進撃の巨人 The end -ゲームの主人公が生きていました- -誰が為の翼- 作:キラトマト
#1 目覚め/因縁
ある少女が言った。世界は残酷だ、されど美しいと。
一言で現せられるほどこの世界は単純じゃない。だがしかし、この世界で唯一、それを変えられる者がいたとしたらどうする?
そしてそれが、あるひとりの少年だったら、彼は何を選ぶのだろうか。
進撃の巨人 -誰が為の翼-
エレン・イェーガーを鎧の巨人から奪還後に発生したウォールローゼ決戦において行方不明となっていた名もなき英雄『グリュック・シュバイン』
突然、謎の部屋で目覚めた104期調査兵団所属、グリュック・シュバイン。その日は、王政を奪還し、その後シガンシナ区奪還の目処が立った頃であった。
「……ここは? 俺は今まで何を……」
「やっと起きたかい? ねぼすけさん」
車椅子に乗った女性がグリュックの目覚めを歓迎する。
そして、彼の脳裏にこれまでの過去が思い起こされる……。
────平和は、突然壊された。突如現れた超大型巨人によってウォールマリア内、シガンシナ区の外壁は壊された。
「ああ、無事でよかったわ!」
「怪我はないか? 早く避難しよう!」
少年の両親は、少年を見つけ、彼の手を引いて逃げようとした。
「パパ! ママ!」
だが、突然上から降ってきた大岩から息子を守るために、少年の両親は死んでしまった。
(なんで、あのでっかい巨人はもっと離れて……)
「立てるか!? 船まで走るんだ!」
駐屯兵団の兵士が少年の手を掴み、連れて走る。その道中、少年はそれでも親を助けようとして後ろを振り返った。彼が見たのは、口から蒸気を発し、全身が鎧で包まれた他の巨人とは一線を画する巨人であった。
少年は、船の上で膝を抱えながら震えていた。
「駆逐してやる!!」
そのとき、船の上で、母親を巨人に喰われた少年、エレン・イェーガーは叫んだ。
「この世から……一匹……残らず!!」
(俺も……絶対に……)
少年、グリュックは心に誓った。あの鎧に覆われた巨人を必ず討ち取ると、拳を強く握りしめる。
そして、鎧の巨人によって内壁まで壊されたことによってウォールマリアまでもが巨人に支配されてしまい、それによって、人類の活動領域は大幅に狭まってしまった。それから2年が経ち、シガンシナ区出身のミカサ・アッカーマン、アルミン・アルレルト、────そして、エレン・イェーガーは104期訓練兵団へと志願した。そして巨人に全てを奪われたグリュックも、鎧の巨人への復讐の為、訓練兵団へと志願した。
「貴様は何者だ!」
と、スキンヘッドの教官 キース・シャーディスが馬面の青年に問う。
「トロスト区出身! ジャン・キルシュタインです!」
「貴様は何のためにここに来た!」
「……憲兵団に入って、内地で暮らすためです」
「そうか……貴様は内地に行きたいのか」
「はい!」
そう自信満々に答えたジャンは、教官の頭突きを喰らい、思わず痛みから座ってしまう。
「オイ、誰が座っていいと言った? こんなところでへこたれるものが、憲兵団になどなれるものか!」
それを横目で見ていたグリュックは教官が自分の方に向かって来るのを見ると即座に体勢を整える。
「貴様は何者だ!」
「シガンシナ区出身、グリュック・シュバインです!」
「そうかシュバイン! お前もバカみてぇな名前だな! アホ面さげて、ここに何しに来た!」
「鎧の巨人を倒すためです……!」
長年教官を務めているキースにも見抜けなかった。彼は平凡な兵士であると見せかけて、エレン達と同じように地獄を知っているものであると。
「ほう……せいぜい頑張るといい……ただし! 貴様の死体が分かるように目印をつけておけ!」
「はっ!」
キースはこれまで何度も兵士の顔を見た事はあったが、ここまでの人材は初めてであった。自分の後任に相応しいと思うほどに。だが、そんな印象はすぐに芋を食いながら自己紹介をする者にかき消されてしまった……。
「第104期訓練兵! よく聞いておけ! 今の貴様らは、せいぜい巨人のエサになるしかないタダの家畜!」
偽名を使い、王家である身分を隠している者、巨人になる力を隠し、スパイとして潜り込んでいる者たち、そして巨人になる力を秘め、後に世界を滅亡寸前まで追い込む者など、今期の訓練兵団希望者は色とりどりの色彩を放っていた。
「そんな貴様らに、我々が巨人と戦う術を叩き込んでやる! エサのまま死にたくなければ、必死に食らいついてこい!」
そう言って初日は終わった。それから数日、ようやく巨人を討伐する術である立体機動についての訓練が始まった。
「今日は立体機動装置を使った実践訓練を行う! 出来の悪い奴は今からでも開拓地に移ってもらう! すぐ準備に取り掛かれ!」
(ようやくか……鎧の巨人を倒すためなら、なんだってする)
そうして、彼らは訓練地へと移った。
「まずは立体機動術の基本、移動からだ!」
────そうして、巨人模型の討伐数は上からミカサ、ライナー、グリュックとなった。
「今回の最優秀討伐数者を発表する! ミカサ・アッカーマン、貴様だ!」
「やったなミカサ! これで巨人も倒せるぞ!」
「これで本日の訓練は終了だ! 希望するものは引き続き、自主訓練を続けろ!」
「クソ……俺には才能がないのか……?」
その日、彼は夕陽が落ちる頃になるまで自主訓練に励んでいた。
(これなら……!)
