進撃の巨人 The end -ゲームの主人公が生きていました- -誰が為の翼- 作:キラトマト
「なっ、ナナバさん……? なんで……。ってて……」
見知らぬ民家で目覚めたグリュックの目に真っ先に入ったのはナナバであった。
「おっと、急に動くと危ないよ」
「……ていうか、俺なんで生きて……。確か俺は……あいつらを守るために殿を……」
「あぁ……君の戦死報告を聞いた時はもう……それは取り乱したよ。だから……君が私の家の前に倒れていた時は……何かの夢だと思った」
「夢……つまり俺が死ななかった理由はまだわからないんですね……」
「あぁ……でもグリュック、君は生きていたんだ……だから……もう……いやなんでもない」
(でも……生きていたならもう一度兵士に……)
「ダメだよ」
「え?」
「君の考えていることなんてお見通しさ、また兵士になる、とか言うんだろう?」
「や、やだなぁ……そんなこと……あ、ちょっと外の空気吸ってきますね」
そう言って彼が家を出ていこうとするのを引き止めるナナバ。家を出てみると至るところに『ウォールマリア奪還!』や『兵士よ集え!』等の張り紙が張り出されていた。
「ウォール・マリアが……嘘だろ?」
(一体俺が眠っている間に何があったんだ?)
それを見た彼は走った。呼び止めるナナバの声も聞かずに。そして再度調査兵団に入団することとなったグリュック・シュバイン。
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「お前……!」
そう言って真っ先に駆け寄ってきたのは意外にもジャンだった。
「てめっ……生きてたなら……クソっ……言えって……」
「じ、ジャン……気持ちわりぃって……。って、お前らまで……」
遅れて他の104期の皆も駆け寄ってきた。
「お前がいねぇうちにヒストリアが女王になったりよ、色々あったんだぜ!」
コニーは感動の再会というよりかは久しぶりに会った友達、のような距離感である。
「ったくてめぇら……揃いも揃って……」
その後ろから眺めている兵長がそう呟いたのが聞こえた。心なしか普段より機嫌が良さそうである。そしてその後、俺は駐屯兵団から異動してきた者や、更には憲兵団から移ってきたという奇特な者もいることを知った。それに加えて、ハンジさんから雷槍という新兵器があることも教えてもらった。
「今までなら鎧の巨人に対抗する手段は巨人化したエレンの極め技、それと先日の実験で獲得した硬質化パンチ! というのもあるんだけど、その武器だけでは奴は殺せないだろう」
「そこで開発したのがこの雷槍!」
と、ようやく俺の知っているハンジさんのテンションに戻った。
「らいそう? どうやって使うんですかそれ?」
「見てもらった方が早い! 外に行こう」
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ドォォォオオオ! という、雷が落ちたような音が森の中にこだまする。これが雷槍に雷という文字が使われている所以である。そしてその音と共に、打ち込まれた木は真っ二つに折れた。
「威力は見ての通り、雷が落ちたようだろう? だから雷槍って呼んでる」
「これが本当に……鎧に、ライナーに通用するんですか?」
「それは試してみないことには分からない。が、恐らく闇雲に撃ち込んでは殺せるものも殺せないだろう。そしてこの武器を用いるにあたって最大の注意点がある」
「なんですか?」
「これだけの威力があるが故、通常のブレードのように近づいて打ち込めば自分の体までバラバラになってしまう。だからこれを使えるのは、周囲に十分な建造物がある状況でなくてはならない」
「つまり、撃ち込んでピンを外すと同時に後ろに退避すればいいってことですか?」
「さっきの説明でよくわかったね! ……でも、事故にあったものも少なくないんだ……」
「やっぱり、爆発物である以上は……ですよね。じゃあ1回使ってみますよ」
「えぇ!? そんなすぐに!?」
「鎧の巨人をこの手で殺せるんですよね? なら早いにこしたことはないです」
「はぁ……。変わってないね君は。鎧の巨人のことになると前が見えなくなってしまう。まぁ……巨人を見て興奮するのは私にもわかるんだけどねぇ……」
「ハンジさんと一緒にしないでくださいよ」
なんて、おどけた口調で言ってみせた。少し空気が和んだ気がした。
「ま、私のは知的好奇心で、君のとは真逆だからね〜。それはそれとして、まぁ、君がしたいって言うならもう始めようか!」
俺は雷槍をブレードの持ち手の下部に取り付け、立体機動で巨人模型の近くまで飛んだ。
「気をつけるんだよー!!」
