進撃の巨人 The end -ゲームの主人公が生きていました- -誰が為の翼- 作:キラトマト
「今日は特別な夜だが、くれぐれも民間人には悟られるなよ。兵士ならば騒ぎすぎぬよう、英気を養ってみせろ!」
豪華な食事を用意したハロルドがそんなふうに言ってみせたが、グリュックたちの耳には入っていない。
「なんだこれは……!」
「おいおいこりゃ一体……」
「に……く……?」
「今晩はウォール・マリア奪還の前祝いだ、乾杯!! ────あれ? ちょっと……」
「落ち着けよ! 均等に分けるんだよ!」
「おいそれはでけぇから2枚分だ!!」
「ダメだ! お前は槍がヘタクソだろ!? 期待できねぇから俺に譲れ!」
「何だと!?」
各所で肉を巡る争いが繰り広げられる。
「肉ぅううううう!!!!」
サシャが皆で分ける用の大きな骨付き肉にかぶりつき、独り占めしようとするのをコニーが抑える。
「てめぇふざっけんなよ芋女ァ!!」
「んー!! んー!!」
「自分が何してっかわかってんのか!?」
「前言ったよな!? お礼は肉でって!!」
戦闘時以外は比較的冷静なグリュックも肉なんていう贅沢品を前にすればこうなってしまうのも仕方ない。
「やめてくれサシャ……俺……お前を殺したくねぇんんだ……」
「1人で全部食うやつがあるか!?」
と、ジャンがかぶりついていた肉を取り上げた。のだが、肉が口の中からなくなって寂しくなったのか取り上げたジャンの手にかぶりついた。
「ああああああぃ食ってる食ってる食ってるぅ!!」
「サシャ! その肉はジャンだ! わかんなくなっちまったか!?」
「調査兵団は肉も食えなかったのか。不憫だな」
なんて呑気なこと言いながら1人だけ肉を悠々と食っているマルロに、サシャの拳が炸裂する。マルロは勢いよく鼻血を出し、持っていた肉を離してしまう。
「コニー、早くサシャを落として」
「やってる! ……けどコイツ意識ねぇのに動いてんだよ!!」
意識を失ったままのサシャの拳が無差別に凶行をはたらく。
「オイ……負傷者が出てるぞ」
「誰だ、肉を与えようって言ったのは」
「すいません、奮発して2ヶ月分の食費をつぎ込んだのが良くなかったようです」
調査兵団の先輩方も、そんなこと言いながら本気で心配はしていないようだ。
「仕方ない、サシャを縛っとくぞ」
###
「これでいいか」
「やっと力尽きた……」
「しかしこんなクズでも、以前は人に肉をわけ与えようとしてたんだよな……」
「え? いつだよ」
「4ヶ月前……固定砲整備のあの日だよ」
「あぁ、あん時か。懐かしいな……」
グリュックとエレンが感慨に浸る。
「オイ」
そんなふたりの肩をコニーがバンと叩く。
「あれから、まだ4ヶ月しか経ってないのか」
「まだ4ヶ月前だ。でも4ヶ月前で俺達あのリヴァイ班だ。スピード出世ってやつだよな?」
「コニーもエレンもリヴァイ班になったのか?」
「あ、そっかお前は知らなかったんだよな。そう、俺とヒストリアを守るために結成されたんだ」
「そんなのに……すげぇな」
「ま、お前は天才だからな」
そう言ってエレンがコニーの頭をポンポンと撫でる。
「当たり前だろ」
「食おうぜ、飯が冷めちまう」
「ん…!? んん!?」
意識を取り戻したサシャが呻き声を上げるが、周りの喧騒もあり、グリュック以外は気づかなかった。
(まぁ、後で解いてやるか、今解いて暴れられても面倒だし)
そのために肉を一切れ、パンをひとつとっておくグリュックであった。
###
「だからお前はまだなんの経験もねぇんんだから、後衛だって言ってんだろ?」
「確かに俺は弱いが……だからこそ前線で敵の出方を探るにはうってつけじゃないか?」
「何だ? 一丁前に自己犠牲語って勇敢気取りか?」
「しかしその精神がなければ全体を機能させることができないだろ?」
「あのなぁ……誰だって最初は新兵なんだ。新兵から真っ先に捨て駒にしてちゃ次の世代に続かねぇだろ? だからお前らの班は後ろから見学でもして、生きて帰ることが仕事なんだよ」
「うぅ……」
4ヶ月間の地獄を体験した身であるジャンは、唯一の憲兵団から異動した新兵であるマルロに教えを解いた。
「ま、1番使えねぇのは一にも二にも突撃しかねぇ死に急ぎ野郎だよ。なぁ?」
アルミンを挟んだ隣にいるエレンに聞こえるように席を寄せる。
