進撃の巨人 The end -ゲームの主人公が生きていました- -誰が為の翼-   作:キラトマト

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#4.5 少女が見た世界

 ────この世界は残酷で、とても美しい────

 

「はぁ……はぁ……」

 

 ガスが無くなるまで気が付かないなんて……。何度経験しただろうか、また家族を失った。また、この痛みを思い出して……また……ここから始めなければいけないのか……。

 

 遠くから、私の方に巨人が歩いてきた。もうすぐ私は死ぬのだろう。そして反対側からも15m級がもう一体来る。

 

 いい人生だった……。

 

 折れた刃を見つめる。

 

「……!」

 

 気がつくと私は、巨人の手を躱していた。

 

「なんで……」

 

 もう片方の手から繰り出される攻撃も躱し、その衝撃で壁に叩きつけられる。

 

『戦え!! 戦え!!』

 

 ふと、エレンの声を思い出す。あれは、壁が壊される一年前だっただろうか……。

 

 

 

 

 

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「うぅ……痛いよぉ……」

 

「よく我慢できたね……ミカサ」

 

「この印は私達一族が受け継がなきゃいけないものなの。ミカサも自分の子供ができた時には、この印を伝えるんだよ?」

 

 あの時私は母に、私の腕に刺青を入れてもらっていた。

 

「……? ねぇお母さん、どうやったら子供ができるの?」

 

「……さぁ、お父さんに聞いてみなさい」

 

「ねぇお父さん」

 

 あの時の私の家は山小屋で、狭かったから父に同じ質問する必要もなく、父は言った。

 

「いや……お父さんもよく知らないんだ。もうじきイェーガー先生が診療に来る頃だから、先生に聞いてみようか……」

 

 今思い返してみると、その診療というのも私の妹か弟の誕生の為によるものだったのだろう。

 

「お、早速来たみたいだ」

 

 扉をノックされ、父が出た。

 

「う……!?」

 

 父はうずくまった。

 

「どうも失礼します」

 

 血にまみれたナイフを見た母は、即座にその男たちを人攫いだと認識し、料理の最中であったため手元にあったナイフを持って襲いかかった。

 

「いいか? おとなしくしろ。こいつで頭を割られたくなかったら……」

 

「うあぁぁあああ!!」

 

「うぉおお!? この女!」

 

「ミカサ! 逃げなさい!!」

 

 母は私の顔を見ることもなく叫んだ。

 

「え……!! お……おかぁさん……」

 

「ミカサ!! 早く!!」

 

「えっと……お父さん?」

 

「くそ……こいつ!!」

 

「え……!? イ……ヤダ……」

 

「くそ!! いい加減に────しろ!!」

 

 母は男の持っていた斧で首元を掻っ切られてしまった。

 

「ああ! 何やってんだ馬鹿!」

 

「殺すのは父親だけと言っただろ!」

 

「だ……だってよ……この女が……」

 

 母を殺した男が、言い訳がましく言っていたのを今でも覚えてる。

 

 男は私に近づいてきて襟を掴んだ。

 

「オイ……お前はおとなしくしろよ? でないとこうだ」

 

 そして、殴られて意識を失った私はどこかの小屋に連れ去られたらしい。

 

(お母さん……私は……どこに逃げればよかったの……? お母さんもお父さんもいない所は……私には寒くて生きていけない)

 

 ドアの開く、ガチャという音が耳に入ってきた────。

 

 

 

 

 

 ###

 

「ミカサ?」

 

 幼いエレンは、父にこれから向かう家の娘について尋ねた。

 

「そうだ。お前と同じ年頃の女の子だ。このあたりは子供がいないからな。仲良くするんだぞ」

 

「うん……そいつの出方次第だけど……」

 

「エレン……そんなだから一人しか友達出来ないんだぞ」

 

 ずっと扉をノックしていた父グリシャだったが、一向に出てくる気配がない。

 

「ん? 留守かな? アッカーマンさん……イェーガーです」

 

 扉の取っ手に手をかけるグリシャ。その鍵が空いていたことに驚愕する。

 

「ごめんください」

 

 グリシャは慌てて倒れているアッカーマン夫妻の脈を確かめる。

 

「クッ……駄目だ……二人とも死亡してから時間が経っている……」

 

 エレンが扉を開き、その惨状を目の当たりにする。

 

「エレン……近くに女の子……ミカサはいたか?」

 

「いなかった」

 

「そうか……父さんは憲兵団を呼んで捜索を要請する。お前は麓で待ってるんだ。分かったかエレン?」

 

 

 

 

 

 ###

 

「ごめんください」

 

 小屋の扉を開けたのはエレンだった。二人の男は驚いた顔をしていた。多分人目につかない小屋だったんだろう。

 

「!?」

 