「わかってますって!」
うなじの部分にアンカーを打ち込み、そのままアンカーを巻きとらずにガスの力で空中を浮遊する。
「は!」
雷槍を打ち込んだと同時にガスを勢いよく吹かせブーストしその場から離れた。
「わお! そのやり方もあったね!」
「これなら、近くに立体物がなくても使えるんじゃないですか?」
「いや〜それがねぇ、君それ簡単そうにやってるけども、それ簡単じゃないんだよ? ましてや最近入ったばかりの新兵には荷が重すぎるんだよ」
「え? あ、そうでしたっけ」
ナナバさんがそう言ってた気がするなぁ。まぁともあれ、雷槍も危なげなく使えるようになったしよしとするか。
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そしてエレンたちが父の記憶にあった男に会いに行った後、エルヴィンたち残った調査兵団の精鋭達が話していた。
「つまり、エレンの父グリシャ・イェーガーは『壁の外の人間』である可能性が高いと……」
グリシャが会っていた男、調査兵団元団長キース・シャーディスから聞き出した情報であった。
「そう……アニやライナー、ベルトルト同じように彼は巨人の力を持っていたしね。でもその3人とは違って壁の中の人類に協力的だった」
「調査兵団に興味持ってたって話なら、もっと協力してくれてもよかったんだがなぁ」
と、冗談交じりに言ったクラースに、ハンジはどうかな? と疑問を抱いた。
「物知りなグリシャさんなら、レイス家に受け継がれる思想の正体すらも何か知っていたのかもしれない」
であれば……とハンジは話を続ける。
「王政に悟られまいとして情報を広めることはしなかった。しかしウォール・マリアが突破された瞬間、彼は王政の本体であるレイス家の元まですっ飛んでいき、狂気の沙汰に及んだ。おそらくはこの壁に入ってから独力で王政を探るなどしていたんだろう。いずれにしても凄まじい意識と覚悟がなきゃできることじゃない」
「そんな父親が調査兵団に入りたいと言った10歳の息子に見せたいと言った家の地下室……そこには一体何があるんだろう?」
と、ディルクが初めて口を開いた。
「おそらくは初代レイス王が我々の記憶から消してしまった『世界の記憶』……だと思いたいが、ここで考えたところでわかるわけがない」
地下室の秘密を誰よりも渇望しているエルヴィンは言った。
「本日で全ての準備は整った。ウォールマリア奪還作戦は、2日後に決行する。地下室に何があるのか? 知りたければ見に行けばいい。それが調査兵団だろ?」
そんなエルヴィンの言葉に、そこにいた班員はうんうんと頷く。
「では各班を任せたぞ」
最後にそう言って、エルヴィンは会議を終えた。
「でも今日くらいは肉食ってもいいですよね?」
と、雑談を繰り広げる各班の班長たち。
「そうだな……たまにゃガキ共に大人の甲斐性を見せつけてやらんと」
「じゃあ、くれぐれも秘密裏にな」
部屋を出る直前、ディルクが呟いた。
「シャーディス団長の隠匿罪についてはどうする?」
「ほっとけばいい。あんなのに構ってる暇はないよ」
と、ハンジはいつになく冷徹な口調で言った。
「ショックだよなハンジ……あんたの憧れだったのに」
そんなマレーネの茶化しにハンジは間髪入れずに答えた。
「うるさい黙れ」
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「ナナバさんすみません……俺はまた、兵士として戦います」
何も言わず飛び出したっきりというのはあまりにも酷いと思ったのか、グリュックはナナバの家に戻った。
「いや……すまない、私も……悪かったと思っている。君はもう一度、兵士に……なったんだろう?」
(なんで、ナナバさんが謝るんだ?)
「えぇ、はい。シガンシナ区を、俺の故郷を取り戻すために」
「私は別に、君に兵士にになってほしくなかったわけじゃない。ただ……死んで欲しくないんだよ」
「ありがとうございます。死にませんよ、俺は」
「あぁ……君の無事を、誰よりも願っているよ」
(ナナバさん……)
「大丈夫ですよ。例外がなければすぐに終わる作戦なんですから」
そう、例外がなければ……だけどな。笑顔で手を振るナナバさんを背中で感じながら、彼は一抹の不安も感じていた。
「ライナーとベルトルトの奴……」
裏切り者の名前を呟き、再度憎悪の気持ちは強くなる。憎しみによる強さなど、所詮仮初のものに過ぎないことであると知っているのに……。
────彼の最後は、愛情か、憎悪か
感想くれると嬉しいです。辛口がいいです
グリュックに魅力は感じますか?
-
感じる
-
感じない