進撃の巨人 The end -ゲームの主人公が生きていました- -誰が為の翼-   作:キラトマト

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#25 歴史と事実

「……よし、一段階目は成功。後はジャンたちが来るのを待つだけか」

 

 遠くから見ていたグリュックが呟いた。

 

「つーか、本当にすげぇ人だかりだな……。……あの子らの席は……っと見つけた」

 

 建物の上から戦士候補生を見つけた彼は、4年前から静音性を増した立体機動装置で近くの屋根まで近寄った。そうこうしているうちに式典が管楽器とともに開始の幕をあげる。

 

「昔話をしましょう、今からか約100年前、エルディア帝国は巨人の力で世界を支配していました」

 

 背後で人間を食べる巨人の影絵が映し出される。

 

「始祖ユミルの出現から今日に至るまで、一体どれほどの命が巨人に奪われたことでしょう」

 

 ウィリーの周りに血まみれで苦しむ役者が現れる。

 

「最新の研究では現生の人類が三度、絶滅しても足りないほどの人の数とされています。巨人によって途方もない数の民族や文化……その歴史が奪われてきたのです。その殺戮こそが人類史であり、エルディア帝国の歩んできた歴史でした」

 

 ウィリーの合図で、背後の様子がガラッと変わる。殺し合いをする人間である。

 

「そして敵の居なくなったエルディア帝国は、同族同士で殺し合うようになりました。『巨人大戦』の始まりです。八つの巨人を持つ家が結託や裏切りを絶えず繰り返し、血を流しあったのです」

 

「しかし、この状況に勝機を見出したマーレ人がいました。彼こそが英雄へーロス」

 

 次に現れたのはツバが長い帽子を被り、槍を持った兵士、へーロスの格好をした男。

 

「彼の巧みな情報操作により、エルディア帝国は次々と同士討ちに倒れていきました。そして彼は我らタイバー家と手を組み、勝つことは不可能とされたフリッツ王さえも島に退かせることに成功したのです」

 

 そんなおとぎ話に、各国の首脳陣やお偉方は拍手を繰り返す。

 

「しかしパラディ島に退いた王は未だ力を持ったまま、世界を踏み潰せるだけの力を持つ幾千万もの巨人があの島に控えています。今現在、我々の世界が踏み潰されずに存在しているのは────偶然である。巨人学会はそうとしか説明できません」

 

 そんな言葉に辺りはシーンと静まりかえる。

 

「我が祖国マーレはその脅威を排除すべく、4体の巨人を島に送り込みましたが、返り討ちに終わり、戻って来られたのは『鎧の巨人』のみ」

 

(返り討ちだと……? だいたいお前らが攻めてこなけりゃ俺たちは何もする気はなかったんだよ……今日ここで起きることも……)

 

「この4年間で島に送り続けた調査船は32隻、その全てが消息を絶っています。……つまり、暗黒の人類史たるエルディア帝国は未だ健在なのです」

 

(しかも4体……そのうち顎がユミルに食われて女型(アニ)超大型(ベルトルト)(ライナー)に任せただと……? あいつらまだ子供だったろ……何考えてんだマーレは)

 

 そう言って休憩のため舞台袖に入っていったウィリー。そして少しの間が空いて戻ってきたウィリーは再開する。

 

「では本日の本題に入りましょう。ここまで語った話は誰もが知る真実。ですが事実とは少々異なります。これは我々タイバー家が戦鎚の巨人とともに受け継いできた記憶。その事実を今回、公の場で初めて公表させていただきます」

 

 そんな話聞いていない、とマーレの上層部が騒然としだす。

 

「それは100年前……『巨人大戦』の顛末についてです。『巨人大戦』を終わらせたのは、へーロスでも、タイバー家でも…………ありませんでした。『巨人大戦』を終結させ、世界を救ったのは……フリッツ王なのです」

 

 ウィリーは真実を話した。フリッツ王、正確に言えば145代目の王であるカール・フリッツがタイバー家と画策しマーレ人であるへーロスを英雄に仕立て上げたと、始祖の巨人が王家の血筋でないと力を行使できないようにしたと。

 

「もしマーレがエルディア人の殲滅を願うなら、それを受け入れる。それほどまでにエルディア人の犯した罪は重く、決して償うことはできない。そもそもエルディア人は存在してはいけなかった。我々は間違いを正すことを受け入れる」

 

 それは極めて独善的で、エゴイスティックな願いだった。それを聞いた聴衆達は騒然とした。

 

「どういうことだ?」

 

「これが事実なら……マーレやタイバー家は世界を救ったって大義はすべてフリッツ王のお膳立てだったってことだぞ……」

 

「なぜそんな話を今になってタイバー家が自ら明るみに……?」

 

「本当に『壁の王』が世界を侵略することがないと言うのなら……今まで信じられてきたパラディ島脅威論とはなんだったのだ……?」

 

「しかし近年、パラディ島内で反乱が起き、フリッツ王の平和思想は淘汰され、『始祖の巨人』はある者に奪われました。世界に再び危機が迫っています。フリッツ王の平和な世界に歯向かう者が現れた。平和への反逆者……その名は、エレン・イェーガー」

 

(……は? お前らが攻撃しなけりゃエレンだってこんなことにはなってなかったんじゃねぇのか?)

 

 そして演説は続き、聴衆達はスタンディングオベーションをし始めた。

 

「私は誰よりも……エルディア人の根絶を願っていました。……ですが、私は死にたくありません。それは……私がこの世に生まれてきてしまったからです。我々は国も人種も異なる者同士ですが!! 死にたくない者は力を貸してほしい!! どうか……一緒に未来を生きて欲しい!! ────パラディ島の悪魔と!! 共に戦ってほしい!!!」

 

「現実問題として、世界の国々が手を取り合うにはまだまだ超えねばならない問題があります。しかし我々は強大な敵を前にすれば一つになるはずです。私たち皆で力を合わせれば、どんな困難も乗り越えて行けるはずです!! 私ウィリー・タイバーはマーレ政府特使として!! 世界の平和を願い!! 今ここに宣言します!! パラディ島敵勢力へ!! 宣戦布告を!! 

 

(!?)




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