「……あ……」

 

 我に返った男のうち一人はエレンに詰め寄った。

 

「オイガキ!! どうしてここがわかった!?」

 

「……え……? えっとボクは……森で……迷って……小屋が見えたから……」

 

 そう言うと男はエレンの頭を撫でて、いい人を装って返答した。

 

「ダメだろぉ〜〜? 子供が一人で森を歩いちゃ。森には怖〜いオオカミがいるんだぞ〜?」

 

「……」

 

 扉の開く方向に寝かされていた私には見えた。彼がナイフを隠し持っているのを。

 

「でも、もう心配いらないよ、これからはおじさん達と一緒に────」

 

「ありがとう、おじさん……」

 

「?」

 

「もう……わかったからさ────死んじゃえよ、クソ野郎」

 

 エレンは、勢いよく男の首を掻っ切った。勢いよく吹き出す血と、自分にかかる返り血に気にすることなく扉を閉じた。

 

「う、嘘だろ……? おい……!? ま、待ちやがれ!! このガキ!!」

 

 男は斧を持って向かうが、直前で扉が開く。

 

「ひっ!!」

 

 ほうきにナイフを括り付けた武器を持って男に向かっていったエレン。

 

「うあああぁぁああああ!!!」

 

 肩付近に刺さるナイフ、もう一本持っていたナイフで、エレンは男を滅多刺しにしていく。

 

「この……(ケダモノ)め!! 死んじまえ!! もう起き上がるな!! お前らなんか……こうだ!! こうなって当然だ!」

 

 エレンは肩で息を整え、顔に着いた返り血を拭い、私に近づいて言った。

 

「……!」

 

「もう大丈夫だ……安心しろ……」

 

 私の手を縛っていた縄を切ってくれた。

 

「お前……ミカサだろ? オレはエレン……医者のイェーガー先生の息子で、父さんとは前に会ったことがあるハズだ。診療の付き添いでお前の家に行ったんだ……そしたら────」

 

 その時、私は思い出した。

 

『ああ! 何やってんだ馬鹿!』

 

『殺すのは父親だけと言っただろ!』

 

『だ……だってよ……この女が……』

 

「三人……いたはず」

 

「え?」

 

 後ろから近づいてくる男。ナイフを取ろうとしたエレン、だがそれを取るよりも早く男はエレンの腹を蹴り、部屋の隅まで追い込む。

 

「てめぇが……やったのか?」

 

「ぐっ……」

 

 エレンは髪を引っ張られ、そして首を思い切り掴まれる。

 

「信じらんねぇ……てめぇがやったのか!? オレの仲間を……! てめぇ……よくも……殺してやる!!」

 

「あっ……」

 

 その時の私はその状況に怯えて声も出なくなってしまっていた。今の私ならこんなのすぐに殺してやれるのに。

 

「〜〜〜!! た……戦え!!」

 

「……!!」

 

「戦うんだよ!!」

 

「この……ガキ!?」

 

「勝てなきゃ……死ぬ……勝てば……生きる……」

 

「何考えてやがるこのガキ……!」

 

「戦わなければ勝てない……」

 

 私はナイフを握った。でも勇気が出なかった。

 

「……そんな……できない……」

 

 その時、私は思い出した。この光景は今までに何度も見てきたと。世界は残酷なんだと。

 

 だから、今生きていることが奇跡のように感じた。その瞬間、体の震えが止まった。

 

「戦え……」

 

 その時から私は、自分を完璧に支配できた。身体中に電気が走るような感覚とともに、私は何でもできると思った。

 

 ナイフを思い切り握り締め、エレンの首を絞める男に向かって走り出した。背後から男を一突き。

 

 

 

 

 

 ###

 

「く……エレン……」

 

 憲兵のおじさんと一緒にこの小屋にやってきたイェーガー先生は、エレンを抱き締めた。

 

「麓で待っていろといっただろう! なんて事を……お前は……自分が何をしたかわかっているのか!?」

 

「有害な(ケダモノ)を駆除した! たまたま人と格好が似てただけだ!!」

 

「エレン!」

 

「こんな時間に憲兵団が来ても、奴らはとっくに移動してた!! 憲兵団じゃ間に合わなかった!!」

 

「もしそうだとしてもだ! エレン! お前は運が良かっただけだ!! 私はお前が自分の命を軽々に投げ打ったことを咎めているんだ!!」

 

「……」

 

 そうやってお父さんに叱られているエレンは少し涙目になっていた。

 

「……でも……早く……助けてやりたかった……」

 

 そうやってしおらしくなっているエレンに、イェーガー先生はため息を漏らしつつ私に声をかけた。

 

「ミカサ。覚えているかい? 君がまだ小さい時に何度か会っているんだが……」

 