「ジャン……そりゃ誰のことだ?」
「……はっ、お前以外にいるかよ? 死に急ぎ野郎は」
「それが最近わかったんだけど、俺は結構普通なんだよな……そんな俺言わせりゃよ、お前は臆病すぎだぜ、ジャン」
2人は一瞬目を見合せた後立ち上がり、
「いい調子じゃねぇかイノシシ野郎!!」
「てめぇこそ何で髪伸ばしてんだこの勘違い野郎!!」
お互いの胸ぐらを掴んで喧嘩を始めた。
「始まったっ、ははは」
久しぶりに見る2人の喧嘩に、思わず笑ってしまうグリュック。
「顔以外にしとけよー」
「てめぇ! 破けちまうだろうがよ!!」
「あいつら何やってんだ?」
「ははは! マルロ、いつもの事だ」
「オラァッ!」
「どうッ!」
「このっ野郎ッ!」
「いッつ」
「根性見せろ!!」
「腰引けてんぞ!?」
「ヘタクソー」
周囲の兵士もあーだこーだと言って増長させていく。
「なにか始まったぞ」
「騒ぐなって言ったのに……」
2人は息切れしながら話した。
「まじな話しよぉ……」
「あ?」
「巨人の力がなかったらお前何回死んでんだ……? その度に……」
「ミカサに助けてもらって……!! これ以上死に急いだら……ぶっ殺すぞ!?」
「セイッ」
「────それは、肝に────銘じとくから!!」
「ホオッ」
「お前こそ、母ちゃん大事にしろよ!? ジャンボォォォ」
追い討ちのようにアッパーカットをかますエレンに、ジャンはカウンターをかます。
「それは忘れろぉぉおお」
「ワッサッ!」
「止めなくていいの?」
「……うん。……いいと思う」
アルミンとミカサはその喧嘩を温かい目で見守る。
「オイ」
突然、鋭い蹴りが2人の腹に放たれる。
「……お前ら全員はしゃぎすぎだ。もう寝ろ」
「「「……了解!」」」
オロロロロロ
「……あと掃除しろ」
リヴァイの登場により皆は解散、エレンとジャンも腹を抑えながら出ていく結果となった。
###
「何か忘れてるような……あ」
そういえばサシャに肉、持っていくんだったな。
「サシャ、おい起きろサシャ」
試しに肉を近づけてみたところ、彼女はすぐに目を覚ました。
「肉ぅぅううう!!」
「おい落ち着けサシャ。周りの迷惑になっちまう」
「にく!! にくぅぅうう!!」
「今解いてやるから、じっとしてろ」
そう言って縄を解くと同時に彼の持っていた肉は、その手からなくなっていた。
「神様ぁぁぁああああ……!!」
「ゆっくり食え、水もパンもあるからな」
(ったく、食い意地がすごいなサシャは……)
「しっかし、また俺に貸し作っちまったなサシャ」
「はぅ!?」
食べながらとても驚いたような目を向ける。
「お前の父親、確か今は馬育てて結構金持ちなんだろ? だったらどっか料理店にでも連れてってくれよ」
それを聞くと彼女は安心したような顔に戻った。
「んじゃあ俺は帰っから、サシャも食べ終わったら自分で帰れよー」
(帰ったらナナバさんが待ってっからな……)
「うぅ……神様ぁ」
「ホント、子供みたいだなあいつ。ただいま」
「お、やっと帰ってきたのかいグリュック」
「すみません、ちょっと遅くなって」
「まぁ仕方ないさ、明日はウォール・マリアを奪還するんだろう? それの前祝いってしたいたんだろう」
「えぇ、よくわかりましたね」
(しっかし、明日は日没直前に作戦開始か……これなら沢山寝られそうだ)
「そういえばグリュック、君に伝えたいことがあるんだが、いいかい?」
「え? なんですか?」
彼女はグリュックの元に近づき、キスをした。
「!?」
「私からの前祝いだ。どうだい?」
「ど、どうだいって……」
(キスなんて……初めてだし……感想とか……)
「あんまよくわかんないっすけど……よ、良かったですそれよりも! 俺……明日早いんで……もう寝ます」
「死なないでね。グリュック」
「うっ……や、約束します」
(でも……正直言って生き残れるとは思えない。獣の巨人の力は未知数だし、鎧も超大型も強い……でも)
「絶対に、生きて帰ってきます」
(リヴァイ班の皆さんも言ってたしな……生きて帰って、初めて1人前って)
「あぁ、絶対、だぞ?」
2人は小指を絡め、約束のおまじないをした。
感想くれると嬉しいです。辛口がいいです
グリュックに魅力は感じますか?
-
感じる
-
感じない