっ……!」
獣のような巨人が馬を掴んだのだ。
「馬を狙った!? そんな!? まさか!」
そして巨人はそれを投げ……ミケの登っていた家屋に直撃する。ミケが転がり落ちた下には2,3m程度の巨人が一体、待ち伏せていた。
「ぎぃぃぃああああぁぁあぁぁあああ!!!」
『待った』
どこから発せられたのか、それは分からないが男性的な声によって一瞬、その小さな巨人の食べる動作は止まる。だが、直後、また食べるのを再開する。
「あぁぁあああ!!!」
パキンと、乾いた音がミケから鳴った。何かが折れたのだろうか。
『え? 俺……今……待てって言ったろ!』
ミケが頭上を見ると、先程馬を投げた獣のような巨人が見下ろしていた。この巨人から、声は発せられているのか。だが巨人が声を出すという事例は前例がひとつあるものの、状況が状況だったため信じられていなかった。
『あ』
あろうことか、獣の巨人は小さな巨人の頭を握りつぶしたのだ。
『うあぁ……』
そのおかげか、ミケは巨人の手から離れる。
『その武器はなんて言うんですか? 腰につけた飛び回るやつ』
獣が何を言っても、その状況に何も頭が回らず声を出せない様子のミケ。
『まぁいいや……持って帰れば』
怯えてうずくまるミケの立体機動装置を取り外す獣の巨人。だが、それが立ち上がった時、ミケはある言葉を思い出した。
(人は戦うことをやめた時、初めて敗北する。戦い続ける限りは……まだ負けてない!)
ブレードを持ち、勇敢にも立ち向かうミケ。
『あ、もう動いていいよ』
「!?」
その命令に従うように、付近に隠れていた巨人がミケの元に集まってくる。その大きな足音に気づいた時にはもう遅かった。
「やぁぁああだぁぁあああああ!!!」
腕を捕まれ、齧られていく。
「やめてぇぇえええええええ!!!」
抵抗も虚しく、頭を貪り食われ、そして胴体からそれは千切られる。
『……やっぱ、喋れるじゃん。しっかし面白いこと考えるなー』
###
馬に乗り、北の方角に向かっていたグリュック。そこで小さな女の子が走ってくるのを見つけた。
一体何があったのか……それはグリュックが少女、カヤと出会う数分前の出来事……。
###カヤ
汚い咀嚼音を立てながら、巨人は私のお母さんを食べていた。全長の小ささも相まって、一口が小さいのかじっくりと。最初は大きな叫び声を上げていたけど、次第に小さくなっていった。
「……」
その光景を、食べられている姿を、私はじっと眺めていた。でも、突然入口から女の人が入ってきた。私よりも年上に見えた。
「うあぁぁあああ!!」
お姉ちゃんは斧を持っていた。それを振りかぶって巨人のうなじに向かって何度も何度も切りつけるが、巨人は活動を停止する様子を見せない。何度も振りかぶっているうちに、斧はお姉ちゃんの手からスポン、と抜けて天井に突き刺さってしまう。
「あぁぁ……!!」
その奥に私の姿を見つけたお姉ちゃんは巨人に気づかれないようにそろりそろりと近づき、私の手を引く。
「ごめん……なさい……」
勢いよく出口から飛び出したお姉ちゃんは私の手を引いて話しかけてくれた。
「あなたの名前は?」
でも、私は答えられなかった。
「もう……大丈夫ですよ……きっと……」
馬を繋げた場所に着いたお姉ちゃんは、私に、そして自分に言い聞かせるように呟いた。
「何が?」
「え? えぇ……っとっそれは……ちょ……あれ!? ちょっと、どうどう! あ!!」
手綱から手を離してしまい、馬はどこかへ走っていってしまった。
「そ……そんな、待って!! ウソでしょ!? あなた……待ってくださいよ!!」
なんで馬に敬語なんだろう。私は気になって聞いてみた。
「何でそんな喋り方なの?」
「え!?」
お姉ちゃんが後ろを振り向くと、巨人が家から出てくるのが見えた。
「もう……調査兵団の馬なんですから……あんな……3m級くらいで……ビビらないで下さいよ……」
お姉ちゃんは弓と矢と、私の手を引いた。
「さぁ! 走ってください! 大丈夫ですから!」
「なんで? もうみんな逃げちゃったよ」
「……!」
「村の人……お母さんが足悪いの知ってた。でも誰も助けてくれない。私もただ見てた」
それでも私を連れてお姉ちゃんは走り続けた。
「ねぇ、聞いて」
「……」
「大丈夫だから。この道を走って。弱くてもいいから……あなたを助けてくれる人は必ずいる。すぐには会えないかもしれないけど……それでも、会えるまで走って!」
「さぁ行って!」
そんな急に言われても、私は出来なかった。私はただ、立ち尽くすばかりだった。でも────
「走らんかい!!」
お姉ちゃんは叫んだ。だから私も、走らなければならないと思った。だから────。
###グリュック
「あっちで女の人が……。わかった。君は……もう少し進んだところに馬に乗った人がいたから、そこまで行ってくれないかな?」
「なんでお兄ちゃんは助けてくれるの?」
「う〜んそうだな……お兄ちゃんも子供の頃こういう風に助けられたからだよ」
俺は少女に目線を合わせてニコリと笑顔を作った。この方面にいるとなればおそらくサシャだろう。装備もないんじゃかなり危険な状況に違いない。だから急いで馬を走らせ、その女の人のところに向かった。
「……!」
そこには、巨人に向かって弓を撃とうとしているサシャの姿があった。やはりというかなんというか、彼女は巨人に対する決定打を持っておらず、ジリジリと追い詰められていた。だが……。
(サシャに気を取られている……今なら!)
俺は巨人のうなじを直接削り取り、絶命させた。
「グリュック……!! ありがとうございます……あなたのおかげであの子も……この恩は必ず……!」
「へぇ〜必ず? じゃあ、肉で返してよ」
と、冗談交じりで答えたのだが、サシャは本気で受け取ってしまった。
「お……お肉!? お肉ですか……!? いくらあなたでもお肉だけは……か、勘弁してください……!」
「サシャ!?」
あの人……あの子はちゃんと伝えてくれたんだな。って。
「なんでサシャの名前を知っているんだ?」
「お父さんですよ! 私の!」
###
「この一帯の人々に馬を与えて回っとった。あの子がこっちにまだ人がいると教えてくれてな……。それがまさか……お前だったとは!」
(だからあんな大所帯で馬に乗っていたんだな……)
「あの子のために巨人と戦ったっとったのだな……?」
「うん……」
「サシャ……立派になったな」
「……お父さん。ただいま」
「それと君、サシャを助けてくれて、ありがとうな」
「は、はい!」
グリュックつい癖で心臓を捧げるポーズをとってしまった。
「じゃあ俺はエレンたちと合流する。サシャは一旦トロスト区に戻って団長に報告してくれ」
「わかりました!」
────父と娘、感動の再会
感想くれると嬉しいです。辛口がいいです
グリュックに魅力は感じますか?
-
感じる
-
感じない