不死の彼岸花   作:兼六園

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城攻めのコツ

『例えば何を用意してもいいから単機で城を落とせと言われたら、千束ちゃんはどうする?』

『えっ、いきなりだなぁ』

 

 ある時、普通に客として現れた花は、喫茶店で千束にそんな質問を投げ掛けた。

 他に客が居ないのを確認してコーヒーを啜る花の隣に座る千束は、悩みながら返す。

 

『うーん……何でもいいんでしょ? じゃあ麻酔銃いっぱい持ってって各個撃破かな』

『堅実だねえ』

『──あ! いや、別に実際にやってるとかそういうわけじゃないからね!』

『うん? わかっているとも』

 

 手をシュバババと動かし誤魔化す千束に、花は小首を傾げながら言う。

 そんな花に、今度は千束が問いかけた。

 

『これ、なんの質問なの?』

『……まあ、なんだ。単なる心理テストだよ、これで性格とかが分かる感じの』

『へぇ~! じゃあ私の結果は?』

『ふむ──用意が大雑把だがやることは堅実、つまり……体を動かすときの頭の回転が早い大型犬タイプだねえ』

『えー、絶対外れてるよそれ。私ほどのCoolbeauty(くーるびゅーてぃー)な人間はそう居ないよ?』

『あははは』

 

 腕を上げて後頭部に手を添え、腰をくねらせウインクする千束を笑って流し、花は麻酔銃か……と呟く。──あの時代には無かったなあ。と、そんな風に考える。

 

『じゃあ花ちゃんだったら何持ってく?』

『私かい? そうだねえ、私だったら──旅客機使って真上から突っ込むかな』

『えぇ……いやそれじゃ死ぬじゃん。ていうかそんなんアリ!?』

『私は確かに何を用意してもいいからと前提条件を提示した筈だよ。やっていいとは言ってないけどやっちゃいけないとも言っていない』

『そりゃそーだけどさあ』

『心理テストなんてこじつけと屁理屈なんだから、言ったもん勝ちじゃないか』

『そ、そりゃそーだけどさあ……』

 

 頬をひくつかせて引き気味の千束は、花の意外なところを垣間見て小さく笑う。

 

 その数ヶ月後、DAから左遷されてきたとあるセカンドリコリスが千束に同じ質問をされたとき、「何でもいいんですよね? ならガンシップを要請して上から爆撃します」と答えて周囲をドン引きさせたのは、また別の話。

 

 

 

 

 

 ──小柄な体格を活かし、花はPPSh-41を振り回しながら敵の銃弾を掻い潜る。

 

「単騎での城攻めのコツは、相手の想定を上回る火力でのゴリ押しが有効だよ」

 

 トカレフ弾(7.62×25mm)が拳銃やサブマシンガンで武装する男たちの体を砕き、肉を千切ると、花の頬がピクリと反応しバックステップ。

 

 瞬間、横の扉を開け放ち現れた男が鉈を振り下ろして、花の立っていた所を殴り砕く。

 その男を撃とうとした花だったが、PPSh-41のレバーがガチンと下がりきって動かなくなり、言わずとも弾切れを知らせた。

 

 花は反射的にPPSh-41をスイングしてマガジンを外し、左手を後ろに回して腰のポーチから別のマガジンを取り出す。眼前の男が再度鉈を振りかぶるよりも早く装填を終えてレバーを戻し、ギィッと獰猛に口角を吊り上げて引き金を引いた。

 

「今のは惜しいなあ」

 

 ダダダダ、と発射された弾丸が胴体を穿ち、風穴を空ける。このまま前進──と思考したとき、花の視界になにかを構える男たちが映った。

 銃ではない、けれども銃のような形をしたそれは、当然だが『なにか』を発射するためにそういった形状をしている。

 

「────」

 

 ──バシュ! と発射されたなにかを、花は左腕を盾にして受け止める。鋭い針が刺さる感覚を理解した刹那、彼女はスリングで吊るしているからとPPSh-41を手放し、右手で腰のマチェットを引き抜きながら流れで左腕を切り落とす。

 

 遅れてくらりと発生しためまいを覚えて、()()()()感覚に静かに笑った。

 

「はははは、麻酔か」

 

 ぶんとマチェットを放り投げ、麻酔銃を発射したうちの一人に突き刺すと、ホルスターからピースメーカーを抜き取り撃鉄を起こしては発砲。最初の1発を抜いた4発を撃ってから、花は最後に銃口を自身の顎に押し当てて撃鉄を起こす。

 

 即座に腕を切り落としたが、それでも血中に入った麻酔により強烈な眠気を誘われ、今にも意識が落ちそうになっていた為に自分からとどめを刺すべく──花は引き金を引く。

 

 ドバン! と45口径の弾丸が顎の下から脳天を破壊し、一撃で花を絶命に至らしめる。

 ──そして、自分達の前で暴れていた少女の自殺を見届けた男たちは、彼女の切り落とした左腕が()()()()光景を目の当たりにした。

 

 断面から骨を起点に筋肉や神経、血管が伸び、皮膚で覆われ指先に爪が生える。それからがばりと起き上がった花が両手でPPSh-41を握り、残りを掃討するべく攻撃を再開。

 

 未知の襲撃から未知の相手までを断続的に味わわされ、思考を纏める間もないまま戦わされたマフィアの部下の死体の山を築き、花は投げたマチェットを男の腹から引き抜いて、適当な拳銃を拾い上げてピースメーカーを捨てる。

 

「麻酔なんて久しぶりに撃たれたなあ」

 

 そう言って廊下を歩きながらカラカラと笑うが、問題点はそこではない。

 

「なんで侵入者を相手にわざわざ麻酔を用意させたのか。そんなもの、答えは決まってる」

 

 PPSh-41を両手で握りながら歩く花は、誰に言うでもなく独りごちる。

 

「──私が()なのかを知っているやつが居るな。昔潰した研究施設に中国支部でもあったのかな? どちらにせよ全員仕留めないとなあ」

 

 脳裏に読み込んだファイルの内容を思い返し、歩く花はとある部屋にたどり着く。

 開けた中にあるのはなんの変哲もない部屋だが、廊下でぼんやりと把握した間取りに対して、どうにも空間が狭く感じる。

 

「……ふうん、セーフルームか。ここかな?」

 

 ゴンゴンと壁を叩き、材質からして頑丈であると察する。花はふむと考えるそぶりを見せて、それからマチェットを抜くのだった。

 

 

 

「折角だ、不死身の裏技を見せてあげよう」

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