巨人模型のうなじにアンカーを刺し、刃を振りかかる寸前、ワイヤーが外れてしまう。
(あっ……)
「大丈夫か!!」
地面に落ちる瞬間、金髪の男に抱えられる。
「捕まれ、引っ張りあげる!」
「今行く!」
と、長身の男も駆けつける。なんとか2人がかりでグリュックを抱えて巨木の枝に止まる。
「はぁ……はぁ……無茶させやがって、焦って姿勢を崩したんだな」
「でも無事でよかったよ、戻ろうか」
と、2人が木から飛ぼうとした瞬間、グリュックは彼らに問いかける。
「あ、あの! 名前、なんて言うんですか?」
「まだ名前知らなかったのか? 俺はライナー・ブラウン。でこっちが……」
「ベルトルト・フーバー。よろしくね」
(金髪の方がライナーで、背高い方がベルトルトか……)
「よろしく、ライナー、ベルトルト」
「あぁ、これからよろしくな、グリュック」
そう言って3人は木から飛び、立体機動装置で兵舎まで戻った。
「よう、お疲れさん」
「お、エレン、お疲れ様」
「今日の訓練もキツかったな……けど、この調子なら立体起動をものにできる日も遠くねぇはずだ。早く一人前の兵士になって、巨人を駆逐する。そのためならこんな訓練、どうってことねぇ」
「だな……俺も絶対、鎧の巨人を倒してみせる」
「お前も巨人に家族を……あ、そういえばキース教官がお前のこと探してたぞ? 教官、まだ訓練地にいるんじゃねぇかな」
「まじか……ありがとエレン! じゃあ!」
(急がないとな……怒られるんじゃ……)
急いで訓練地に向かったグリュック。
(あれは……トーマス・ワグナーに、ミーナ・カロライナか……)
もみあげが特徴的な金髪の男におさげが特徴的な女が、キースの前に立っていた。
「貴様ら、やる気がないならさっさと荷物をまとめて開拓地にでも移ったらどうだ?」
(そうか……訓練の時すごい言われてたもんな……)
「トーマス・ワグナー! 貴様のような無駄飯喰らいでも人手不足の開拓地なら追い出されることはあるまい!」
「ミーナ・カロライナ! 貴様は豚小屋出身だったな? ならば豚として暮らすがいい、巨人は豚を食わんからな! ……とはいえ家畜以下の貴様を、豚が仲間に入れてくれるかは疑問だが……」
そう言ってキースは訓練地の入口へと行ってしまった。
「一生懸命やってるのに、何もあそこまで言わなくても……」
「しばらく立ち直れないよ……私、本当に豚になろうかな……」
「……だったら諦めるのか? お前たちは、本当に家畜以下になってもいいのか?」
「イヤ、それは……」
「諦めたくないよ……!」
「だけど、今よりも訓練成績を上げるのは正直なところ難しい気がするんだよな……」
「うん、全力で取りくんだ結果が今の成績なわけだし……。グリュック、あなたはどうすればいいと思う?」
「優秀な仲間を見習うのはどうだ?」
(今日もライナーとベルトルトに助けられたしな……)
「仲間を見習う? ……確かに……同期には優秀な人が沢山いるし、みんなの長所を学べば、兵士として成長できるかも?」
「長所を学ぶ、か……それを意識して仲間と交流すれば、いろいろと得るものがありそうだな」
「そうそう」
「よし、後でお互いの成果を報告し合おうぜ! お前が言い出したんだし、お前も付き合えよな!」
2人との会話を終えたグリュックは教官の元へと急いだ。
「話は聞かせてもらった。兵士としての技量を向上させる上で、優秀な仲間を見習うというのは良い事だ。特に貴様のような未熟者は、仲間との交流を重ねその長所を少しでも学び取るようにしなければならん」
グリュックは訓練地を出て、トーマスたちと約束してしまったため、仲間たちと交流することにした。
「おっ、教官には会えたみてぇだな」
訓練地から帰ってきたグリュックに真っ先に話しかけたのはエレンだった。
「そういえば、今晩は夜間訓練があるんだっけ。正直、まだ体力がついていかねぇが……」
「俺もそうだけど……でもやるしかないよな。早めに部屋に戻って、休んだ方がいいかもな」
「あぁ、そうだな。訓練はたしかに大変だが、少しでも早く戦い方を覚えねぇとな」
「あぁ、鎧の巨人を倒すまで、俺は死ぬ訳にはいかないからな」
エレンは自室に戻って休憩しに行ったようだ。すると次は金髪の青眼の女性、クリスタ・レンズが話しかけてきた。
「みんな疲れてるみたいだね……あなたは大丈夫? 今日の訓練中、事故になりかけたって聞いたけど」
「ライナーから聞いたのか……心配してくれてありがとう」
「ホント、心配したんだから、次からは、もう無茶しないでね?」