「イェーガー先生。……私は────ここから……どこに向かって……帰ればいいの? 寒い。私にはもう……帰る所がない……」

 

 そんな私を見たエレンは、自分に付けていたマフラーを取り、私に巻いてくれた。このことは一生忘れることは無いだろう。

 

「やるよ、これ。あったかいだろ?」

 

「…………あったかい……」

 

「ミカサ、私達の家で一緒に暮らそう」

 

「……え」

 

「辛いことが沢山あった……君には十分な休息が必要だ」

 

 そんなイェーガー先生の言葉に、私が呆気に取られていると、エレンは私に巻いてくれたマフラーを握って言ってくれた。

 

「早く帰ろうぜ、オレたちの家に」

 

「……うん。帰る……」

 

 

 

 

 

 ###

 

 あぁ、ごめんなさいエレン……。私はもう……諦めない……。死んでしまったらもう……あなたの事を思い出すことさえ……できない。だから、何としてでも────勝つ!! 

 

「うああああああ!!!」

 

 何としてでも生きる!!!

 

 その掛け声に呼応したように、後ろから来ていた巨人が、私を食べようとした巨人の顔を勢いよく殴った。その巨人は、倒れた巨人に向かって咆哮し、向かっていった。

 

「え……?」

 

 一体……何が……。

 

 その巨人は、巨人の弱点を理解しているようで、うなじを踏み潰し続けていた。

 

 私は、ただひたすら困惑した。巨人が巨人を襲うなんて聞いたことがない……。そして微かに……高揚した。その光景は、人類の怒りが体現されたように見えたから……。

 

「ミカサ!」

 

 その瞬間、アルミンが私を抱えて家屋の屋根まで連れてくれた。

 

「うっ!!」

 

「ミカサ! ガス切らして落っこちたろ!? ケガは!?」

 

「……私は大丈夫……」

 

「おい! とにかく移動だ!」

 

 コニーも駆けつけてくれた。

 

「まずいぞ! 15m級が2体だ!」

 

「イヤ……あの巨人は……」

 

 地面に転がっている巨人の死体を見て、アルミンは何かを察したらしい。巨人は互いに咆哮する。私を助けてくれた巨人は格闘技等で見られるファイティングポーズを取り、相手の巨人の顔に左ストレートを繰り出す。

 

「え」

 

 勢いよく殴られた巨人の顔は吹っ飛び、こちらに向かってくる。

 

「ッ……!? 伏せろ!!」

 

 勢いよく殴ったことにより激しく損傷した謎の巨人の手は瞬時に回復し、次なる攻撃に移る。再生しかけていた巨人のうなじを踏み潰したのだ。

 

「とどめを……刺した!? 弱点を理解して殺したのか!?」

 

「とにかく移動するぞ、あいつがこっちに来る前に」

 

「いや……僕達に無反応だ……とっくに襲ってきてもおかしくないのに……」

 

「格闘術の概念があるようにも感じた。あれは一体……」

 

「奇行種って言うしかねぇだろ。わかんねぇことのほうが多いんだからよ……。とにかく本部に急ぐぞ、みんなが待ってる!」

 

 そうだ。本部に巨人が群がっているんだった。

 

「待ってくれ! ミカサのガスが空っぽなんだ!」

 

「……!」

 

「おいまじかい!! どうすんだお前がいなくて!!」

 

「やることは決まってる! 僕のもあまり入ってないけど……急いでこれと交換するんだ!」

 

 アルミンは自分のボンベを私の立体機動装置に入れた。

 

 やめて、私はみんなの命を背負う覚悟もないまま先導したのだから。その責任を感じる前に一旦は命さえ放棄した。それも自分の都合で……。私は……。

 

「よし! 刃は全部足した! 機動装置もまだ行けるぞ!」

 

「ただ……これだけは、ここに置いていってくれ……」

 

 アルミンは私のブレードに刺さっていた折れた刃を持って言った。

 

「やっぱり……生きたまま食われることだけは避けたいんだ」

 

 それはダメだ。

 

 私はそれを地面へと投げ捨てた。

 

「そんな……」

 

「アルミン! ここに置いていったりはしない」

 

「……で……でも……巨人が大勢いるところを人一人抱えて飛び回るなんて……」

 

「お前をこんなところに残していくわけねぇだろ! 行くぞ! オレがアルミンを抱える! ミカサは援護だ!」

 

 コニーに手を引っ張られるアルミンは、立ち止まって言った。

 

「聞いてくれ! 提案があるんだ!」

 

「提案?」

 

「……やるのは二人だから……二人が決めてくれ」

 

 アルミンは、「無茶だと思うけど……」と前振りをして言った。

 

 ────ミカサはいつだって、エレンを想っていた

グリュックに魅力は感じますか?

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