進撃の巨人 The end -ゲームの主人公が生きていました- -誰が為の翼-   作:キラトマト

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#15 二つの戦局

「エルヴィン、鎧が登ってくる」

 

 奴は手足の指先に硬質化を集中させ、壁に穴を開けながら壁上へと器用に登っていく。

 

「総員、鎧の巨人との衝突を回避しろ!! 奴に近寄るな!」

 

「「了解!」」

 

 そこから離れたところで待機していたエレンはハンジに問いかけた。

 

「攻撃命令はまだですか!? 団長は何を!?」

 

「敵の動きを見ているんだ。どうもライナー君達は手の込んだ催しで歓迎してくれるようじゃないか」

 

 一方、エルヴィンは前方に見える巨人の群れを観察して気づいたことがあった。

 

(あの『四足歩行型』荷物を運ぶ鞍がある。先程一斉に巨人化したものでは無いな……だとすればあれが敵の斥候か? 我々の接近にいち早く気づきライナーらに伝えた……とするなら)

 

 エルヴィンは顔前面が前方に伸びたような形をした巨人に注目した。

 

「あの四足歩行型の巨人も知性を持った巨人だ。いや……もっといてもおかしくない」

 

(荷物?! 一体何が……)

 

「予想よりも、敵の規模は大きそうだ」

 

 すると、獣の巨人はおもむろに拳を振り上げ、咆哮とともにそれを地面に振り下ろした。

 

「動いた!!」

 

 多数の巨人の中の、2,3m級の小型の巨人が家屋に向かって走り出した。

 

(ウトガルド城の襲撃と同じく、奴がまず狙うのは馬……)

 

 エルヴィンは思案を張り巡らせる。

 

「だ、団長、鎧がもうすぐそこまで……。それにベルトルトがまだどこにいるか……」

 

「あぁわかっている」

 

(何より今最も危惧すべきなのは鎧と超大型に為す術なく馬を殺されることか……。ならば……)

 

 エルヴィンは指示を出すため、息を大きく吸う。

 

「やっと何か喋る気になったか……先に朝食を済ませるべきだった」

 

「ディルク班並びにマレーネ班は内門のクラース班と共に、馬を死守せよ!! リヴァイ班並びにハンジ班は!! 鎧の巨人を仕留めよ!! 各班は指揮の下『雷槍』を使用し何としてでも目的を果たせ! 今この時! この一戦に!! 人類存続の全てが懸かっている!!! 今一度人類に……心臓を捧げよ!!!!」

 

「ハッ!!」

 

「聞いたか!? 馬を狙ってくる巨人を返り討ちにしてやれ!!」

 

 ウォールマリア側の班長達は新兵たちに呼びかけた。そして壁から降りようとしたリヴァイとアルミンをエルヴィンは引き留める。

 

「リヴァイ班と言ったが、お前だけはこっちだリヴァイ」

 

「……俺にエレンではなく、馬を守れと?」

 

「そうだ。そして隙を見て奴を討ち取れ」

 

 そう言ってエルヴィンは広い平原に悠々と佇む1匹の巨人に刃を向ける。

 

「獣の巨人は、お前にしか託せない」

 

「……了解した。さっき鎧のガキ1匹殺せなかった失態は……そいつの首で埋め合わせるとしよう」

 

 リヴァイはそう言って馬を守る班長達に加勢する。

 

「アルミン、鎧の巨人用に作戦がある」

 

「はい!」

 

「人類の命運を分ける戦局のひとつ……その現場指揮はハンジと君に、背負ってもらうぞ」

 

 そんな中、鎧の巨人はようやく壁の上に登り終えた。

 

(いた……あの1箇所に固まっている。あの馬を殺してここから離れる。それだけでいい……リヴァイ兵長がどれだけ強かろうと、俺たちの戦士長には到底敵わない)

 

 巨人の体内でライナーの首から刃がズズズと引き抜かれていく。

 

(危なかった……あの時……一瞬でも意識を全身に移すのが遅れていたら手遅れだった。……しかしなんだって壁の中なんて調べようと思ったんだ。それに俺を見つけたのあれは……グリュックだったよな……? あいつはあの時死んだはず……。イヤ……もういい。長かった俺たちの旅もようやくこれで終わる……)

 

 ライナーの目には、離れたところで戦局を見つめるかつての上官が映った。

 

(エルヴィン・スミス……いや迷うな先に殺すのは馬だ)

 

「!?」

 

 ライナーは思わず声を上げた。背後で巨人化の轟音が響いたからだ。

 

(エレン!?)