「おいおい、またいい人ヅラしてんのか?」
「違うよユミル、これはグリュックを心配して……」
「あーはいはい、そうかい。ともかく、クリスタを心配させんじゃねぇぞ?」
「あ、あぁ……わかったよ」
そう言ってグリュックが自室に戻ろうとしたところ、後ろから声をかけられる。
「あ、オイ、そこのお前!」
「えっと、俺のことですか?」
グリュックは自分の顔を指さしアピールする。
「そう、お前だ、お前! ほれ、落し物だぞ、こりゃ、お前の日誌じゃねぇのか?」
腕章に薔薇のマークがあるのを見るに、駐屯兵団のようだと手帳を受け取り一人で考え込んでいたグリュック。
「そうか、もう落とさねぇように気をつけろよ。ええと……お前は……104期の訓練兵だよな」
「ああ、いいってことよ、気にすんな。俺はハンネス、一応駐屯兵団の隊長をやってるもんだ。お前も104期の訓練兵だってんなら、エレン・イェーガーとか知ってるか?」
「あぁ、それならさっき話しましたよ?」
「そうか……ていうか、手帳見ちまったんだが、お前もシガンシナ区出身なんだってな。シガンシナ区といえば、ミカサやアルミンは知ってるか?」
「あぁ……まだ話したことは無いけど知ってますよ」
「あいつらも肉親を亡くしててな……今じゃ俺が親代わりみたいなもんだ」
「そうなんですか……エレン以外にもやっぱり……」
(俺だけが特別なわけじゃないんだな……)
「お前も同郷なんだし、困ったことがあれば俺を頼ってくれよ」
「ありがとうございます!」
(隊長って聞いて尻込みしたけど、思ったよりフランクな人みたいだ)
グリュックは次に、今日のお礼を言いにライナーとベルトルトがいる路地裏を訪れた。
「ああ、君か……もしかして、わざわざ今日の俺を言いに来てくれたのかい」
「仲間を助けるのは、兵士として当然のことだ。そんな事で、いちいち気を使わなくていい」
(ライナー……ほんと良い奴だな……)
「ライナー、ベルトルト、いるか?」
すると、エレンが尋ねてきた。
「なんだ、お前らまで……俺たちになにか用か?」
「2人とも立体機動装置の扱いが上手いだろ。頼む! オレに教えてくれ!」
一行は部屋に戻ってエレンに教えるが、抽象的すぎてあまり伝わらなかったようだ。
「……すまん、あまり役に立つ助言は出来そうにないな」
「そうか……」
「その……君達は3人ともシガンシナ区出身だよね。巨人の恐ろしさを知ってるのに、なんで兵士なんて目指すの?」
「僕は……王政の無茶な領土奪還作戦で家族を失って、この状況を黙って見てるなんてできないと思ったから……」
と、アルミンが自分の動機を話す。
「というか、2人はどこの出身なの?」
「僕とライナーはウォールマリア南東の山奥の村出身なんだ」
「じゃあ……」
「あの日……村に連絡が届くよりも先に、巨人が来たんだ。その後はよく覚えていない。内地勤務の憲兵団狙いで兵士を選んだけど、それがダメなら全てを放棄するかもしれない……僕には、自分の意思がない」
「自分の命を大切にすることだって、立派な事だよ」
「俺は、帰れなくなった故郷に帰る。俺の中にあるのはそれだけだ……エレンはどうなんだ?」
「オレは……オレは、殺さなきゃならねぇと思った。この手で巨人を皆殺しにしなきゃならねぇって思ったんだ」
エレンは拳を強く固めて言った。
「……で、お前は? なんで兵士になろうと思ったんだ?」
グリュックは自分の身の上を話したうえでこう言った。
「鎧の巨人を、殺すためだ」
「そうか……お前もあそこにいたのか……オレの母さんも殺された、あの時にな……」
「だから君は訓練兵を目指したんだね……ご両親のかたきを討つために……」
「そうなんだ……」
とベルトルトは顔を下に傾けながら言った。
「故郷を取り戻したいってのは俺と同じだ。目標のためにも、今は訓練を乗り越えないとな」
「……いつか、叶う日は来るのかな」
「さぁな……だが、何もしなけりゃ永遠にそのままだ。兵士にならなきゃ始まらねぇしな」
「そうだな……!」
「あぁ、やってやるさ……!」
グリュックとエレンは決意を固め、夜の訓練に臨んだ。
────兵士になったグリュック、彼の行く先は
感想くれると嬉しいです。辛口がいいです
グリュックに魅力は感じますか?
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感じる
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感じない