 

 巨人化したエレンは壁上の鎧の巨人を睨んだ。

 

(なぜ……自分から姿を現した!? 俺たちの目的がお前の存在であることは重々承知のはず……一体何のつもりだ!?)

 

 ライナーが思案している中、エレンはおもむろに走り出した。

 

(……まさか!? 南から壁を越えて逃げる気か!? ヤツ1人なら馬が無くても巨人の力でトロスト区まで逃げられる。そうなっては俺たちがここに留まって戦う理由もなくなる)

 

 だが、ライナーはひとつの違和感を覚える。

 

(ヤツらの狙いは……俺の目標を……馬からエレンに移すことか……)

 

 エルヴィンはフードを外し、鎧の巨人(ライナー)の目を見つめた。

 

「へっ、考える時間もくれねぇってわけですか……ったく団長。せっかく登ったってのによぉ……」

 

(よし!! 食いついた!)

 

 エレンは走りながら心の中で歓喜した。アルミン、ハンジが示した作戦はこうだ。

 

 ライナーがエレンを選ばずに馬を選んだ場合はそのまま回り込みリヴァイとの挟み撃ち、エレンを選んだ場合は彼とリヴァイ班とで鎧を仕留める。しかし、そこにアルミンが釘を刺す。

 

『まだ超大型巨人がどこかに潜んでいます。前回エレンは鎧をあと一歩のところまで追い詰めましたが……超大型の奇襲を受け連れ去られるに至ったのです』

 

『単純な対策ですが、壁から離れた位置で戦いましょう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ###

 

 エレンとライナーは対峙していた。噴水を挟んで、お互いの様子を伺いながら。

 

(まぐれかもしんねぇけど……お前には1度勝ってんだ。ほとんど勝ってた……一体一なら俺は勝てる。単純な格闘能力なら────女型(アニ)の方がずっと手強かった)

 

 拳に硬質化を纏わせ、エレンは1歩後退り、鎧の左ストレートを見事に躱す。そして下段から掴もうとしてきた鎧の肩を掴み押し飛ばすが懲りずに彼はもう一度左ストレートを放った。頭を傾けて躱し、勢いのまま硬質化パンチを鎧の顔面に食らわせる。

 

(ここがどこだか────お前にはわかるか? ここは……俺の……俺たちの……故郷があった場所だ)

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!」

 

 倒れ込む鎧に向けて咆哮をするエレン。

 

(取り返してやる。お前らを……ぶっ殺して……お前らに……奪われた全てを)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ###

 

「新兵!! 残りの馬を西側に移せ!!」

 

「ディルク班で新兵を援護しろ!」

 

 班長たちが飛び回りながら馬を引連れた新兵たちに言った。

 

「ど、どこだマルロ!!」

 

「は!?」

 

「どこに馬を繋げばいい!!」

 

「いっ、1箇所に馬を留めるなという指令だ……ここじゃない、もっと……」

 

 そんな中でも必死にマルロは周りに指示を下していた。

 

「東から3,4m級!! 来るぞ!!」

 

「!?」

 

 迫って来た巨人の姿を見てマルロたち新兵は止まってしまった。

 

 1対2の状況だったが、巨人の首は一瞬の内にして刈り取られる。リヴァイだ。2体の巨人を迎撃しようとした兵士は家屋の屋根に留まった。

 

「り、リヴァイ兵長!!」

 

「今のうちだ!! 急げ!!」

 

 その言葉で止まっていた新兵たちはもう一度走り出した。そしてリヴァイは周りの兵士に指示を下す。

 

「小せぇのをさっさと片付けろ!! 獣の巨人が動く前にだ!! 損害は許さん!! 1人も死ぬな!!」

 

「「ハッ!!」」

 

「クソ……うんざりだ。弱ぇ奴はすぐ死ぬ。雑魚はそこにいろ」

 

 こうして2つの戦局は今、動き出した。




感想くれると嬉しいです。辛口がいいです

グリュックに魅力は感じますか?

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